補助金の採択を受けるためには、明確なコツがあることをご存じでしょうか?
何度も採択決定を受けるような事業者は、そうした補助金申請のコツをしっかり押さえて応募しています。反対に、それを知らなければ、何回応募しても不採択という結果になってしまうでしょう。
今回は、補助金に採択を受けるための申請のコツをくわしく解説します。令和4年度第二次補正予算の閣議決定から約2ヶ月が過ぎ、各補助金の概要も固まってきました。公募が開始される前に今回お伝えする内容を理解し、貴社の補助金申請に役立ててください。
補助金と助成金の違い
補助金と似た制度に「助成金」があります。中小企業向けの補助金の実施主体が「経済産業省」や「自治体」であるのに対して、助成金は「厚生労働省」が主体となっていることが多いです。
補助金と助成金は混同されがちですが、大きく次の3つの違いがあります。
事業計画の策定が必要である
補助金の申請には、補助金を使って何に取り組むかを具体的に記載した事業計画の策定が必須要件となっています。
中小企業の設備投資によく活用される「ものづくり補助金」では、A4サイズで計10ページ以内で作成するように公募要領に指示されています。補助金を申請される中小企業様にとって最も頭の痛いところであり、挑戦するも策定に至らず、断念してしまう場合も少なくありません。
反面、助成金は申請の要件を満たすことを示す申請書の作成のみで申請することが可能で、事業計画の策定は基本的に必要ありません。
厳密な審査がある
補助金には採択・不採択を決定する審査があるということも大きな特徴です。
補助金の実施主体が委託した審査員による審査が行われ、点数の高い順に採択が決定されます。採択率は制度や年度、予算規模等によって異なりますが、おおむね30~60%ほどです。
一方、助成金は受給要件を満たしているか否かで判断されます。こうした違いは、補助金と助成金の財源の違いに理由があります。補助金は税金、助成金は雇用保険料が財源です。
そのため、補助金には厳しい審査が設けられ、一般的には助成金と比較して受給のハードルは高くなっています。
原則として後払いである
補助金は採択が決定した後、すぐにもらえるわけではありません。計画書に記載した補助事業に取り組み、補助金の実施主体へ実績報告を提出し、承認される必要があります。
そのため、一度は自己資金で設備投資等に要した経費を全額支払う必要があり、資金繰りまで考えて補助金を申請する必要があります。
一方、助成金は、支給のために取り組む事業はなく、申請要件に合致していれば、事務局によって手続きがなされ、一定期間後に支給されます。
補助金を申請するメリット
続いて、補助金を申請し、受給するメリットについて解説します。補助金には、表面的なメリットの他にも、取り組んだ方にしかわからない効用がたくさんあります。ぜひ申請にチャレンジし、体感していただきたいと思います。
返済不要の資金を調達できる
補助金を利用する最も大きなメリットは、返済が不要という点です。
コロナ禍で新設され、今もなお人気の高い「事業再構築補助金」では、1社1億円の資金を獲得することも可能です。仮に事業によって得た利益で1億円を調達しようとすれば、利益率5%とした場合、売上ベースで20億円以上が必要になります。
そのような資金を短期間で調達し、自社の課題に必要な設備投資等に充てることができれば、飛躍的な発展を遂げる可能性も十分にあり得ます。
自社の事業の見直しができる
前述のように、補助金の申請には事業計画の策定が必要です。しかし、厳しい補助金の審査を受けて、採択されるような事業計画を策定しようとするのは生半なことではありません。
貴社の沿革から現在の事業概要、競合や市場環境などを徹底的に洗い出し、分析して補助事業の取り組みを計画する必要があります。その過程で会社のビジネスモデルや商品・サービスごとの収益性、貴社を取り巻く事業環境などを把握することができ、今一度自社を見直す良い機会になるでしょう。
これまで認識できていなかった貴社の強みや弱みが見つかり、新たな事業への足掛かりを見つけることができるかもしれません。
対外的に信用が高まる
中小企業で中長期的な事業計画を策定していると、対外的に信用を高めることができます。
事業計画の多くは社長の頭の中にある場合がほとんどで、書面にまで落とし込んでいる会社は少ないでしょう。補助金申請のため、しっかりとした3〜5年の事業計画を持ち、それに沿って経営を進めているということは、それだけでステークホルダーからの信用を高めるのに役立ちます。
また、補助金に採択されていると、金融機関からの融資実行の可能性も高まります。設備投資のための資金を借り入れる場合でも、すでに補助金が決定していれば返済原資と見做され、通常よりも承認されやすくなるでしょう。
補助金を申請する前の注意点
