ロボットは今やビジネスにおいてなくてはならない存在です。経済産業省ではロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しており、アニメに登場したり、店舗で接客を行ったりする人型のものに限りません。
今後、労働人口の減少やAIの発達に合わせて、社会で活躍するロボットがますます増加していくことは容易に想像ができ、企業の継続的発展のため、前向きに考えるべき課題といえるでしょう。
今回は、事業にロボットの導入を検討している中小企業様に対して、その費用を支援する補助金について解説します。この記事を読めば、ロボット導入に活用できる補助金の種類とその申請方法がわかります。
ロボット導入に使える補助金
初めて補助金を活用してロボットの導入を検討している方は、どのようなロボットや補助金があるのかわからないことでしょう。ここでは、ビジネスに用いられる主なロボットの種類と使える補助金について解説します。
ロボットの種類
一口に「ロボット」といってもさまざまな種類があり、「産業ロボット」と「サービスロボット」に大別されます。
「産業ロボット」とは、主に工場などの現場で利用されるロボットのことで、搬送・加工・組み立て・洗浄などを自動化して行います。一方、「サービスロボット」は受付・案内ロボットの他に、手術やレスキュー、介護などで使用されます。
両者の大きな違いは、「産業ロボット」は人の作業を代わりに行うのに対し、「サービスロボット」は人の作業を支援するという点です。
ロボット導入のメリット
ロボットを導入することで、これまで人が行っていた作業を効率的に行うことが可能になります。また、危険な作業についても人に代替することができます。生産性の向上につなげるとともに、昨今、企業に求められている「働き方改革」に即した事業運営の達成につながります。
また、ロボットは導入こそ多額の支出を伴うものの、大きな故障が発生しなければ、ランニングコストは人件費と比べて少額となる傾向にあります。そのためには、日々のメンテナンスを心掛け、少しでも不具合を感じればメーカーの保証担当と密に連絡を取り、事前に対応していくことが求められます。
補助金を活用するメリット
ロボットの導入に活用できる補助金としては、次の3種類の制度が考えられます。
- ものづくり補助金
- 事業再構築補助金
- その他自治体等の募集する補助金
補助金を活用する最も大きなメリットは、支払った経費のうち一部が支給されることで、企業の資金繰りに余裕ができることです。また、多くの補助金の申請には事業計画書の作成が必要です。
自社の事業の見直しや導入効果の見込みの分析などを行わなければならず、作成には大変な労力がかかりますが、ロボットの導入についてしっかりと考える時間を持つことができ、結果的に無駄な投資の抑制につながります。
ロボット導入に使える補助金①:ものづくり補助金
公募要領によると「中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもの」とされています。主に製造業の設備投資に利用される国の補助金で、2014年度から毎年募集されています。
ものづくり補助金の補助対象者
補助対象者は、資本金または常勤従業員数が次の表の数字以下となる会社か個人です。
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
このほか、特定事業者や組合の一部、一定の特定非営利活動法人も申請することが可能です。
ものづくり補助金の補助上限・補助率
現在、「一般型」と「グローバル展開型」の2種類の申請類型で募集され、「一般型」はさらに4種類に分かれています。それぞれの補助上限・補助率は次の表のとおりです
申請類型 | 補助上限 | 補助率 | |
一般型 | 通常枠 | 750万円〜1,250万円 | 1/2 小規模事業者等:2/3 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 750万円〜1,250万円 | 2/3 | |
デジタル枠 | 750万円〜1,250万円 | 2/3 | |
グリーン枠 | 1,000万円〜2,000万円 | 2/3 | |
グローバル展開型 | 3,000万円 | 1/2 小規模事業者等:2/3 |
「一般型」は、従業員規模により補助上限の金額が異なる点に注意ください。なお、「通常枠」と「グローバル展開型」は、小規模事業者の場合、補助率が2/3に引き上げされます。
ものづくり補助金の補助対象経費
対象となる経費は次の表に示すとおりです。
機械装置・システム構築費 | 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 1若しくは2と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費 |
技術導入費 | 本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費 |
外注費 | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの事業化に当たって必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費 |
海外旅費(「グローバル展開型」のみ) | 海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費 |
ロボット導入の経費は、「機械装置・システム構築費」で申請することができます。
ものづくり補助金の申請方法
