【2022】事業再構築補助金は「建設業」も活用できる?採択事例・要件・注意点

建設業向けの事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、新型コロナ禍で収益が悪化した企業が事業を再構築する際にかかる費用の一部を、国に補填してもらえる補助金です。採択されれば、通常枠で最大8,000万円の補助を受けることができます。

今回は、事業再構築補助金を建設業でもらうための要件や補助金を受け取るまでの流れを解説するとともに、建設業での実際の採択事例を紹介します。

事業再構築補助金は建設業でも使える?

事業再構築補助金は、建設業でも活用することが可能です。

元々建設業を営んでいた事業者が事業再構築を行う場合と、元々他業種の事業者が新に事業再構築として建設業をはじめる場合の、いずれも活用できる可能性があるでしょう。

ただし、事業再構築補助金には要件があります。

要件を満たしていなければ、せっかく申請をしても補助金を受け取ることはできません。

また、要件を満たして申請しても必ず補助金がもらえるわけではなく、申請をした事業計画が採択される必要があります。

建設業者が事業再構築補助金を申請してから受け取るまでの流れ

事業再構築補助金は、申請をして採択されたからといってすぐに入金されるわけではありません。事業再構築補助金の申請から交付までの流れを知っておきましょう。

必要書類の準備をする

事業再構築補助金を申請するには、事業計画などの書類が必要です。まずは、必要な書類を準備することから始めましょう。

ただし、事業再構築補助金の申請書類を建設業者がイチから作成しては非常に手間がかかります。また、せっかくよい事業再構築計画であったとしても、うまく数字や文章で表現できていなければ採択の可能性が下がってしまうことでしょう。

事業再構築補助金の申請書類作成の際には、中小企業診断士や行政書士などのサポートを受けながら作成することをおすすめします。

申請をする

必要書類の準備ができたら、申請をします。事業再構築補助金の申請は紙では受け付けてもらえず、オンラインで行わなければなりません。

申請には、原則としてGビズIDが必要となります。GビズIDとは、1つのIDとパスワードでさまざまな行政サービスにログインできるサービスです。

まだGビズIDを持っていない場合には、今後もためにもこれを機に作成しておくと良いでしょう。

採択結果が通知される

公募期間が終了すると、要件を満たした申請のうち採択される事業が決定されます。採択結果は事業再構築補助金事務局から通知がなされるほか、事務局のホームページで確認することも可能です。

補助事業を実施する

事業再構築補助金は、採択されたからといってすぐに受け取れるわけではありません。まずは申請をした計画どおりに、補助の対象として採択された事業を実施する必要があります。

補助事業の実施に必要な資金は、金融機関からの借り入れなどで別途手配しましょう。

補助事業の実施報告をする

補助事業を実施したら、所定の様式に沿って必要な報告を行います。

報告には見積書や請求書、写真などが必要です。報告に必要となる資料をあらかじめ確認したうえで、発行を受けず実施してしまったり紛失してしまったりすることのないよう注意しましょう。

交付が決定され補助金が交付される

事業の実施報告に問題がないと判断されれば、ここでようやく補助金を受け取ることができます。補助金を受け取るまでの道のりは決して短くありませんので、全体の流れを知っておいてください。

建設業者が事業再構築補助金を申請するための必須要件

事業再構築補助金を申請するには、次の4つの要件をすべて満たさなければなりません。それぞれの要件をよく確認したうえで申請しましょう。

コロナ禍で売上が減っていること

事業再構築補助金の1つ目の要件は、新型コロナ禍で売上が減少したことです。新型コロナ禍での売り上げ減少は、次の1と2の要件をいずれも満たすことで判断されます。

  1. 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月から3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
  2. 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前の同33ヶ月の合計売上高と比較して5%以上減少していること

ただし、これらの要件を満たさない場合には、次の項目を満たすことでも申請することが可能です。

  1. 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計付加価値額が、コロナ以前の同33ヶ月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること
  2. 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ヶ月の合計付加価値額が、コロナ以前の同33ヶ月の合計付加価値額と比較して7.5%以上減少していること

新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編のいずれかに取り組むこと

事業再構築補助金とは、事業の再構築にかかる費用を補助してもらえる補助金です。そのため、事業再構築に該当しない場合には、補助の対象とはなりません。

たとえば、建設業者が広い範囲で工事が受注できるよう他県に新たに営業所を設けたり、これまで少額の工事のみを請けてきたが大きな工事も請けられるように建設業許可を取得したりするのみでは、この要件を満たせず補助の対象とはならないでしょう。

