【2022】事業再構築補助金は「不動産」も対象?採択事例

不動産向けの事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナ禍で売り上げが減少した事業者が、事業の再構築をするにあたって必要となる資金を国が補助してくれる制度です。事業再構築補助金の採択を受けることで、通常枠で最大8,000万円の返済不要な資金を得ることができます。

では、この事業再構築補助金は不動産業も対象になるのでしょうか?今回は、不動産業で事業再構築補助金を活用するための要件や、不動産業での実際の採択事例などについて解説します。

事業再構築補助金は不動産業でも受けられる可能性がある

事業再構築補助金は不動産業でも得られる可能性があり、実際に採択事例も登場しています。

ただし、単なる投資や不動産賃貸のための費用を事業再構築補助金でまかなうことはできません。このことは、公募要領にも明記されています。

とはいえ、単なる投資かどうかの判断が難しい場合も少なくありません。不動産業を営む事業者が事業再構築補助金を受けようとする場合には、補助金を受けられる見込みがあるかどうか、事前に中小企業診断士や行政書士などの専門家へ相談すると良いでしょう。

事業再構築補助金の要件となる事業再構築の5類型

事業再構築補助金を受けるためには、事業を再構築することが要件の一つとなります。そもそも、事業を再構築する企業を支援する仕組みが事業再構築補助金であるためです。

事業再構築は、次の5つに分類されます。行おうとする事業再構築がどれに該当するのか、申請の前に確認しておきましょう。

  • 新分野展開
  • 事業転換
  • 業種転換
  • 業態転換
  • 事業再編

新分野展開

新分野展開とは、企業が日本産業分類上の大分類である「主たる業種」と日本産業分類上の中分類以下を指す「主たる事業」をいずれも変更することなく、新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、新たな市場に進出することです。

日本産業分類とは統計などで主に使われる産業の分類であり、総務省が作成、公表しています。

事業転換

事業転換とは、企業が新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、「主たる業種」を変更することなく、「主たる事業」を変更することをいいます。

たとえば、貸事務所業を営んでいた事業者が、新たに物品のレンタル業を始めるような場合がこれに該当すると考えられます。

業種転換

業種転換とは、企業が新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、「主たる業種」を変更することです。

たとえば、不動産業者が飲食業を始める場合や、不動産業者がアプリケーションの開発を始める場合などがこれに該当します。

業態転換

業態転換とは、製品や商品、サービスの製造方法や提供方法を相当程度変更することをいいます。

事業再編

事業再編とは、合併や会社分割、事業譲渡など会社法上の組織再編行為を行い、新たな事業形態のもとで新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換のいずれかを行うことをいいます。

単に組織再編したのみでは該当せず、これに加えて新分野展開などをする必要がある点に注意しましょう。

事業再構築補助金の要件

事業再構築補助金を受けるには、次の4つの要件をすべて満たさなければなりません。

  • 事業再構築を行うこと
  • コロナ禍で売り上げが減少したこと
  • 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
  • 中小企業者または中堅企業に該当すること

要件を満たさないまま申請をした場合には採択がなされず、申請の労力のみがかかってしまうこととなるため、あらかじめ要件をよく確認しておきましょう。

要件を満たすかどうかがわからない場合には、当社トライズコンサルティングまでお問い合わせください。

事業再構築を行うこと

事業再構築補助金を受けるための1つめの要件は、事業の再構築を行うことです。事業再構築の内容については先ほど紹介したとおりです。

なお、事業再構築に該当する場合であっても、新たに始めようとする事業が次に該当する場合などには、補助の対象とならないことには注意してください。

  • もっぱら資産運用的性格の強い事業
  • 建築または購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業

たとえば、新たにアパートを建築して入居者を募って賃貸するような事業や、飲食店を営むことができる設備を整えてそのまま飲食店を開きたい他社へ長期間賃貸するような事業は、仮に事業再構築には該当する場合であっても補助の対象外だということです。

