ものづくり補助金の採択率は、どれくらいでしょうか?この記事では、ものづくり補助金の概要を解説するとともに、2022年における最新の採択結果やものづくり補助金の採択率を上げる方法などについて、ものづくり補助金を熟知した専門家が詳しく解説します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
一般的には「ものづくり補助金」と略して呼ばれることが多いため、製造業などのみが利用できる補助金であるとの誤解も少なくありませんが、実はそうではありません。ものづくり補助金は、サービス業などであっても広く利用することができます。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者等が取り組む革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。補助金額が大きいため比較的申請の難易度が高い補助金ではありますが、新たなサービス開発などを行う際には、ぜひ利用を検討すると良いでしょう。
ものづくり補助金の5つの枠の概要と補助金額
ものづくり補助金には、次の5つの枠が設けられています。
それぞれの枠の概要と、補助金額、補助率を見ていきましょう。
通常枠
「通常枠」とは、ものづくり補助金のもっとも基本となる類型です。この枠では、革新的な製品やサービス開発、生産プロセスやサービス提供方法の改善に必要な設備やシステム投資等を支援しています。
補助金額と補助率は、従業員数に応じてそれぞれ次のとおりです。なお、単に「ものづくり補助金」といった場合には、この枠を指していることが多いでしょう。もっとも多くの事業者が申請をする枠でもあります。
従業員規模 | 補助金額 | 補助率 |
5 人以下 | 100万円~750万円 | 原則:1/2 小規模企業者・小規模事業者、再生事業者: 2/3 |
6人~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,250万円 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」とは、業況が厳しいながら賃上げや雇用拡大に取り組む事業者が行う、革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援する特別枠です。
この枠の補助金額と補助率は、それぞれ次のとおりとされています。
従業員規模 | 補助金額 | 補助率 |
5 人以下 | 100万円~750万円 | 2/3 |
6人~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,250万円 |
デジタル枠
「デジタル枠」とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による
生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援する特別枠です。
この枠の補助金額と補助率は、従業員数に応じてそれぞれ次のとおりです。
従業員規模 | 補助金額 | 補助率 |
5 人以下 | 100万円~750万円 | 2/3 |
6人~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,250万円 |
グリーン枠
「グリーン枠」とは、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発または炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な
設備・システム投資などを支援する特別枠です。
この枠の補助金額と補助率は、従業員数に応じてそれぞれ次のとおりです。
従業員規模 | 補助金額 | 補助率 |
5 人以下 | 100万円~1,000万円 | 2/3 |
6人~20人 | 100万円~1,500万円 | |
21人以上 | 100万円~2,000万円 |
グローバル展開型
「グローバル展開型」とは、海外事業の拡大や強化などを目的とした「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援する特別な類型です。
グローバル展開型の対象となる投資等の対象は、次の4つのいずれかに限定されています。
- 海外直接投資
- 海外市場開拓
- インバウンド市場開拓
- 海外事業者との共同事業
この枠の補助金額と補助率は、それぞれ次のとおりです。
補助金額 | 補助率 |
1,000万円~3,000万円 | 原則:1/2 小規模企業者・小規模事業者: 2/3 |
ものづくり補助金(一般型)の採択率はどれくらい?
