【2023】小規模事業者持続化補助金は「美容室」でも使える?メリット・採択事例・注意点

小規模事業者持続化補助金美容室

厚生労働省が毎年公表している「衛生行政報告例」によれば、2020年の美容室の店舗数は前年比1.4%増の25万7,890軒となっています。この傾向は毎年のもので、直近5年間では約1万5,000軒増加しています。

一方、日本フランチャイズチェーン協会による「日本コンビニエンスストア統計調査年間集計」によると、2020年のコンビニエンスストアの店舗数は5万5,924軒であり、美容室はコンビニの約4.5倍以上存在するということになります。どこでも当たり前に見かけ、駅周辺やオフィス街では徒歩1分圏内に複数店舗が密集していることも珍しくないコンビニよりも多いことに加え、少子高齢化や人口減少により、美容室はこれまで以上に競争が激化していくと考えられます。

今回は、そんな美容室の小規模事業者持続化補助金の活用による経営改善について解説していきます。

小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金は、「小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取り組み(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・ 開発等)や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助する」国の補助金です。2014年から補正予算として制度化されており、毎年数多くの小規模事業者が申請しています。

例年募集されている内容は、補助上限は50万円で、申請に必要な計画書もA4サイズの用紙6〜8枚程度となっており、補助金を活用したことがない小規模事業者が初めて申請する補助金として手ごろな制度です。なお、申請等の相談先が地域の商工会議所・商工会となっていることも特徴の一つです。

対象事業者

申請の対象は、制度の名称のとおり小規模事業者となっています。「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」 に業種ごとに常時使用する従業員の数によって定義されています。

  • 宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業においては5名以下
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業においては20名以下
  • 製造業その他の業種で20名以下

なお、資本金等が5億円以上の法人に直接的に、または間接的に100%の株式を保有されていないことや、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないことなど、実質的に小規模事業者と呼べない事業者も対象外となっています。

美容室は「宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業」にあたるため、従業員数5名以下が要件となります。厚生労働省の「生活衛生関係営業経営実態調査」によると、2015年末における1施設当たりの平均従業者数は5.4人と公表されています。この数には常時使用する従業員にはあたらない事業主や役員が含まれているため、複数店舗展開していない美容室の多くは補助対象であることがわかります。

対象となる取り組み・経費

小規模事業者持続化補助金の対象となる取り組みは、次のいずれの要件も満たすものである必要があります。

  1. 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組みであること。あるいは、販路開拓等の取り組みとあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること。
  2. 商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  3. 以下に該当する事業を行うものではないこと
    1.  同一内容の事業について、国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)する他の制度(補助金、委託費等)と重複する事業
    2. 本事業の終了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれない事業
    3. 事業内容が射幸心をそそるおそれがあること、または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなる

  4. 共同申請の場合には、連携する全ての小規模事業者等が関与する事業であること

従業員の作業導線の確保のための店舗改装や労務管理システムのソフトウェアの購入などの業務効率化(生産性向上)のための取り組みは単独では補助対象とならず、販路開拓等の取り組みとあわせて行う場合のみ補助対象となります。

これらを前提に、補助対象となる経費は次のとおりです。

  1. 機械装置等費:補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費
  2. 広報費:パンフレット・ポスター・チラシ等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費
  3. ウェブサイト関連費:ウェブサイトや EC サイト等の構築、更新、改修をするために要する経費
  4. 展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談 会等を含む):新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費
  5. 旅費:補助事業計画(様式2)に基づく販路開拓(展示会等の会場との往復を含む。)等を行うための旅費
  6. 開発費:新商品の試作品や包装パッケージの試作開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費
  7. 資料購入費:補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入するために支払われる経費
  8. 雑役務費:補助事業計画(様式2)に基づいた販路開拓を行うために必要な業務・事務を補助するために補助事 業期間に臨時的に雇い入れた者のアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費
  9. 借料:補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費
  10. 設備処分費:販路開拓の取り組みを行うための作業スペースを拡大する等の目的で、当該事業者自身が所有する死蔵 の設備機器等を廃棄・処分する、または借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費
  11. 委託・外注費 :上記1から10に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)・外注するために支払われる経費(自ら実行することが困難な業務に限ります。)

なお、2022年度の公募では、「ウェブサイト関連費」について次の制限がありますのでご注意ください。

  • 補助金交付申請額の1/4が上限
  • ウェブサイト関連費のみによる申請不可

それぞれ区分ごとに対象となる経費例と対象とならない経費例が公募要領に記載されていますのでご確認ください。これら以外の経費は対象外となり、補助金の額は対象経費に補助率を乗じた額の合計となります。ただし、設定された補助上限額を超えることはできません。