コロナ禍で売り上げが減少したこと

事業再構築補助金を受けるには、新型コロナ禍で売り上げが減少したことが必要です。具体的には、次の1と2をいずれも満たす場合に、この要件を満たすものと判断されます。

  1. 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月から3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
  2. 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること

ただし、これらの要件を満たすことができない場合であっても、次の項目を満たせば申請をすることが可能です。

  1. 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること
  2. 2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して7.5%以上減少していること

認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること

事業再構築補助金を申請するには、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて、事業計画を策定することが必要となります。

認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。税理士や税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが認定を受けていることが多いです。

ただし、補助金額が3,000万円を超える案件の場合には、銀行や信用金庫、ファンドなどの金融機関も参加をして事業計画を策定しなければなりません。この場合であっても、金融機関が認定支援機関を兼ねる場合には、金融機関のみで構わないとされています。

策定する事業計画は、通常枠の場合、補助事業終了後3年から5年で次のいずれかの達成を見込むことが必要です。

  • 付加価値額の年率平均3.0%以上増加
  • 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加

なお、ここでいう「付加価値額」とは、営業利益、人件費、減価償却費を合計したものです。

中小企業者または中堅企業に該当すること

事業再構築補助金を受けるには、申請する事業者が中小企業者または中堅企業等に該当しなければなりません。中小企業者に該当するための要件は、業種によって異なります。

不動産業の場合には、次のいずれかを満たす企業または個人が中小企業者と認定されます。

  • 資本金が3億円以下であること
  • 常勤の従業員数が300人以下であること

なお、これらを満たす場合であっても、大企業の役員または職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めているなど、実質的に大企業とみなされる場合には中小企業者に該当せず、原則として補助金を受けることはできません。

また、中小企業者に該当しない場合であっても、資本金の額等が10億円未満であるなど中堅企業等に該当する場合などには、事業再構築補助金の対象となります。

事業再構築補助金が採択された不動産業の事例

事業再構築補助金の特設ページでは、実際に採択された事例の概要を見ることができます。産業分類上で不動産業に分類される事業者が採択された事例には、次のようなものがあります。

  • 民泊として運営していた駅近の一戸建てをすぐに開業できる美容施設へと改装して、備品を備えたうえで新たにテナントへリースする事例
  • トレーラーハウスレンタルサービスから旅館業法に基づく宿泊サービスに転換する事例
  • 一人住まいの高齢者の土地建物の資産を評価したうえで売却または賃貸させ、その収益によって施設に無料もしくは安価で入居することをサポートする事業を始める事例
  • 山林売買のノウハウを生かし、広大な大自然を有効活用したアウトドア事業に新分野展開する事例
  • 既存の不動産賃貸、仲介業を継続しつつ、新たに空き家対策向け、空き家仲介および修繕工事、さらに職人育成スクールの開校という生活提案事業への転換を図る事例
  • 既存の不動産屋店舗を縮小しテイクアウトメインのスタンドカフェに改装する事例
  • 不動産販売業者が資産運用型不動産に特化したプラットフォームを開発し、新たなサービス提供を展開する事例
  • 貸事務所業から写真業・レンタルスタジオ事業への業種転換を図る事例

ここで挙げたものは一例であり、他にもさまざまな事例が掲載されています。新たに展開する事業の方向性などで悩んでいる場合には、掲載された採択事例が一つの参考となるでしょう。

事業再構築補助金の補助対象経費に不動産は入るのか

事業再構築補助金は、事業再構築に必要となった経費のうち次の割合を次の金額まで補填してもらえる補助金です。

  • 中小企業者等の補助率:3分の2(6,000万円超は2分の1)
  • 中堅企業等の補助率:2分の1(4,000万円超は3分の1)
従業員数補助金額(通常枠)
20人以下100万円~4,000万円
21人~50人100万円~6,000万円
51人以上100万円~8,000万円

では、事業再構築にあたって不動産の購入や建築が必要となる場合、不動産の取得にかかった費用は補助対象となるのでしょうか?

