【2023】アプリ開発に補助金は使える?採択事例とポイントをわかりやすく解説

アプリ開発に補助金は使える?

新型コロナウイルスの感染拡大も手伝って、世の中にデジタル化の波が押し寄せ、日本のさまざまな面での遅れが浮き彫りになりました。政府も2021年9月1日にデジタル庁が発足し、国策としてデジタル化を進めていくことが予定されています。

そうした状況の中、中小企業の経営においても、さまざまなシーンで思い切ったデジタル化を進めなくては、時代に取り残されてしまい、今後の経営の安定化を見込めないとして、各社それぞれに取り組んでおられます。

今回は、そうした所謂「DX」への取り組みのうち、業務に有用なアプリの開発を計画している中小企業様に向けて、活用できる補助金の制度や過去の採択事例、申請する際のポイントについて解説します。

この記事を読むことで、「アプリ開発したいが資金がない」「アプリ開発にどの補助金を使えば良いかわからない」「アプリ開発で補助金に採択されるポイントを知りたい」といったお悩みを解決いただけるでしょう。

アプリ開発に使える補助金一覧

中小企業向けに募集されている補助金の多くで、アプリ開発を申請することが可能です。補助金を活用することで、開発にかかるコストを抑え、その分、より効果的なシステムを導入することが可能になります。

競合他社に差をつける競争力を身につけるために積極的に活用していきましょう。ここでは、アプリ開発に活用できる補助金と、その概要を解説していきましょう。

ものづくり補助金

アプリ開発に最もおすすめの補助金が「ものづくり補助金」です。ポータルサイトで過去の採択事例を検索することで、件数は少ないもののアプリ開発の事例を閲覧することできます。

「ものづくり補助金」は、中小企業や小規模事業者が取り組む革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもので、補助率・補助上限は申請類型ごとに次のとおりとなっています。

  • 通常枠:
    • 補助率:1/2※小規模事業者等:2/3
    • 補助上限:750万円~1,250万円
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:750万円~1,250万円
  • デジタル枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:750万円~1,250万円
  • グリーン枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:1,000万円~2,000万円
  • グローバル展開型:
    • 補助率:1/2※小規模事業者等:2/3
    • 補助上限:3,000万円

また、策定・実行する3~5年の事業計画において、次の要件を満たしている必要があります。

  • 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
  • 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」については、これらの基本要件に加え、それぞれに設定された個別の要件を満たす必要があります。

IT導入補助金

IT関連の補助金として「IT導入補助金」の利用を考えられる方もおられるかもしれません。この補助金は、中小企業や小規模事業者のITツール導入に活用できる補助金であり、次のとおり3つの申請類型が用意されています。

  • 通常枠:
    • 補助率:1/2以内
    • 補助上限額・下限額:
      • A類型:30万円〜150万円未満
      • B類型:150万円〜450万円以下
  • セキュリティ対策推進枠:
    • 補助率:1/2以内
    • 補助額:5万円〜100万円
  • デジタル化基盤導入枠:
    • 補助率:
      • 5万円〜50万円以下:3/4以内
      • 50万円超〜350万円:2/3以内
    • 補助上限額・下限額:5万円〜350万円

なお、「デジタル化基盤導入枠」では、補助金では通常対象外となるハードウェア購入費も補助対象となっています。パソコンやタブレットなどの汎用機は補助率1/2以内、補助上限額10万円、レジ・券売機等は補助率1/2以内、補助上限額20万円となっています。

また、策定・実行する事業計画では事業実施による労働生産性の伸び率が要件として挙げられており、それぞれ次のように定められています。

  • 通常枠:1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上
  • セキュリティ対策推進枠:3年後の伸び率が3%以上

「通常枠」では、過去3年間に同補助金の交付を受けた事業者は1年後の伸び率が4%以上、3年後の伸び率が12%以上を求められます。また、「デジタル化基盤導入枠」では労働生産性の要件は求められていません。

いずれの申請にも、補助事業を実施するうえでのパートナーとなる「IT導入支援事業者」と協力し、事務局に事前登録されたITツールを導入する取り組みが対象になります。そのため、自社オリジナルのアプリを開発するというよりは、既存のITツールを自社用にカスタマイズして導入するといった利用がメインになります。

事業再構築補助金

アフターコロナの事業転換に資する取り組みを支援するために2021年度から募集されているのが「事業再構築補助金」です。2022年8月現在、これまで第5回までの採択結果が公表されており、「ものづくり補助金」同様、ポータルサイトで採択事例が紹介されています。

