【2022】事業再構築補助金の事業計画書の書き方は?採択されるポイント

事業再構築補助金の「事業計画書」の書き方

現在の事業を再構築して、新たな分野に進出するための補助金が「事業再構築補助金」です。ただ、事業再構築補助金を申請するには、比較的複雑な要件をクリアしていることを明確にするための事業計画書を作成する必要があります。

今回は、事業再構築補助金の事業計画書で押さえるべきポイントに触れ、少しでも採択に近づくために把握すべき事項を解説しています。この記事を、事業再構築を成功させるための事業計画書作成に役立ててみてください。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、コロナ禍で苦境に陥った中小企業等が、事業を再構築することで売上の回復と拡大を目指す取組を支援する国の補助金です。思い切った事業再構築に意欲を持っている事業者の挑戦を支援し、日本経済の構造転換を促進することを目的としています。

対象となる取り組み

「新分野展開」「業態転換」「事業転換」「業種転換」「事業再編」の5つに分類される「事業再構築指針」に基づく取り組みが対象になります。いずれも新商品の開発や新たな製造方法等への挑戦など何らかの新規事業に取り組む必要があります。集中と選択を意識し、事業を抜本的に見直さなければならないため、単なる設備更新や既存事業の延長では対象となりません。

補助金額 補助金額は最高8千万円ですが、従業員の人数によって上限額が変わります。また、かかった経費の全額が補助されるわけではなく、企業規模に応じて2分の1から3分の2が補填されます。

企業の種類応募枠従業員数上限額補助率
中小企業または中堅企業※通常枠20人以下100万円~2,000万円中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2) 中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3)
21~50人100万円~4,000万円
51人以上~100人100万円~6,000万円
101人以上100万円~8,000万円  

事業再構築補助金の事業計画書とは

事業再構築補助金では、応募にあたり15枚の事業計画書を書きます(補助金額が1,500万円までの場合は10枚)。

事業計画書は、「補助事業の具体的な取組」「将来の展望」「本事業で取得する主な資産」「収益計画」の4つの部分から構成されます。事業計画書に基づき採択審査が行われ、採否が決まります。

ヒアリングや追加の調査などはなく、書類に書かれている内容だけで判断されます。したがって、事業計画書の出来次第ですべてが決まるといっても過言ではなく、非常に重要なものです。

事業計画書を書く上で重要なこと

事業再構築補助金の事業計画書は、金融機関から創業融資等を受けるに当たって必要となる事業計画書等とは基本的な性質は異なるものの、共通する部分もあります。ここでは、事業計画書を書く上でのポイントについて解説しましょう。

事業性

融資を受ける際に作成する事業計画と同様、事業性は非常に重要な観点です。事業を取り巻く市場環境の情勢を盛り込み、十分に採算が合うことが期待できるのかどうかの根拠や分析が必要です。また、事業を継続する資金面の計画もしっかりと記載しましょう。

一貫したストーリー

融資を受ける際の事業計画は、いかに利益を出し、借りたお金をきちんと返していけるかが重要な視点になります。

一方、事業再構築補助金は返さなくて良い代わりに、本補助金の目的である「思い切った事業再構築を行い、日本経済の構造転換を促進すること」が求められます。補助金を活用してどのように事業を再構築し、自社の成長戦略を描いていくかー全体を貫くストーリーを描き、説得力を持たせなければなりません。

具体的にどういった内容とするのが望ましいかについては後述しますが、事業計画書を読む審査官に対して説得力のある事業ストーリーあるいはシナリオの構築を心掛けるようにしましょう。

まずは公募要領を確認しよう

事業再構築補助金を含め、補助金申請の際には「公募要領」などといった名称のついたルールブックにしたがって手続を進めなければなりません。事業計画書の作成方法や、事業計画書に記載すべき事項のヒントも隠れていますので、事業計画書を作成するにあたっては必ず熟読し理解しましょう。

事業計画書について公募要領に記載されていること

まず、形式的な指示として、電子申請システムに添付するため、最終的にPDF形式のファイルにしなければなりません。WordやPowerPointなどのアプリケーションで作成した後にPDF形式に書き出すと良いでしょう。