事業再構築補助金の対象となり得る不動産関連の経費とは

事業再構築補助金は、「建物費」が補助対象となる珍しい助金です。具体的には、次の経費が補助対象となります。

  1. もっぱら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設や改修に要する経費
  2. 補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
  3. 補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費

ただし、このうち「2」と「3」の経費のみの事業計画では支援対象となりません。「2」と「3」はあくまでも、補助事業を実施するために副次的に必要となる場合に限られています。

事業再構築補助金の対象とならない不動産関連の経費の例

次のような不動産関連経費は、たとえ補助事業の遂行に必要となる場合であっても、補助の対象とはなりません。

  • 土地の購入費用
  • 既存建物の購入費用や賃貸費用
  • もっぱら補助事業のために利用されるわけではない事務所等にかかる家賃

事業再構築補助金で不動産以外に対象となる経費

事業再構築補助金では、不動産である建物の建設や改築などに活用できる「建物費」の他にも、事業再構築に必要となるさまざまな経費が補助の対象となります。補助の対象となる代表的な経費は、次のとおりです。

専門家経費

補助事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費です。ただし、専門家の類型によって報酬日額の上限が定められています。

また、事業再構築補助金の申請にあたって外部専門家や認定支援機関などに支払った報酬は補助の対象外です。

クラウドサービス利用費

もっぱら補助事業のために利用するクラウドサービスやWebプラットフォームなどの利用費です。なお、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなど本体の購入費用は対象外です。

広告宣伝・販売促進費

補助事業に関するパンフレットや動画などの広告作成にかかる費用や、広告媒体掲載、展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用などにかかる経費です。

外注費

補助事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託など)する場合の経費です。

研修費

補助事業遂行のために必要な教育訓練や講座受講などにかかる経費です

不動産を対象として事業再構築補助金を申請する場合の注意点

不動産の中でも、補助事業の実施に不可欠な建物の建築費や改修費などは事業再構築補助金の対象となります。これらの経費について事業再構築補助金を申請する際には、次の点に注意しましょう。

相見積もりが必須となる

建物費に対して事業再構築補助金を受ける場合には、他の経費とは異なり、相見積もりが必須の要件とされています。相見積もりを取ることなく、初めから1社のみに絞って建築や改装を依頼したような場合、補助の対象とはならないことには注意しましょう。

採択後も報告などの手続きが必要となる

事業再構築補助金は申請までの手続きも大変ですが、実は採択後の報告手続きにも手間がかかります。事業再構築補助金は採択を受けたからといってすぐにお金が受け取れるわけではありません。

その後採択された補助事業を実施し、実施の報告をして初めて補助金を受け取ることが可能です。実施の報告をしなかった場合や、実施の報告に必要な資料が不足していた場合などには、たとえ採択を受けていても補助金を受け取ることはできないことに注意しましょう。

いざ報告の段階になって資料がないと慌ててしまわないためにも、報告に必要な資料をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

補助金は後払い

事業再構築補助金は、補助事業実施後の後払いです。そのため、補助事業を実施するために必要な資金は、金融機関からの借り入れなど補助金とは別の方法で一時的に手配する必要があります。

この「つなぎ資金」を得る方法を考えておかなければ、採択を受けたは良いものの、資金不足から補助事業が実施できず、結果的に補助金も受け取れないという事態となりかねません。採択さえ受ければすぐにお金がもらえるわけではありませんので、誤解のないよう気を付けてください。

まとめ

事業再構築補助金は、不動産業であっても受けられる可能性があります。ただし、要件が複雑であることに加え、特に不動産業では補助対象となるかどうかの判断が難しい場合もあるため、専門家へ相談しながら申請すると良いでしょう。

申請をお考えの方は、当社トライズコンサルティングへお気軽にお問い合わせください。当社は、クライアント様に寄り添いながら限りなく高品質な事業計画書の策定を支援します。

たとえば「ものづくり補助金」では、2019・2020年度採択率97%という高い補助金採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートしております。また、代表の野竿は認定経営革新等支援機関として事業再構築補助金の申請サポートを実施しています。

ぜひ当社をご利用いただき、新たな事業へ向けた確実な一歩を踏み出してはいかがでしょうか?

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