【2023】小規模事業者持続化補助金の書き方は?採択されるためのポイント&コツ

小規模事業者持続化補助金の書き方

補助金の申請を考えている経営者にとって、最もネックとなることが計画書などの申請書類の書き方です。フォーマットは用意されているものの、記載の自由度が高いため、何を書いたら良いのかわからず、戸惑ってしまう方も多いと思います。

補助金の申請書類には、それぞれ押さえておかなければならないポイントがあり、その点について記載がなければ、せっかく時間をかけて書いても不採択となってしまう可能性が高くなります。

今回は、小規模事業者持続化補助金の書き方のポイントやコツについて説明していきます。長い文章を書くのが苦手な方でも、これから説明する要点を一つひとつ押さえていくことで、採択されやすい申請書を書くことができます。

小規模事業者持続化補助金とは

まず、小規模事業者持続化補助金について解説します。当補助金は、2014年から毎年募集されており、中小企業の補助金申請の登竜門的な制度になっています。

趣旨

公式ガイドブックによれば、小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けて経営計画を作った上で行う販路開拓や生産性向上を支援する補助金と記載されており、主にチラシの作成やECサイトの構築などの販路開拓の取り組みを補助対象としています。

対象・要件

名称のとおり、小規模事業者であることが申請の要件となっており、従業員の数によって次のとおり定義されています。

  • 宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業:5名以下
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20名以下
  • 製造業その他の業種:20名以下

一般的に補助率2/3、補助上限50万円となっていますが、過去には災害やコロナ対策などで上乗せもありました。対象となる経費の範囲は広く、新商品・サービス宣伝のためのチラシ作成や看板設置費に加え、生産性向上のための設備投資費なども認められています。

提出する書類

小規模事業者持続化補助金の申請に必要となる申請書類は次のとおりです。

  1. 小規模事業者持続化補助金に係る申請書
  2. 経営計画書
  3. 補助事業計画書
  4. 事業支援計画書
  5. 補助金交付申請書
  6. 宣誓・同意書

このうち、最も重要になってくる書類が「経営計画書」と「補助事業計画書」の2つです。その他の書類は、企業の名称や住所など記載する内容が明確であったり、商工会議所や商工会が作成する書類であったりするため、作成にほとんど手間を要しません。採択を受けるためには、「経営計画書」と「事業支援計画書」の書き方を学び、しっかりと作り込むことが必要です。

小規模事業者持続化補助金の計画書の書き方のポイント

「経営計画書」と「事業支援計画書」のそれぞれの書き方のコツを説明する前に、いずれの計画書においても統一的に押さえてもらいたいポイントについて解説します。

審査の観点を押さえる

補助金は、申請した後事務局による審査を受け、その採否が決定されます。小規模事業者持続化補助金についても同様で、審査される項目が公募要領に「審査の観点」として記載されています。「審査の観点」は次の3つに大別されています。

  1. 基礎審査
  2. 書面審査
  3. 政策加点審査

この中で、「経営計画書」と「補助事業計画書」の内容の審査について記載されているものは「書面審査」です。計画書内に次の項目の記載があるか、その内容に妥当性・実現性があるのかなどが審査されます。

  1. 自社の経営状況の分析の妥当性
  2. 経営方針・目標と今後のプランの適切性
  3. 補助事業計画の有効性
  4. 積算の透明・適切性

これらの項目につき、加点審査が行われ、総合的な評価が高い順に採択されます。つまり、そもそもこれらの項目に合致する記載そのものがなければ、採択は望めないということになります。

まずは公募要領をよく確認し、「審査の観点」を押さえておきましょう。

計画に一貫性を持たせる

計画書内で最終的に導き出される経営方針が、市場の動向や顧客のニーズ、競合の状況、自社の経営資源などの分析に対して違和感のない内容である必要があります。「計画にストーリーを持たせる」とも言い換えられ、計画の信頼度が上がり、、採択される可能性が高くなります。

たとえば、小説でも突然、登場人物が増えたり、説明もなく場面転換してしまうと読者は混乱したりしてしまいます。同様に、分析からは読み取れない市場・顧客層をターゲットに設定した場合や自社にない技術・ノウハウを起因とした製品・サービスでは、審査員は経営方針の適切性を感じることはできません。

計画書を読み進めていくことで、分析から経営方針までをスムーズに理解できるよう、一貫性を持った流れるような構成とする必要があります。

写真や図表を盛り込む

計画書は基本的に文章で記載しますが、それだけでは審査員に伝わりづらいこともあります。そんなときは文章にこだわらず、写真や図表を入れることも有効です。店舗の内装・外観や商品の写真、売上の表グラフや事業実施のスケジュール図など、視覚的に表現することで、審査員により理解してもらいやすくなります。

