【2023】CAD導入に使える補助金は?概要と導入事例を解説

CAD導入に使える補助金

中小企業や小規模事業者にもITやDXが浸透し、さまざまな業界で業務の効率化や業績改善に向けてITツール導入が進んでいます。それを後押しするように、国や地方自治体などでは補助金などの支援メニューが組まれ、多くの企業で活用されています。

今回は、「CADを導入し、生産性を向上したい」「補助金を使い、費用を押さえてCADを購入したい」と考えられている中小企業様を対象に、CAD導入に使える補助金について解説します。

この記事を読んでいただくことで、CADに使える補助金の種類やその導入事例を知ることができます。

CAD導入に補助金は使える?

CADの導入に補助金を使うことはできます。経済産業省関連の補助金の対象となる要件は、生産性や売上高の向上に繋がる投資である場合が大半で、CADを導入することでそれらを達成することができます。

CADとは

CADとは「Computer Aided Design」の略で、わかりやすく説明すると「モノを作るための設計図を作成するソフト」です。製造業や建設業、服飾業などで使われており、住宅や自動車、家電、服など私たちの身の回りにある多くのものはCADで設計されています。

設計にCADが利用される理由は次の3つです。

  • 手書きよりも早く正確に製図が可能
  • 製図データの保管・共有がスムーズ
  • 製図の修正・再利用が簡単

CADは、汎用的なものからその利用目的に応じて専門的なものまでさまざまな種類があります。今後もその機能は進化していき、設計以外でも活躍の場が広がっていくことが想定されています。

CADのビジネス活用シーン

かつて主流であった2D(2次元)CADの時代には、紙の製図と同様のものをパソコンで作成するという使い方でした。これでも十分にCADのメリットを享受することができるのですが、近年、主流になりつつある3D(3次元)CADは、単なる設計図を作成するソフト以上の効用を企業に与えています。

NC加工機や3Dプリンタの中には、3D CADで作成した3Dデータを読み込むことで、自動的に加工を行うことのできるものもあります。2D CADでは、製図した後、加工の手順や道具を準備しなくてはならず、さらにプログラムの入力も必要でした。

3D CADに対応したNC加工機では、設計図からプログラムを自動で生成する機能を持ったものもあるため、よりスピーディな生産が可能になります。また、3D CADを用いることで実際の製品製造前にさまざまなシミュレーションをすることもできます。

たとえば、複数の部品を組み合わせる際の部品同士の干渉などを事前に確認することができるため、成功するまで試作を繰り返す必要がなく、手間やコストを大幅に削減することが可能になります。

CAD導入に使える補助金

中小企業様がCADを導入する際に使える補助金は数多くありますが、その中で、当社トライズコンサルティングが紹介する制度は次の2つです。

  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金

両補助金は生産性向上等のために導入するソフトウェアを対象にしており、中小企業が申請の対象です。「IT導入補助金」はCADのようなソフトの購入が対象となっており、原則としてハードは対象外です。

一方、「ものづくり補助金」では設備などのハードも対象となっているという違いがあります。また、「ものづくり補助金」は補助金額が高額なものの、採択ハードルが高めです。

また、「IT導入補助金」は、相対的に補助金額は少ないものの、業者と連携して補助事業に取り組めるため、補助金に慣れていない企業でも申請しやすいことが利点です。なお、いずれも2022年11月8日(火)に令和4年度第2次補正予算が閣議決定されたことを受け、2023年に募集される制度の内容が中小企業庁のホームページで公開されています。

CAD導入に使える補助金①:IT導入補助金

「IT導入補助金」は、ITツールを導入して自社の経営課題の解決し、生産性の向上や売上高のアップを目指す中小企業・小規模事業者等を支援する補助金です。2022年に「通常枠」に加え、「デジタル化基盤導入枠」・「セキュリティ対策推進枠」と複数の申請区分が創設されたり、一部ハード機器も補助対象となるなど拡充されたりしました。2023年でもさらに手厚い支援内容となる予定です。

補助対象者

補助対象となる事業者は、資本金の額や常勤従業員数のいずれかが、次表の数字以下となる中小企業です。

業種・組織形態資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

その他の法人として、一定の従業員規模の医療法人や社会福祉法人、特定非営利活動法人も対象となっています。

補助対象経費

申請区分ごとに対象となる経費はそれぞれ次表のとおりです。

申請区分通常枠デジタル化基盤導入枠セキュリティ対策推進枠
事業類型A類型B類型デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型サイバーセキュリティサービス利用料(最大2年分)
会計・受発注・決済・ECソフトPC・タブレット等レジ・ 券売機等
補助対象経費ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費、ハードウェア購入費

