【2022】ものづくり補助金を農業で活用するには?対象経費・採択事例・採択のポイント

農業向けのものづくり補助金

近年、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用し、省力・労力軽減化や高品質な農産物の生産を実現する等の新たな農業であるスマート農業が急速に広がっています。スマート農業の発展のおかげで農作業の負担が軽くなったり農作物の生産性が上がったりしていることから、新型トラクターやドローン等の導入を検討している農家さんは多いと思います。

設備投資にはそれなりのお金が必要になってきますが、自己資金だけではなく補助金を上手に活用すると、スムーズにスマート農業へ移行できるようになります。農業で使える補助金はたくさんありますが、今回は最大1,000万円という大きな補助金額が特徴の「ものづくり補助金」について、具体的には何が補助の対象となるのか、採択されるためにはどのような点に気をつければ良いのかなどについてわかりやすく解説していきます。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金は、中小企業庁が実施している補助金制度であり、

  • 新商品の開発
  • 新サービスの開発
  • 生産プロセスの開発や生産性の向上

など、革新的な取り組みを行う中小企業等を支援することが目的に設立されました。

ものづくり補助金の最大のメリットは、他の補助金制度と比べて高額となる1,000万円までの補助金が支給される点です。また、ものづくり補助金は返済の義務がありませんので、返済不要で最大1,000万円の補助が受けられる、大変魅力的な補助金制度なのです。

申請要件

ものづくり補助金件には、企業規模や業種、達成すべき数値目標等の申請要件が規定されています。

企業の規模や業種

前提として、申請できる企業は「既に創業している中小企業等(中小企業と小規模事業者)」です。これから創業予定という会社は申請できないことには注意してください。

また、中小企業等のみならず個人事業主も申請できます。申請できる中小企業等は、業種ごとに資本金や従業員の数が規定されています。詳しくは↓の表を確認してください。

業種資本金従業員数
製造業、建設業、運輸業 ソフトウェア業または情報処理サービス業 その他3億円以下300人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
その他サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

ちなみに、農林水産省のパンフレットによると、農事組合法人及び農業協同組合は受給対象外となっていることには注意してください。

目標数値

ものづくり補助金を受給するためには、次の3点を満たす3〜5年の事業計画を策定し、従業員に表する必要があります。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加すること
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること

上記の要件を満たさない場合、応募資格なしと見なされるだけでなく、採択後に報告する実績において不達成だった場合は補助金を返納しなければならない可能性があります。

ちなみに、従業員の賃上げについては、2020年から要件として追加されたもので、事業場内の最低賃金を確認するために、賃金大腸の提出が義務付けられています。

補助金額

ものづくり補助金は「一般型」「グローバル展開型」「ビジネスモデル構築型」の3つの類型に分けられており、それぞれの企業規模によって補助金上限額や補助率が異なります。

また、新型コロナウイルスの影響を受けて、一般型の中に「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠)」が新設されました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、社会経済の変化に対応したビジネスモデルへの転換に向けた投資を行う事業者を優先的に支援することを目的としており、次の特徴があります。

  • 補助率が2/3(一般型の通常枠は1/2)
  • 広告宣伝費や販売則品費が対象経費(一般型の通常枠は対象外)
  • 特別枠で不採択でも通常枠で優先的に再審査される

類型の概要、補助金額、補助率については、下の表を確認してください。

概要補助上限補助率
一般型新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資及び試作開発を支援。(通常枠)1,000万円1/2 2/3(小規模)
新型コロナウイルスの感染拡大が継続している中で、社会経済の 変化に対応したビジネスモデルへの転換に向けた前向きな投資を 支援。(低感染リスク型ビジネス枠)1,000万円2/3
グローバル海外事業(海外拠点での活動を含む)の 拡大・強化等を目的とした設備投資等の場合、 補助上限額を引上げ。3,000万円1/2 2/3(小規模)
展開型
ビジネスモデル構築型中小企業30者以上のビジネスモデル構築・事業計画策定のため の面的支援プログラムを補助。(例:面的デジタル化支援、デザイン経営実践支援、 ロボット導入FS等)1億円大企業:1/2 その他:2/3

