東京都には独自の補助金・助成金制度が多く設けられており、そのうちの1つが「TOKYO戦略的イノベーション促進事業」です。東京都で事業を営む事業者様は、この事業に申請できないか確認してみるとよいでしょう。
では、TOKYO戦略的イノベーション促進事業とはどのような制度なのでしょうか?また、この事業の活用にあたって専門家による申請サポートを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今回は、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の概要を紹介するとともに、申請にあたって専門家の申請サポートを活用するメリットや申請の流れなどについてくわしく解説します。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業とは
TOKYO戦略的イノベーション促進事業とは、東京都内の中小企業等が「イノベーションマップ」に基づき、自社のコア技術を基盤として社外の知見やノウハウを活用して行う革新的な技術・製品開発を支援する助成事業です。この助成事業は、公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施しています。
「助成」とはつまり、「お金を受け取れる」ということです。また、融資とは異なり、原則として返済は必要ありません。
ただし、申請したからといって必ず受け取れるものではなく、要件を満たして所定の期間内に申請したうえで、多数の申請の中から「助成対象として相応しい」として選ばれる必要があります。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の概要
続いて、TOKYO戦略的イノベーション促進事業について、助成対象者や助成限度額、過去の採択結果を紹介します。
助成対象者
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の助成対象者は、次のいずれかに該当する者です。
- 東京都内の本店または支店で実質的な事業活動を行っている中小企業者(会社および個人事業者)等
- 東京都内での創業を具体的に計画している個人
なお、中小企業者とは、業種ごとに次に該当する者を指します。
業種 | 資本金及び従業員数 | |
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 下記以外 | 3億円以下又は300人以下 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及び チューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円以下又は900人以下 | |
卸売業 | 1億円以下又は100人以下 | |
サービス業 | 下記以外 | 5,000万円以下又は100人以下 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円以下又は300人以下 | |
旅館業 | 5,000万円以下又は 200人以下 | |
小売業 | 5,000万円以下又は50人以下 |
助成限度額と助成率
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の助成限度額は、8,000万円(下限額は1,500万円)です。また、助成率は2/3に設定されています。
採択率
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の過去の採択率は公表されていませんが、採択数はそれぞれ次のとおりです。
- 2021年度:16件
- 2022年度:14件
- 2023年度:16件
毎年15件前後しか採択されておらず、非常に狭き門であるといえるでしょう。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の対象となる助成事業の主な要件
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の対象となるためには、助成対象としたい事業が一定の要件を満たしている必要があります。ここでは、助成事業の主な要件を4つ解説します。
- 「イノベーションマップ」に掲げられた開発支援テーマに合致した技術・製品の研究開発であること
- 他企業・大学・公設試験研究機関等との連携が含まれていること
- 早期に事業化を目指す研究開発であること
「イノベーションマップ」に掲げられた開発支援テーマに合致した技術・製品の研究開発であること
1つ目は、「イノベーションマップ」に掲げられた開発支援テーマに合致した技術・製品の研究開発であることです。「イノベーションマップ」とは、東京が抱える課題を解決するために、成長産業分野における開発支援テーマと技術・製品開発動向等を示したものです。