事業再構築補助金の要件となる「事業再構築」は、次の4つに分類できます。

新分野展開とは

新分野展開とは、産業分類上の「主たる業種」または産業分類上の「主たる事業」をいずれも変更することなく、新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、新たな市場に進出することをいいます。

たとえば、建設業を営んでいた事業者が、新たに需要が増しているアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手する事例などがこれに該当します。

業態転換とは

業態転換とは、製品や商品、サービスの製造方法または提供方法を相当程度変更することをいいます。

事業・業種転換とは

事業転換とは、新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、「主たる業種」を変更することなく、「主たる事業」を変更することをいいます。

一方、業種転換とは、新たな製品を製造したり新たな商品やサービスを提供したりすることにより、「主たる業種」を変更することです。

たとえば、冷暖房設備の設置工事業から、冷暖房設備のそのものを製造販売する事業への転換をする場合には、これに該当すると考えられます。

事業再編とは

事業再編とは、合併や事業譲渡など会社法上の組織再編行為をおこない、新たな事業形態のもとで新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換のいずれかを行うことをいいます。

単に組織再編をしたのみでは要件を満たすこととはなりませんので、注意しましょう。

認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること

事業再構築補助金を受けるには、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とともに、事業計画を策定する必要があります。

認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。税理士や税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが担っていることが多いと言えます。

ただし、補助金額が3,000万円を超える案件である場合には、認定支援機関であればどこでも良いわけではなく、銀行や信用金庫などの金融機関が参加して事業計画を策定しなければなりません(金融機関が認定支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで良いとされています)。

通常枠の場合に策定する事業計画は、補助事業終了後3年から5年の間に次のいずれかの達成を見込む内容で作成することが必要です。

  1. 付加価値額の年率平均3.0%以上増加
  2. 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加

なお、付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を合計したものをいいます。

中小企業者または中堅企業に該当すること

事業再構築補助金を受けるには、中小企業者または中堅企業等に該当しなければなりません。中小企業者の要件は業種によって異なりますが、建設業の場合には次のいずれかを満たす企業または個人が、中小企業者と認定されます。

  • 資本金が3億円以下であること
  • 常勤の従業員数が300人以下であること

なお、これらを満たす場合であっても、発行済株式総額の3分の2以上を大企業が所有しているなど実質的に大企業とみなされる場合には、原則として補助金を受けることはできません。

また、中小企業者に該当しない場合であっても、資本金の額等が10億円未満であるなど中堅企業に該当する場合などには、事業再構築補助金の対象となります。

事業再構築補助金で建設業者が受けられる補助金額はいくら?

事業再構築補助金の補助率は、次のとおりです。補助率とは、かかった経費のうち補助金で補填される割合のことをいいます。

  • 中小企業者等:3分の2(6,000万円超は2分の1)
  • 中堅企業等:2分の1(4,000万円超は3分の1)

また、補助金の額は、従業員の数に応じて次のとおりです。

従業員数補助金額
20人以下100万円~4,000万円
21人~50人100万円~6,000万円
51人以上100万円~8,000万円

建設業が事業再構築補助金を受けるためのモデルケース

事業再構築補助金事務局により、事業再構築に該当するモデルケースが公表されています。

公表されているケースのうち、建設業に関する事例は次のとおりです。

  • 新型コロナにより業界全体が業績不振となった宿泊施設や観光施設などの事業施設向けの建設業を営んでいた事業者が、新たに需要が増しているアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手する事例

このケースは、上で紹介をした4つの事業再構築のうち「新分野展開」に該当すると考えられます。この計画で新分野展開の要件を満たすためには、事業計画で次の3点を示さなければなりません。

  1. 製品等の新規性要件を満たしていること
  2. 市場の新規性要件を満たしていること
  3. 3~5年の事業計画期間終了後、プラスチック加工製品の売上高が総売上高の10%以上となること

