2022年6月9日(木)に、事業再構築補助金の第5回公募の採択結果が公表されました。
2022年度の募集は4回予定されており、第6回公募についても2022年6月30日(木)が申請期限となっています。残すチャンスもあとわずかとなっているため、まだ採択に至っていない中小企業様については、ここが踏ん張りどころといったところでしょうか。
今回は、事業再構築補助金の第5回公募における採択結果と、再申請の採択率を少しでも上げる手法について解説していきます。この記事が貴社の事業計画の採択率を向上させることに少しでも貢献できれば幸いです。
参照元:事業再構築補助金第5回公募の結果について(事業再構築補助金事務局)
事業再構築補助金第5回公募の採択結果・採択率
事業再構築補助金の第5回公募の応募件数21,035件のうち、厳選に審査が行われた結果、9,707件が採択されました。採択率は46.1%となり、過去最高となっています。
なお、第4回公募結果の概要より、書類不備の件数の記載がなくなりました。第1回から第3回公募時には平均して、応募件数全体の10%前後もの書類不備があったものの、事務局側の再三の注意喚起や事業者・支援側のノウハウが蓄積されたことで、審査の俎上までに至る申請件数が増加し、結果的に採択率の向上につながったものと考えられます。
また、申請類型別に採択率を見ると次のとおりです。
通常枠 | 大規模賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 緊急事態宣言枠 | 最低賃金枠 | グローバルV字回復枠 | 合計 | |
応募件数(者) | 16,185 | 13 | 21 | 4,509 | 306 | 1 | 21,035 |
採択件数(者) | 6,441 | 8 | 9 | 3,006 | 243 | 0 | 9,707 |
採択率(%) | 39.7 | 61.5 | 42.8 | 66.6 | 79.4 | 0.0 | 46.1 |
第1回公募では30.0%であった「通常枠」の採択率も、公募回を重ねるごとに徐々に上がっていき、40%近い水準になっています。
それに対し、件数こそ「通常枠」に及ばないものの「緊急事態宣言枠」、「最低賃金枠」の高い採択率が全体を引き上げた形になっています。
業種別の応募と採択割合
日本標準産業分類別で応募割合および採択割合を分析すると、過去の傾向と同様、「製造業」、「卸売・小売業」、「宿泊業・飲食サービス業」がいずれも多いことがわかります。その他の業種についても「建設業」が10%を超えているなど、幅広い業種で応募・採択がされています。
都道府県別の応募と採択状況
応募件数を見ると、単純な件数ベースでは、「東京」「大阪」「愛知」「兵庫」などの大都市圏が多くなっています。しかし、「平成26年経済センサス」に基づく、都道府県毎の中小企業数に占める応募者の比率では、「東京」「関西周辺」のほか、「熊本」「香川」でも多くなっていることがわかります。
一方、採択率を見ると、「高知県」、「新潟県」、「京都府」で高くなっています。
応募金額・採択金額の分布
応募金額および採択金額の分布を1,500万円単位で分析すると、「100〜1,500万円」がボリュームゾーンであり、全体の4割以上を占めています。応募金額においては、「1,501〜3,000万円」が次点ですが、採択金額では「1,501〜3,000万円」と「3,001〜4,500万円」がいずれも2割以上という分布になっています。
応募金額の分布を500万円単位で分析すると、2,500万円までは応募金額が高くなるにつれて件数も段々に減少し、金融機関の確認が必要となる3,000万円までの件数が増えるという傾向は過去の公募回と同様です。また、「通常枠」の補助上限額である4,000万円、6,000万円、8,000万円付近の応募件数も多くなっています。
認定支援機関別応募・採択状況
応募状況は金融機関が約8,300件と最も多くなっており、全応募件数の4割弱を占めています。次いで税理士関係が約4,000件、商工会・商工会議所が約2,800件となっています。常日頃から申請者と近い関係の機関に支援を依頼する傾向が見て取れます。
なお、採択率では、金融機関が50%弱で、「中小企業診断士」が52.9%、「民間コンサルティング会社」が50.7%です。「中小企業診断士」や「民間コンサルティング会社」は補助金の申請支援に特化しているところも多く、事業計画書作成のノウハウがあるため、採択率においては優位に立っています。
なお、「商工中金」と「公益財団法人」の採択率も50%超となっていますが、相対的に件数は少なくなっています。
事業再構築補助金第6回公募以降の変更点
続いて、2022年6月8日(水)より申請受付が開始された第6回公募以降の変更点について解説します。
過去の公募でも複数回の変更はありましたが、第6回公募では要件や事業類型が大幅に変更になっています。再申請をされる場合にも、新しい公募要領に沿った申請要件等での申請になるため、最新のものをダウンロードし、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
売上高10%減少要件の緩和
事業再構築補助金には主たる補助対象要件として、次の3つがあります。
- 売上高10%以上減少
- 「新分野展開」、「業態転換」、「事業・業種転換」、「事業再編」のいずれかに取り組む
- 「認定経営革新等支援機関」と事業計画を策定する
