【2024】資金繰りの「相談」は誰にすべき?早期に相談すべき企業とは

資金繰りの相談

資金繰りとは、企業のお金の流れや入出金の状態を把握することです。資金繰りに悩んでいる場合、誰に相談すれば良いのでしょうか?

この記事では、資金繰りの相談先についてそれぞれの特性を解説するとともに、早期に資金繰りの相談をすべき企業などについて詳しく解説します。

企業の資金繰り相談は誰にすれば良い?

資金繰りについて相談がしたい場合、誰に相談すれば良いでしょうか?相談先の候補先となりうる次の3者について、それぞれの特性を解説します。

税理士

税理士は、税務のプロフェッショナルです。企業であれば、顧問税理士をつけている場合が多いのではないでしょうか?

税理士は企業の内情をよく知っている場合が多く、毎月の訪問を受けている場合も多いため、継続的な資金繰り相談の一つの相談先となります。

ただし、税理士はあくまでも税務のプロであり、資金繰りなど財務のプロではありません。

財務についてどの程度コンサルティングができるのかは、その税理士によって異なります。

そのため、税理士であるからといって資金繰りの相談先とするのではなく、その税理士個人の財務に関する知識などを踏まえて検討する必要があるでしょう。

金融機関

資金繰りの相談先として、金融機関を選択肢に入れる場合もあるかと思います。ただし、金融機関は一般的に、資金繰り全体の相談には乗ってくれません。

資金繰り改善策のうち、追加での借り入れやリスケなどのみを希望する場合には、資金繰り計画などをあらかじめ作成したうえで金融機関へ相談すると良いでしょう。

中小企業診断士など専門のコンサルタント

中小企業診断士は、企業の経営をサポートする専門家です。財務的な視点からさらなる企業の成長へ向けたアドバイスをもらうことができるため、資金繰りの相談相手としては最適であるといえます。

補助金の申請や融資のサポートを行っている場合も多く、企業の資金繰り改善の強い味方となってくれることでしょう。

早期に資金繰り相談をすべき企業の特徴

次に挙げるような企業は、特に資金繰りの管理や改善が必要です。一つでも当てはまる場合には、早期に専門家へ相談することをおすすめします。

自転車操業状態

自転車操業とは、入ってきたお金の大半を支払いに回すことを繰り返している状態を指します。

自転車操業状態の場合には、仮に売上債権の回収が一つでも遅れるなど不測の事態が起きてしまうと、途端に資金繰りに窮するリスクを抱えています。場合によっては、連鎖的に倒産してしまう場合もあるでしょう。

自転車操業では、経営者が常に資金繰りに悩んでいるケースが多い傾向にあるといえます。いったん自転車操業状態へ陥ってしまえば、自社のみで資金繰りを改善することは容易ではありません。

抜本的な見直しが必要となる場合が多いため、早期に専門家へ相談されることをおすすめします。

今月末に企業の現預金がどの程度あるのか即答できない

月末時点で現預金残高がどの程度であるのか経営者が即答できない場合には、早期に資金繰りの専門家へ相談しましょう。なぜなら、現預金残高が把握できていなければ、突然の資金不足に対応できない可能性が高いためです。

企業の財務状況を先々まである程度把握しておかなければ、いざ資金が不足してしまってから慌ててしまうことにもなりかねません。いくら売り上げが立っていても、一時的に資金が不足すれば倒産してしまう可能性があります。

資金繰りを軽視することなく、まずは資金繰りを把握する習慣をつけましょう。

掛けでの売上比率が高い

掛けでの売り上げ比率が高い場合には、資金繰りの管理がより重要です。そのため、早期に資金繰りの専門家へ相談しましょう。

後ほど解説するように、掛けの場合には、売り上げが立った時点では企業にお金が入ってくるわけではありません。その後相手企業から入金されて、初めて企業のお金が増えることとなります。

ここをきちんと把握しておかなければ、売り上げはあるにもかかわらず、支払い時点でお金が足りなくなってしまったり、売上債権の回収を軽視した結果貸倒が増えてしまったりする可能性があるでしょう。

売り上げはあるがお金が足りない気がしている

売り上げは立っているものの、何となくお金が足りない気がしている場合には、早期に資金繰りの専門家へ相談しましょう。

後ほど解説するように、企業の損益と資金繰りとは必ずしも一致しません。その仕組みを知らなければ、売り上げが立っていれば手元のお金も増えるはずだと感じてしまう可能性があります。

両者の違いを知って資金繰りを把握することで、企業経営の判断がより下しやすくなるでしょう。

資金繰りについて専門家へ相談するメリット

では、資金繰りについて専門家へ相談するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットとして6つ紹介します。

