「自社のホームページをリニューアルしたい」「オンライン販売を強化するため、ECサイトを立ち上げたい」そんなときに利用できる補助金である「小規模事業者持続化補助金」について解説します。
小規模事業者持続化補助金は、最高200万円までもらえる国の補助金です。ただし、ホームページ制作費用での利用にあたっては、いくつか注意点もあります。
今回は、小規模事業者持続化補助金でホームページ作成費用を申請する方法等についてご紹介します。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は国の補助金で、小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。その名のとおり、従業員数20人以下(製造業の場合)など一定の規模以下の小規模事業者または個人事業主しか申請できません。
ホームページ制作費など、ウェブサイト関連費用も販路開拓の一環として、補助金の対象となります。以降、小規模事業者持続化補助金の内容を確認していきましょう。
対象者
補助金の対象となるのは、従業員数20名以下(製造業の場合)の小規模事業者です。個人事業主でも構いません。
実績を問われないため、創業時に申請することもできます。ただし、申請書類に開業届(個人事業主)が必要になるので、創業予定での申請はできません。また医師や社会福祉法人等は対象になりません。
<小規模事業者の定義>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
なお、従業員数は常勤の社員を指すので、役員や勤務時間の短いパートやアルバイトの人数は含みません。
応募枠および補助金額
補助金額は応募枠によって異なります。もっとも一般的な通常枠は50万円、特別枠は100万円~200万円です。補助率はいずれも2/3で、かかった経費の2/3が補填されることになります。たとえば、販路開拓の事業経費に60万円かかったとすれば、そのうちの2/3の40万円が補助金として交付されます。
※赤字事業者については3/4
応募要件
応募要件には、通常枠の要件と特別枠に求められる要件があります。ここでは、もっとも一般的な「通常枠」と、ホームページを制作する機会が多い創業者を対象とする「創業枠」の応募要件を紹介します。
「通常枠」の応募要件
まずは、通常枠の応募要件について解説します。通常枠の応募要件は次のとおりです。
- 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組みであること。 あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。
- 商工会または商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること。
販路開拓のための新たな取り組みをすることが要件になります。たとえば、ホームページをリニューアルして、商品の情報発信強化や、ECサイト機能を付与して、オンライン販売ができるようにするなどの取り組みで対象になります。
また、小規模事業者持続化補助金の特徴として、商工会または商工会議所の支援を受けられることがあります。通常、商工会または商工会議所は会員組織なので、会員にならないと支援してもらえませんが、小規模事業者持続化補助金に限っては、会員にならなくても相談に乗ってもらうことができます。
「創業枠」の応募要件
創業枠は、創業者向けの応募枠です。上記通常枠の応募要件に加えて、「特定創業支援等事業」による支援を過去3年以内に受けていることが要件となります。
「特定創業支援等事業」とは、認定市区町村または認定連携創業支援等事業者が実施した創業支援の事業です。具体的には、市区町村や商工会議所等が実施する創業セミナーに参加したり、商工会議所等の相談員と一緒に経営計画を作成したりしたことなどが該当します。
創業枠で申請すると、補助金額が50万円から200万円に大幅アップします。過去に創業セミナーを受けたことがある場合などは、主催元に対象となるかどうか確認しましょう。
対象となる経費
補助金の対象となる経費は次のとおりです。
- ①機械装置等費
- ②広報費
- ③ウェブサイト関連費
- ④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
- ⑤旅費
- ⑥開発費
- ⑦資料購入費
- ⑧雑役務費
- ⑨借料
- ⑩設備処分費
- ⑪委託・外注費