このうち、「売上高10%減少要件」が変更になります。第3回公募時の変更で追加された「2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」が撤廃となり、「2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高がコロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同年3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」のみが要件となりました。
この変更により、これまで申請ができなかった事業者へも門戸が開かれています。
申請類型の創設
引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象にした「回復・再生応援枠」が新設されました。補助率は中小事業者等が3/4、中堅企業等が2/3となっており、補助金額は従業員数に応じて次のとおりです。
- 従業員数5人以下:100万円〜500万円
- 従業員数6人〜20人:100万円〜1,000万円
- 従業員数21人以上:100万円〜1,500万円
申請には「売上高10%減少要件」以外に次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%以上減少していること
- 中小企業活性化協議会等から支援を受け再生計画等を策定していること
「回復・再生応援枠」で不採択の場合は、「通常枠」で再審査されます。再審査にあたっては、事業者での手続きは不要です。
なお、これに伴い、「緊急事態宣言枠特別枠」は廃止となります。加えて、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象にした「グリーン成長枠」も新設されています。補助率、補助上限額は次のとおりです。
- 中小企業者等:1/2、100万円〜1億円
- 中堅企業等 :1/3、100万円〜1.5億円
「グリーン成長枠」は、「売上高10%減少要件」は課されません。「グリーン成長枠」においては、過去の公募回で採択され、交付決定を受けて事業再構築に取り組んでいても、再度申請を行うことが可能です。
ただし、支援を受けることができるのは、過去の採択も含め2回が上限となっています。「グリーン成長枠」で不採択となった際にも、「回復・再生応援枠」と同様、「通常枠」で再審査されますが、希望する場合は、売上高等減少要件を満たすことを示す書類を提出する必要があります。
なお、これに伴い、「卒業枠」・「グローバルV字回復枠」は廃止となりました。
通常枠の補助上限の見直し
限られた政策資源でより多くの事業者を支援するため、「通常枠」の補助上限について、中小企業者等・中堅企業等ともに次のとおり見直されました。
- 従業員数20人以下:100万円〜2,000万円
- 従業員数21〜50人:100万円〜4,000万円
- 従業員数51人〜100人:100万円〜6,000万円
- 従業員数101人以上:100万円〜8,000万円
なお、補助率については、中小事業者等が2/3(6,000万円を超える部分は1/2)、中堅企業等が1/2(4,000万円を超える部分は1/3)となっています。
その他の変更点
その他の運用見直しは次のとおりです。
- 「建物費」については、原則、改修の場合に限ることとし、新築の場合には、一定の制限を設ける。
- 「研修費」については、補助対象経費総額の1/3を上限とする。
- 1者あたり各申請類型の上限額を上限として、最大20社まで連携して申請することを認める「複数企業等連携型」を新設し、一体的な審査を行う。この場合、「売上高10%減少要件」は、①各者で要件を満たすこと、②連携体合算で要件を満たすこと(ただし同月を用いる)のいずれかを満たすことで要件を満たすこととする。
- 事前着手の対象期間を現在の2021年2月15日から見直し、2021年12月20日以降とする。
事業再構築補助金不採択後に必要なアクション
2022年度の事業再構築補助金の募集は第8回公募まで予定されており、第6回公募を除けば、残りのチャンスは2回です。一度は不採択となってしまった方でも、再度申請することは可能ですので、あきらめずにチャレンジしていただきたいと思います。
ここでは、再申請の採択率を上げるために、不採択となったことがわかったらすぐに取り組んでもらいたい点について解説していきます。
不採択理由を確認する
事業再構築補助金は、不採択であった場合、その理由を事務局から教えてもらうことができます。ポータルサイトのお問い合わせの電話番号へ連絡すると、窓口担当者が審査員のコメントを読み上げてくれます。
この確認は再申請する場合、必ず行うようにしましょう。審査員のコメントは次のような内容になります。
- 形式不備:形式不備があった、またはなかった
- 不採択案件中での評価:不採択となった申請を点数の高いものから順にA・B・Cランク付けした場合の評価
- 事業化点の評価:事業化に至るまでの遂行方法・スケジュールは明確か、競合他社の動向や市場ニーズが把握されているか、既存事業とのシナジー効果が見込まれるか
- 再構築点の評価:市場ニーズや自社の強みを踏まえ、選択と集中を戦略的に組み合わせて、リソースの最適化が図られた取り組みであるか、事業再構築指針に沿った取り組みであるか、リスクの高い思い切った事業再構築であるか
コメントの内容は、それぞれ個別の内容ではなく、ある程度フォーマット化されたものではありますが、自社の計画に不足していると審査員が感じている部分を直接確認することができるため、メモや録音そして、見直せるようにしましょう。
なお、不採択理由の確認は会社の代表か担当者などの社員しか行うことができないことには注意が必要です。
