個人事業主や小規模事業者の販路開拓などを支援してくれる小規模事業者持続化補助金。2022年度も募集が始まっています。従来の小規模事業者持続化補助金でもらえる金額は50万円(応募枠によっては100万円)でしたが、2022年度からは、一気に金額が倍増して200万円もらえる応募枠などもあります。
今回は、2022年度の小規模事業者持続化補助金「一般型」を紹介します。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金(「持続化補助金」と略されることもあります。)は、国の補助金です。小規模事業者が自社の経営を見直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
その名のとおり、従業員数20人以下(製造業の場合)など一定の規模以下の小規模事業者または個人事業主しか申請できません。販路開拓が補助金の主な目的なので、チラシやWeb作成費などの広告宣伝費などが対象になります。
2022年(令和4年)の小規模事業者持続化補助金「一般型」のポイント
2022年度の小規模事業者持続化補助金は、従来の制度から大きく改定されました。改定のポイントを解説していきます。
5つの特別枠の新設
「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」「インボイス枠」の5つの特別枠が新設されました。従来の通常枠であれば補助金上限額は50万円ですが、特別枠は最高200万円まで補助されます。
新たな加点項目
審査で優遇してもらえる加点項目に、
- 地域資源を活用する「パワーアップ型加点」
- 過疎地域の申請を優遇する「過疎地域加点」
- 赤事業者に加点する「赤字賃上げ加点」(賃金引上げ枠のみ)
などが加わります。対象となる事業者は、採択されやすくなるかもしれません。
Webサイト関連費の申請制限
従来、Webサイトに関しては、企業情報を掲載しただけのWebサイト制作などは対象外で、販路開拓に役立つもののみ広報費として申請対象になっていました。ただ、実際は何が販路開拓に役立つのか、どういった経費が認められるのか不明瞭な部分がありました。
2022年度からは、対象経費にWebサイト関連費が明記され、経費例として商品販売のためのウェブサイト作成や更新、インターネット広告などが列記されています。ただし、何が対象となるかはわかりやすくなりましたが、Webサイト関連費は、補助金申請額の1/4までという制限も新たに加えられました。
2022年(令和4年)の小規模事業者持続化補助金「一般型」の概要
それでは、2022年(令和4年)の小規模事業者持続化補助金一般型の概要を解説しましょう。
対象者
従業員数20名以下の小規模な事業者が対象であり、個人事業主でも応募できます。実績を問われないため、創業時に申請することもできます。
ただし、申請書類に開業届(個人事業主)が必要になるため、創業予定での申請はできません。また医師や社会福祉法人等は対象になりません。
<小規模事業者の定義>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
なお、従業員数は常勤の社員を指すので、役員や勤務時間の短いパートやアルバイトの人数は含みません。
補助金額
補助金の上限枠は、下記の通り「通常枠」と「特別枠」で異なります。通常枠は50万円、特別枠は100万円~200万円と手厚くなっています。補助率はいずれも2/3で、かかった経費の2/3が補填されることになります。
通常枠 | 特別枠 | |||||
賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | インボイス枠 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
補助率 | 2/3 | 2/3※ | 2/3 | 2/3 | 2/3 | 2/3 |
上限額 | 50万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 |
※赤字事業者については3/4
応募要件
応募要件には、すべての枠に共通の要件と、特別枠に求められる要件があります。応募要件を確認していきましょう。
共通の応募要件
すべての応募枠に必要な要件が下記となります。
- 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組みであること。 あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること。
- 商工会または商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
賃金引上げ枠
賃金引上げ枠では、共通の要件に加え補助事業実施期間に事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上引き上げることが必要です。すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上に引き上げることが必要です。
事業場内最低賃金とは、補助事業実施場所で働く従業員の中で最も低い時給です。地域別最低賃金または事業場内最低賃金+30円以上引き上げが達成できなければ、補助金が支払われませんので注意しましょう。
卒業枠
卒業枠の要件は補助事業実施期間に雇用を増やし、前述の小規模事業者の定義となる従業員数を超えて下記の従業員規模に拡大することです。
<小規模事業者の従業員数>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 21人以上 |
卸売業・小売業・サービス業 | 6人以上 |
後継者支援枠
後継者支援枠の要件は、「アトツギ甲子園」のファイナリストになっていることです。「アトツギ甲子園」とは、中小企業庁が開催するイベントで、アトツギ(後継者候補)が新規事業アイデアを競い合うものです。
創業枠
創業枠の要件は、過去3年以内に「特定創業支援等事業」による支援を受けていることです。「特定創業支援等事業」とは市町村の行う創業セミナーなどで、過去3年以内に該当する支援を受けていれば対象になります。
インボイス枠
インボイス枠の要件は、消費税免税事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録することです。