ものづくり補助金の採択率(一般枠)の推移は次の表のとおりです。7次の採択率は50.4%となり、2次以来の50%超えとなりました。

採択発表日応募者数採択者数採択率
1次令和2年4月28日2,2871,42962.50%
2次令和2年6月30日5,7213,26757.10%
3次令和2年9月25日6,9232,63738.10%
4次一般型令和3年2月18日10,0413,13231.20%
グローバル型2714617.00%
5次一般型令和3年3月31日5,1392,29144.60%
グローバル型1604628/8%
6次一般型令和3年6月29日4,8752,32647.70%
グローバル型1053634.30%
7次一般型令和3年9月27日5,4142,72950.40%
グローバル型933941.90%

また、7次では通常枠の採択率45.0%と比べ、特別枠の採択率が56.2%と、採択率に10%以上もの差が出る結果となりました。

 応募者数採択者数採択率
全体5,4142,72950.4%
通常枠2,8121,26645.0%
特別枠2,6021,46356.2%

先ほど説明したように、特別枠には優遇措置があったり審査機会が二度与えられたりといったメリットがありますので、特別枠の要件に合致するのであれば特別枠での申請が賢明でしょう。

農業分野でのものづくり補助金の活用の仕方

支給されるものづくり補助金は、策定した事業計画に沿った使い方をしなければなりません。農家の方が申請する場合は、新型トラクターやドローンの購入を思い浮かべるかもしれませんが、ものづくり補助金の対象となる経費は実にさまざまなものがあります。

ものづくり補助金の対象経費

ものづくり補助金の対象経費は、以下の表のように区分されています。

 対象経費対象外の経費
機械装置費・システム構築費機械装置や工具器具の購入費、製作費等制作や開発にかけた自社人件費等
技術導入費知的財産権等の導入経費補助事業と関係のない知的財産権等の導入経費等
専門家経費謝金、旅費、技術指導料等事業計画書作成料等
運搬費運搬料、郵送料等補助事業と関係のない運搬料、郵送料等
クラウドサービス利用費補助事業のためのアプリケーション改良費、月々の利用料等補助事業以外にも使用できるタブレットやスマホ等
原材料費試作品の開発に必要な原材料等補助対象期間中に使いきれなかった原材料等
外注費試作品の開発に必要な原材料等の再加工、設計等を外注する際の費用等外注先の機械装置購入費等
知的財産権等関連経費試作品等の事業化にあたり特許を取得するための弁理士費用等事業期間内に出願手続を完了していないもの等
広告宣伝・販売促進費 (低感染リスク型ビジネス枠のみ)開発する新製品・サービスについての広告費等補助対象期間外に開催される展示会費等

農業分野の採択事例

ここでは2021年に農業関連で採択された事業を紹介します。

上の表で対象経費の概要をお伝えしましたが、実際に採択された内容を見てみると、農家の方の場合はドローンなどのスマート農業関連機器やハウス内にIoTやセンサを活用した最新設備を導入する例や、農業関連会社の場合はクラウドによる遠隔監視機能やハウス内環境の自動制御・分析機能を搭載したスマート農業システムを開発する例などが見受けられました。

4次

  • 新型プレスブレーキ導入による生産性向上および大型農業機 械製造事業
  • センシング生育診断ドローン導入による革新的農業支援サービス展開
  • IoT,AIを活用した環境制御による農業ビジネスモデルの構築
  • RTK搭載ドローンと農業用ドローン活用によるスマート農業の推進
  • 肥料散布機の導入による農業サービスの生産性向上と高品質化・軽減化の実現