対象テーマの主な例は、次のとおりです。
- 防災・減災・災害復旧
- インフラメンテナンス
- 安全・安心の確保
- スポーツ振興・障害者スポーツ
- 子育て・高齢者・障害者等の支援
- 医療・健康
- 環境・エネルギー・節電
- 国際的な観光・金融都市の実現
- 交通・物流・サプライチェーン
他企業・大学・公設試験研究機関等との連携が含まれていること
2つ目は、他企業や大学、公設試験研究機関等との連携が含まれていることです。自社単独での開発は、助成対象となりません。
なお、助成対象は中小企業者等である一方で、連携先は大企業であっても構いません。また、連携先は東京都外の企業・大学・公設試験研究機関等でもよいこととされています。
早期に事業化を目指す研究開発であること
3つ目は、早期に事業化を目指す研究開発であることです。なお、「事業化」とは、販売などによって収入が発生することを指します。
(参考)助成対象とならない例
次の取り組みなどは、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の助成対象とはなりません。申請前に、これらに該当しないことを確認しておきましょう。
- 開業、運転資金など開発以外の経費の助成を目的としているもの
- 生産・量産用の機械設備の導入等、設備投資を目的としているもの
- 開発した試作品自体の販売を目的としているもの
- 研究開発の主要な部分が申請者による開発ではないもの
- 研究開発の全部または大部分を外注(委託)しているもの
- 量産化段階にある技術や、すでに事業化され収益を上げているもの
- 既製品の模倣にすぎないもの
- 技術的な開発要素がないもの
- 申請時において研究開発が概ね終了しているもの
- 所定の期日(2024年度8月の公募回では、2027年12月31日)までに、研究開発の完了が見込めないもの
- 研究開発が特定の顧客(法人・個人)向けで、汎用性のないもの
- 助成事業完了後、開発成果物(試作品等)の一定期間の保存が見込めないもの
- 公序良俗に反する事業など事業の内容について公社が適切ではないと判断するもの
- 東京都の政策・方針にそぐわないと判断されるもの
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の助成対象経費
TOKYO戦略的イノベーション促進事業では、どのような経費が助成対象となるのでしょうか?ここでは、助成対象経費を紹介するとともに、それぞれ概要を解説します。
原材料・副資材費
1つ目は、「原材料・副資材費」です。
開発品の構成部分や研究開発等の実施に直接使用し消費される原料、材料・副資材の購入に要する経費などがこれに該当します。なお、助成期間中に使い切る必要があり、助成事業終了時点での未使用残存品は助成対象となりません。
機械装置・工具器具費
2つ目は、「機械装置・工具器具費」です。
研究開発の実施に直接使用する機械装置・工具器具等の購入、リース、レンタル、据付費用に要する経費などがこれに該当します。ただし、パソコンのように汎用性が高く、使用目的が助成事業の遂行に必要なものと特定できない経費は助成対象となりません。
委託・外注費
3つ目は、「委託・外注費」です。
次のものなどが、これに該当します。
- 委託費:自社内で直接実施できない研究開発の一部(実施する上で創意工夫・検討が必要なもの)を外部事業者等に依頼する経費
- 外注費:自社内で直接実施できない研究開発の一部(仕様書等で実施内容を具体的に指示できるもの))を外部の事業者等に依頼する経費
- 共同研究費:共同研究契約により共同研究を実施するために要する経費
- 試作品等運搬委託費:自社内で不可能な実証データを取得するために、試作品を試験実施場所へ輸送する場合等に要する経費
- ユーザーテスト費:助成対象事業の対象となる試作品や製品に係るユーザーのニーズを把握するために委託・外注により行う調査・分析に要する経費
なお、技術開発要素を伴わないデザイン、翻訳等に係る経費はこれに該当しません。
専門家指導費
4つ目は、専門家指導費です。
外部の専門家から技術指導を受けたり、外部専門家に技術に関する相談を行ったりする場合に要する経費がこれに該当します。ただし、技術開発要素を伴わない指導・相談の経費や、専門家が事業者の事業所等に赴く際の交通費・宿泊費などは助成対象外です。
直接人件費
5つ目は、直接人件費です。
これには、次の経費などが該当します。
- 研究開発に直接従事した社員等の人件費
- 統括管理者の人件費(この助成事業実施に係る提出用経理書類等の資料の取りまとめや、進捗状況管理に伴う公社との打合せなど)
なお、この経費の助成金交付申請額は1年あたり1,000 万円が上限です。また、個人事業者・創業予定者の自らに対する報酬は助成対象とはなりません。
規格等認証・登録費
6つ目は、規格等認証・登録費です。
これには、次の経費などが該当します。