また、事業計画書はA4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内)で作成する必要があります。「ご協力ください」と記載されてはいますが、この分量を守るのが安全でしょう。このページ数制限は、実際に事業計画書を作成するとなかなか厳しい制約となることが多く、内容を簡潔に計画的にまとめることが求められます。

加えて、事業計画書の中では、申請する事業再構築の類型について、「事業再構築指針」との関連性を説明することが求められています。

「事業再構築指針」は事業再構築補助金事務局ホームページの「資料ダウンロード」から入手することができます。そこには、事業再構築の各類型の定義や、その類型に該当するための要件について示されています。

そのため、作成する事業計画書がどの事業再構築類型(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換または事業再編)になるのか、またそれに該当するとなぜ言えるのかを説明しなければなりません。これを説明するには、同じ「資料ダウンロード」で入手できる「事業再構築方針の手引き」がとても参考になりますのでぜひ活用しましょう。

審査項目について公募要領に記載されていること

当然のことながら、事業再構築補助金として交付できる全体の金額には予算上の制約・限界があります。したがって、申請をすれば誰でも補助金を受けられるわけではなく、事業再構築補助金の目的に則った補助事業から順に交付されることとなっています。

これはいわばコンペのようなもので、その審査を左右するものが事業計画書というわけです。

ただし、審査は一定の基準に沿って行われており、決して審査官の主観的な納得感で取捨選択されるわけではありません。公募要領には審査項目が明示されており、事業計画がこの項目に対応できているかにより採点・点数化され、採択と不採択とに振り分けられていくのです。

では、事業再構築補助金の審査項目はどのようなものでしょうか?

補助対象事業としての的確さ

たとえば、コロナ以前よりも売上高が一定割合以上減少していることなど、各事業類型における補助対象事業の要件を満たしていなければなりません。また、補助事業終了後3〜5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%(「グローバルV字回復枠」は5.0%)以上の増加等を達成する取り組みでなければなりません。

事業化点

事業化点は主に、補助事業が現実的に実施可能で、採算が合う継続的で効果的なものであるかという視点で4つの項目が示されています。

第一に、事業実施のための体制が補助事業を適切に実行できるか期待できるかが問われています。事業遂行のために重要な社外事業者も含め、実施体制を組織図形式で表すと理解しやすいでしょう。

また、財務状況については、事業遂行にあたり資金面での懸念がないことの説明が必要です。資金調達の見込みについても、特定の金融機関から一定の融資を受ける見込みを示し、補助金が入金されるまでの資金繰りに不安がないことの説明が必要でしょう。

第二に、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮することが求められています。ここでの市場ニーズは、新型コロナウイルス感染症により生じた、あるいは変化いたニーズを指すと考えられます。

市場ニーズの有無については、可能な限り公的機関や調査会社などの発表データではなく自社が行った調査データを用いるのが望ましいでしょう。また、補助事業の成果の事業化、つまり付加価値額要件を達成した段階で寄与するユーザーやマーケットや市場規模の想定が必要となります。

第三に、先行他社、競合他社に対してどのように優位性や収益性を有するかを示します。優位性は、競合と比較して差別化できることや競争力があることを価格や性能面から示し、その結果として売上や利益増加という収益性につながることです。併せて、事業化までに実施する業務ごとに、時期、担当者、内容を、表などを用いて明確にすると良いでしょう。

第四に、補助事業としての費用対効果が高いかが問われています。ここでは、既存事業でこれまで培ってきた強みの活用やシナジー効果(相乗効果)が期待されることによる効果的な取り組みとなっているかが問われています。

再構築点

再構築点では、事業性はさておき、事業再構築補助金の目的、あるいは政策的方向性に合致する補助事業であるかを審査する項目となっています。

第一に、事業再構築指針に沿った取り組みで、まったく異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるかが問われています。

再構築指針のどこに該当するかを明記してストーリーを展開するのは当然に求められますが、既存事業とまったく関係のない分野に飛び込めば良いということでもなく、あくまで自社が有している強みや核となる技術やノウハウを新しい領域に参入することが期待されていると考えられます。