5次

  • 農業の生産効率向上を支援する農薬散布ドローンサービス提 供
  • インテリア農業を創設し、温室効果ガス削減効果を実証する
  • 有機農業の高度化を支える超小型・無線式土壌分析装置の 開発
  • 切断機導入により生産性を向上させ、より多くの農業者の緊 急修理需要に対応

6次

  • 農業用培養土加工製造時に発生する水蒸気を低減させる事業
  • 農業ハウス内での農作物の生体データ自動取得システムの開発
  • 農業の生産効率向上を支援する産業用ドローンサービスの開 発
  • 今後の農業に求められる農業用ビニールハウス建材の生産体制構築
  • ヘルスケア産業向け農業装置の開発(IoT端末による遠隔技術支援)

7次

  • ドローン・ロボット田植機導入によるコロナ時代に適した農業生産プロセス構築
  • 旋盤機導入による十勝の農業者ニーズに沿った特殊部品加工への 対応力強化
  • 日本初の農業分野に特化したドローン空撮利活用支援サービスの開発
  • スマート農業による低農薬緑茶の生産改革と販路拡大
  • 高精度汎用バンドソーの導入及び生産体制の見直しによる農業機械用部品の増産体制構築

ものづくり補助金で採択されるためのポイント

ものづくり補助金は申請すれば必ず受給できる制度ではありません。直近の7次こそ採択率が50%を超えましたが、平均すると40%ほどであり、決して簡単に受給できる補助金制度ではないのです。

ここでは、ものづくり補助金で採択されるためのポイントをまとめてお伝えします。ぜひ最後まで読み、申請の際にお役立てください。

公募要領をよく読む

まず、大前提としてものづくり補助金の公募要領を読み込みましょう。

公募要領には申請要件やスケジュールなど、基本的なことが書かれており、自社には申請資格があるのか、どのような事業であれば採択されそうか、無理のないスケジュールで申請できそうかなど、公募要領を読み込むことで判断できるポイントはたくさんあるからです。

専門家等に補助金申請について相談する際も、知識があるのとないのでは相談内容の質が変わってきますし、提案されたサービス等が不要かどうかの判断もできるのです。

スケジュールを確認する

申請する際には申請締切日を確認して、申請の準備に入るようにしましょう。ものづくり補助金を申請するには事業計画書を作成したり、必要な書類を集めたり、申請に必要なgBizIDプライムという専用アカウントを取得したりと、申請の手続きは意外に工数が多く時間がかかるからです。

特に、gBizIDプライムアカウントの取得には注意が必要です。なぜなら、ものづくり補助金の申請は電子申請のみとなっており、電子申請に必要なgBizIDプライムアカウントの取得には2週間ほどかかるからです。

gBizIDプライムアカウントの登録ができていないと、事業計画書を作成していたとしても、必要書類を集めていたとしても申請自体が行えないのです。ものづくり補助金の申請を検討するのであれば、まずgBizIDプライムアカウントの取得を優先してください。

事業計画を策定する

ものづくり補助金が採択されるかどうかは、いかに質の高い事業計画書を作成するかにかかっています。なぜなら、ご自身の提案する事業が補助金を出すに値するか判断する材料は事業計画書しかないからです。

ですから、事業計画書はじっくりと時間をかけて作成しなければなりません。ものづくり補助金のホームページでは、事業計画書の作成時間が10時間以下だった場合の採択率が著しく下がっているデータが公表されています。事業計画書には、取り組もうとする補助事業の具体的内容や、ターゲットとするユーザーやマーケット、中長期的な将来の展望などを記載します。

事業計画書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。必ず役に立つ内容ですので、ぜひご覧ください。

申請方法を確認する

先ほども触れたように、ものづくり補助金の申請は電子申請のみです。事務局の窓口で直接申し込んだり、郵送で申請したりはできません。

ものづくり補助金の申請の流れは次のとおりです。

  • gBizIDのサイトでgBizIDプライムアカウントを取得する
  • ものづくり補助金の電子申請ページからシステムにログインする
  • 申請内容を入力し、必要書類を添付する
  • 申請内容を確認し、問題がなければ送信する