建設業が事業再構築補助金を採択された具体的な事例

事業再構築補助金のホームページでは、これまでに採択された事業の概要が掲載されています。中でも、建設業に関する採択事例には、次のようなものがあります。

  • 既存事業である建設業を廃止し、新たに飲食店を始める事例
  • 建設業者が自社運営による、サービス付「ペット可」高齢者向け施設を始める事例
  • 解体工事を担う建設業者がこれまで外部委託していた解体工事により排出される産業廃棄物の処分を内製化することにより、処分費削減と再生骨材等の製造販売による新たな収益の柱を作り、雇用維持と産業廃棄物の地産地消の推進における循環型企業への転換を進める事例
  • 冷暖房設備の設置工事業から、冷暖房設備のそのものを製造販売する事業への転換をする事例
  • 下請をメインでおこなってきた建設業者が、手軽に「ベランピング」を満喫できるバルコニー付きカーポートの製作販売を始める事例
  • 建設業者が新たに個人宅向けの清掃・抗菌業を始める事例
  • 自社に隣接した空家と農作業小屋を農家民泊・レンタルオフィスに改修し、さらに耕作放棄地となった畑や雑木林も活用し、シェア畑、貸し切り利用のできるアウトドアフィールドを併設し、複合利用のできるワーケーション施設を運営する事例
  • 建設業者が暮らしにまつわるさまざまな設備工事屋サービスを発注でき、サービス履歴、やりとり、保証期間などが一括管理でき、支払いもオンラインで完結できるマッチングプラットフォームを手掛ける事例

他にも数多くの事例がありますので、自社の新たなビジネス展開の参考にされるとよいでしょう。

建設業で事業再構築補助金を申請する際の注意点

建設業で事業再構築補助金を申請する際には、次の点に注意が必要です。

必ずしも採択されるとは限らない

事業再構築補助金は、要件を満たして申請をしたからといって、必ずしも採択されるものではありません。要件を満たした申請の中から、さらに採択される必要があります。

事業再構築補助金の採択率は、決して高くはありません。具体的には、第1回公募の採択結果は次のとおりであり、要件を満たした件数に占める採択事業の割合は42%程度でした。

  • 応募件数:22,231件
  • 応募のうち申請要件を満たしたもの:19,239件
  • 採択件数:8,016件

また、第2回公募の結果は次のように公表されています。要件を満たした件数に占める採択率は51%程度でした。

  • 応募件数:20,800件
  • 応募のうち申請要件を満たしたもの:18,333件
  • 採択件数:9,336件

要件を満たして申請をしたとしても、約半数は採択がされない補助金であることを知っておきましょう。

採択後も報告などの手続きが必要となる

事業再構築補助金は、採択されればそこで完了ということではありません。採択された後にも、事業の実施について報告する必要があります。

報告には、見積書や写真など補助対象の経費に応じてさまざまな証拠書類が必要です。報告にもかなりの手間が掛かるうえ、適切に報告しなければ補助金を受けることはできないことを知っておきましょう。

土地や建物の購入費は補助の対象外

建設業者が新たな事業を始めるにあたり、土地や建物の購入が必要となる場合もあるかと思います。しかし、いくら新事業に不可欠な裳物であったとしても、土地や建物の購入費は事業再構築補助金の補助対象とはなりません。

一方で、建物の建設費や改装費などは補助対象となります。

補助金は後払い

事業再構築補助金は、事業実施後の後払いです。そのため、いったんは金融機関からの借り入れなど別の手段で資金を調達し、その資金で補助事業を実施しなければなりません。

その後、実施した事業の内容を報告し、問題がない場合にはじめて補助金の交付を受けることができます。

採択されたからといってすぐに補助金が受け取れるわけではないことを知ったうえで、交付までの「つなぎ資金」の調達方法も検討しておくべきでしょう。

まとめ

事業再構築補助金は、建設業でも活用できる補助金です。新型コロナ禍で売り上げが下がってしまった場合には、ぜひ活用を検討されると良いでしょう。

しかし、事業再構築補助金は要件が複雑であり、またオンラインでの申請のみとされていることから、自社のみで申請することは容易ではありません。

事業再構築補助金の申請をしたいとお考えの方は、当社トライズコンサルティングへご相談ください。当社は、クライアント様に寄り添いながら限りなく高品質な事業計画書の策定を支援します。

たとえば「ものづくり補助金」では、2019・2020年度採択率97%という高い補助金採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートしております。また、代表の野竿は認定経営革新等支援機関として事業再構築補助金の申請サポートを実施しています。

ぜひ当社をご活用いただき、新たな事業へ向けた確実な一歩を踏み出してはいかがでしょうか?

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