事業再構築補助金の採択・不採択は、審査によって決定していることはご存知かと思います。
補助金の審査は、申請要件を満たしているのか、自社や自社を取り巻く事業環境がしっかりと分析されているか、補助事業の取組みの適正性や成果およびその根拠、実行可能性などさまざまな観点から採点され、点数の高い計画から採択されます。
しかし、これら事業計画の審査とは別に、一定の要件を満たすことで審査上の加点を得られる仕組みをご存知でしょうか?
今回は、事業再構築補助金の審査上有利になる加点項目の紹介と取得する方法、取得する際の注意点について解説します。この記事を読んでいただくことで、事業再構築補助金の加点項目について理解が進み、採択率を向上させることができるでしょう。
事業再構築補助金の8つの加点項目
事業再構築補助金に設けられている加点項目取得のハードルはさまざまですが、比較的要件の易しいものもあり、採択を目指すのであれば、少なくとも2〜3項目は満たしておきたいところです。ここでは、8つの加点項目の概要を説明します。
加点項目①:大きく売上が減少しており業況かが厳しい事業者に対する加点
2021年10月以降のいずれかの月の売上高が、対2020年または2019年同月と比較して30%以上減少している場合に加点を受けることができます。
コロナ前と比較して売上高が30%以上減少している月が1ヶ月でもあれば対象となるため、事業再構築補助金に申請するための「基本要件」である売上高等減少要件を満たす会社であれば、要件を満たすことはそれほど難しくないでしょう。
なお、「グリーン成長枠」には、売上高等減少要件は課されていませんが、要件を満たすことを証明する書類を提出することで、加点を受けることができます。
加点項目②:最低賃金枠申請事業者に対する加点
指定の要件を満たし、「最低賃金枠」に申請することで加点を受けることができます。2022年12月現在募集されている6つの事業類型のうち、「最低賃金枠」の採択率は高い傾向にあり、直近の第7回公募では約80%となっています。
なお、「最低賃金枠」では、「基本要件」に加え、「2021年10月から2022年8月までの間で、3ヶ月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること」という「最低賃金要件」を満たすことが求められます。
加点項目③:経済産業省が行うEBPMの取組への協力に対する加点
経済産業省が行っている「EBPM」の取り組みに対して、採否に関わらず、継続的な情報提供に協力する場合に加点を受けることができます。
「EBPM」とは、「エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング」の略で、日本語訳では「証拠に基づく政策立案」という意味です。これは、国等が行う政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、統計等の合理的根拠(エビデンス)に基づいて立案することを指します。
この加点項目を取得した場合、「ミラサポplus」への継続的な事業財務情報の登録が求められています。そのほか、事務局より適時情報提供を求められる場合もあることが想定されます。
加点項目④:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点
応募締切時点において、「パートナーシップ構築宣言」を公表している事業者に対して加点されます。「大規模賃金引上枠」と「グリーン成長枠」のみが対象の加点項目です。
「パートナーシップ構築宣言」とは、ポータルサイトに「サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者の皆様との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、「発注者」側の立場から企業の代表者の名前で宣言するもの」と説明されています。
簡単にいえば、サプライチェーン上の親会社・下請会社間での適正な取引を親会社の立場から宣言するものです。
申請手続きは、ポータルサイトからA4用紙2〜3程度のひな形をダウンロードし、宣言を作成、PDFでアップロードすることで完了します。なお、登録には数日を要します。
加点項目⑤:事業再生を行う者に対する加点
中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から事業再生の支援を受けている場合に加点されます。応募申請時において、次のいずれかに該当していることが必須要件です。
- 再生計画等を「策定中」の者
- 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年1月14日以降)に再生計画等が成立等した者
「事業再生」とは、事業の収益性や存続の見込みはあるものの、過去の設備投資等による借入金の返済負担等により、事業の見直しや金融機関等との調整が必要な中小企業の再生を公的機関等が支援するものです。再生計画等は、次に掲げる計画に関する支援を受けている事業者が対象です。
- 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)が策定を支援した再生計画
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が策定を支援した再生計画
- 産業復興相談センターが策定を支援した再生計画
- 株式会社整理回収機構が策定を支援した再生計画
- 「私的整理に関するガイドライン」に基づいて策定した再建計画
- 中小企業の事業再生等のための私的整理手続(中小企業版私的整理手続)に基づいて策定した再生計画(令和4年4月15日から適用開始)