アプリ開発に関連した事業の計画書がそのまま掲載されている事例もあるため、申請の参考になるでしょう。現在、次の6つの事業類型で募集されています。

  • 通常枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:2/3※(6,000万円を超える部分は1/2)
      • 中堅企業等:1/2※(4,000万円を超える部分は1/3)
    • 補助金額:100万円〜8,000万円※従業員数に応じて上限設定
  • 大規模賃金引上枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:2/3※(6,000万円を超える部分は1/2)
      • 中堅企業等:1/2※(4,000万円を超える部分は1/3)
    • 補助金額:8,000万円〜1億円
  • 回復・再生応援枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:3/4
      • 中堅企業等:2/3
    • 補助金額:100万円〜1,500万円※従業員数に応じて上限設定
  • 最低賃金枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:3/4
      • 中堅企業等:2/3
    • 補助金額:100万円〜1,500万円※従業員数に応じて上限設定
  • グリーン成長枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:3/4
      • 中堅企業等:2/3
    • 補助金額:
      • 中小企業等100万円〜1億円
      • 中堅企業等100万円〜1.5億円
  • 緊急対策枠:
    • 補助率:
      • 中小企業等:3/4
      • 中堅企業等:2/3
    • 補助金額:100万円〜4,000万円※従業員数に応じて上限設定

対象者は、日本国内に本社を有する中小企業者等であることに加え、次の3つの要件を満たしている必要があります。

  • 2020年4月以降の連続する6ヶ月月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月~3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較し て10%以上減少していること
  • 「新分野展開」「業態転換」「事業・業種転換」「事業再編」のいずれかに取り組むこと
  • 「認定経営革新等支援機関」と3~5年の事業計画を策定すること

また、「通常枠」以外の事業類型では、それぞれ個別の別途要件も設定されており、併せて満たす必要があることには注意が必要です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者の販路開拓の取り組みを支援するための制度が「小規模事業者持続化補助金」です。

これまで紹介した補助金と比較して補助金額は少ないですが、その分、手続きや計画書の作成も簡易なため、開発資金の少なくて済む機能を絞ったアプリ開発に使いやすい制度といえます。

2022年8月現在、インボイス制度の導入や最低賃金の改定などさまざまな事業環境の変化に対応するため、次の6つの類型が募集されています。

  • 通常枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:50万円
  • 賃金引上げ枠:
    • 補助率:2/3※赤字事業者については¾
    • 補助上限:200万円
  • 卒業枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:200万円
  • 後継者育成枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:200万円
  • 創業枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:200万円
  • インボイス枠:
    • 補助率:2/3
    • 補助上限:100万円

申請要件である小規模事業者の定義は、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」によって、業種ごとに次のとおり判断されます。

  • 宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業においては5名以下
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業においては20名以下
  • 製造業その他の業種で20名以下

また、「通常枠」以外の類型では、それぞれ個別の別途要件も設定されており、併せて満たす必要があることには注意が必要です。

アプリ開発の流れ

アプリ開発にはさまざまな手法が存在します。特に、ITとは関係のない業種の場合、「何から手をつけたら良いのかわからない」とお悩みになる方もおられると思います。

ここでは、自社にエンジニアやデザイナーが在籍しておらず、外注を使ってアプリ開発する場合の基本的な流れをご説明します。

企画書の作成

まずは、どのようなアプリを開発したいのかが整理された企画書を作成します。

一口に「アプリ」といっても、現在では膨大な数がリリースされており、そのジャンルは多岐にわたっています。類似商品となり、うもれてしまわないようしっかりとリサーチをしながら、次の項目を記載していきます。

  • 開発の目的・ジャンル
  • 機能・効用
  • ターゲット
  • マネタイズ(収益化)の方法
  • ウェブ上で動作するのか、端末にダウンロードが必要か
  • 対応するOS(Windows・Mac、iOS・Androidなど)
  • リリースの希望日

機能や対応するOSを広げれば、それだけ対象ユーザーは広がりますが、その分、開発も膨らんでしまいます。また、補助金には事業期間が定められているため、補助金を利用するのであれば、リリース日もよく考える必要があります。

外注先の選定

アプリ開発の企画が固まったら、次は外注先の選定です。

アプリ開発を事業とする会社は数多ありますが、それぞれ得意分野を持っていますので、ホームページ等で実績を確認し、自社が希望している分野のアプリ開発に強い外注先を選ぶことが重要です。より良いアプリ開発のため、専門性の高いアドバイスを期待することができます。

要件定義・見積りの取得

外注先を2~3社に絞ったら、要件定義を行います。

要件定義とは、企画段階で大まかに示していたアプリのイメージを明確にすることです。実装する機能やユーザーインターフェースなど具体的な箇所を詰めていきます。企画段階でコンセプトがはっきりしているほど、要件定義がスムーズに行えます。

要件定義後、外注先に見積りを依頼します。選定した会社の比較・検討を行い、発注する1社を厳選します。なお、補助金を利用する際は、相見積りが必要な場合もありますので、選定しなかった会社の見積りも破棄せずに保管しておきましょう。

契約の締結

外注先が決まったら、いよいよ契約の締結です。アプリ開発の作業範囲や開発後のアフターフォローなど必要な事項を盛り込んだ契約を結びます。

その後、要件定義の内容を記載した要求定義書を提出し、細かなアプリの設計や作業ごとの分担・協力体制、開発費用の協議を行い、開発を開始します。

アプリ開発の採択事例

中小企業単独でのアプリの開発はハードルが高いのか、採択事例は決して多くはありません。しかし、世の中のIT化・DXの進行に合わせて、今後挑戦する中小企業も増えると考えられます。

