ものづくり補助金の「ビジネスモデル構築型」とは?2022年以降活用できる類型は?

ものづくり補助金のビジネスモデル型

ものづくり補助金とは、中小企業などのものづくりやサービス改善などを支援することを目的とした補助金です。ものづくり補助金には類型がありますが、このうち「ビジネスモデル構築型」は、他の中小企業の成長や生産性向上に貢献する取り組みをする企業を支援する点で、少し特殊な類型といえます。

ものづくり補助金は2022年より大きな見直しが行われ、これによりビジネスモデル構築型を新規で申請することはできなくなりました。しかし、今後同様の類型が誕生する可能性はゼロではありません。

今回は、ものづくり補助金のうちビジネスモデル構築型に焦点を当てて解説するとともに、2022年以後に公募が開始される新たな5類型についてそれぞれ解説します。

ものづくり補助金の旧3類型

ものづくり補助金とは、中小企業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更などに対応するため、中小企業者等が取り組む革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。

通称として「ものづくり補助金」と呼ぶことが多いものの、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」であり、いわゆる製造業などに限定された補助金ではありません。はじめに、ものづくり補助金のこれまでの3類型についてそれぞれ解説します。

一般型

一般型は、中小企業者等が行う次の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援する類型です。

  • 革新的な製品・サービスの開発
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善

単に「ものづくり補助金」いう際には、この類型を指していることが多いといえます。

一般型の中には、通常枠と低感染リスク型ビジネス枠の2つが存在します。補助金額は最大1,000万円であり、補助率はそれぞれ次のとおりです。

  • 通常枠(原則):2分の1
  • 通常枠(小規模企業者・小規模事業者):3分の2
  • 低感染リスク型ビジネス枠:3分の2

グローバル展開型

グローバル展開型は、中小企業者等が海外事業の拡大や強化などを目的として行う次の取り組みに必要となる設備やシステム投資などを支援するものです。

  • 革新的な製品・サービスの開発
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善

グローバル展開型を申請するには、取り組もうとする事業が次のうちいずれかに該当しなければなりません。

  1. 海外直接投資
  2. 海外市場開拓
  3. インバウンド市場開拓
  4. 海外事業者との共同事業

補助金額は最大3,000万円、補助率はそれぞれ次のとおりです。

  • 原則:2分の1
  • 小規模企業者・小規模事業者:3分の2

ビジネスモデル構築型

ビジネスモデル構築型は、中小企業が次の3点を備えたビジネスモデルを構築できるよう、30者以上の中小企業を支援するプログラムの開発・提供を補助する類型です。

  1. 革新性
  2. 拡張性
  3. 持続性

この類型の内容については、次で詳しく解説します。

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の補助要件

ものづくり補助金のうち、ビジネスモデル構築型は自社の取り組みにより他の中小企業の成長や付加価値向上などに寄与することを要件とするやや特殊な類型です。具体的な要件は、次のようになっています。

中小企業30者以上を支援すること

ビジネスモデル構築型では、中小企業30者以上に対して事業計画の策定支援プログラムを開発・提供することが要件の一つです。この要件における「中小企業」とは、日本国内に本社を有する中小企業者に限定されます。

なお、支援対象の30者は補助事業の開始後に募集をしても問題なく、補助金の申請時点で中小企業30者以上が具体的に確定している必要はありません。ただし、補助事業の終了時点で、実際に事業計画の策定に至った中小企業数が結果的に30者に達しなかった場合には、補助金を全額受けられない場合があります。

事業計画の策定支援プログラムが一定の要件を満たすものであること

ビジネスモデル構築型で提供する事業計画の策定支援プログラムは、3年から5年の間に次の3点すべてを満たすものである必要があります。

  1. 付加価値額+3%以上/年
  2. 給与支給総額 +1.5%以上/年
  3. 事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円

ただし、補助金の申請書作成代行やノウハウ提供を主たる目的とした事業は対象外です。

補助事業終了後1年で支援先企業の80%以上が事業計画を実行できること

策定をした事業計画が単に絵に描いた餅であり、支援先の中小企業が実現できないものであれば意味がありません。そのため、補助事業終了後1年で、支援先企業の80%以上が事業計画を実行できるプログラム内容であることが要件の一つとされています。

補助事業者には、補助事業終了後1年時点に事業成果の報告を求められることとなっていますので、採択後は報告に備えて準備をしておく必要があるでしょう。

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の補助金額と補助率

ビジネスモデル構築型の補助金額や補助率は、次のようになっています。

補助上限:1億円

ものづくり補助金のうちビジネスモデル構築型の補助金額は最大1億円であり、かなり高額となっています。それだけ、他の中小企業を支援する役割に期待されているということでしょう。