- 開発品の規格適合、認証の審査・登録に要する経費(認証・検査機関への申請手数料、成績証明書発行手数料、審査費用、登録証発行料、登録維持料(初回のみ)、翻訳など)
- 開発品の規格等認証・登録に係る外部専門家の技術指導、研修等を受ける場合に要する経費(技術文書・マニュアル整備等の指導及び作成代行、外部研修の受講料、その他研修・教育費用、外部専門家の旅費交通費など)
- 薬事承認申請に必要な臨床・非臨床の試験に係る経費
なお、これ以降で紹介する「規格等認証・登録費」「産業財産権出願・導入費」「展示会等参加費」「広告費」の助成金交付申請額の合計は、全体の2分の1が上限とされます。
産業財産権出願・導入費
7つ目は、産業財産権出願・導入費です。
次の経費などが、これに該当します。
- 開発した製品の特許・実用新案等に関する調査、出願(外国出願に係る現地代理人費用、翻訳料も含む)、審査請求に要する経費
- 特許・実用新案等(登録、出願、公告され、存続しているもの)を他の事業者から譲渡又は実施許諾(ライセンス料を含む)を受けた場合の経費
展示会等参加費
8つ目は、展示会参加費です。
展示会への出展小間料や展示会場への輸送費、海外での展示会開催に必要な通訳・翻訳費などがこれに該当します。
広告費
9つ目は、広告費です。
公告の製作や掲載に要する費用などがこれに該当します。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業で申請代行を活用するメリット
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請にあたって、専門家に申請サポートを依頼することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを4つ解説します。
- 手間や時間を最小限に抑えられる
- 採択の可能性を高められる
- 申請を期限に間に合わせやすくなる
- 「つなぎ融資」についてもアドバイスを受けられる
手間や時間を最小限に抑えられる
TOKYO戦略的イノベーション促進事業に自力で申請しようとすれば、多大な時間と労力を要します。専門家に申請サポートを受けることで、自社で要する時間と労力を最小限とすることが可能となります。
採択の可能性を高められる
専門家に申請サポートを依頼することで、採択の可能性を高めることが可能となります。
なぜなら、専門家にコンサルティングを受けることで、申請内容のブラッシュアップが可能となるためです。また、不備のない的確な申請書類が作成しやすくなることも、採択の可能性を高めることにつながります。
申請を期限に間に合わせやすくなる
専門家に申請サポートを依頼することで、期限までの申請に間に合わせやすくなります。なぜなら、専門家にサポートを依頼した場合には専門家が期限管理を行うためです。
「つなぎ融資」についてもアドバイスを受けられる
TOKYO戦略的イノベーション促進事業は助成金額が非常に高額であるものの、助成金は事業完了後の後払いです。そのため、一時的な融資(「つなぎ融資」といいます)を併用することが多いといえます。
補助金や助成金にくわしい専門家は融資についても知見を有していることが多く、融資についてもアドバイスを受けられる可能性が高いでしょう。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業で申請代行を活用した場合の基本の流れ
TOKYO戦略的イノベーション促進事業について申請サポートを活用した場合、どのような流れとなるのでしょうか?ここでは、助成金交付までの一般的な流れについて解説します。
- 申請代行を依頼したい専門家にコンタクトを取る
- 申請内容を練り込み申請書類を作成する
- 申請する
- 一次審査がされる
- 現地調査がされる
- 二次審査がされる
- 助成対象者が決定する
- 事業を実施する
- 完了報告をする
- 完了検査を経て助成金が交付される
申請代行を依頼したい専門家にコンタクトを取る
先ほど解説したとおり、TOKYO戦略的イノベーション促進事業への申請で専門家にサポートを受けるメリットは小さいものではありません。そのため、申請をご希望の際は、申請サポートを行っている専門家にまずコンタクトを取ることをおすすめします。
申請内容を練り込み申請書類を作成する
専門家とともに、申請内容を練り込みます。申請内容をどれだけブラッシュアップできるかが、採択・不採択の分かれ目になるといっても過言ではないでしょう。
申請内容を練り込んだら、これを申請書類に落とし込みます。
申請する
申請書類が作成できたら、所定の期限内に申請します。公募は一定の期間を設けて行われるため、期限に遅れないようご注意ください。
一次審査がされる
公募期間の満了後に、まずは一次審査が行われます。この一次審査は、書面での審査です。
現地調査がされる