- 産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の認定を受けた認証紛争解決事業者(事業再生ADR事業者)が策定支援した事業再生計画
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資した中小企業再生ファンドが策定を支援した再生計画
- 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が同機構法第19条の規定による支援
- 株式会社地域経済活性化支援機構が株式会社地域経済活性化支援機構法第25条の規定による再生支援決定を行った事業再生計画
- 特定調停法に基づく調停における調書(同法第17条第1項の調停条項によるものを除く。)または同法第20条に規定する決定において特定された再生計画
なお、「策定中」は1.から7.のみが対象です。1.から7.における「策定中」の定義は次のとおりです。
1.から3.「再生計画策定支援(第二次対応)決定」以後
4.企業再生検討委員会による「再生計画着手承認」以後
5.同ガイドラインに基づく「一時停止の要請」以後
6.同手続きに基づく「一時停止の要請」以後
7.事業再生ADR制度の「制度利用申請正式受理」以後
8.以降は、少なくとも「策定済」である必要があるようです。
加点項目⑥:特定事業者であり中小企業者でない者に対する加点
公募要領に記載されている『「中小企業者」に含まれる「中小企業者」以外の法人』以外の法人の場合に加点されます。具体的には、常勤の従業員数が次表の数字以下となる会社や個人のうち、資本金の額または出資の総額が10億円未満である事業者を指しています。
業種 | 常勤従業員数 |
---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 500人 |
卸売業 | 400人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 500人 |
加えて、一定の組合の場合も加点されます。具体的には次表のとおりです。
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合 | その直接または間接の構成員の3分の2以上が、常時300人(卸売業を主たる事業とする事業者については、400人)以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの。 |
酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会 | (酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会の場合)その直接または間接の構成員たる酒類製造業者の3分の2以上が、常時500人以下の従業員を使用する者であるものであって10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの。 (酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会の場合)その直接または間接の構成員たる酒類販売業者の3分の2以上が、常時300人(酒類卸売業者については、400人)以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの。 |
内航海運組合、内航海運組合連合会 | その直接または間接の構成員たる内航海運事業を営む者の3分の2以上が常時500人以下の従業員を使用する者であって10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの。 |
技術研究組合 | 直接または間接の構成員の3分の2以上が以下の事業者のいずれかであるもの。 ・中小企業者でない特定事業者 ・企業組合、協同組合 |
組合についても、その直接または間接の構成員に占める常勤の従業員数の割合や資本金の額または出資の総額の要件が設定されています。
加点項目⑦:サプライチェーン加点
同じサプライチェーン上に属する複数の事業者が連携して補助事業に取り組む場合に加点を受けることができます。
サプライチェーンとは、商品開発から原材料の調達、製造、消費者へ販売するまでの一連の流れを指します。なお、単独申請の場合、当該加点を受けることはできません。
加点項目⑧:足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点
ロシアの禁輸制裁の影響による輸出量の落ち込みや原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響により、2022年1月以降のいずれかの月の売上高が、2019年〜2021年同月と比較して10%以上減少している場合に加点されます。
事業再構築補助金の加点項目を取得する方法
事業再構築補助金の加点項目を取得する方法は大きく次の3種類あります。
- エビデンスとなる添付書類を提出
- 電子申請システム上でチェック事項を入力
- 指定の要件に該当
ここでは、加点項目がそれぞれどのような方法で取得できるのかを説明します。
エビデンスとなる添付書類を提出
次の4つの加点項目は、電子申請時にそれぞれ追加の書類を提出する必要があります。
加点項目①:大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
- 2021年10月以降のいずれかの月の売上高が、対2020年または2019年同月比で30%以上減少していることを示す書類
