中小企業の設備投資を1,000万円まで支援してくれるものづくり補助金。コロナ対策の低感染リスク型ビジネス枠では広告宣伝費も対象になるなど、使い勝手が良くなりました。人気ゆえ、応募倍率も高いことが難点です。
ところが、令和3年度に入って少し様相が変わっています。応募数が昨年よりは減少傾向にあり、採択率もじわじわ上がってきました。おそらく、同時期に実施されている大型補助金「事業再構築補助金」に応募が流れていることが要因の一つと考えられます。今がものづくり補助金応募のねらい目かもしれません。
ものづくり補助金一般型採択率の推移
締切回 | 採択発表 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|---|
第1次 | 2020/4/28 | 2,287 | 1,429 | 62.5% |
第2次 | 2020/6/30 | 5,721 | 3,267 | 57.1% |
第3次 | 2020/9/25 | 6,923 | 2,637 | 38.1% |
第4次 | 2021/2/18 | 10,041 | 3,132 | 31.2% |
第5次 | 2021/3/31 | 5,139 | 2,291 | 44.6% |
第6次 | 2021/6/29 | 4,875 | 2,326 | 47.7% |
第7次 | 2021/9/27 | 5,414 | 2,729 | 50.4% |
とはいえ、直近の採択率は50%。40%を切ることもあった過去に比べれば高くなりましたが、依然として応募者の半数が不採択となる狭き門です。
「少しでも自社が採択される可能性を増やしたい!」そうお考えになったら、申請支援サービスを利用することをおすすめします。今回は、ものづくり補助金と申請支援サービスのご紹介です。
ものづくり補助金とは?その概要
まずは、ものづくり補助金の概要を確認しましょう。
対象者
ものづくり補助金は、日本国内に本社または補助事業の実施場所がある中小企業、小規模事業者、特定非営利活動法人が対象です。社会福祉法人や医療法人等は対象になりませんが、個人開業医であれば対象になります。また、個人事業主も対象になります。
対象となる取り組み
対象となる取り組みは、「中小企業が行う革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資です。したがって、単なる既存事業の設備更新等では対象になりません。
また、ものづくり補助金には「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠(新特別枠)」の2枠があります。
「低感染リスク型ビジネス枠」は、コロナ対策で設置されており、対人接触を減らす取り組み等が対象です。補助率が高くなるうえ、優先的に採択されます。
もし「低感染リスク型ビジネス枠」で不採択だったとしても、通常枠で再度審査されるので、低感染リスク型ビジネス枠の方が有利といえます。少しでも対人接触を減らす要素があれば、低感染リスク型ビジネス枠で申請するようにしましょう。
事業類型 | 応募枠 | 対象となる取り組み |
一般型 | 通常枠 | 中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等 |
低感染リスク型ビジネス枠 | ・物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発 | |
・ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資 |
補助金額
補助金額は次のとおりです。必要経費の全額が補填されるのではなく、企業規模や応募枠に応じて経費の1/2から2/3が補助されます。なお、補助金は補助事業が完了してから支払われる後払いです。立替払いが必要となるため、資金繰りに留意しましょう。
事業類型 | 応募枠 | 補助上限額 | 補助率 |
一般型 | 通常枠 | 100万円~1,000万円 | ・中小企業者:1/2 |
・小規模事業者:2/3 | |||
低感染リスク型ビジネス枠 | 2/3 |
※単価50万円以上の設備投資が必要。
要件
ものづくり補助金には要件があり、以下の増加基準を満たす3~5年計画の作成が必須となります。
3~5年の事業計画期間において
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加する
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- 事業者全体の付加価値額※を年率平均3%以上増加する
※付加価値とは、営業利益と人件費、減価償却費の合計額です。
給与総額の増加目標または事業内最低賃金目標が未達であれば、補助金の返還を求められる場合があるので注意しましょう。
対象経費
補助金の対象となる品目は、必要経費のうち以下の9品目になります。製品開発に必要な機械やシステム導入費の他、開発に必要な助言を求める専門家経費などが対象になります。