「ものづくり補助金」の申請には、次の「基本要件」を満たす3〜5年の事業計画の策定と実行が必要になります。 なお、「通常枠」以外の「一般型」の申請の場合、申請類型ごとに設定された要件も満たす必要があります。
- 付加価値額+3%以上/年
- 給与支給総額+1.5%以上/年
- 事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
要件を満たす事業計画を策定し、公式ホームページである「ものづくり補助金総合サイト」の「電子申請システム」から申請を行います。「電子申請システム」を使用するためには、「gBizIDプライムアカウント」の取得が必須になります。取得には1〜2週間かかりますので、早目に申請しておきましょう。
ロボット導入に使える補助金②:事業再構築補助金
公募要領によると「ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するため」「思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援すること」とされています。コロナ禍に創設され、毎回2万社が応募する人気の制度です。
事業再構築補助金の補助対象者
補助対象者は、資本金または常勤従業員数が次の表の数字以下の会社か個人のうち、2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月〜3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少している事業者です。なお、「グリーン成長枠」と「緊急対策枠」については、売上減少要件は課されていません。
業種 | 資本金 | 従業員数(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチュープ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
ただし、発行済株式の総数または出資価格の総額の一定以上を同一の大企業に所有されているなど「みなし大企業」とみなされる場合、対象外となります。
事業再構築補助金の補助金額・補助率
「事業再構築補助金」には、6種類の事業類型があり、それぞれの補助金額・補助率は次の表のとおりです。
事業類型 | 補助金額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円〜2,000万円 【従業員数21〜50人】100万円〜4,000万円 【従業員数51〜100人】100万円〜6,000万円 【従業員数101人以上】100万円〜8,000万円 | 中小企業者等2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
大規模賃金引上枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数101人以上】8,000万円超〜1億円 | 中小企業者等2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
回復・再生応援枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100万円〜500万円 【従業員数6〜20 人】100万円〜1,000万円 【従業員数21人以上】100万円〜1,500万円 | 中小企業者等3/4 中堅企業等2/3 |
最低賃金枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100 万円〜500万円 【従業員数6〜20 人】100 万円〜1,000万円 【従業員数21人以上】100万円〜1,500万円 | 中小企業者等3/4 中堅企業等2/3 |
グリーン成長枠 | 中小企業者等100万円~1億円 中堅企業等100万円〜1.5億円 | 中小企業者等1/2 中堅企業等1/3 |
緊急対策枠 | 中小企業等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100万円〜1,000万円 【従業員数6〜20人】100万円~2,000万円 【従業員数21〜50人】100万円〜3,000万円 【従業員数51人以上】 100万円〜4,000万円 | 中小企業等3/4※ ※従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6〜20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3 中堅企業等2/3※ ※従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6〜20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2 |
なお、「最低賃金枠」は加点措置を行い、「回復・再生応援枠」に比べて採択率を優遇することが公募要領に明記されています。
事業再構築補助金の補助対象経費
対象となる経費は次の表に示すとおりです。
建物費 | 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費 補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費 補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費 貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費 |
