【2023】ものづくり補助金で「リース」は利用すべき?押さえておくべきポイント

ものづくり補助金のリース

私たちがオフィスで頻繁に利用するコピー機ですが、メーカーから直接購入したという例は相当少ないのではないでしょうか?多くの場合は賃貸借、とりわけ間にリース会社が入ってリース契約を結び、毎月リース料を支払いながらコピー機を利用しているケースが多いでしょう。

コピー機も決して少額ではありませんが、ものづくり補助金で導入する設備ともなると、優れたものほど高額でしょう。それだけ高額なものであれば、初期費用を抑えて利用できるリース契約で導入し、財務面の安定を図ることはできないのでしょうか?

今回は、ものづくり補助金においてリースを利用すべきか解説していきます。

ものづくり補助金とは?その概要

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備等を支援する補助金です。

補助対象者は国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業者および特定非営利活動法人に限られます。また、補助対象事業は、一般型の「通常枠」、一般型の「低感染リスク型ビジネス枠」および「グローバル展開型」の3類型があります。

ものづくり補助金ではリースも利用することはできる

公募要領によれば、ものづくり対象補助金の補助対象経費区分のうち、「機械装置・システム構築費」および「クラウドサービス利用費」において、リースを行う費用を計上することが認められています。そもそもリースとはどのようなものなのか、そしてものづくり補助金でリースを利用するメリットや注意点について解説していきましょう。

リースとは

リース取引とは、設備の導入方法の一種であり、特定の物件の所有者であるリース会社等の貸し手が、その物件の借り手に対して、リース期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借り手がリース料を貸し手に支払う取引です。

リースの種類

リースの種類には「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」があり、さらに「ファイナンスリース」は「所有権移転ファイナンスリース」と「所有権移転外ファイナンスリース」に分かれます。

一般的に最も多く用いられるリース形態は所有権移転外ファイナンシャルリースで、次のような特性があります。

  • 借り手が、契約に基づきリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受できるとともに、リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する。
  • リース契約の諸条件に照らして、例えばリース期間満了等の条件により、リース物件の所有権が借り手に移転しない。
  • 原則として中途解約ができない。

他方、所有権移転ファイナンスリースは、リース契約の諸条件に照らして、リース物件の所有権が借り手に移転することも想定されています。リース期間が満了したら所有権が借り手に移転するというのがその一例です。もっとも、所有権移転ファイナンスリースは一般的に広くは活用されていません。

オペレーティングリースは、リース期間満了後の物件の残存価額(中古価値)をリース料から引いた金額に基づいて次のリース料を設定する方法です。つまり、中古市場性のある物件に関してのみ選択できる方法であるため、本記事における設備調達とはほぼ関係がありません。

リース料の試算

毎月リース会社に支払うリース料は、

  • リース物件の取得価額(本体価格)
  • リース料率
  • リース期間

によって決まります。

リース料率とは、リース会社の利益となる部分(金利・利息とは異なる)で、物件の法定耐用年数、借り手の業歴や業績、国内経済情勢等の要素によって、個別のリース契約で定められます。おおむねの相場はありますが、契約当事者が自由に決めるものです。

本体価格にリース料率を掛けると毎月のリース料が求められます。

たとえば、工場内の機械設備を制御し生産効率を高めるための専用ソフトウェア(法定耐用年数5年、価格800万円)を5年間リースした場合、毎月のリース料は次のように算出されます。

  • 月額リース料=8,000,000円(本体価格)×1.85%(リース料率)=148,000円
  • リース総額=148,000円×60ヶ月=8,880,000円

なお、本記事執筆時点で、5年の場合のリース料率の相場は1.85%〜1.89%ですが、この試算では1.85%を用います。

リースを利用するメリット

物件のために支払う総額は大きくなりますが、リース契約にすることによって得られる次のようなメリットがあります。

常に最新の設備を利用することができる

IT機器をはじめとして、各種の設備機器は新たな技術が導入されたものが次々に開発され、期間が経過すると急速に陳腐化が進んでしまいます。しかし、リース契約で設備を導入し、法定耐用年数に準じたリース期間を設定することにより、常に新しい設備を利用することが可能となります。

資金を効率的に運用することができる

リース契約では、導入時に多額の初期費用を負担する必要がなく、月々一定のリース料で設備導入が可能です。そのため、余裕資金を他の投資や運転資金に活用することができます。

