【2023】3Dプリンターに使える経済産業省の補助金は?申請方法と採択のポイント

3Dプリンターの補助金

3Dプリンターがビジネスのさまざまなシーンで活用されるようになってきました。それに伴って、各メーカーから3Dプリンターが販売され、出始めの頃と比較すると価格が安くなりつつあります。

しかし、いくら安くなったといってもビジネスで利用するなら、1台数10万円から1,000万円ほどの投資が必要になり、中小企業様にとっては気になるところではないでしょうか?

今回は、ビジネスに3Dプリンターの導入を検討されている中小企業様に向けて、「ものづくり補助金」の活用を解説します。この記事を読んでいただくことで、「ものづくり補助金」の内容や申請方法、3Dプリンターの導入事例、採択されるためのポイントをおわかりいただくことができるでしょう。

3Dプリンター導入にはものづくり補助金がおすすめ

「ものづくり補助金」は、経済産業省が2014年から毎年募集している中小企業等の設備投資を支援する補助金です。ここでは申請の対象者や補助上限・補助率など制度の内容を解説します。

補助対象者

「ものづくり補助金」の対象者は、国内に本社および補助事業を実施する場所を有する者のうち、資本金または常勤の従業員数が次の表の数字以下となる会社または個人です。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

常勤の従業員数においては、次の表の数字以下の会社または個人のうち、資本金の額または出資の総額が10億円未満である特定事業者の一部も対象となります。

業種常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業500人
卸売業400人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)300人
その他の業種(上記以外)500人

これら以外の企業組合などの一部の組合や、一定の特定非営利活動法人も申請することが可能であり、かなり裾野が広いことがわかります。

なお、発行済株式の総数または出資価格の総額の一定割合以上を大企業が有している場合や役員総数に占める大企業の役員または職員の割合が一定数以上の場合、直近3年分の売上高が一定以上の場合などは「みなし大企業」として補助対象外となります。

補助上限・補助率

2022年12月現在募集されている「ものづくり補助金」は大きく「一般型」と「グローバル展開型」の2つの申請類型に分かれています。同一の法人・事業者での応募は1申請に限られており、申請後の変更はできません。

「一般型」はさらに「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」が設けられており、それぞれの補助上限と補助率は次の表のとおりです。

申請類型補助上限補助率
一般型通常枠750万円〜1,250万円1/2 小規模事業者:2/3
回復型賃上げ・雇用拡大枠750万円〜1,250万円2/3
デジタル枠750万円〜1,250万円2/3
グリーン枠1,000万円〜2,000万円2/3
グローバル展開型3,000万円1/2 小規模事業者等:2/3

「一般型」は、従業員規模により補助上限の金額が異なります。

また、「一般型」の「通常枠」と「グローバル展開型」は小規模事業者の場合、補助率2/3に引き上げられます。小規模事業者とは、常勤従業員数が次の表の数字以下となる会社または個人を指します。

業種常勤従業員数
製造業その他・宿泊業・娯楽業20人
卸売業・小売業・サービス業5人

採択の後、交付決定までの間に小規模事業者の定義から外れた場合は1/2に戻ります。交付決定後も同様で、最終的には労働者名簿等で確認がなされ、補助事業の実施期間終了までに定義からは外れた場合は補助率1/2へ計画変更となります。

なお、特定非営利活動法人は従業員数20人以下の場合、補助率は2/3となります。

補助要件

ものづくり補助金を申請するための「基本要件」は、事業計画期間において、次のすべてを満たす3〜5年の事業計画を策定することです。

  • 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準に引上げ
  • 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

また、「通常枠」以外の「一般型」は「基本要件」に加え、個別に設けられた要件を満たす必要があります。「グローバル展開型」については「基本要件」を満たす必要はありませんが、公募要領に記載された4類型いずれか一つを満たす投資でなくてはなりません。

補助対象経費

「ものづくり補助金」の対象経費は、その必要性と金額の妥当性を証拠書類で確認できるもののうち、交付決定日以後に発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限ります。

機械装置・ システム構築費・専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
・専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
・もしくは2と一体で行う、改良・修繕または据付けに要する経費
技術導入費本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費
専門家経費本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費
運搬費運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
クラウドサービス利用費クラウドサービスの利用に関する経費
原材料費試作品の開発に必要な原材料および副資材の購入に要する経費