ここまでお伝えした内容から、早速補助金に申請したいと思われた方も多いと思います。しかし、メリットの反面、補助金には気をつけなければならない点も数多く存在します。ここでは、補助金申請前に注意すべき点について解説します。
取り組みが制度の趣旨に合致しているか
補助金には数多くの制度が存在し、実施主体である国や自治体などの団体によって支援の目的が異なっています。
たとえば、IT導入補助金では、ソフトウェアのようなITツールの導入が補助対象経費となっており、パソコンなどのハードウェアは一定の要件のもと対象外とされています。これは、IT導入補助金が、中小企業等のIT・DX導入の取組みによる課題解決を支援し、売上や生産性を向上させることを目的とした制度のためです。
このように、補助金にはそれぞれ制度の趣旨があり、いかに素晴らしい取り組みであったとしても、それに沿ったものでなくては対象になりません。そのため、申請しようと考えている補助金が自社や自社の取組みに合致したものであるかの確認がとても重要になります。
この段階で間違えてしまい、申請の準備を進めてしまうと大きなタイムロスとなってしまいます。そのため、認定経営革新等支援機関などの身近な補助金の専門家へ確認することをおすすめします。
応募期限や採択率に無理がないか
補助金は、いつでも申請を受け付けているわけではありません。制度ごとに応募締切が設定され、その期日ごとに申請を完了する必要があります。
そのため、本業の手が空いたタイミングで申請に取り組もうと思っても、その頃にはすでに期限を過ぎているといったことが起こり得ます。
補助金のスケジュールは、サイトなどに公表されているため、申請する応募期限を確認し、本業の傍ら、毎日コツコツと準備を進めていく姿勢が重要です。
また、補助金の申請準備に要する期間は、申請しようとする補助金によって異なり、たとえば「小規模事業者持続化補助金」であれば2週間もあれば十分ですが、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」の場合は、少なくとも1〜2ヶ月は必要になるでしょう。
加えて、補助金は制度ごとの採択率の開きが大きく、申請者の半分以上が採択されるものから3分の1程度のものまでさまざまです。基本的には補助金額の大きい制度の方が採択率が低くなっており、申請までのハードルも高くなっています。
特定の補助金にこだわるあまり、新事業への取り組みが遅れてしまえば本末転倒です。貴社の補助金申請レベルに合わせた制度選択も重要です。
投資資金は準備できるか
前述のように、補助金は後払いであるため、投資に要した経費の全額を一度貴社で支払う必要があります。新事業のために無理な資金運用を行ってしまい、会社の屋台骨が揺らいでしまうような自体にならないよう、補助金申請の際にはキャッシュフロー計画まで考えて行わなければなりません。
自己資金で賄うことができれば良いですが、資金力の乏しい中小企業の場合、投資資金を準備することは大変でしょう。補助金申請の際には、ぜひメインバンク等に事前にご相談いただき、無理のない資金計画を考えておきましょう。
なお、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」を申請する場合、補助金額が一定金額以上のときは、認定経営革新等支援機関に加えて、金融機関とも連携する必要があります。
補助金を申請する際のコツ
続いて、補助金をスムーズに申請し、上手に活用するためのコツについて解説します。これらを事前に知っているといないでは効率に大きく差が出るため、申請準備前にしっかりと理解しておいてください。
補助金の情報を幅広く収集する
補助金を申請する際には、広く情報収集を行いましょう。
中小企業向けの場合、経済産業省の募集しているものが有名ですが、厚生労働省や県・市区町村などの地方自治体が募集しているものがライバルが少なく、狙い目の場合もあります。まずは特定の補助金に固執することなく、自社の取り組みに該当する制度がないか念入りに調査することから始めてみましょう。
最近では、ネットでの検索が主流となっており、個人レベルでも補助金の情報が発信されています。おすすめの検索媒体としては、次の2サイトが挙げられます。
- 中小企業向け補助金・総合支援サイト ミラサポplus
- 支援情報ヘッドライン J-Net21
前者は中小企業庁が、後者は独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているため、情報の信頼性は大変高くなっています。フリーワードの他、県別、投資内容別でも補助金を検索できるため、貴社にぴったりの制度を見つけることができるでしょう。
制度の趣旨に沿った内容を記載する
応募する補助金が決まったら、申請書の準備を開始します。申請に際し、最も重要な書類は事業計画書であり、その出来・不出来で採択がほぼ決まると言っても過言ではありません。