第二に、既存事業における売り上げの減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いかという項目があります。この点については、2020年1月頃からの月次の売上高推移を表やグラフで示し、現状の事業環境を表現することができます。

そして、現行事業の見通し、つまりこのままでは経営危機に陥りかねないことを、数値を交えて説明することにより、事業再構築の必要性と緊要性を示せるでしょう。

第三に、事業化点の第二の項目とも関係しますが、市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取り組みであることが求められています。

事業再構築を行うからといって、自社のリソースが急激に増えるわけではありません。既存のリソース、すなわち人員、設備、資金、情報、ノウハウ等を再構築後の事業に選択的・集中的に活用する必要があります。

第四に、先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業かという項目が設けられています。

コロナ禍の中で行う事業再構築において、対面や接触を減少させるようなビジネスモデルへの再構築が求められ、そこでデジタル技術の活用が求められているといえるでしょう。地域のイノベーションについては、補助事業の実施によって事業拠点地域の雇用を創出する、あるいは地域の企業、自治体その他の団体との連携により地域の活性化に資することができるならば、加点につながるでしょう。

政策点

政策点は、補助事業が国の政策の方向性に沿ったものであるときに加点されるものです。実際のところは、前述の事業化点と再構築点で大勢が決まるといわれています。

そのため、政策点を取りにいくために事業再構築の姿を大きく変化させるのは得策でなく、たまたま適合していたときに加点される程度に捉えるのが妥当でしょう。

事業再構築補助金の事業計画書の書き方のポイント

事業計画書の具体的内容については、次の4つの項目について書くよう公募要領で指示されています。

  • 補助事業の具体的取組状況
  • 将来の展望
  • 本事業で取得する主な資産
  • 収益計画

前述の審査項目に応えることを意識しつつ作成することに留意しましょう。

「補助事業の具体的取組状況」の書き方

まず、現在の事業の状況を説明します。ここで明示的に強み、弱み、機会・脅威が挙げられていることから、SWOT分析を用いるのが妥当でしょう。

SWOT分析では「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4要素に分けて現状を考察します。このうち「強み」と「弱み」は自社独自の内部要因、「機会」と「脅威」は市場など自社を取り巻く環境要因です。

この中でも特に重要なのは「強み」です。次に重要視するべきは「機会」です。「強み」と「機会」を組み合わせた積極戦略により、差別化と優位性を持つ事業再構築の姿を導くことに繋がります。

そして、新型コロナウイルスの影響による事業再構築の必要性を述べた上で、再構築事業の内容を可能な限り詳細かつ具体的に説明します。審査官は事業内容を知らず、事業計画書の内容で理解し判断するわけですので、どんな事業をどのような資金計画の投資を行い、どんな実施体制・スケジュールで臨み、どんな効果を生み出すのかについて、理解しやすいことばで説明を尽くす必要があるでしょう。

また、前述の通り、どの類型の枠に応募するのかを明示し、事業再構築指針との関係も明らかにします。具体的には、指針に示されている各要件を満たしていることを説明します。

続いて、SWOT分析あるいはクロスSWOT分析を進めることで明らかになる自社独自の強みにより、新たな事業・市場において先行事業者や競合他社との差別化を図り競争力や優位性を持てるかを説明します。

なお、既存事業の縮小・廃止・省人化により従業員の解雇を伴う場合には、再就職支援の計画等の従業員への適切な配慮の取り組みについて具体的に記載する必要があります。

「将来の展望」の書き方

「補助事業の具体的取組内容」では、どんな事業を展開する予定なのかを中心に説明しましたが、「将来の展望」のパートでは、より現実に即した分析と記載していく必要があります。

まず、事業化に向けて想定している市場において、具体的にどんなユーザー(顧客)に向けて製品やサービスを提供するのか明確にし、そのマーケット・市場規模について理解を深め記載しなければなりません。

そして、その市場における価格的・性能的な優位性・収益性について説明します。製品やサービスを開発しただけでは事業になりませんので、どのような販促活動を行うのかなどマーケティング面の戦略についても説明するのが望ましいでしょう。