設備の管理事務が軽減できる

機械装置等を所有した場合は、固定資産税の申告や納付、損害保険の設定や保険料の支払いなど、各種の設備管理事務手続きが発生しますが、リースの場合、これらの事務手続きはリース会社に行ってもらうことができます。

リース料全額を経費計上できる

中小企業の会計に関する指針」では、通常の賃貸借取引の方法に準じて会計処理を行えると示されている。また、リース期間中のリース料支払時には、支出する現金預金を元本と支払利息(リース料総額と本体価格の差額)の支払いに区分することとなっています。つまり、リース料は支払った全額を経費に計上できるメリットがあります。

リースを利用する際の注意点

このように、資金を安定的に用いながら補助事業を進めるに当たっては、リース取引の利用はとても有効な手段のようにも感じられます。しかし、ものづくり補助金におけるリースの利用には重大な注意点があることを見逃してはなりません。

まず、公募要領の補助対象経費区分のうち、リース契約が認められている「機械装置・システム構築費」および「クラウドサービス利用費」の説明には、いずれも「補助事業期間中に要する経費のみ」と明記されている点です。

ものづくり補助金の補助事業実施期間は、低感染リスク側ビジネス枠を含む一般型が交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)、グローバル展開型が交付決定日から12ヶ月以内(ただし、採択発表日から14ヶ月後の日まで)と定められています。つまり、この期間に支払ったリース料しか補助対象経費とならないのです。

例として、前述の、工場内の機械設備を制御し生産効率を高めるための専用ソフトウェア(法定耐用年数5年、価格800万円)を5年間リースした場合を考えてみましょう。毎月のリース料は148,000円ですから、補助事業実施期間の最大12ヶ月で支払うリース料は1,776,000円です。

そして、補助率が2分の1であれば、このリース料に対する補助金は888,000円となります。この専用ソフトウェアを仮に購入するなら、補助対象経費は8,000,000円となり、その2分の1に当たる4,000,000円が補助金となり得ます。

次に、補助事業実施期間の経費のみが補助対象となるリース契約を選択した場合、補助事業実施期間以降のリース料は申請事業者が100%負担しなければならない点です。これはたいへん大きな負担であり、補助事業終了年度以降の年月、事業計画期間の間ずっと続くことから、事業の継続性に対する大きな不安要素の一つとなってしまうことでしょう。

リース以外の選択肢

ものづくり補助金を活用する上で、リース取引を利用するのは得策でないことがおわかり頂けたでしょう。では、他のどんな選択肢・方法により同等の設備投資効果を得られるのでしょうか?

唯一挙げられる選択肢は、高額であるとしても事業に必要な設備等は積極的に購入することです。これには、申請事業者が高額な初期費用を調達しなければならないという課題や、一括に経費計上はできず、設備の法定耐用年数等に従い複数年にわたって減価償却しなければならないという一種の不都合さも伴います。

しかし、検討の結果、初期投資額として高額で適切でないとの判断となった場合には、次善の策として、別の設備による代替や、技術的計画の見直しに果断に取り組む必要があるでしょう。

まとめ

ものづくり補助金を活用する際にリースを利用するべきかどうか解説しました。

結論としては、リース取引は補助対象としては決してすすめられません。補助の対象が補助事業実施期間に限られるのに対して、リースは特定の物件をある程度の中長期にわたり利用するための契約形態だからです。

ただ、それに取って代わる手段が設備等の購入ならば、そもそも資金調達が苦しく、有効な投資を諦めざるを得ないと感じる方も多いはずです。そのような設備投資のための融資手続きに関しても、専門家のサポートを受けることが可能です。

当社トライズコンサルティングは、日頃から中小企業の経営者様と関わりながら、多方面からの支援活動に従事してまいりました。資金調達の面でもできる限りの支援を提供いたします。

また、並行して補助事業の姿を共に見直し、妥当な資金水準で実現可能な事業計画を策定できるようサポートすることも、当社は得意としています。一人で高品質な事業計画書を策定することは非常に困難なことです。そのような場合には、信頼できる専門家のサポートを受けながら申請手続きに臨むのが合理的な方法です。

当社トライズコンサルティングは、クライアント様に寄り添いながら限りなく高品質な事業計画書の策定を支援します。例えば「ものづくり補助金」では2019・2020年度採択率97%という高い補助金採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートします。

また、代表の野竿は認定経営革新等支援機関として各種補助金の申請サポートを実施しています。ぜひ当社をご活用いただき、新たな事業へ向けた確実な一歩を踏み出してはいかがでしょうか?

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