ホームページ制作費は、「ウェブサイト関連費」として対象になります。ウェブサイト関連費では、経費例として次のような項目が挙げられています。
- 商品販売のためのウェブサイト作成や更新
- インターネットを介したDMの発送
- インターネット広告
- バナー広告の実施
- 効果や作業内容が明確なウェブサイ トのSEO 対策
- 商品販売のための動画制作
- 販路開拓に必要なシステム(インターネットを活用するシステム、スマートフォン用のアプリケーションなど)
ホームページ運用に欠かせないSEO対策費も考慮してくれるのは嬉しいですね。
一方、注意が必要なのは、「商品販売のための」ウェブサイト作成費のみが対象になる点です。単なる会社情報を掲載しているだけのホームページでは、販路開拓に役立たないということで対象になりません。
また、PCやタブレット、プリンター、車両などの汎用的に使用できるものやトナーなどの消耗品は対象になりません。人件費や販売を目的とした商品の仕入れ費用も対象外です。対象となる経費を見極めてから申請するようにしましょう。
申請手続き
続いて、申請方法について解説していきましょう。
GビズIDプライムアカウントの取得
まずは、電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントを取得しましょう。
申請は郵送でもできるので、必ずしも電子申請をする必要はありません。ただし、電子申請すると審査で加点されるなど有利になるため、電子申請をおすすめします。GビズIDプライムアカウントの詳細はこちらを参照してください。
申請書類の作成
アカウントが取得できたら、いよいよ申請書の作成です。
申請書は、自社概要について記載する経営計画書と、販路開拓の取り組みをまとめる補助事業計画書の2種類から構成されています。分量はA4サイズで8ページほどで、様式は小規模事業者持続化補助金のサイトからダウンロードできます。
事業支援計画書の交付
小規模事業者持続化補助金は、商工会または商工会議所の支援を受けることが要件になっています。会員になっていなくても、お近くの商工会または商工会議所に申請書類を持参して相談すれば、支援を受けた証明になる事業支援計画書を交付してもらえます。
締切前になると混み合うこともあるため、早めに相談に行くことをおすすめします。
申請
郵送または電子申請で申請書類を送付します。
審査および書類作成のポイント
小規模事業者持続化補助金は採択審査があり、応募すれば必ずもらえるものではありません。それどころか、近年の採択率は4割~6割で推移しており、申請しても半数近くが不採択となるのが現実です。
採択審査は申請書に基づき書面審査で行われます。ヒアリングや面談などが行われるわけではないため、書類に書かれてある事柄のみで判断されます。
したがって、申請書の出来具合で採否が決定すると言っても過言ではありません。どれだけ良い取り組みをしていても、書類でうまく伝わらなければ、不採択となってしまいます。以降、申請書作成のポイントについて解説します。
一貫したストーリーを意識する
自社の強みと弱みをしっかり分析し、補助事業でいかに販路開拓および売上増加につながるかというストーリーが重要です。
自社の強みは、意外に自分ではわからないものです。取引先やお客様にも聞いてみましょう。自社の現状をしっかり分析したうえで、ホームページを制作することで、どのように課題を解決するかということを意識して記載するようにしましょう。
また、「とりあえずホームページ」ではなく、自社の経営目標とホームページ制作に一貫性がきちんとあることも問われます。
わかりやすさを重視する
審査員は大量の申請書を読み込まなければなりません。そのため、わかりやすさは非常に重要なポイントです。
「文字だけでなく写真や表を入れる」「強調したいところはアンダーラインや太字を施す」など、ビジュアル面も工夫しましょう。また、専門用語は極力使わないようにしましょう。
数値を盛り込む
具体的な数値を極力盛り込むようにしましょう。特に、補助事業の成果については数値が必須です。見込みで良いので、ホームページ制作によってどれだけお客様や売上が増えるのか、数値で表しましょう。
スケジュール
2022年5月現在では、第8回の公募中で締切は2022年6月3日です。それ以降も3回の公募が予定されており、9月中旬、12月上旬、2月上旬に締切が設定されています。
小規模事業者持続化補助金でホームページ制作費を申請する際の注意点
次に、小規模事業者持続化補助金でホームページ作成費を申請する際の注意点をお伝えしていきましょう。
申請できるのは申請金額の1/4まで