他社の採択事例を分析する
事業再構築補助金のポータルサイトでは、第1回公募から応募や採択に関する情報が詳細に公表されています。せっかく事務局が膨大な数の申請をデータにまとめてくれていますので、これを活用して採択率を少しでも上げましょう。
ポータルサイトで公表されているデータは次の3つです。
- 採択結果の概要
- 新たな事業の取り組みにおける事例紹介
- 採択事例紹介「事業計画書」
「採択結果の概要」では、事業再構築補助金の公募回ごとの応募・採択についてマクロ的に情報がまとめられています。個社ごとの取り組みなどは見えませんが、補助事業全体としてどのような傾向があったのかなど、大枠の趨勢(すうせい)を掴むことができます。
自社の戦略立案や事業計画書の参考にしようと考えれば、「新たな事業の取り組みにおける事例紹介」と「採択事例紹介「事業計画書」」が活用できます。
「新たな事業の取り組みにおける事例紹介」では、採択事業者の事業計画の要点をまとめたレポートを見ることができます。採択者の取り組みをサッと確認して、ポイントを掴むのに最適です。
また、「採択事例紹介「事業計画書」」では、なんと採択者の事業計画そのものが掲載されています。これは、補助事業に慣れていない方にとっては大変有用な情報です。根拠となる一次データの取得先や課題から事業戦略立案までの記載の流れ、表現方法など参考になるところがたくさんあります。
自社と同業種や似た取り組みを行う事業者を研究することで、グッと採択が近づくでしょう。
次回の公募要領を確認する
事業再構築補助金は、新型コロナの影響によって被害を受けた中小・中堅企業を支援するために、急遽創設された制度です。そのため、回を重ねるごとに公募要領も変更され、事業者にとって利用しやすい制度になってきています。
前述したように、第6回公募から要件や事業類型等に大幅な変更が行われているため、再申請を検討されている方も確認が必要です。取り急ぎ、次回募集の申請期限日は早目に把握しておきましょう。
また、申請要件に合致せず、これまで申請したくてもできなかった中小企業様も申請が可能になっているかもしれませんので、未申請の方も一度、公募要領に目を通しておくことをおすすめします。
事業再構築補助金の採択率を高めるポイント
最後に、事業再構築補助金の再申請で採択率を高めるポイントを解説します。採択結果が公表されてから大体1ヶ月くらいで次期公募の申請期限となるため、あまり時間は多くはありませんが、一度申請までに至った努力を無駄にしないよう、ぜひ頑張ってみていただきたいです。
事業類型を変更する
不採択時に申請した事業類型を変更して再申請すると採択されやすくなる可能性があります。
「通常枠」と比較して、それ以外の事業類型は採択率が軒並み高い傾向にあります。創設されたばかりのものはその傾向が特に強く、第6回公募においては「回復・再生応援枠」や「グリーン成長枠」が狙い目といえるでしょう。
また、前述した「回復・再生応援枠」や「グリーン成長枠」の他、「大規模賃金引上枠」と「最低賃金枠」も各事業類型で不採択の場合は、「通常枠」で再審査されるため、「通常枠」で申請する場合より採択のチャンスは大きくなります。
第7回公募でも「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」の新設が予定されています。そういったものにも目を向けて、要件に合致しそうなら切り替えて申請することも有効です。
事業計画を見直す
かなりの負担とはなりますが、事業計画自体を見直す必要があります。
前述したように、事業再構築補助金においては、事務局に不採択理由を確認することができますので、指摘された点を中心に計画を修正していきましょう。見直しについては、次の点を注視すべきです。
- 自社の強みやコアコンピタンスが生かされる取り組みか
- 競合他社やニーズを踏まえた取り組みであるか
- 取り組むにあたっての課題の設定と解決は適切か
- 市場規模や収益計画の算出根拠は信憑性があるか
また、申請時から時間が経過しているため、自社やマーケットの状況も変わってきている可能性もあります。今一度事業計画を読み直し、取り組みに問題はないかということを自問してください。記載の方法がわかりづらいという可能性もあるので、採択事例を参考に表現の工夫も必要かもしれません。
ノウハウのある支援者へ依頼する
事業再構築補助金の採択率を上げる最も効果的なポイントは、実績のある支援者へ協力を依頼することです。
すでに「認定経営絵革新等支援機関・金融機関による確認書」の発行を受けている場合でも、セカンドオピニオンとして支援を受けたり、思い切って支援者を変えてしまったりすることも一つの手法です。実績のある支援者は多くのノウハウを蓄積しており、スピード感をもって支援してくれますので、本業と補助金申請を同時に遂行しなければならない中小企業様の場合、大きな助けになるでしょう。
まとめ
事業再構築補助金の第5回公募における採択結果や不採択後の再申請で採択率を上げるアクションについて解説しました。
第1回公募と比較して採択率が向上したとはいっても、いまだ半分以上は不採択となっており、多くの事業者が残りの公募回での採択を狙っています。ぜひ当記事を参考に、採択を勝ち取っていただきたいと思います。
当社トライズコンサルティングでは、そうした新たな事業展開に燃える中小企業様の支援を行っています。当社に在籍する中小企業診断士等の専門家が実現可能性の高い事業計画書の作成を支援し、採択後まで徹底サポートします。
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