補助率:2/3または1/2

ビジネスモデル構築型の補助率は、それぞれ次のとおりです。

  • 大企業:2分の1
  • 上記以外:3分の2

なお、直近過去3年分の各事業年度における課税所得の年平均額が15億円を超える場合には、大企業として扱われる点に注意しましょう。

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の審査基準

ものづくり補助金は、その類型ごとに重視される審査ポイントが公募要領で公表されています。そのため、公募要領を読み込んで審査基準に沿った申請書を作成することで、採択の可能性を上げることができるでしょう。

ビジネスモデル構築型の審査基準は、次のとおりです。

革新性

中小企業の生産性向上を推進する観点から、次の3点が審査対象となります。

  1. 我が国全体において新規性がある取組であるか
  2. 競合よりも優れたアプローチを提案しているか
  3. 他社には真似できない優位性を有しているか

拡張性

中小企業を相手にした民間サービスとしての観点から、次の3点が審査対象となります。

  1. 地域または業種を超えて、幅広い中小企業が利用できる広がりがあるか
  2. 中小企業の生産性向上の効果が今後も拡大する展望を持っているか
  3. 中小企業の自立を促す資金配分となっているか

持続性

民間サービスの創出を後押しする観点から、次の2点が審査対象となります。

  1. 資金面や人員面で体制に問題がなく、補助事業終了後に収益化・自立化することが可能か
  2. 補助事業終了後に中小企業が自立的にビジネスを継続できることが見込まれるか

政策的意義

補助金を活用して支援する観点から、次の2点が審査対象となります。

  1. 技術開発や構造的課題の解決に貢献し、生産性向上の効果が幅広く日本経済又は地域経済に波及することが見込まれるか
  2. 中小企業支援に関する有用な知見やデータを得ることができるか

パートナーシップ構築宣言の宣言と公表(加点項目)

補助金の締め切り日時点において、パートナーシップ構築宣言を宣言し公表している事業者は、審査において加点の対象となります。

パートナーシップ構築宣言とは、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、企業の代表者の名前で宣言するものです。

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)申請から受給までのステップ

ビジネスモデル構築型を含む、ものづくり補助金の申請から受給までの流れは、次のとおりです。

ステップ1:提出資料を準備する

はじめに、申請書など提出書類を準備しましょう。

申請書を作成する際には応募する類型の要件をよく確認し、必ず要件を満たす内容で作成してください。要件を満たしていなければ、せっかく申請をしても採択されることはありません。

類型ごとに公表されている審査項目に沿った内容で作成をすることで、採択の可能性を上げることができます。

ステップ2:電子申請システムjGrantsから申請する

申請書類の準備ができたら、申請をします。ものづくり補助金は書面で申請することはできず、インターネットを利用した電子申請で行わなければなりません。

電子申請にはデジタル庁が管轄する「GビズIDプライム」アカウントが必要となりますので、事前にアカウントを取得しておきましょう。

ステップ3:審査がなされ採択結果が公表される

公募期間の終了後、審査がなされ、採択される事業が決定されます。採択の有無は個別で通知されるとともに、採択された事業は、ものづくり補助金の公式ホームページ内で企業名と事業の概要などが公表されます。

ステップ4:補助事業を実施する

ものづくり補助金が採択されたからといって、すぐに補助金を受け取ることができるわけではありません。先に、申請をした補助事業を実施する必要があります。

補助事業を実施するために一時的に必要となる資金は、金融機関からのつなぎ融資を受けるなどして別途準備しましょう。

ステップ5:実績報告と確定検査を行う

事業の実施が完了したら、補助金事務局へ実施の報告を行います。実施報告には事業の内容に応じ、領収書などの証拠書類の添付が必要です。

実施報告にはどのような書類となるのかあらかじめ確認をして、紛失することなどのないよう注意しましょう。実施報告を行うと、補助金事務局による確定検査が行われます。

ステップ6:補助金が支払われる

確定検査に問題がないと判断されれば、ようやく補助金が支給されます。つなぎ融資を受けていた場合には、受け取った補助金を原資として返済することが一般的です。

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の採択事例

ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)は、これまでに2度公募されています。それぞれの応募者数と採択者数は、それぞれ次のとおりでした。

 応募者数採択者数
第2次公募10128
第1次公募35618

応募者数と比べて採択者数はかなり限られており、申請の中から厳選されて採択されている様子が伺えます。ビジネスモデル構築型の採択結果は他の類型よりも詳しく公表されており、ものづくり補助金のホームページから誰でも見ることが可能です。

ここでは、第2次公募の採択結果の中から事例を4つ紹介します。

食関連産業における中小企業共通EDI導入によるDX経営の基盤

withコロナ社会において、食関連産業の中小企業者等が事業継続に不可欠な生産性向上とDX経営化を実現し、社会課題でもある企業間商取引の効率化をはかるための取り組みです。

具体的には、政府推奨の中小企業共通EDIに準拠する「クラウドEDI」の活用提案から導入、DX戦略の策定・実践、事業変革まで、水平展開を視野に伴走支援型の包括プログラムを構築、実証するとしています。