前述したように、補助金には実施主体がそれぞれ設定した事業の目的があり、その趣旨に沿った事業計画に基づいた取組みに対して補助金が支給されます。補助金の目的や趣旨は応募開始時に公表される公募要領に記載されているため、まずこれを一読することをおすすめします。
多くの場合、公募要領には審査の観点として事業計画に記載しておかなければならない事項も列記されているため、それらを網羅するように事業計画を策定しましょう。
申請書はわかりやすく作成する
わかりやすい申請書を作成することもとても重要です。
貴社の事業計画を審査する審査員は、貴社についての知識はまったくありません。そんな相手に自社のことをよく知ってもらい、新たな取組みの有効性を理解してもらうためには、貴社や業界動向のことを事細かに説明する必要があります。
しかし、事業計画の枚数にも制限があり、ものづくり補助金では10ページ以内と定められています。10ページという多いと感じられる方が多いかもしれませんが、自社の業況や競合・事業環境の状況、補助事業で取組むこととその根拠、将来の展望などをしっかりと記載しようとすると、指示枚数内で収めるのは意外と難しいことがわかると思います。
作成のポイントは、図や写真、グラフ、フレームワークを用いて整理することです。文字ばかりの場合と比較して視覚的にもすっきりした計画書になるでしょう。
なお、10ページ以内とあるため、4~5ページでも良いということではありますが、採択されるためには、最低でも7~8ページ、できれば9ページ以上は作成したいところです。
添付資料の不足・漏れに注意する
事業計画が完成したら、いよいよ申請作業に入ります。ここで慌ててしまい、失敗してしまう事例もあります。
補助金の申請には、事業計画書以外の添付書類の提出も必ず求められます。たとえば、決算書や労働者名簿のほか、特別な申請類型に申請しようとする場合に追加で求められる書類などです。
特に、昨今、豪雨災害や新型コロナウイルス、賃上げやインボイス制度などに対応する中小企業を支援するため、一つの補助金の中にさまざまな申請類型が創設され、それに伴い添付書類の内容や数が複雑化しています。
事業再構築補助金においては、創設された直後の公募で10%以上の申請者が添付書類不足・間違いなどの書類不備により不採択とされていました。折角、苦心して事業計画書を作成しても、それが審査の俎上(そじょう)に乗ることもなく、不採択となるという残念な結果を避けるためにも、申請前に今一度公募要領等を確認し、添付資料の不足・漏れがないかをご確認ください。
採択されるまでが申請だと考える
補助金申請の最後のコツは、「採択されるまでが申請」と考えて取り組んでいただくことです。
補助金は申請した事業者のうち、不採択となってしまう事業者の方がどうしても多くなってしまいます。ただし、これはあくまでも補助金という制度上で承認を受けることができなかったというだけの話です。
仮に不採択となったとしても、貴社の事業計画に対して自信を失う必要はまったくありません。ぜひ何度でも補助金にトライしていただきたいと思います。
そうすることで、貴社の事業計画がブラッシュアップされ、より実効性・効果の高い取り組みとして洗練されていくでしょう。また、その過程でノウハウが蓄積され、補助金申請のコツを掴むことができるはずです。
補助金が採択されるために押さえたいポイント
最後に、補助金申請で採択されるためのポイントをお伝えします。申請時に加え、不採択を受けた後、どのような行動をとれば次のチャンスを生かすことができるかについても解説します。
加点項目を押さえる
補助金に採択されやすくなるオーソドックスな手法として、加点項目を押さえる方法があります。加点項目とは、補助金ごとに設定された申請には必須ではないものの、満たすことで審査にプラスされる要件です。制度ごとに異なった要件が設定されており、現在募集されているものづくり補助金の第14次締切分では、次の内容が加点項目として設定されています。
- 有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
- 創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
- パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
- 再生事業者
- デジタル技術の活用及びDX推進の取組(デジタル枠のみ)
- 令和4年度健康経営優良法人に認定された事業者
- J-Startup、J-Startup地域版に認定された事業者
- 「新規輸出1万者支援プログラム」に登録した事業者(グローバル市場開拓枠のう
ち、海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ)