自社の問題点が把握できる

資金繰りについて専門家へ相談することで、自社の問題点が把握しやすくなります。

自社のことは、経営者が最も熟知していることでしょう。しかし、知りすぎているがゆえに、問題点に気が付きにくいという側面もあります。

資金繰りの専門家は、資金繰りに関する専門知識や他社の状況に関する情報を持っていることが一般的です。こうした専門家に外部から見てもらうことで、自社の問題点を把握することが可能となります。

融資などのサポートが受けられる場合がある

資金繰りの専門家は、融資などの専門家でもあることが少なくありません。資金繰りと融資とは切っても切れない関係であるためです。

そのため、資金繰り改善のために追加で借り入れやリスケを希望する場合には、融資の申し込みなどにあたってのサポートまで受けられる場合が多いといえます。自社の資金繰り状況を把握している専門家が金融機関へ提出する書類の作成を支援してくれたり金融機関へ同行してくれたりすれば、非常に心強いことでしょう。

また、同じく資金繰り改善に役立つ補助金の情報を熟知している場合も多く、補助金に関してもサポートが受けられる可能性があります。

ただし、どこまでのサポートを行ってくれるのかは専門家によって異なります。融資や補助金申請のサポートまでを依頼したいと考えている場合には、あらかじめ専門家の業務範囲を確認したうえで資金繰りの相談をする専門家を選択すると良いでしょう。

長期的な資金繰り改善へつながる

専門家に資金繰りの相談をして資金繰り改善についてのアドバイスを受ける場合には、まず資金繰り計画の作成からはじまる場合が多いでしょう。

専門家のアドバイスを実行することによる改善効果はもちろん、資金繰り計画を作って定期的に見直すことを継続することで、長期的な資金繰りの改善へつながる可能性が高くなります。

黒字倒産を避けることができる

資金繰りについて専門家へ相談し、自社の資金繰りについて定期的なモニタリングをする習慣がつくと、黒字倒産を避けられる可能性が高くなります。黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足して倒産してしまうことです。

売掛金などの入金予定が近々あるにもかかわらず、先に到来する支払期限に支払いに必要な資金が用意できない場合などに起こります。

黒字倒産は、資金繰りの管理が適切にできていないことが原因である場合が少なくありません。仮に資金繰りの管理が適切にできていれば、実際に資金が不足するより前に資金不足に気づくことができ、対策を講じることができる可能性が高いためです。

専門家へ相談して自社の資金繰りと向き合うことで、黒字倒産を防ぐことへとつながります。

安心して経営判断ができるようになり企業の成長へつながる

自社の資金繰りの状況が把握できていなければ、設備投資などの経営判断に不安が残ることが多いでしょう。定期的な出費を伴う投資をしたものの、その後支払いが継続できるかなど確信が持ちにくいためです。

企業を成長させるためには、ある程度お金を使わなければならない場面があります。無理な投資をして倒産をしてしまうことはもってのほかですが、資金繰りの悪化を恐れるあまり、必要な投資を控え過ぎていても本末転倒でしょう。

専門家へ相談して自社の資金繰りが「見える化」できていれば、どの程度の資金を設備投資に回せるのかなどの判断がしやすくなります。

企業の信用が向上する

融資を受ける際に金融機関が重視することは、その企業がきちんと融資したお金を返済してくれるのかという点です。過去の返済実績や担保なども融資の重要な判断材料となりますが、企業がきちんとした資金繰り計画を立てているかどうかも一つの大きな材料となり得ます。

資金繰りについて専門家へ相談して資金繰り計画を作成していることは、企業の信用向上につながるでしょう。また、融資を受ける際に資金繰り表を提出するのみではなく、その後も最新の資金繰り表を定期的に金融機関へと提出することで、信用をより得やすくなります。

相談をしないと資金繰りを把握しにくい理由

企業の資金繰りを適切に把握するためには、専門家へ相談することが近道であるといえます。その理由は、次のとおりです。

企業の損益と資金の流れが違うため

企業の資金繰りを自社のみで把握することが困難な理由は、企業の損益と資金の流れは一致しないものが多いためです。

損益も資金繰りも企業にとって非常に重要な指標ですが、両社の違いを理解することは容易ではありません。そのため、少なくとも両社の違いについての理解が進むまでは専門家のサポートを受けつつ、資金繰り表の作成や資金繰りの改善を行うと良いでしょう。

損益と入出金の状況が一致しない主なものは、次のとおりです。

売上時期と売掛債権の回収時期の違い

売り上げは、商品を引き渡すなどして売上が確定し、請求書を発行した時点などで収入として計上されます。仮にこの売り上げの対価をその場で現金で支払ってもらえば、売り上げの時期とお金が入ってくる時期とは一致することでしょう。

しかし、対企業の取引では、掛けでの売り上げとなる場合が大半です。そのため、損益への売り上げの計上時期と実際に企業にお金が入る時期とにズレが生じる場合が多いといえます。