しかし、画像や図表をあまり貼りつけ過ぎてしまうことも禁物です。計画書のファイル容量が重くなり、補助金申請システムの「jGrants」へのアップロードにZip形式に圧縮するなどの対応が必要になります。また、肝心の計画の中身が薄くなってしまうため、盛り込む際には全体のバランスを考えて、ほどほどにしておきましょう。

商工会議所・商工会の助言を受ける

小規模事業者持続化補助金の相談先は、商工会議所や商工会です。商工会議所・商工会では、会員・非会員を問わず、申請の要件の確認や計画書の内容についてアドバイスをもらうことができます。自分なりに申請書類を作成したら、お近くの商工会議所・商工会を検索し、早目に相談に行きましょう。

商工会議所・商工会で計画書等に対しての助言を受けたら、申請に必須の書類となっている「事業支援計画書」を発行してもらうことができます。期限近くになると、他の企業の相談が増えることが予想されるので、余裕を持って相談するようにしてください。

小規模事業者持続化補助金の書き方のコツ:経営計画

ここからは、小規模事業者持続化補助金の計画書の具体的な書き方のコツについて解説していきます。

まず「経営計画書」に関して、後述する「補助事業計画書」の内容も包括した全社的なプランを記載していきます。全体の構想をしっかりと練って作成しなければ、後に続く、「補助事業計画」との整合性が取れず、計画に一貫性を持たせることができません。計画書全体を通して、理論的な構成になっているか注意しながら記載していきましょう。

企業概要

計画書を審査する審査員は、貴社のことについては何も知らないということを念頭に置いてください。そのため、初対面の相手に自社を紹介するつもりで次のような内容を記載していきます。

  • 創業・設立年月日、所在地
  • 経営理念、事業内容
  • 役員・従業員数
  • 営業時間、定休日
  • 主な取引先・ターゲット、商品・サービスの内容
  • 売上・利益推移、商品・サービスごとの売上・利益貢献度

これら以外でも、必要な情報は漏らさず記載してください。必要となる情報とは、経営方針に説得力を持たせるための、経営資源や目標の達成のため、解決すべき課題に関連した情報になります。

顧客ニーズと市場の動向

次に、顧客ニーズや市場の動向などの外部環境の分析を行っていきます。この項目と後述する「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」においては、フレームワークの一つである「3C分析」が有効です。

「3C分析」とは、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3要素を分析することにより、市場や顧客にとって価値のある商品やサービスを提供するマーケティング手法です。このうち、「市場・顧客(Customer)」と「競合(Competitor)」の要素について分析します。

  • 市場・顧客(Customer):市場規模、消費動向、ニーズ・トレンドなど
  • 競合(Competitor):競合のシェア・強み、差別化要因、新規参入・代替品など

これらの項目について、過去から現在の推移に加えて、今後どのように変化していくことが予想されるのかという観点で記載していきます。そうすることで、自社が今後取組むべき事業領域が明確になり、経営方針のエビデンスとなります。

自社や自社の提供する商品・サービスの強み

この項目では、経営方針を実現するため、自社の「強み」となる差別化要因を記載していきます。前述した「3C分析」の中の「自社(Company)」の分析を行っていきます。

  • 自社(Company):自社の商品・サービス、ビジネスモデル、情報・ノウハウなど

単なる自己評価でなく、競合他社と比較して優れている点や第三者からの評価・評判などの事実をもとに記載してください。それら「コア・コンピタンス」を源泉にした経営方針は実現可能性が高い計画になり、採択可能性も高まります。

経営方針・目標と今後のプラン

これまで分析してきた情報をもとに、今後の経営方針を練っていきます。これには「クロスSWOT分析」を活用します。

自社の内部環境を「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部環境を「機会(Opportunitey)」と「脅威(Threat)」の4つ要素に分け、目標に対するプラスの要因とマイナスの要因を抽出するフレームワークが「SWOT分析」ですが、「クロスSWOT分析」ではそこからさらに踏み込み、4つの要素を組み合わせることで、選択すべき自社の事業戦略を明確にします。

「3C分析」で分析した「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」を外部環境の「機会(Opportunitey)」と「脅威(Threat)」に、「自社(Company)」を「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」に振り分け、それらを掛け合わせることで経営方針を導き出します。

 強み(Strength)弱み(Weakness)
機会(Opportunitey)①「強み」を生かして「機会」を最大化する②「弱み」を補って「機会」を掴む
脅威(Threat)③「強み」生かして「脅威」を切り抜ける④「弱み」を補って「脅威」を最小化する