また、低感染リスク型ビジネス枠のみ広告宣伝費も対象になります。なお、パソコンやタブレット、車両など汎用使用ができるものは対象になりません。
- ①機械装置・システム構築費
- ②技術導入費
- ③専門家経費
- ④運搬費
- ⑤クラウドサービス利用費
- ⑥原材料費
- ⑦外注費
- ⑧知的財産権等関連経費
- ⑨広告宣伝費・販売促進費(低感染リスク型ビジネス枠のみ)
申請手続き
申請書類作成
革新的な製品開発等についての事業計画書を作成します。事業計画書は「その1補助事業の具体的取組内容」「その2将来の展望」「会社全体の収支計画」から構成され、自社の強みや特長、補助事業で行う取り組みの優位性などを記載していきます。
なお、事業計画書はその1、その2合わせてA4サイズ10枚以内に収めなければならないため、コンパクトにまとめる必要があります。
電子申請
ものづくり補助金は、「Jグランツ」という補助金申請システムから申請手続きをします。申請には「gBizIDプライムアカウント」が必要で、アカウント取得には3週間以上かかります。gBizIDプライムアカウントをまだお持ちでない場合は、まずはアカウントを取得しましょう。gBizIDプライムアカウントの取得方法等詳細は、こちらを参照してください。
スケジュール
ものづくり補助金は、年に複数回公募が実施されます。2021年10月現在では第8次の公募中で2021年11月11日(木)が締め切りとなっています。
公募回 | 締切 |
第8次公募 | 2021年11月11日 |
第9次公募 | 2022年2月頃 |
第10次公募以降はまだ発表されていませんが、当初予定では2022年度も実施されることになっています。
ものづくり補助金の申請代行とは
ものづくり補助金の申請支援サービスとはどのようなサービスでしょうか?
前述の通り、ものづくり補助金の申請手続き自体は、自社のアカウントで電子申請にて行いますので、自社以外の人に依頼するわけにはいきません。支援を受けられるのは、事業計画書の作成やコンサルティング、採択率アップのためのアドバイス等です。具体的にどんなサービスを受けられるのかについて解説していきましょう。
事業計画書作成支援
申請書類の中心となる事業計画書の作成支援です。事業計画書は「その1補助事業の具体的取組内容」と「その2 将来の展望」から構成され、A4 10枚程度です。事業者からのヒアリングに基づきコンサルタントが計画書をまとめます。
ものづくり補助金の採択審査は書類審査のみであるため、事業計画書の出来が採否を決定すると言っても過言ではありません。事業計画書の作成に長けたプロならではの視点で、自社の計画を、採択審査基準に沿った形で分かりやすくまとめてくれます。
加点項目への対応
ものづくり補助金では、以下の計画を作成し行政の承認や認定を受けると、採択審査で「加点」が得られます。
- 成長性加点:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
- 災害等加点:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
コンサルタントによっては、こういった計画書の作成支援を手掛けるところもあります。
電子申請のサポート
申請は事業者自身がJグランツから電子申請で行いますが、初めて申請する人にはうことも多いシステムです。そのため、コンサルタントが入力方法などを教えてサポートしてくれます。
事後報告書等の作成支援
採択後も3~5年にわたって実績報告書等の提出が必要です。このような事後の報告書作成支援を手掛ける会社もあります。
費用相場
ものづくり補助金の申請支援に関わる費用相場はいくらぐらいでしょうか?
コンサルタントに支払う報酬には、採否にかかわらず必要な「着手金」と、補助金が採択された場合のみ発生する「成功報酬」があります。着手金が5万円~15万円程度、成功報酬が受け取る補助金額の10%~15%程度とするところが多いようです。中には、着手金を設定せず成功報酬のみのところもありますが、成功報酬の割合は高めに設定される傾向があります。
申請する側としては、不採択であれば費用が発生しない完全成功報酬制の方が、お得に思えるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。そもそも不採択前提ならプロに支援を依頼する意味がありません。採択を前提とするなら成功報酬で比較して考えるべきでしょう。
報酬の種類 | 費用相場 |
着手金 | 5万円~15万円 |
成功報酬 | 10%~15% |
申請支援相談が多い理由
当社トライズコンサルティングでも、数多くのものづくり補助金の申請相談をお受けしています。これは、申請作業にかかわる手間があまりに膨大だからでしょう。
事業計画書に加えて、たくさんの添付書類を準備しなければならず、自社ですべて完結させるのはハードルが非常に高いと言えます。
ものづくり補助金は自分で申請できる?代行に依頼すべき?