機械装置・システム構築費 | 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費 1又は2と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費 |
技術導入費 | 本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 | 本事業遂行のために必要な加工や設計・検査等の一部を外注する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 | 本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 |
研修費 | 本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
ロボット導入の経費は、「機械装置・システム構築費」、導入に際しての教育訓練は「研修費」で申請できます。なお、「研修費」の上限は、補助対象経費総額の3分の1です。
事業再構築補助金の申請方法
申請には、次の要件を満たす3〜5年の事業計画の策定とその取組みが必要になります。
- 経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の取り組み
- 「認定経営革新等支援機関」と共同で事業計画を策定
- 補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定
付加価値額の要件については、「グリーン成長枠」は5.0%とされていることには注意してください。なお、補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関も参加して策定しなくてはなりませんが、金融機関が「認定経営革新等支援機関」を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。
ロボット導入に使える補助金③:その他自治体等の募集する補助金
ロボット導入に使える補助金は、各自治体等でも個別に募集されており、時期や内容はそれぞれ異なっています。ここでは、「千葉県介護ロボット導入支援事業費補助金」を例に説明します。この補助金は、公益財団法人テクノエイド協会が厚生労働省から受託し、都道府県ごとに募集されています。
千葉県介護ロボット導入支援事業費補助金の補助対象者
対象者は、千葉県内に所在する介護保険法に基づく指定又は許可を受けた民間の介護サービス事業者です。特別養護老人ホーム及び介護老人保健施設は補助対象ですが、公立施設は対象外とされています。また、住宅型有料老人ホームも対象外です。
千葉県介護ロボット導入支援事業費補助金の補助上限・補助率
補助対象となる経費の2分の1が支援されます。補助上限額は次のとおりです。
- 「移乗介護」及び「入浴支援」ロボット: 1台につき100万円
- それ以外のロボット:1台につき30万円
また、見守り機器の導入に伴う通信環境整備も、1事業所につき150万円までが補助されます。なお、千葉県の想定する予算額を超える数の申請があった場合には、過去の同制度の補助実績等を勘案して採択を決定するほか、補助金額やロボットの台数等が調整される場合があります。
千葉県介護ロボット導入支援事業費補助金の補助対象経費
補助対象となる経費は次の1、2に示すとおりです。
- 当該年度に要する介護ロボットの購入、レンタル又はリースに係る経費
- 当該年度に要する見守り機器の導入に伴う通信環境整備に係る以下の経費
- Wi-Fi環境を整備するために必要な経費
- 職員間の情報共有や職員の移動負担を軽減するなど効果・効率的なコミュニケーションを図るためのインカムを導入するために必要な経費
- 介護ロボット機器を用いて得られる情報を介護記録にシステム連動させるために必要な経費
なお、2については、1で「見守り」ロボットを交付申請する場合のみ併せて申請することが可能です。
千葉県介護ロボット導入支援事業費補助金の申請方法
申請の流れは次のとおりです。
- ロボットを納入する予定のメーカーや代理店から見積書を取得
- 見積書をデータ化し、「ちば電子サービス」より事前申請
- 千葉県による見積書の内容や申請金額等の審査
- 千葉県による補助予定金額の提示
- 必要な書類を揃え、交付申請書を書面提出
交付決定の前に発注・購入したロボットは補助対象外です。なお、「ちば電子サービス」の利用には利用者登録を行い、利用者IDの取得が必要となります。
ロボット導入での補助金申請はトライズコンサルティングにお任せください!
当社トライズコンサルティングでは、中小企業様の補助金申請を応援しています。補助金には審査員による事業計画の審査があり、それぞれの制度ごとに設定されている記載のポイントを理解していなければ採択には至りません。
当社には、業界に精通したトップコンサルタントが多数在籍しており、貴社のロボット導入による生産性向上等に貢献することができます。補助金への申請を検討されている場合は、ぜひ一度お気軽にご連絡ください。
まとめ
ロボットの導入に使える補助金について解説しました。IoTやAIの進化は日進月歩で、ビジネスの態様も大きく変わっていくことが想定されます。製造や建設、介護などの現場に留まらず、RPAなどバックオフィスでの活用も進んでおり、いかなる業種でも考えなくてはならない問題です。
当社トライズコンサルティングでは、ロボット導入をサポートできる体制が構築されており、貴社の発展に徹底してコミットいたします。無料の電話窓口もご用意がありますので、お気軽にご相談ください。