ものづくり補助金(一般枠)における過去の採択結果と採択率は、それぞれ次のとおりです。
公募回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率(小数点以下第3位四捨五入) |
第9次 | 3,552 | 2,223 | 62.58% |
第8次 | 4,584 | 2,753 | 60.06% |
第7次 | 5,414 | 2,729 | 50.41% |
第6次 | 4,875 | 2,326 | 47.71% |
第5次 | 5,139 | 2,291 | 44.58% |
第4次 | 10,041 | 3,132 | 31.19% |
第3次 | 6,923 | 2,637 | 38.09% |
第2次 | 5,721 | 3,267 | 57.11% |
第1次 | 2,287 | 1,429 | 62.48% |
ものづくり補助金はここ数回60%以上の採択率となっており、やや高い傾向にあるようです。応募者数も、一時期よりは減少傾向にあります。
ただし、これを裏返せばそれでも40%近くは不採択になっているということであり、比較的難易度が高い補助金であるという現状に変わりはありません。
ものづくり補助金の採択事例
ものづくり補助金は、公式ホームページで採択結果が公表されています。公表されているものは大半が事業計画名のみですが、それでも事業の内容が推測できるものも多く、自社の今後の展開を検討するうえで参考となることでしょう。
ここでは、ものづくり補助金第9次の採択結果から抜粋して紹介します。
- 高性能レトルト殺菌機導入による生産性向上、高品質商品製造事業
- 冷凍施設導入によるクリスピーバウムクーヘンの増産と新商品開発
- 移動式ペット火葬設備導入による新サービスの開発及び事業拡大
- 小型家電リサイクル工程における省人化処理ラインの新設
- ICTバックホウ導入による無電柱化工事対応と作業環境改善
- 高品質冷凍技術導入による販路の拡張と内製化の促進
- アクリル水槽のリサイクル事業に進出!端材まで活かす生産体制構築
- AI議事録自動作成機能を導入した会議標準化システムの開発
- 立体駐車場を活用した軽車両型収納コンテナユニットの開発
- スマートフォンによる微細ドットコード読み取りアプリケーションの開発
- 障害福祉サービスの受入れ状況共有・事業所プロモーションサイト
- メタバース空間でのライブハウス構築による空間的制限のない音楽体験の創造事業
- 革新的な包括デジタル遺言サービス(エターナルサポート)
- 読み間違いを防止する水や破れに強い対候性建築図面の開発
- 小規模店舗向け、トータルコーディネートができるセミオーダー家具のネット販売事業
- 廃液処理の内製化によりCO2排出量削減と企業SDGsへの挑戦
- 要支援児童・不登校児童のための学習塾
- オリジナル似顔絵付きケーキの生産性向上と全国への販路拡大
- 特殊車両の整備から修理・車検までのワンストップサービス確立
- デジタル化による製本の自動化と新規受注の獲得
- 農業用ドローン講習事業への新規参入による売上拡大及び地域貢献
第9次のものづくり補助金では、このような採択事例がありました。事業計画名のみでも、ものづくり補助金の趣旨に沿った、革新的サービスの開発などが多く採択されている実情が窺えることでしょう。
ものづくり補助金採択から補助金受給までの流れ
ものづくり補助金を申請してから、採択や補助金が受給できるまでの流れは、次のとおりです。特に、補助金が受け取れるタイミングについては誤解も少なくありません。
採択されたからといってすぐに補助金が振り込まれるわけではありませんので、この点をよく理解したうえで申請しましょう。
ものづくり補助金を申請する
はじめに、ものづくり補助金の申請書類を準備して、補助金を申請しましょう。ものづくり補助金は比較的難易度の高い補助金であるため、申請書類の作成にあたっては、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
ものづくり補助金は郵送や窓口への持ち込みなどで申請することはできず、電子申請システムのみで受け付けることとされています。電子申請の利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要ですので、アカウントを持っていない場合には、あらかじめアカウントの取得を行っておくとスムーズです。
ものづくり補助金が採択される
公募期間の満了後、採択か不採択かが決定されます。
結果については、申請者全員に対して速やかに事務局から通知されることとなっていますので、事務局からの連絡を見落とさないよう注意しておきましょう。
補助事業を実施する
ものづくり補助金が採択されても、すぐに補助金が振り込まれるわけではありません。申請をした事業について、先に実施することが必要です。
そのため、補助事業の実施にあたっては、金融機関などから一時的に借り入れをする「つなぎ融資」が必要となることが少なくありません。ものづくり補助金を申請する前から、借り入れ候補先の金融機関へ打診をしておくとスムーズでしょう。