とはいえ、自社の力のみでものづくり補助金を申請し、採択されている企業もたくさんあります。自力で申請して採択されるのであればそれにこしたことはありませんが、現実には以下の問題があります。
申請書作成には膨大な手間がかかる
申請書作成に慣れているコンサルタントでも、10枚におよぶ事業計画を作成するには数日かかります。慣れていない人が作成すると数週間かかるかもしれません。
それだけの日数を多忙な経営者が費やすよりは、別の仕事をした方がよほど会社の利益になるケースも少なくありません。
採択される申請書を作成するために
たとえ数週間かけて申請書を作成したとしても、採択されるとは限りません。ものづくり補助金の採択率は3割~5割で推移しており、応募者のうち半数以上が不採択となってしまうのが実情です。
採択されるには、技術面、事業化面、政策面から構成される13の審査項目をもれなく満たすことと、審査員にわかりやすく伝える文章力や構成力などが必要です。
また、採択されるには自社の強みをアピールすることが必要ですが、謙遜を美徳とする日本人文化のせいか、自社を誉めたてるようなことを書くのは苦手という方が多いようです。そのため、第三者であるコンサルタントに書いてもらう方が、自社の強みをしっかり伝えられる場合があります。
加点項目への対応
ものづくり補助金には、審査で有利になる各種「加点項目」があります。2021年10月現在は以下が加点項目となっていますが、公募のたびに加点項目の内容が変わりますので、常に最新の情報をキャッチアップする必要があります。
- 成長性加点:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
- 政策加点:創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
- 災害等加点:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
- 賃上げ加点等:給与支給総額を年率平均2%または3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円または90円以上の水準にする計画がある事業者
- パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
加点項目の対応もコンサルタントに依頼するかどうかで差が出るポイントです。コンサルタントに支援を依頼すると、少しでも採択率を上げるため使える加点項目は見逃しません。
もちろん、加点項目については公募要領に明記されていますし、誰もが知りうる情報ではあります。しかし、現実問題として初めて申請する方がすべての加点項目まで目配りすることは難しいのでないでしょうか。
このようにものづくり補助金の申請には一定のノウハウが必要です。採択を本気で狙うのなら、ノウハウを持つコンサルタントに支援を依頼するのが近道でしょう。
申請支援業者の選び方
では、ものづくり補助金の申請サポートはどんなコンサルタントに依頼したら良いのでしょうか?最後に、支援業者を選ぶ際のポイントを紹介します。
資格
ものづくり補助金の申請サポートは、特定の資格を必要としません。そのため、中小企業診断士や行政書士などの士業の他、コンサルタントを名乗る多くの方がサービスを実施しています。資格よりはむしろ実績を重視したほうが良いでしょう。
採択実績
重要なのは採択実績です。着手金の払い損にならないためにも、豊富な採択実績を持つ専門家に依頼したいものです。採択数や採択事例をホームページ上で公開している会社もあるので、参考にしましょう。
また、公開していないは、問い合わせたら通常教えてもらえます。逆に問い合わせても教えてくれないところは、避けた方がよいでしょう。
対応力・サポート
対応力も重要なポイントです。問い合わせに対するレスポンスが遅かったり、担当者につながりにくかったりする会社は、不安を感じさせます。
また、申請支援の中心は事業計画書の作成ですが、必要な業務はそれだけではありません。
たとえば申請手続きは、ご自身で「Jグランツ」という補助金申請システムに入力しますが、手間がかかります。というのも、入力の仕方を間違えるとエラーになってしまい先に進めないなど、慣れていない人にとってはクセのあるシステムだからです。
「入力に半日かかった」という話も聞きますので、システム入力の仕方を電話でサポートしてくれたり、入力時に横にコンサルタントがついてくれたりすると心強いですね。このような付随サービスをどこまでやってくれるかも専門家選びのポイントの一つです。
さらに、ものづくり補助金は、採択決定後も報告書の提出など煩雑な事務手続きがあります。採択決定後のサポートをどこまでやってくれるのかも重要なポイントです。サポートは採択までとするところ、採択後もサポートを続ける専門家、採択決定後のサポートは別料金など、専門家によって対応は異なります。サポートの内容をしっかり確認の上契約を締結するようにしましょう。
まとめ
ものづくり補助金の申請サポートについて紹介しました。当社トライズコンサルティングでも、ものづくり補助金の申請支援を多数手がけています。書類の作成から申請の代行まで、ものづくり補助金の申請に関わる手間や面倒を一手に引き受けます。
また、ご自身で申請するよりも高い採択率を実現します。これまでに申請支援したものづくり補助金の採択率は97%です(2019年、2020年度実績)。事業主の皆さまに寄り添い、一緒に事業計画を作っていくことで採択を目指します。ご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。