対象経費
経費であれば何でも認められるわけではなく、対象となる経費が次のとおり決まっています。
- ①機械装置等費
- ②広報費
- ③ウェブサイト関連費
- ④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
- ⑤旅費
- ⑥開発費
- ⑦資料購入費
- ⑧雑役務費
- ⑨借料
- ⑩設備処分費
- ⑪委託・外注費
PCやタブレット、プリンターなどの汎用的に使用できるものやトナーなどの消耗品は対象になりません。また販売や有償レンタルを目的とした商品の仕入れ費用も対象外です。
申請手続き
申請手続きの流れは次のとおりです。
GビズIDプライムアカウントの取得
まずは、電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントを取得しましょう。小規模事業者持続化補助金は郵送でも受け付けてくれるので、必ずしも電子申請をする必要はありません。
ただし、電子申請すると審査で加点されるなど有利になるため、電子申請をおすすめします。GビズIDプライムアカウントの詳細はこちらを参照してください。
申請書類の作成
続いて、申請書類となる事業計画を作成します。事業計画はA4サイズで8枚ほどの分量にまとめます。様式は小規模事業者持続化補助金のサイトからダウンロードできます。
事業支援計画書の交付
小規模事業者持続化補助金一般型は、商工会または商工会議所の支援を受けることが要件になっています。会員になっていなくても、お近くの商工会または商工会議所に申請書類を持参して相談すれば、支援を受けた証明になる事業支援計画書を交付してもらえます。締め切り前になると混み合うこともあるので、早めに相談に行くことをおすすめします。
申請
郵送または電子申請で申請書類を送ります。
審査および加点項目
補助金は採択審査があり、申請すれば必ずもらえるものではありません。採否は審査項目に基づいた書類審査のみで決定されます。また、条件を満たすことで審査が有利になる加点項目があります。概要は次の通りです。
審査
採択審査は、審査項目に基づき書類審査で行われます。審査項目は次のとおりです。
- ①自社の経営状況分析の妥当性
- 自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
- ②経営方針・目標と今後のプランの適切性
- 経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
- 経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
- ③補助事業計画の有効性
- 補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
- 地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
- 補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
- 補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
- ④積算の透明・適切性
- 補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
- 事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
※小規模事業者持続化補助金公募要領より抜粋
加点項目
新しく始まった加点項目を中心に紹介します。
パワーアップ型加点
事業計画の内容が、次の類型に即していれば加点が受けられます。
- 地域資源型:地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画
- 地域コミュニティ型:地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画
赤字賃上げ加点
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者は加点を受けられます。
過疎地域加点
過疎地域の事業者は加点が受けられます。
スケジュール
2022年4月現在では、第8回の公募中で締め切りは2022年6月3日(金)です。それ以降も、9月中旬、12月上旬、2月上旬に締切が予定されています。
小規模事業者持続化補助金「一般型」で採択されるための書き方のポイント
前述の通り、小規模事業者持続化補助金には採択審査があり、申請したからといって必ずもらえるものではありません。近年の採択率は4割~6割で推移しており、申請しても半数近くが不採択となるのが現状です。
最後に、少しでも採択率を上げるためのポイントを紹介します。
審査項目に沿って記載する
審査は、前述の審査項目に沿って行われます。言い換えれば、審査項目にないことを書いても評価されません。審査項目を網羅し、自社の強み、事業の実現可能性、自社の目標と補助計画の整合性、経費積算の透明性などを意識して記載するようにしましょう。
わかりやすさを重視する
審査員は大量の申請書を読み込まなければなりません。そのため、わかりやすさは非常に重要なポイントです。
文字だけでなく写真や表を入れる、強調したいところはアンダーラインや太字を施すなどしてビジュアル面も工夫しましょう。また、専門用語は極力使わないようにしましょう。
数値を盛り込む
具体的な数値を極力盛り込むようにしましょう。
特に、補助事業の成果については、数値が必須です。見込みで良いので、補助事業によってどれだけお客様や売り上げが増えるのか、数値で示しましょう。
まとめ
2022年度の小規模事業者持続化補助金一般型について解説しました。
従来よりも特別枠が増え、上限額が増えるなど手厚くなった半面、制度が複雑化した面があります。自社で手掛けるには少し荷が重いと感じられた事業主の方もおられるかもしれません。
そんなときは、事業計画作成に長けた専門家の力を借りるのも一つの手です。当社トライズコンサルティングでは、補助金の申請支援を多数手がけています。中小企業の皆さまに寄り添い、一緒に事業計画を作っていくことで採択を目指します。 ご相談は無料ですのでぜひお気軽にお問い合わせください。