該当月の売上台帳を提出する場合が多いです。なお、「回復・再生応援枠」に申請する事業者は重ねての提出は不要です。
加点項目⑤:事業再生を行う者に対する加点
- 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受けており、公募申請時において再生計画等を「策定中」の者または再生計画等を「策定済」かつ公募終了日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者に該当することを証明する書類
「回復・再生応援枠」に申請する事業者は重ねての提出は不要です。
加点項目⑦:サプライチェーン加点
- 直近1年間の連携体の取引関係(受注金額または発注金額)がわかる書類につい て、決算書や売上台帳などの証憑とともに提出すること
- 電子申請の際、該当箇所にチェックをすること
当該加点は、連携体に含まれるすべての事業者が取引関係にあることが必須要件となります。
加点項目⑧:足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点
- 足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響により、2022年1月以降のいずれかの月の売上高が、2019年〜2021年同月と比較して10%以上減少していることを示す書類
- 足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けていることの宣誓書(事業者名)
宣誓書については、売上減少の要因が原油高・物価高に起因していることとの関連性を明確に記載することが求められます。
電子申請システム上でチェック事項を入力
次の2つの加点項目は、電子申請時にチェックを入れるだけで加点を得ることができます。
加点項目③:経済産業省が行うEBPMの取り組みへの協力に対する加点
前述したように、補助金の採否に関係なく、数年間に渡って「ミラサポplus」への財務情報の入力を求められます。
加点項目④:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点
事前に「パートナーシップ構築宣言」のポータルサイトからオンラインで登録を済ませておく必要があります。登録には数日を要するため、早めに申請しておきましょう。
指定の要件に該当
次の2つの加点項目は、それぞれ独自に指定された要件に該当することで加点されます。
加点項目②:最低賃金枠申請事業者に対する加点
要件を満たし、「最低賃金枠」に申請すれば加点を得ることができます。
加点項目⑥:特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点
資本金の額または出資の総額および常勤従業員数が一定の規模以下の事業者や一定の組合であれば加点を得ることができます。
事業再構築補助金の加点項目に関する注意点
事業再構築補助金の加点項目を取得する際に気を付けるべき点はどのようなものがあるでしょう。ここでは、主な注意点を3つ紹介します。
付加価値額における減少要件
次の2つの加点項目は、売上に代えて付加価値額の減少でも取得することが可能です。
- 加点項目①:大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
- 加点項目⑧:足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点
付加価値額減少の場合の要件は、それぞれ次のとおりです。
- 加点項目①:2021年10月以降のいずれかの月の付加価値額が、対2020年または2019年同月比で45%以上減少していること
- 加点項目⑧:2022年1月以降のいずれかの月の付加価値額が、2019年〜2021年同月と比較して15%以上減少していること
なお、付加価値額は、「営業利益+人件費+減価償却費」の式で算出されます。
継続的な情報提供を行う必要
申請時には特に追加書類などは求められませんが、加点を受けた場合、以降数年に渡って事務局に対して情報提供が必要となるものが次の加点項目です。
- 加点項目③:経済産業省が行うEBPMの取組への協力に対する加点
仮に不採択であった場合でも、継続的に「ミラサポplus」への財務情報の入力が必要になります。また、事務局から他の報告書類の提出を求められる可能性もあり、業務負担が増える可能性があります。
減点項目も設定
事業再構築補助金には、2つの減点項目が設定されています。
1つ目は、「グリーン成長枠」への2回目の申請です。「グリーン成長枠」は、既に過去の公募回で採択を受けている場合でも、申請することが可能ですが、その場合、一定の減点を受けます。
2つ目は、複数の事業者が連携して事業に取り組む場合に、連携体の必要不可欠性について審査された結果、減点の対象となる場合があります。これについては、連携体の代表者が申請する連携の必要性を示す書類に基づいて審査されます。
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まとめ
事業再構築補助金の加点項目について解説しました。
事業再構築補助金の採択には良い事業計画の策定が必須ですが、公募回を重ね、全体のレベルも上がってきています。そこからさらに抜きん出て採択という結果を勝ち取るためには、加点項目の取得は避けて通ることができません。
申請前でも準備できる内容も多いので、当記事を参考に加点項目の取得に動いていただきたいと思います。
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