補助率・補助金額

2022年3月29日から公募されている小規模事業者持続化補助金には、例年、公募されている補助率が2/3、補助上限額が50万円の「通常枠」に加え、今後複数年にわたり事業者が相次いで直面する働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度の導入等の制度変更への対応を支援するため、5つの特別枠が設けられています。申請枠ごとの補助率と補助上限額は次のとおりです。

申請枠補助率補助上限
通常枠2/350万円
賃金引上げ枠2/3(赤字事業者については3/4)200万円
卒業枠2/3200万円
後継者支援枠2/3200万円
創業枠2/3200万円
インボイス枠2/3100万円

「特別枠」の補助上限は、「インボイス枠」が100万円、それ以外が200万円と大幅に引き上げられました。また、補助率はいずれも2/3となっていますが、「賃金引上げ枠」のうち、赤字事業者については3/4に拡充されます。

公募スケジュール

2022年度に公募されている小規模事業者持続化補助金の申請受付の締め切りは次のとおりです。確定している初回締め切りから約3ヶ月おきに設定され、合計4回の公募が予定されています。

なお、本補助制度は2021年度からの継続となっているため、初回は第8回公募となっています。

  • 第8回:2022年6月3日(金)
  • 第9回:2022年9月中旬
  • 第10回:2022年12月上旬
  • 第11回:2023年2年下旬

申請に際しては、商工会議所・商工会の発行する「事業支援計画書」の添付が必須となります。各公募回における発行受付の締め切りは次のとおりです。なお、これらの予定は変更される場合があります。

  • 第8回:2022年5月27日(金)
  • 第9回:原則2022年9月上旬
  • 第10回:原則2022年12月上旬
  • 第11回:原則2023年2月中旬

発行には時間を要す場合もありますので、計画書を作成したら、お早目にお近くの商工会議所や商工会にご相談ください。

小規模事業者持続化補助金を美容室が活用するメリット

前述したように、美容室の店舗数は年々増加している上に、顧客は減少傾向にあるため、美容室経営には販路開拓や生産性向上の取り組みが常に必要になります。ここでは、美容室が小規模事業者持続化補助金を活用するメリットについて解説します。

>新規顧客の獲得につなげられる

小規模事業者持続化補助金の主な趣旨は、小規模事業者の販路開拓の支援です。チラシ広告やLP(ランディングページ)などのWebサイトの構築によって自社や自社のサービスをPRし、新たな顧客を獲得することができます。

また、顧客の再来店を促すため、バリアフリー化などターゲットにとって居心地の良い店舗へ改修する経費にも充てることもできます。

客単価の向上につなげられる

小規模事業者持続化補助金は、新たなサービスを提供するための機械装置を導入する設備投資資金に活用することもできます。顧客の髪に関する課題を解決するための新たなサービスをメニューに加えることで、客単価のアップが期待できます。

また、時短など業務の効率化につながる設備を導入することで、生産性の向上・利益率の改善も図ることができます。

競合との差別化を図れる

改装による居心地の良い店舗や新たなサービスをメニューの提供、またそれらを地域住民に宣伝することで、近隣の競合との差別化を図ることが可能になります。補助金の活用により、小規模事業者には負担の大きい思い切った投資を行うことが可能になり、大幅な事業拡大を行うことで、ライバル店舗に差をつけることができるでしょう。

美容室の小規模事業者持続化補助金の採択事例

次に、美容室の採択事例を紹介していきましょう。

小規模事業者の多い美容室では、以前から多くの採択がされており、2021年度に公募された「低感染リスクビジネス枠」でも、顧客と「三密」の状態でしかサービス提供が困難な業種であるという課題を解決するため、さまざまな取り組みが行われました。なお、紹介するものは過去の小規模事業者持続化補助金において採択を受けた事例であり、同内容の申請の採択を担保するものではありません。

シャンプー台等の導入による要介護者の受け入れ態勢の強化

要介護者対応の角度調整付きシャンプー台およびリクライニング付き軽量型椅子を導入し、車椅子利用者が椅子に座ったまま洗髪できるようにサービスの提供方法の改善を行った事例です。この結果、車椅子利用者以外の顧客も、洗髪時に楽な姿勢をとってもらうことが可能となり、今後増加すると見込まれる高齢層の獲得も期待できるようになりました。