CADの導入は、「通常枠」・「デジタル化基盤導入枠」の「ソフトウェア購入費」や「導入関連費」、データをクラウド上で保管する場合は「クラウド利用料」で対象となります。2022年の募集では、「通常枠」の「クラウド利用料」は最大1年間でしたが、2023年より2年分に伸長されます。

補助額・補助率

申請区分ごとの補助額・補助率はそれぞれ次表のとおりです。

申請区分通常枠デジタル化基盤導入枠セキュリティ対策推進枠
事業類型A類型B類型デジタル化基盤導入類型複数社連携IT導入類型
補助額5万円~150万円未満150万円~450万円以下会計・受発注・ 決済・ECソフトPC・タブレット等レジ・ 券売機等(1)デジタル化基盤導入類型の対象経費(左記同様) (2)消費動向等分析経費(上記(1)以外の経費)50万円×参画事業者数 補助上限:(1)+(2)で3,000万円 (3)事務費・専門家費 補助上限:200万円5万円~100万円
50万円以下50万円超~350万円~10万円~20万円
補助率1/2以内3/4以内2/3以内1/2以内(1)デジタル化基盤導入類型と同様 (2)・(3)2/3以内1/2以内

2023年に拡充されたのは次の2点です。

  • 「通常枠」の「A類型」の補助下限額を5万円に引下げ
  • 「デジタル化基盤導入枠」の「デジタル化基盤導入類型」における「会計・受発注・決済・ECソフト」の補助額のうち、50万円以下の補助下限額を撤廃

この拡充により、特に小規模事業者にとって使いやすい制度になっています。

CAD導入事例

株式会社Aは宮大工の技術を承継した地域密着型の工務店です。顧客への建築提案内容の高度化・迅速化とともに、社内の作業負担軽減という課題を解決するため、3次元CADの「MADRIC・AD-1」を導入しました。

結果として、3次元で鮮やかな建物外観・内観のイメージを提案することで顧客の満足度・理解度が向上、意思決定のスピードが高まり、粗利益の改善にもつながっています。

CAD導入に使える補助金②:ものづくり補助金

「ものづくり補助金」は、その名前から製造業を対象にしていると思われがちですが、小売業やサービス業、建設業など幅広い業種の中小企業等を対象にした制度です。「IT導入補助金」同様、2022年に大幅な制度の拡充が行われました。2023年ではそれを踏襲しつつも、さらに充実した支援内容となっています。

補助対象者

補助対象となる事業者は、資本金の額や常勤従業員数のいずれかが、次表の数字以下となる中小企業です。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

また、常勤従業員数が次表の数字以下となる特定事業者の一部も対象です。

業種常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業500人
卸売業400人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)300人
その他の業種(上記以外)500人

この他、組合の一部や一定の特定非営利活動法人も申請することが可能です。

補助対象経費

対象となる経費はそれぞれ次表のとおりです。

機械装置・システム構築費①専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③①若しくは②と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費
技術導入費本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費
専門家経費本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費
運搬費運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
クラウドサービス利用費クラウドサービスの利用に関する経費
原材料費試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
外注費新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
知的財産権等関連経費新製品・サービスの事業化に当たって必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費
海外旅費(「グローバル市場開拓枠」のみ)海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費

CADの導入は、「機械装置・システム構築費」や「専門家経費」、データをクラウド上で保管する場合は「クラウドサービス利用費」で対象となります。なお、2023年は新たに「海外市場開拓(JAPANブランド)」類型のみ、「広告宣伝・販売促進費」が補助対象とされます。

補助上限・補助率

申請枠ごとの補助額・補助率はそれぞれ次表のとおりです。

申請枠補助上限額補助率
通常枠5人以下:750万円
6〜20人以下:1,000万円
21人以上:1,250万円
1/2、2/3(小規模・再生事業者)
回復型賃上げ・雇用拡大枠2/3
デジタル枠
グリーン枠エントリー5人以下:750万円
6〜20人以下:1,000万円
21人以上:1,250万円
スタンダード5人以下:1,000万円
6〜20人以下:1,500万円
21人以上:2,000万円
アドバンス5人以下:2,000万円
6〜20人以下:3,000万円
21人以上:4,000万円
グローバル市場開拓枠①海外直接投資
②海外市場開拓(JAPANブランド)
③インバウンド市場開拓
④海外事業者との共同事業
3,000万円1/2、2/3(小規模・再生事業者)