ここでは、実際に「ものづくり補助金」を活用してアプリ開発を行った3事例を解説します。

 スマートフォンを活用した情報の収集と提供を行う糖尿病予防アプリの開発

高齢者でも簡単に利用できるケーブルテレビ向け買い物支援サービスの運用など、流通システム構築・アプリ開発に取り組むA社では、糖尿病等の生活習慣病を予防するスマホアプリを開発しました。スマホで収集した食事や運動、体調等の活動履歴を基に、健康を促進するメニューを作成し、GPS機能を活用して利用者の健康維持に必要な食品を販売している最寄りの店舗を推奨したり、医療機関や行政と連携した情報収集を行い、利用者に提供したりします。

補助期間前には要件定義や設計が完了していたため、補助事業においては、アプリを活用することで、生活習慣病予防に効果があることを実証する実験を行っています。利用者からのヒアリングにより、ユーザーインターフェースの使いやすさの確認、動作不良の有無等の確認を行い、アプリ開発にフィードバックすることで、実用化に向けて改修を繰り返しました。

業務委託料前払いサービスのシステム開発

スマホの普及や新型コロナの感染拡大を受けて注目されている業界の一つが運送業界です。特に、コロナ禍で外出の抑制が推奨され、ECやテイクアウトの需要が高まり、個人事業者の参入が増加しました。

しかし、運送業界は下請け構造が常態化しているため、末端の業者は資金繰りに問題を抱え、その結果として元請けの業者はドライバー不足に陥っていました。そうした社会課題解決を目的として、B社は協力会社と連携し、業務委託料の前払いアプリを開発、一都三県でサービスを展開しています。

ドライバーはアプリで前払い申請することで早目に売上代金を受け取ることができ、元請けの業者も下請け確保につながります。会社は利用料として売上代金の数%を受け取れる、まさに「三方良し」のサービスだといえます。

 画像認識システムと自動診断アプリケーションの開発

長年の勘で診療を行う獣医師が多い中、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づいた医療。経験則に頼る医療から脱却し、臨床研究などの科学的データをもとに、患者にとって最も有益で害の少ない治療法を選択する医療)での診療を行っているC社は、診断を自動化するプログラムの開発を行いました。

EBMは、膨大な医療情報から対応方針を検討するため、時間がかかり、患者と医師にとって大きな負担となります。今後、年間の来院数が増えることで、患者の不利益が懸念されます。

そうした課題を解決するため、検査所見と病気のデータベースを作成し、該当する病気を自動的に検索するシステムを開発しました。これにより、診療時間の大幅な削減が実現し、ヒューマンエラーの削減にも繋がることも期待されています。

補助金を利用する際のポイント

最後に、アプリ開発に補助金を活用する際のポイントについて解説します。

補助金は財源が税金となっているため、その利用ルールは非常に厳格です。制度をよく理解しておかなければ、思わぬところで開発自体も頓挫してしまいかねません。アプリ開発の特性も踏まえ、次の点を押さえておきましょう。

自社開発は補助対象外

アプリ開発を自社で行った場合の経費は、補助金の対象となりません。「ものづくり補助金」を例にすれば、公募要領に補助金と対象とならない経費として、「事業にかかる自社の人件費(ソフトウェア開発等)」が挙げられています。そのため、補助金を活用してアプリ開発を行うためには外注への依頼が基本になります。

開発時期に注意

補助金にはすべて事業期間があり、交付決定をしてから実行・支出したものでなければ補助対象とはなりません。自社内で生産性向上のために利用するものであれば問題となることも少ないですが、対外的に提供するような場合はリリースする時期に一定の制約がかかることを覚えておきましょう。

市場のトレンドや競合他社の動向などに出遅れてしまえば元も子もないという状況であれば、補助金を利用せずに開発するというのも経営戦略の一つかもしれません。

事務処理の徹底

申請時の計画書作成、事業期間中の中間報告や計画に変更がある場合の変更申請、事業終了後の実績報告と補助金では事務処理が多く発生します。

また、それぞれの段階において財務諸表や見積り、請求書、領収書などの添付書類も必要になるため、補助事業を進めながらもそれらの書類を整理しておくことがスムーズに補助金の給付を受ける秘訣です。

補助金は後払い

補助金は、原則として後払いです。そのため、一旦はアプリ開発のための資金を自己資金や借入などで確保しておかなければなりません。

せっかく補助金の採択を受け、アプリ開発に着手しても、途中で資金が枯渇してしまえば断念せざるを得ません。申請時点で資金繰りをしっかりと計画し、事前にメインバンク等にも協力を仰ぐことが重要です。

まとめ

アプリ開発における補助金の活用について解説しました。

中小企業のIoT化やDXの推進による競争力の強化は、国策として取り組まれており、今後もさまざまな支援制度が作られることが見込まれます。どのような業種であってもこれから生き残っていくためには、取り組まなければならない喫緊の課題となっているため、今回お伝えしたことを参考にぜひチャレンジしていただきたいと思います。

当社トライズコンサルティングでは、採択率97.0%の補助金申請のプロが貴社をお手伝いいたします。初回相談は無料となっていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

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