残念ながら、ウェブサイト関連費で申請できるのは申請金額の1/4までです。たとえば、50万円の申請であれば、ホームページ制作費は12万5,000円までしか計上できません。
さらに、ウェブサイト関連費のみでの申請もできません。「ウェブサイトだけで良い」といった場合でも、チラシ作成費など他の広報経費や設備導入費もひねり出して申請する必要があります。
なお、もし過去に創業セミナー等に参加していれば、前述の「創業枠」として応募できる可能性があります。創業枠であれば、申請上限額が200万円なので、ウェブサイト関連費も50万円まで申請できるようになります。
単なる企業情報の掲載のみでは不可
繰り返しになりますが、単なる企業情報を掲載しただけのホームページ制作費は対象外です。企業情報だけを掲載しても売上増効果は見込めませんので、商品やサービス情報を積極的に発信するサイトにしましょう。
5年間の処分制限がある
ウェブサイトを50万円(税別)以上の費用で制作する場合、「処分制限財産」に該当し、5年間はサイト閉鎖や譲渡などが制限される場合があります。国の補助金を使って制作した以上、勝手に処分するのではなく、補助金事務局に確認してからということを覚えておいてください。
小規模事業者持続化補助金でホームページ制作費を採択されやすくするポイント
最後に、小規模事業者持続化補助金でホームページ制作費を採択されやすくするためのポイントを紹介します。
ECサイトの要素を強調する
くどいようですが、単なる企業情報の広報サイト制作では申請できません。販路開拓につながることが必須要件です。
一番わかりやすいものが「ECサイト」です。ECサイトで商品やサービスを販売するというのであれば問題ありません。たとえ商品販売が主な目的のサイトでなかったとしても、少なくとも申請書類上ではECサイトであることを強調するようにしましょう。
また、世の中の商材は必ずしもオンラインで販売できるものだけではありません。もしご自身の商材がオンラインで販売できないものであればどうするか?そういったときは、「商品情報についてお客様の声なども含めて詳しく掲載して来店誘導する」また、「問い合わせ機能を持たせて見込み顧客との双方向でのやり取りが可能になる」など、ホームページの制作でどのように販路開拓につながるかをしっかり説明しましょう。
サイトのスペックやイメージをできるだけ具体化する
ホームページは機械設備等と異なり、カタログがあるわけではないため、制作前に具体的なイメージを伝えるのは難しいかもしれません。とはいえ、よくわからないものには誰もお金を出してくれません。
制作前に具体的なイメージを作ることは難しいですが、既存サイトで類似のものを示したり、掲載する内容やサイトのスペック、機能等をできるだけ具体的に申請書に記載したりするようにしましょう。
また、サイトイメージを具体化することで、制作会社とどういったサイトにしたいかを共有することができ、納品後に「思っていたものと違う」となってしまうことを防ぎやすくなります。
費用積算は明確にする
サイトイメージを明確化することと同様に、費用積算も明確にする必要があります。時折「補助金が採択されてから業者に正確な見積もりを取るから、概算費用しかわからない」という応募者の方もいらっしゃいますが、それでは採択の可能性が低くなってしまいます。というのも費用積算の透明性、正確性も審査の重要なポイントだからです。
また、ウェブサイトの見積もりで「制作費一式」と記載されるケースがありますが、「一式」はできるだけ避けましょう。発注できるかどうかわからない段階で、制作会社に細かく見積もりを出してもらうのは気が引けるかもしれませんが、採択のためには一式記載ではなく内訳、明細をできるだけ具体的に記した見積もりを出してもらうようにしてください。
まとめ
小規模事業者持続化補助金でホームページ制作費を申請する際の注意点等について解説しました。
手続きや申請書類作成が大変そう……そのように感じられた事業主の方もいらっしゃるかもしれません。実際に、補助金申請は非常に手間がかかります。お金をもらおうと思ったらそれなりの苦労は避けられません。
しかし、何も自社だけで苦労を負う必要はありません。外部の力をうまく借りるのも一つです。特に、事業計画作成に長けた専門家の支援が得られれば、採択の可能性も高くなります。
当社トライズコンサルティングでは、補助金の申請支援を多数手がけています。中小企業の皆さまに寄り添い、一緒に事業計画を作っていくことで採択を目指します。ご相談は無料ですのでぜひお気軽にお問い合わせください。