- 取引先の事業者がグリーンに係るパートナーシップ構築宣言をしている事業者(グリーン枠のみ)
- 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
- 賃上げ加点
ものづくり補助金に申請する事業者は、これらの加点項目を複数満たしている場合が多く、貴社で該当する項目がなければ、その時点でライバルにリードを許している状態ということになります。採択を得ようと思うのであれば、最低でも1〜2個、可能であれば4〜5個押さえておくと安心です。
なお、経営革新計画や事業継続力強化計画は一度取得すると3〜5年間有効であるため、先々の補助金申請に向けて早目に取得しておくこともアリです。また、パートナーシップ構築宣言も取得が比較的容易であるためおすすめです。
事業計画を見直す
不採択の通知を受けたら、事業計画の見直しを行いましょう。今一度、計画を一から捉え直したいところですが、時間をかけて練った計画を新鮮な目で見るというのは難しいかもしれません。
そんなときは第三者に計画書を見てもらい、意見を聞いてみることをおすすめします。できれば貴社の業界について知識のない方のほうが先入観なく見ることができるため、より審査員の立場に近い感覚で評価してもらえるでしょう。
また、事業再構築補助金では、不採択の理由を事務局に確認することが可能です。会社の代表や従業員が電話することで、折り返しの連絡で不採択となった申請の中でのランクと審査員のコメントを聞くことができます。
審査員のコメントについては一定のテンプレートの中から選択されているため、完全に個社対応したものではありませんが、貴社の事業計画に不足しているところを教えてもらえる貴重なチャンスです。ぜひ積極的に活用してみてください。
他の補助金に申請する
不採択が続くようであれば、思い切って違う補助金を申請することも有効な手段です。補助金は毎年度、制度内容がブラッシュアップされたり、新しい制度が作られたりするため、再度検索してみることで貴社の事業によりマッチするような制度が見つかる可能性があります。
補助金の目的は資金調達であり、特定の制度にこだわる必要はありません。手段と目的を間違えず、広い視野を持って補助金申請に臨みましょう。
専門家にサポートを依頼する
自社で補助金申請が難しいようであれば、補助金の申請代行を利用してみましょう。
申請代行を請け負う専門家は、金融機関や商工会・商工会議所、税理士・行政書士、中小企業診断士などの士業、民間コンサルティング会社などさまざまです。手付金や補助金額に対しての割合で費用はかかってしまう場合もありますが、その分次のようなメリットも期待できます。
- 事業計画の策定をサポートしてもらえる
- 補助金の採択率が高まる
- コンサルティングも受けることができる
補助金申請で必要となる事業計画には、採択される書き方のコツがあります。補助金の申請を請け負う専門家は、独自のノウハウを蓄積しており、効率的な計画策定を支援します。
そうして作成された事業計画書は、審査の観点を漏れなく押さえられており、採択される可能性も高くなります。また、専門家によっては補助金申請だけではなく、コンサルティングサービスも提供している場合があり、経営全般に関する相談もできるかもしれません。
なお、昨今、多くの中小企業向けの補助金が創設されたことを受け、悪質な業者も増えています。手数料目当てに過大な投資をすすめたり、採択された後のサポートがなかったりといった被害があり、不正受給をほのめかすような場合もあるようです。
補助金の不正受給は犯罪であり、罪に問われるのは貴社自身です。そのため、そういった業者に当たらないよう、下調べをしてから依頼しましょう。
補助金の申請代行・サポートはトライズコンサルティングへ!
補助金の申請代行(サポート)は、トライズコンサルティングにお任せください。豊富な実績と経験のもと、貴社の抱える課題を解決し、求める成果にコミットします。
当社には各種業界に精通し、補助金申請のコツも押さえた優秀な専門家が在籍しているため、実現可能性の高い事業計画策定の支援が可能です。設備投資に必要な資金調達や補助金採択後の報告作業など包括的なサポート体制も構築しています。
補助金の申請代行(サポート)のご相談先をお探しの場合は、ぜひトライズコンサルティングまでお気軽にお問い合わせください。
まとめ
補助金申請のコツについて解説しました。補助金には多くのポイントがあり、申請のコツを掴むためには、実際に自社で補助金に応募し、失敗を繰り返しながら徐々に理解していくしかないでしょう。
そんなときに、専門家のサポートがあれば理解も早く、貴社の発展スピードも飛躍的に加速するでしょう。
当社トライズコンサルティングでは、中小企業様の足りない部分を補い、本業に集中しながら、補助金を採択できるよう全面的にバックアップしています。相談は無料ですので、ぜひお気軽にご連絡ください。