3Dプリンターを導入する経費は、「機械装置・ システム構築費」に当たります。また、導入に伴って支出される「技術導入費」や「専門家経費」も対象です。なお、「技術導入費」と「専門家経費」については、補助対象経費総額に対する上限額がそれぞれ1/3と1/2と定められています。

補助金のスケジュール

2022年12月現在、「ものづくり補助金」の第13次締切分が、2022年12月22日(木)を申請期限として募集されています。ものづくり補助金公式ホームページによると、採択発表が2023年2月中旬に予定されており、4月以降が補助事業実施期間です。

また、以降も2022年11月8日(火)に令和4年度第2次補正予算が閣議決定されたことを受け、令和6年度(2024年度)まで募集されることが確定しています。

3Dプリンター導入でものづくり補助金を申請する方法

補助金の申請は一見複雑そうに感じますが、一つひとつを段階的に考えれば理解していただきやすいことでしょう。ここでは、「ものづくり補助金」を例に申請方法について解説していきます。

gBizIDプライムアカウントの取得

「ものづくり補助金」の申請は、システムを介した電子申請によってのみ行うことができます。この電子申請に必要となるものが「gBizIDプライムアカウント」です。

「gBizIDプライムアカウント」は、gBizIDのサイトで申請書を出力し、実印を押印、印鑑証明を添付して事務局に送付することで、1~2週間ほどで作成することが可能です。

ものづくり補助金に申請することが決まったら、まずこの作業を行ってください。以前に作成されている場合でも、代表者や住所に変更があった場合には、サイトから変更申請を行う必要があることにはご注意ください。

事業計画の策定

3Dプリンターを用いた革新的なサービス・試作品の開発、生産プロセスの改善についての事業計画書を作成します。

ものづくり補助金を申請するためには、前述した「基本要件」をすべて満たす事業計画が必須になります。事業計画に記載しなくてはいけない内容は次のとおりです。

  • その1:補助事業の具体的取組内容
  • その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場および期待される効果)
  • その3:会社全体の事業計画

計画書は、A4サイズで計10ページ以内に収めるように指示されています。指定ページ数が多いように感じるかもしれませんが、審査員を納得させる内容をこの分量にまとめるのは至難の技です。

電子申請

電子申請は、公式ホームページの「ものづくり補助金総合サイト」の「電子申請」のタブから電子申請システムにアクセスし、「gBizIDプライムアカウント」でログイン後、マニュアルに沿って行っていきます。必要書類の添付漏れがないよう、しっかり準備してから臨みましょう。

電子申請の弊害として、締切日のサーバーの混雑が挙げられます。可能であれば締切2〜3日前くらいに余裕をもって申請したいところです。

ものづくり補助金を活用した3Dプリンター導入事例

「ものづくり補助金総合サイト」では、過去の採択事例を検索して閲覧することが可能です。ここでは、3Dプリンターに関する事例を紹介しましょう。

3Dプリンターによる高度動物医療の提供

動物病院Aでは、 CT検査装置と3Dプリンターを組み合わせてペットの患部の立体模型を造り、病状の説明や術前シミュレーション等に活用する先端的な高度動物医療サービスを低価格・低リスクで提供しています。

当該院では、以前からCT検査装置の撮影データを基に3Dプリンターで患部の立体模型を製作し、診療に利用していましたが、撮影時間が長くかかってしまうという課題がありました。これを解決するため補助事業に取り組み、生産性の向上を実現しています。

3Dプリンターを導入した「金型レス」の実現

鋳造用木型や鋳造用金型の製作を行う有限会社Bでは、試作サンプル品を受注した場合、仮型製造が必要であり、時間とコストを要していました。この改善のため、石膏タイプの3Dプリンターを導入し、「金型レス」を実現しました。

さらに、繊細な造形の受注に対応するため、新たに樹脂タイプの3Dプリンターを導入、岩手大学の教授より、3DのCAD/CAMの技術指導を受け、品質の向上、製造時間の短縮につながりました。

3Dプリンターでの複雑なデザインのジュエリー製造

ジュエリー製造を行う株式会社Cでは、大量生産の受注が減少し、小ロット多品種、さらに短納期・低コストの要望に応えるため、3Dプリンターを活用した「ダイレクト鋳造」という手法を取っていました。しかし、プラチナにこの手法を用いるとさまざまな不具合が発生し、きれいに鋳造ができず、従前の方法での製造を余儀なくされていました。