事業の実施報告を行う
補助事業を実施したら、実施した事業の内容や実際にかかった経費などについて、補助金事務局へ実施報告を行います。実施報告には、かかった経費の請求書や領収書など多くの書類が求められますので、あらかじめ取りまとめておきましょう。
また、書類を紛失してしまうことのないよう、注意が必要です。
補助金が交付される
事業の実施報告に問題がないと判断されれば、ようやく補助金を受け取ることが可能です。つなぎ融資を受けていた場合には、融資の契約に従って、できるだけすみやかに返済をしておきましょう。
ものづくり補助金の採択率を上げるためできること
ものづくり補助金は補助金である以上、このようにすれば100%採択されるなどと確約することはできません。しかし、次の対策をすることで、採択される可能性を上げることはできるでしょう。
ものづくり補助金の採択率を上げるため、検討すべき内容は次のとおりです。
補助金の役割をよく理解する
ものづくり補助金に限らず、補助金は本来、自己資金や融資であっても行いたい事業について、より成長スピードを上げるために活用するものです。「何でも良いから補助金が欲しい」というスタンスで適当に作成をした事業計画では本気度を伝えることは困難であり、採択されない可能性が高いでしょう。
そもそも、「補助金がもらえないならやらない」程度の事業であればさほど収益性が見込めなかったり事業に熱が入らなかったりして、後に破綻するリスクがあります。
公募要領や過去の採択事例をよく読み込む
ものづくり補助金の採択率を上げるためには、公募要領や過去の採択結果をよく読み込むと良いでしょう。
そもそも、補助金の申請要件を満たしていなければ、いくら時間や手間をかけて申請書類を作成したところで採択される見込みはありません。公募要領を読み込んで、申請要件を満たしているかどうかよく確認することが必要です。
また、ものづくり補助金の公募要領には、審査項目や加点項目が明記されています。これらもよく読み込んだうえで、アピールできる内容は申請書類のなかでしっかりとアピールするとよいでしょう。
審査項目や加点項目について、審査員に分かりやすいよう整理をして申請書類を作成することも、ものづくり補助金の採択率を上げるためのポイントの一つです。
時間に余裕を持って取り掛かる
ものづくり補助金は1年中申請できるものではなく、所定の期間内に申請をしなければなりません。仮に申請期間ギリギリになってから申請の準備を始めてしまえば、申請書類を練り込む時間を取ることが難しく、練り込みの甘い不完全な申請書類のまま申請せざるを得ない可能性が高くなってしまうでしょう。
このような事態を避けるため、ものづくり補助金の申請をする際は、できるだけ早くから時間に余裕をもって取り掛かることをおすすめします。次回の公募が公表される前に、可能な部分から申請の準備を進めておくことも一つでしょう。
なお、現在公募期間中である第11次ものづくり補助金の公募締切は、令和4年(2022年)8月18日(木)の17時です。この次の公募予定はまだ公表されていませんので、この先の公募での申請を検討している場合には、ものづくり補助金の公式ホームページを定期的にチェックしておくと良いでしょう。
専門家へ申請サポートを依頼する
ものづくり補助金が採択される可能性を上げるもっとも効果的な方法は、中小企業診断士など専門家のサポートを受けて申請することであるといえます。専門家のサポートを受けることが、審査において直接の加点項目などとなるわけではありません。
しかし、専門家はものづくり補助金の趣旨や目的、審査項目、加点項目などを熟知しています。そのうえで、これらを踏まえて審査委員が審査しやすい申請書類を作成することが可能です。
たとえ同じ内容であっても審査項目などを踏まえて整理した申請書類とすることで、採択の可能性を高めることへとつながるでしょう。
また、中小企業診断士は、経営コンサルタント唯一の国家資格です。そのため、単に事業者が当初検討したとおりにただ申請書類を作成するのみならず、今後の事業の成功へ向けたアドバイスをも得意としています。
こうしたアドバイスを踏まえ、より実現性や収益性の高い事業計画書などの申請書類へとつくり込んでいくことで、よりものづくり補助金が採択される可能性を高めることへとつながるでしょう。
まとめ
ものづくり補助金の採択率は、ここ数回60%以上で推移しており、比較的高い水準となっています。しかし、これを裏返せばそれでも40%近くは不採択になっているということであり、難易度が高い現状に変わりはありません。
ものづくり補助金は申請書類のボリュームが多く、また読み込むべき公募要領のページ数も多いため、多忙な経営者様や事業者様が自分で申請することは容易ではないでしょう。また、専門家へ作成サポートを依頼することで、自社のみで作成をするよりも採択の可能性を上げることへとつながります。
当社トライズコンサルティングではものづくり補助金など補助金の申請サポートに力を入れており、これまでも多くの申請者を採択へと導いてまいりました。ものづくり補助金の申請をご検討の際には、ぜひトライズコンサルティングまでお気軽にご相談ください。