一次審査を通過した事業を対象に、現地調査がなされます。専門家にサポートを依頼した場合には、現地調査の対策や注意点についても具体的なアドバイスを受けることが可能となります。
二次審査がされる
続けて、二次審査が行われます。二次審査は面談であり、日程は公社側が指定することとされています。
助成対象者が決定する
審査を経て、助成対象者が決まります。採択された事業者名などは、公式ホームページで公開されます。
事業を実施する
続けて、助成対象事業を実施します。先ほど解説したように、この時点ではまだ助成金は交付されていません。そのため、必要に応じて融資を併用するとよいでしょう。
事業の実施期間中には、中間検査がなされます。
完了報告をする
助成対象事業を実施したら、完了報告を行います。その事業の実績を公社指定の実績報告書等にまとめたうえで、終了日から15日以内に報告しなければなりません。期限が短いため、あらかじめ準備しておくと安心です。
完了検査を経て助成金が交付される
完了報告を受けて、完了検査が実施されます。問題がないと判断されると助成金額が確定し、最終的な請求手続きを経て助成金が交付されます。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の最新スケジュール
2025年1月時点において、TOKYO戦略的イノベーション促進事業へすぐに申請することはできません。前回の公募は2024年6月28日から2024年8月6日の期間で行われていました。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業は2025年度も公募される予定であるため、申請をご希望の事業者様は今後の情報を待ちつつ、申請サポートを依頼したい専門家へ早めにコンタクトを取っておくとよいでしょう。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請代行はトライズコンサルティングにお任せください
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請サポートは、当社トライズコンサルティングにお任せください。最後に、トライズコンサルティングの主な特長を4つ紹介します。
- 補助金・助成金の申請サポートに力を入れている
- 代表は認定支援機関に登録されている中小企業診断士である
- 中小企業施策に強い
- オンラインでの相談・打ち合わせに対応している
補助金・助成金の申請サポートに力を入れている
トライズコンサルティングでは補助金や助成金申請に力を入れており、携わった案件で高い採択率を誇っております。そのため、助成金への申請が初めてであっても安心してお任せいただけます。
代表は認定支援機関に登録されている中小企業診断士である
トライズコンサルティングの代表である野竿は中小企業診断士であり、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)としても登録されています。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。そのため、確かな知識と実績をもとに的確な申請サポートを行います。
中小企業施策に強い
トライズコンサルティングでは中小企業施策に強みを有しており、融資やお金の「見える化」支援なども得意としています。そのため、補助金や助成金に関することのみならず、自社の経営の困りごとについてさまざまなご相談をいただくことが可能です。
オンラインでの相談・打ち合わせに対応している
トライズコンサルティングは、Zoomなどのオンラインツールを活用して打ち合わせを行っています。そのため、忙しい事業者様であっても、場所を移動することなく効率的に打ち合わせを進めることが可能です。
まとめ
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の概要や活用の流れ、申請にあたって申請サポートを活用するメリットなどを解説しました。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業とは、東京都内の中小企業等が行う一定の技術・製品開発を支援する助成事業です。助成限度額は8,000万円と非常に高額に設定されており、獲得できれば自社の研究開発のスピードを早めやすくなるでしょう。
ただし、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の採択は狭き門であり、自力で採択を勝ち取ることは容易ではありません。そのため、申請にあたっては専門家による申請サポートの活用をおすすめします。
当社トライズコンサルティングは補助金や助成金のサポート実績が豊富であり、特に大型の補助金・助成金に強みを有しています。TOKYO戦略的イノベーション促進事業への申請をご希望の際は、トライズコンサルティングまでまずはお気軽にご相談ください。補助金や助成金の活用に関する初回のご相談は無料です。