必要書類の一覧を下記にまとめましたので、確認してください。

書類概要
事業計画書具体的取組内容・将来の展望・数値目標等を記した計画書 (形式自由、A4で10ページ程度)
賃金引上げ計画の表明書直近の最低賃金と給与支給総額を明記し、それを引き上げる計画に従業員が合意していることが分かる書面
決算書等直近2年間の貸借対照表・損益計算書
審査時に加点される書類(提出は任意)成長性加点:経営革新計画承認書
政策加点:開業届または履歴事項全部証明書
災害等加点:事業継続力強化計画認定書
賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書

採択後の流れを確認する

ものづくり補助金が無事に採択されたからといって、そこで終わりではありません。採択はあくまで補助金受給の内定をもらった状態であり、そこから実際に補助事業を行う許可を得る「交付申請」だったり、取り組んだ事業がどのような成果を生んだのかを報告する「実績報告」だったり、さまざまな事務作業が発生するのです。

ものづくり補助金の採択後の流れは次のとおりです。

  1. 採択後の説明会に参加:採択後の手続きの説明や事業についてのヒヤリングが実施されます。
  2. 補助金交付申請書の提出:最初に提出した申請書をさらにブラッシュアップした計画書を提出しなければいけません。
  3. 補助金交付決定:無事に補助金の交付が決まると、事務局から交付決定通知書が届きます。これより事業を開始できます。
  4. 補助事業を開始:提出した事業計画に沿って補助事業を開始します。機械設備等を正式に発注できます。
  5. 遂行状況の報告:事業が遅延なく遂行できているかを報告します。
  6. 中間検査:必要に応じて事務局の担当者による補助事業の進捗状況の確認が行われます。
  7. 実績報告:事業完了後一定期間内に、経費の使い道や補助事業の成果等を報告します。
  8. 確定検査:実績報告の通りに事業が実施されたか、厳しく検査されます。
  9. 補助金額の確定:検査結果に基づき、補助金の交付額が最終決定されます。
  10. 補助金の請求と支払い:補助金交付額の確定後、事務局の指示に従い補助金の精算払い請求をすると、約1〜2週間ほどで補助金が支払われます。

ここまでが補助金受給までの流れですが、受給後も補助金を事業計画に沿って適切に活用しているかどうかの報告をする義務が事業者に課されます。この報告は「事業化状況報告」と呼ばれ、期間は5年間で合計6回です。

以上が採択されてからの流れになりますが、申請以上に大変そうなイメージを持たれたかもしれません。

確かに、作成する報告書の量が多いので時間と労力をかけなくてはいけませんし、報告書には提出期限が定められているためスケジュール管理もしなくてはいけませんので、補助金関連の事務手続きに慣れていない事業者にとっては、大変な作業になるでしょう。

その点、税理士やコンサルタントなどの補助金申請の専門家は補助金制度について深く理解していますし、事務手続きにも慣れているため、採択から補助金交付までの時間を短縮できます。「ものづくり補助金の制度をいまいち理解できない」「本業に専念したいから事務手続きは任せたい」といった考えをお持ちなら、補助金申請の専門家を頼ってみても良いでしょう。

当社トライズコンサルティングは、ものづくり補助金では、2019・2020年度採択率97%という高い補助金採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートしています。質の高い事業計画書の策定から猥雑な事務手続きまでサポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ

ものづくり補助金の概要や申請の際の注意点、農業分野への補助金の活用法を、採択事例を交えて紹介しました。 農作業の生産性を高めるスマート農業はこれからますます拡大していくと考えられるため、参入が遅れてしまうと他の事業者に圧倒的な差をつけられてしまいかねません。スマート農業への参入を躊躇している事業者の方は、ものづくり補助金の申請を検討してみてはいかがでしょうか?

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