また、新しい事業を行うため、課題やリスクが生じることも想定されます。予測される課題やリスクを解決するための方法についても漏れなく記載しましょう。

そして、補助事業の事業化(採算)見込みについて、目標時期や売上規模、製品・サービスの価格についても簡潔に触れ、補助事業の将来像を表現します。

「本事業で取得する主な資産」の書き方

補助事業においては、さまざまな設備投資が必要になるケースが多いでしょう。補助事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、分類、取得予定価格等を記載します。

これらの資産については、補助実施期間中に別途「取得財産管理台帳」を整備することとなります。

「収益計画」の書き方

事業再構築補助金事務局ホームページの「資料ダウンロード」から入手できる「電子申請入力項目」の中には、収益計画のひな型が掲載されています。

項目としては売上高、営業利益、経常利益、人件費および減価償却費とシンプルですが、各年に必要となる経費、減価率、販売管理費、人員計画など、経営上の多くの要素が関係しており、綿密な計画を前提といて作成する必要があります。事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等についても具体的に記載しなければなりません。

また、営業利益、人件費および減価償却費を合計した金額が「付加価値額」であり、補助事業終了後3〜5年計画で年率平均3.0%(「グローバルV字回復枠」は5.0%)以上の増加等を達成しなければならないことは前述の通りですが、収益計画における「付加価値額」の算出については、算出根拠の記載が求められています。

そして、収益計画で示された数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等において伸び率の達成状況の確認が行われますので、現実的に達成可能な数値を積み上げるよう注意しましょう。

事業計画書で工夫したいポイント

事業計画書を作成するにあたっては、大変多く要素を盛り込まなければならず、いずれも複雑であることは否定できません。これをすべて文字のベタ打ちで表現したのでは、審査官も面食らってしまい、読み進める気も薄れ、心証も確実に悪くなることでしょう。そ

こで、事業計画書に工夫を加えて読みやすくしてはいかがでしょうか?

図表や写真を駆使する

事業再構築補助金の公募要領にも、「必要に応じて図表や写真を用い、具体的に記載してください」とあるように、物事の説明と理解に図、表、写真などが役に立つことは周知の事実です。

たとえば、自社の強みを延々と文章で語るよりも、表にまとまっていた方がわかりやすいと考えられます。また、売上高予測の数値を記載するときにも、表になっていた方が一目瞭然です。

現行事業のビジネスモデル、新しいビジネスモデル、実施体制などは、ことばで説明するよりも、相互関係のわかる図を用いれば理解しやすくなります。加えて、たとえば新しい事業が実現した際のイメージ写真などを盛り込むなら、補助事業の内容がより現実感を伴って伝わりやすくなるでしょう。

見出し+箇条書きを駆使する

事業再構築補助金の事業計画書のページ数には目安としての上限が指定されており、内容をコンパクトにまとめる必要性が非常に高いといえます。そこで活用したいのが、見出しと箇条書きです。

一般的な文書では無機的とか冷たいといった印象のある書き方ですが、ポイントを簡潔に伝えるにはとても有効な手段です。前述の表と組み合わせても良いでしょう。

表現する事項を見出しとして、その具体的内容を箇条書きにすることで、読み手である審査官にスッと伝える効果が期待できます。

まとめ

今回は、事業再構築補助金の事業計画書で押さえるべき要点についてお伝えしました。

独自に公募要領を研究するなどして事業計画書を作成するのも不可能ではありません。しかし、複雑な条件を満たしながら採択に近づく事業計画書の作成は困難な作業であるのも事実です。

簡単に失敗するわけにはいきませんから、専門家のサポートを受けながら事業計画書を作成して申請するのが有効なやり方といえるでしょう。

当社トライズコンサルティング代表の野竿は認定経営革新等支援機関であり、各種補助金の申請支援を実施しています。2019年度、2020年度のものづくり補助金の採択率は97%、事業再構築補助金でも多数の採択実績があります。 事業再構築補助金への申請をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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