また、対消費者の取引であっても、クレジットカード払いなどの場合には売上計上の時期と入金時期とは一致しません。

このように、損益計算上の売上計上時期と資金繰りに重要となる実際の入金時期とは、一致しないことが多いのです。

借入金返済の考え方の違い

借入金を返済すると、当然ながらその返済にあてたお金は企業から出ていきます。

一方で、返済した全額が経費に計上されるわけではありません。経費に計上されるのは利息部分の金額のみであり、元本部分は経費とはならないためです。

そのため、借入金の返済にあたっては損益とお金の動きが一致しません。

また、お金を借り入れた場合には、借りただけのお金が企業へ入ってきます。一方、お金を借りても損益には一切影響しません。

このことも、損益と入出金とが一致しない原因の一つです。

在庫の捉え方の違い

企業が仕入れをすると、仕入れ代金を支払った時点で企業からお金が出ていきます。しかし、仕入れた代金がそのままその期の経費として計上されるわけではありません。

仕入れをしたものは、その仕入れた商品が販売されて売上が立った時点で初めて経費として計上されます。一方で、未だ売れずに在庫として残っているものは、その期の経費として計上することはできません。

この在庫のとらえ方の違いにおいて、損益と入出金とに違いが生じます。

設備投資の支払いと減価償却時期のズレ

企業が建物や機械器具、車両などを購入した場合には、ローンなどの例外を除き、原則として購入の時点で企業からお金が出ていきます。

一方で、購入をしただけの段階では、損益には影響しません。企業の現預金という資産が、建物や機械器具、車両運搬具などの資産へと形を変えたのみであるためです。

これらの資産は、実際に使用を始めてから減価償却により、数年または数十年という長期にわたって経費へ計上されます。そのため、減価償却の対象となる資産を購入した場合には、損益と入出金とにズレが生じることとなります。

資金繰り改善策の例

企業が資金繰りを改善する方法は、その企業の状況によって異なります。専門のコンサルタントへ資金繰りの相談をした場合には、個別事情を考慮してアドバイスをくれることでしょう。

ここでは、一般的な資金繰り改善策を4つ紹介します。

売上債権の回収サイクルを短縮する

売掛債権の回収サイクルが長い場合には、これを短縮することで資金繰りの改善につながります。売り上げが立ってから売上債権を回収するまでの期間は企業にお金が入ってこないため、次の仕入れや投資などにお金を回すことができません。

特に、回収サイクルが長い企業を中心に、支払期間の短縮について交渉してみると良いでしょう。

買掛債権や経費支払いのサイクルを長期化する

売上債権の回収サイクルは短い方が良い一方で、支払いのサイクルは長い方が資金繰り上はプラスです。そのため、買掛金の支払いサイクルの長期化を仕入れ先に交渉してみると良いでしょう。

また、消耗品などの購入は現金払いではなくできるだけクレジットカードでの支払いを選択する方が資金繰りの改善につながります。

借入金返済をリスケする

借入金の返済中である場合には、金融機関へリスケの相談をすると良いでしょう。月々の返済額が少なくて済めば、それだけ毎月出ていくお金が少なくなり、資金繰りの改善へつながります。

また、追加で資金を借り入れることも資金繰りの改善にとってプラスです。可能であれば、追加での借り入れを打診してみましょう。

不要な在庫や資産を売却する

倉庫に眠っている不要な在庫やほとんど使用していない資産がある場合には、これらを売却することで資金繰り改善につながります。

これらは決算書上で資産として計上されるため、何となく「良いもの」であると認識してしまいがちです。しかし、在庫や資産は、持っているだけではお金を生むものではありません。

むしろ、在庫や資産として保有している限り、在庫や資産に形を変えているお金は使うことができず、資金繰りの悪化につながっています。また、倉庫のスペースを取るなど、保有のコストもかかってしまうでしょう。

そのため、不要な資産は売却をしてスリム化した方が資金繰りにとってプラスであるといえます。

まとめ

資金繰りの相談先には、中小企業診断士など財務を専門とするコンサルタントを選択すると良いでしょう。

財務と損益とでは、異なる部分が少なくありません。専門のコンサルタントはこの違いを熟知しており、企業の状況に併せて資金繰りの改善策を提案してくれます。

当社トライズコンサルティングでは、企業の資金繰り改善の相談をお受けしております。企業経営のコーチとして資金繰り改善をサポートするほか、補助金の申請など具体的な改善策の支援も可能です。

また、当社トライズコンサルティングでは、より多くの企業様に資金繰り表作成の重要性を知っていただくため、資金繰り表のテンプレートを無料で配布しております。資金繰り表のテンプレートが御入用の際は、お気軽にダウンロードしてご利用ください。

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