また、登録した顧客に対する無料送迎サービスをNPO法人と連携して行い、積極的に要介護者や高齢者を受け入れることで、特に70代以上の新規顧客を獲得し、売上の拡大につなげています。

マイクロバブル導入による客単価の向上

顧客の高齢化が進行し、徐々に固定客が減っている状況の中、新たにマイクロバブル発生装置を導入し、洗髪などに使用することで白髪など高齢者の髪の課題解決につながることをPRし、客単価の向上に取り組んだ事例です。

また、マイクロバブルに炭酸を組み合わせた炭酸ヘッドスパや技術を持ったスタッフによるフェイスエステを新たにメニューに加えることで、今後は地域の若年層も新たに顧客として取り込み、固定客の平均年齢引き下げることで、事業の持続的発展を計画しています。

スタッフ動線とソーシャルディスタンスの確保

顧客同士またはスタッフと顧客の接触回避による感染対策は、コロナ禍の美容室にとっては喫緊の課題となっていました。そうした状況の中で、店舗改装を伴うセット面の増設を行うことで、顧客同士に2m以上のソーシャルディスタンスを確保することを達成した事例です。

また、バックシャンプー台の導入により、洗髪時のスタッフと顧客の密着状態を回避し、安心して来店できる美容室として顧客に訴求しました。加えて、改装に伴いスタッフ動線も改善され、生産性の向上にも寄与しています。

小規模事業者持続化補助金申請の際の注意点

最後に、美容室が小規模事業者持続化補助金を申請する際の注意点をお伝えします。

接客業であり、経営者自身も現場に出る機会の多い美容室では、特に時間の確保がネックになります。相談先である地域の商工会議所や商工会、民間のコンサルタント会社などをうまく活用しましょう。

事務作業が煩雑

小規模事業者持続化補助金を申請する際には、計画書を作成する必要があります。

自社の概要から市場・顧客、競合他社の分析を行い、そこから論理的に事業戦略を立案して、計画書に記載していきます。必要に応じてグラフや表の挿入も必要となり、日頃からパソコンで文章を書くことに慣れていない場合、少しハードルを高く感じるかもしれません。

必ず採択されるわけではない

補助金は申請後、審査員による審査が行われ、採択か不採択が決定されます。小規模事業者持続化補助金の採択率は30%台のときもあれば、80%に近いときもあり、その時どきの予算規模や応募数によって増減します。

惜しくも不採択となってしまった場合は、費やした時間も無駄になってしまうため、申請には万全の準備で臨みましょう。なお、補助対象となるのは採択され、交付が決定した後に支出した経費のみとなり、それ以前に支出した経費は補助金の対象外となるため注意が必要です。

一部自己負担あり

補助金は、事業に要した経費がすべて支給されるわけではありません。2022年度に公募されている小規模事業者持続化補助金の自己負担は、赤字事業者が「賃金引き上げ枠」に申請した場合は1/4、それ以外の場合は1/3になり、申請する補助金の額が大きければ大きいほど、自己負担の額も大きくなります。

加えて、消費税課税事業者の場合、対象経費の消費税部分も自己負担となり、そこまで含めると、実質的な補助率はもう少し低くなります。

原則として後払い

補助金は採択が決定された後、広告宣伝や機械装置の導入などの投資を行い、それらの取り組みによって売上をあげ、その成果を書類にまとめて国に報告することで補助金が支給されます。

そのため、事業に要する費用の全額を一時立て替えておく必要があり、資金繰りを事前によく考えておく必要があります。場合によっては、金融機関へ融資の相談も検討しなくてはならないでしょう。

また、報告書には、支払った経費ごとに見積書や請求書を添付する必要があります。それらの書類整理も、ボリュームのある作業です。

まとめ

美容室の小規模事業者持続化補助金の活用による経営改善のポイントについて解説しました。

美容室は小規模な事業者が多く、広告宣伝など制度の趣旨に合致した取り組みによる売上増を見込みやすいため、比較的申請のしやすい業種だといえるでしょう。その反面、申請のライバルも多いということですので、しっかりと計画を練って申請に臨む必要があります。

当社トライズコンサルティングには、中小企業診断士等の資格を持った補助金申請のプロが在籍しており、美容室の小規模事業者持続化補助金の採択実績も数多くあります。経営計画の策定から採択後の実績報告まで忙しい美容室経営者を包括的にフォローします。

ご相談は無料ですので、ぜひ当社までお気軽にご連絡ください。

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