4つの組み合わせのうち、小規模事業者が検討すべきことは、次の2点です。

  • ①「強み」を生かして「機会」を最大化する
  • ③「強み」生かして「脅威」を切り抜ける

基本的には、「強み(Strength)」を生かして「機会(Opportunitey)」を最大化するか、「脅威」を切り抜けるビジネスモデルを選択します。そのため、「3C分析」の「自社(Company)」の分析でも「弱み(Weakness)」の分析には力を入れていませんでした。なぜなら、経営資源の乏しい小規模事業者にとって「弱み(Weakness)」の補填は際限がなく、それよりも尖った「強み(Strength)」を活かして、ニッチなマーケットを狙った方が事業化の可能性が高いためです。

また、経営方針に沿った取り組みを行うにあたって、想定される課題や解決策も列記しておきましょう。これまでに経験のない新しい事業を行うため必ず課題があるはずであり、この記載がないと審査員に計画が練られていないという見方をされる可能性もあります。課題の解決策の一つとして、補助金を使った取り組みを記載し、「補助事業計画」につなげるという流れがベターです。

最後に、事業スケジュールの見通しを記載します。プロジェクト管理で使用される「ガントチャート」が見やすく、直感的に理解しやすいためお勧めです。取組みを細分化し、なるだけ詳細なスケジュールを作りましょう。

小規模事業者持続化補助金の書き方のコツ:補助事業計画

続いて、「補助事業計画」について解説していきます。ここでは、「経営計画書」で導き出した経営方針や目標を達成するため、具体的にどのようなことに取り組むのか記載していきます。

補助事業で行う事業名

取り組む補助事業の名称を30字以内で記載します。あまり難しく考えず、一見して取組む内容がわかるような名称にしましょう。

販路開拓等(生産性向上)の取り組み内容

「クロスSWOT分析」で決定した経営方針をどの様に具体的に形にしていくかということを検討します。こちらは「4P分析」の切り口で考えます。経営方針で設定したターゲットに対し、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販売促進(Prmotion)」の4要素の観点から検討し、取り組む事業を具体化していきます。

  • 製品(Product):提供する商品・サービスの強みやコンセプト
  • 価格(Price):市場価格や競合他社との比較、利益の確保できる価格設定
  • 流通(Place):ターゲットに即した販売場所、コストを抑えた流通経路の確保
  • 販売促進(Prmotion):使用する宣伝媒体、プロモーションイメージ

効果的なマーケティングを行うためには、「4P分析」だけでなく「4C分析」も行う必要があります。「4P分析」が企業側の目線であるのに対し、「4C分析」は消費者側の目線で分析され、2者間の整合性がとれているか慎重に確認しながら戦略を決定していくことで、効果的なマーケティングを行うことができます。

業務効率化(生産性向上)の取り組み内容

この項目への記載は任意です。「販路開拓とあわせて行う業務効率化(生産性向上)の取組を行う場合には、業務効率化(生産性向上)取り組みについても、補助対象事業となり、記載が必要になります。

業務効率化には、「サービス提供等プロセスの改善」および「IT利活用」が挙げられており、具体的な書き方のイメージは次のとおりです。

  • 従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のために店舗を改装する
  • 新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する

あくまでも副次的な支援となるため記載がなくても構いませんが、記載して採択を受けた場合には、定められた経費区分の範囲内で補助対象となります。「販路開拓等(生産性向上)の取組内容」に販路開拓等の内容の記載が無く、この項目の記載のみでは申請できませんので注意が必要です。

補助事業の効果

この項目では、これまで説明してきた「補助事業計画」への取り組みにより、具体的にどのような効果を見込めるのかについて記載していきます。

ここで必ず記載しておかなければならないことは、「売上が向上する」ということであり、これが最も重要です。なぜなら、国にとって補助金の給付は企業に対する投資であり、将来的には税金として回収をしたいと考えているからです。

そのため、数値で3〜5年の売上推移を示す必要があります。収益の見通しについては、既存事業と新規事業を分けて記載し、これまで分析してきたデータから根拠を持って積算することで、確からしい数値を算出することができます。

加えて、補助事業を経て、企業がどのような将来像を描いているのかも記載しておきましょう。

まとめ

小規模事業者持続化補助金の計画書等の書き方について解説しました。

日頃から長い文章を書くことに慣れていない方の場合、自分の想いばかりになり、他人には伝わりづらい内容になってしまいがちです。特に、経営者の方の場合は、自社や自社の商品・サービスへの思い入れが強いため、その傾向が顕著です。作成してみたら、一度会社とは関係のない第三者に見てもらうことをおすすめします。

当社トライズコンサルティングでは、補助金申請のプロである中小企業診断士などの専門家が在籍しており、多くの経営者を悩ませる計画書の書き方についてもノウハウを保有しています。ご相談は無料ですので、ぜひ当社へお気軽にご連絡ください。

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