そこで光造形機3Dプリンターを導入することで、複雑なデザインのジュエリーの立体造形が可能な生産体制の構築を達成しています。

3Dプリンターの導入で補助金が採択されるために

補助金にはさまざまな制度がありますが、事業計画を策定し、審査を受け、採択されるという一連の流れは共通しています。ここでは、3Dプリンターで補助金が採択されるため、事業計画書の作成に必要なポイントについて解説します。

具体的・明確に記載する

事業計画書に盛り込む内容は多岐にわたり、それぞれの内容について具体的かつ明確に記載しなくてはなりません。ものづくり補助金で記載が求められる内容は次のとおりです。

  • これまでに自社で行ってきた取組みの経緯や内容
  • 補助事業で3Dプリンターを導入しなくてはならない必要性
  • 3Dプリンターの導入にあたっての直面する課題とその解決策
  • 3Dプリンターの導入時期やスケジュール
  • 補助事業で想定しているターゲットおよびマーケットの市場規模
  • 補助事業の他社との価格的・性能的な競争優位性
  • 補助事業の目標となる売上・売上規模・量産化時の製品等の価格

これらを具体的・明確に記載するためには、客観的な数値を使って示す方法が最も有効です。現場から集めた生の情報や行政等の提供する一次データなどを活用しましょう。

定性的な希望的観測や根拠の乏しい理屈では、審査員の評価も芳しくなく、採択には至りにくいでしょう。また、文章で表現するのが困難であれば、図表や写真などを使っての説明も有効です。

審査項目・加点項目を押さえる

事業計画は、事務局より委託を受けた審査員による審査を受け、評価の高い順に採択されます。審査員が計画書のどのような点を見ているのかは募集要領に記載されており、「ものづくり補助金」では次のように審査項目が設定されています。

補助対象事業としての適格性補助対象事業の要件を満たしているとともに、3~5年の計画で付加価値額が年率平均3%以上の増加等を達成する取組みであるか
  
技術面①革新的な新製品・新サービスの開発となっているとともに、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組みであるか
②試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方が明確であるか
③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか
④補助事業実施のための技術的能力が備わっているか
事業化面①補助事業実施のための社内外の体制や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか
②事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か
③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か
④補助事業として費用対効果が高いか
政策面①地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことが期待できるか
②ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか
③単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上、経済的波及効果、経営資源の有効活用が期待できるか
④新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか
⑤ウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換、事業環境の変化に対応する投資内容であるか

これらに加え、「グリーン枠」についてのみの審査項目も設けられています。また、一定の要件を満たすことで、審査点にプラスされる加点項目もあり、「ものづくり補助金」では次のとおりです。

成長性加点有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
政策加点①創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
②パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
③再生事業者
④デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況(デジタル枠のみ)
災害等加点有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
賃上げ加点等①事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有する事業者または、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有する事業者
②被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

加点項目については、エビデンスとなる証拠書類を提出することで、最大6項目の加点が可能となっています。なお、 「デジタル枠」に限り、最大7項目の加点が可能です。

申請サポートに依頼する

補助金の採択を勝ち取るのに最も有効な手段は、その道のプロに申請サポートを依頼することです。これまで説明した申請要件等の確認や審査項目・加点項目を網羅した事業計画の策定、電子申請の手続きなど慣れていない方が行うと膨大な時間を要してしまいます。本業の支障のないスムーズな申請のためにも、専門家に頼ることも検討しましょう。

3Dプリンターの導入における補助金申請はトライズコンサルティングにお任せください!

当社トライズコンサルティングには、補助金を知り尽くした専門家が在籍しており、採択されるポイントを網羅した事業計画の策定を支援することが可能です。今回紹介した「ものづくり補助金」に関していえば、2019年・2020年は97%という高い採択実績を誇っており、クライアント様から高い評価を頂いております。補助金でお悩みの際は、ぜひ当社までご連絡ください。

まとめ

3Dプリンターの導入に使える補助金として、「ものづくり補助金」を中心に解説しました。

最先端の設備を導入することで、生産性の向上や販路拡大などビジネスを飛躍的に向上させることが可能になります。補助金のハードルは高いですが、その分投資効果も大きくなるので、ぜひ臆せずチャレンジしていただきたいと思います。

当社トライズコンサルティングでは、補助金を申請する中小企業様を支援しております。無料の相談対応も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

補助金や経営に関するご相談のご依頼は
こちらからお問い合わせください。

受付時間 9:00〜18:00(土日・祝日を除く)

関連記事
ダウンロードはこちら