2023年に拡充されたのは次の3点です。

  • 「回復型賃上げ・雇用拡大枠」以外の大幅な賃上げに取り組む事業者に対して上乗せ支援
  • 「グリーン枠」の拡充し、3段階の補助上限を設定

なお、すべての申請枠において、補助下限額は100万円となっています。

CAD導入事例

有限会社Bはオーダーメイドの家具や建具、リフォームを手掛ける木工家具製造業者です。

近年、家具業界では木のぬくもりが感じられる製品が注目され、ニーズも多様化しています。また、需要の増加しているリフォーム業界においても、高い技術力や小ロット多品種が求められていました。

そのため、美術工芸用のCAD/CAMとNCルーターを導入し、熟練工に属人化していた切削工程の自動化を達成しています。工程が効率化された分、デザインに注力することが可能となり、作業案件数の増加にもつながりました。

CAD導入に補助金を活用する際のポイント

最後に、CAD導入に補助金を活用するポイントについて解説します。

補助金の手続きは、融資や助成金と異なる点があり、決められた手順で利用しなければ、最悪の場合受給できない可能性もあります。申請には、補助金の特徴をしっかりと理解してから取り組みましょう。

制度の内容を理解する

補助金は、制度ごとにその目的や対象とする取り組みが異なります。そのため、ある補助金では対象となるものが、他の補助金でも同様に対象となるとは限りません。

対象外と知らずに作業を進めていき、申請直前になって気づくということがないようにご注意ください。補助金にはそれぞれルールブックともいえる公募要領がありますので、一読してから手続きを開始するようにしましょう。

スケジュールを把握しておく

補助金を活用した取り組みは、その補助金で定められたスケジュールどおりに行う必要があります。たとえば、「ものづくり補助金」では約2ヶ月おきに申請期限が定められており、それまでに補助事業計画を策定し、電子申請を行わなければなりません。

そこから採択が決定するまでおおよそ2ヶ月を要し、交付決定を受けてようやく設備を購入することができます。もし、交付決定の前に設備を購入した場合、その費用は補助金の対象外となってしまいます。

また、補助事業に取組む期間や実績報告の期限も定められていますので、交付決定後すぐに補助事業に取り組めるよう採択発表直前から準備しておくことをおすすめします。

資金繰りを考えておく

補助金は計画書に記載された補助事業に取り組み、実績報告を完了した後に支給されます。そのため、設備を購入する資金を一時自社で立て替えておく必要があります。

仮に1,000万円を超えるような大きな金額の投資の場合、運転資金が枯渇してしまう可能性があるでしょう。そうならないためにも、補助金の申請段階から入金されるまでの資金繰りを検討しておく必要があります。

設備導入に係る費用だけでなく、それに伴って支出される間接的な経費も考慮して余裕をもった予算組みとし、必要がある場合にはメインバンク等とも事前にも相談しておいてください。

なお、一部の補助金では、申請する補助金額が一定以上の場合、金融機関と連携した事業計画の策定が求められることもあります。

CAD導入の補助金申請はトライズコンサルティングにお任せください!

補助金申請のお悩みは、トライズコンサルティングにご相談ください。当社に在籍しているトップコンサルは各種業界に精通しており、貴社の取り組みにベストなご提案が可能です。

また、補助金申請には明確にコツが存在し、一朝一夕で採択を受けることは困難です。当社では、長年、補助金を取り扱ってきた実績から、審査基準のポイントを押さえた事業計画の策定を支援することが可能です。

まとめ

CAD導入に使える補助金2種類の概要と導入事例について解説しました。

ITツールの進化のスピードは目まぐるしく、中小企業ではたびたび買い替えるということは困難だと思います。しかし、これまでなかなか設備投資ができなかったところに補助金を活用して設備導入を行うことで、企業本来の強みが発揮できるようになり、競合他社に対して競争優位を獲得することができるかもしれません。

当社トライズコンサルティングでは、そうした強みを持った中小企業様が躍進できるようお手伝いをさせていただいております。遠方の方には「Zoom」を用いた、オンラインでの対応もいたしています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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