「100年つなぐ岩手の工芸」ビジネスモデル策定支援事業

貴重な財産である日本の工芸品が、100年後も人の生活と共に生き続ける社会を実現するための取り組みです。

具体的には、岩手の工芸従事者が100年後のあるべき姿に向かうロードマップを定め、今取り組むべき事項(新商品開発、設備投資、人材育成、販売促進等)を具体化した事業計画策定を行うこととしています。

グローバル航空事業での実践ノウハウを取り入れた製造業DX支援

商談DBの活用や電子による情報の一元管理など通じて、中小企業の製造業DX検討を支援する取り組みです。

航空機エンジン部品製造事業において、海外OEMからの厳格な品質要求に対応した生産管理システムの構築、クラウドサービスを活用したバックオフィスのデジタル化を推進してきた知見を、この取り組みに活かすこととしています。

日本の中小企業におけるロボット導入支援の構築

中小企業がロボットを導入するにあたって、3Dスキャナやシミュレータを利用して仮想空間内に工場環境を再現し、導入シミュレーションを提供する取り組みです。

システム導入の検討をVRで支援するほか、装置を納める工場を事前に3Dスキャナで撮影することによる配置のシミュレーション、ソフトの先行検証やコンサルティングを行うものとしています。

地方銀行との連携による中小企業のICT化支援

ICTコンサル部門を立ち上げている、もしくは立ち上げる予定のある地域金融機関と連携して、中小企業のDX化を支援する取り組みです。

freee社とサイボウズ社が地域金融機関の行員へ「中小企業向けICTコンサル育成研修」を提供し、ICT人材を育成することで、地域の金融機関が顧客先中小企業のDX化および会計データのクラウドデータ連携をサポートする取り組みを支援するものとしています。

ものづくり補助金の新5類型

ものづくり補助金は2022年にその内容が見直され、ビジネスモデル構築型の新規公募はされないこととなりました。2022年の見直し後におけるものづくり補助金の5類型は、それぞれ次のとおりです。

一般型(通常枠)

一般型(通常枠)は、次の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援する類型です。

  • 革新的な製品・サービスの開発
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善

ここまでは先ほど解説した旧類型の内容と変わりありませんが、2022年以降は、従業員数によって補助金の上限額が次のように細分化されることとなりました。

  • 5人以下:750万円
  • 6人~20人:1,000万円
  • 21人以上:1,250万円

補助率は、それぞれ次のとおりです。

  • 原則:2分の1
  • 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:3分の2

一般型(回復型賃上げ・雇用拡大枠)

回復型賃上げ・雇用拡大枠は、業況が厳しいながら賃上げや雇用拡大に取り組む事業者の、次の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援する類型です。

  • 革新的な製品・サービスの開発
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善

ただし、応募締め切り時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロであり、常時使用する従業員がいる事業者に対象が限定されています。補助金額の上限は通常枠と同じであり、従業員数によって次のとおりです。

  • 5人以下:750万円
  • 6人~20人:1,000万円
  • 21人以上:1,250万円

補助率は、事業者の規模などにかかわらず一律3分の2とされています。

一般型(デジタル枠)

デジタル枠は、次の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援する類型です。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービスの開発
  • デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上

補助金額の上限は通常枠と同じであり、従業員数によって次のとおりです。

  • 5人以下:750万円
  • 6人~20人:1,000万円
  • 21人以上:1,250万円

補助率は、事業者の規模などにかかわらず一律3分の2とされています。

一般型(グリーン枠)

グリーン枠は、次の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援する類型です。

  • 温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
  • 炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上

補助金額の上限は、従業員数に応じてそれぞれ次のとおりです。

  • 5人以下:1,000万円
  • 6人~20人:1,500万円
  • 21人以上:2,000万円

補助率は、事業者の規模などにかかわらず一律3分の2とされています。

<h3グローバル展開型

グローバル展開型の内容は、上で解説をした旧類型のグローバル展開型と同じです。補助金額などの内容も変わらず、補助金額の上限は3,000万円、補助率はそれぞれ次のとおりです。

  • 原則:2分の1
  • 小規模企業者・小規模事業者:3分の2

まとめ

ものづくり補助金は2022年に大きく見直され、今後は「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「グリーン枠」「デジタル枠」「グローバル展開型」の5類型で展開されることとなりました。申請をする際には、各類型の要件や審査項目をよく理解し、申請準備を進めましょう。

しかし、自社のみで審査項目に沿った内容の申請書を作りこむことは容易ではありません。当社トライズコンサルティングは、クライアント様に寄り添いながら限りなく高品質な事業計画書の策定を支援します。

「ものづくり補助金」に関しては、2019・2020年度採択率97%という高い採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートしております。当社を活用して、新たな事業へ向けた確実な一歩を踏み出してみませんか?

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