企業が経営革新計画を策定し承認を受けるメリットは、小さいものではありません。メリットを享受したい場合には、経営革新計画の策定や承認申請にチャレンジするとよいでしょう。
では、経営革新計画の承認を受けることには、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?また、経営革新計画の承認申請について申請サポートを活用したい場合、誰に依頼すればよいのでしょうか?
今回は、経営革新計画の概要や承認を受けるメリットを紹介するとともに、経営革新計画の承認申請サポートを活用するメリットや申請サポートを依頼する際の注意点、申請サポートの依頼先などについてくわしく解説します。
経営革新計画の申請とは
経営革新計画の申請とは、新事業活動や一定要件を満たす経営目標を盛り込んだ「経営革新計画」を事業者が作成し、これについて都道府県または国の承認を受けるために行う申請です。
経営計画がないままに経営を続けることは目的地のないまま船を進めることと同じであり、行き当たりばったりとなりがちです。また、経営判断が必要となった際にも判断するための基準がなく、右往左往することにもなりかねません。
経営計画を策定することで自社のビジョンや目指すべき未来が明確になり、そこから逆算して「今やるべきこと」や「今期達成すべき目標」が明確となります。さらに、従業員との間でビジョンを共有しやすくなり、モチベーション向上につながる効果も期待できるでしょう。
そして、経営計画のうち、新規事業活動に取り組むなど一定の目標を盛り込んだものを、「経営革新計画」といいます。経営革新計画は自社にとっての羅針盤となるべきものであり、承認を受けず策定するだけでも十分に価値のあるものです。
しかし、経営革新計画について都道府県などから承認を受けることで、制度上もさまざまなメリットを享受できることとなります。そのため、経営革新計画を策定するのであれば、承認までを目指した方がよいでしょう。
経営革新計画を申請する主なメリット
経営革新計画を申請し承認を受けた場合、どのようなメリットが享受できるのでしょうか?ここでは、主なメリットを5つ解説します。
- 資金調達時の優遇措置の対象となる
- 補助金の加点対象となる
- 販路開拓の支援が受けられる
- 海外展開の資金調達がしやすくなる
- 特許料の減免措置の対象となる
なお、先ほど解説したとおり、経営計画は策定するだけでも自社にとって高い価値のあるものです。むしろ、会社が一定規模以上なのであれば、経営計画の策定は不可欠とさえいえるでしょう。しかし、実際にはここで紹介するメリットの享受を目的として経営革新計画を策定することも少なくありません。
資金調達時の優遇措置の対象となる
1つ目は、資金調達時における優遇措置の対象となることです。
経営革新計画の承認を受けた場合、資金調達時において優遇措置の対象となります。対象となる主な制度を2つ紹介します。
- 信用保証の特例
- 日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
信用保証の特例
信用保証とは、企業が金融機関からの融資を受ける際に、信用保証協会が債務保証をする制度です。債務保証を受けることで、まだ信用が育っていない企業であっても融資を受けやすくなります。
普通保証額の限度額は通常2億円(無担保保証は8,000万円)であるところ、経営革新計画の承認を受けた場合、これに別枠で2億円(無担保保証は8,000万円)が上乗せされます。また、新事業開拓保証の限度額が通常2億円であるところ、これが3億円へと引き上げられます。
日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
経営革新計画の承認を受けた場合、日本政策金融公庫の融資における金利優遇措置の対象となります。適用される特別金利は、原則としてそれぞれ次のとおりです。
制度 | 特別金利 |
---|---|
新事業育成資金 | 基準利率-0.9% |
新事業活動促進資金 | 基準利率-0.65% |
新事業活動促進資金 | 基準利率-0.65% |
補助金の加点対象となる
2つ目は、補助金の審査において加点対象となることです。
補助金は、所定の要件を満たして一定期間内に申請することで、国などからまとまった事業資金を受け取れる制度です。融資とは異なり、原則として返済は必要ありません。
ただし、補助金を受け取るには多数の申請者の中から、補助対象として相応しいとして選ばれる必要があります。この審査において加点となる項目は補助金によって異なるものの、経営革新計画の承認を受けていることが加点対象である補助金は少なくありません。
販路開拓の支援が受けられる
3つ目は、販路開拓の支援が受けられることです。経営革新計画の承認を受けた場合、次の販路開拓支援の対象となります。
- 販路開拓コーディネート事業
- 新価値創造展(中小企業総合展)での優遇
販路開拓コーディネート事業
販路開拓コーディネート事業とは、商品やサービスを持つ企業のマーケティング企画から、首都圏・近畿圏を舞台に想定市場の企業へのテストマーケティング活動までを支援する制度です。商社やメーカー出身者など広範囲な販路ネットワークを持つ専門家が、市場へのアプローチなどを支援します。ただし、一定の専門家謝金の負担は必要です。
新価値創造展(中小企業総合展)での優遇
新価値創造展(中小企業総合展)とは、中小企業・ベンチャー企業が自ら開発した優れた製品・技術・サービスを展示・紹介することで、販路開拓や業務提携といった企業間の取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供するイベント(展示会)です。
このイベントへの参加者選定では書面審査がなされますが、経営革新計画の承認を受けている場合、審査において優遇されます。
海外展開の資金調達がしやすくなる
4つ目は、海外展開時における資金調達がしやすくなることです。経営革新計画の承認を受けた場合、海外展開に関して次の制度の対象となります。
- スタンドバイ・クレジット制度
- クロスボーダーローン制度
- 中小企業信用保険法の特例
スタンドバイ・クレジット制度
スタンドバイ・クレジット制度とは、中小企業者の外国関係法人などが現地(海外)の金融機関から期間1年以上の長期資金を借り入れる際に、日本政策金融公庫が信用状を発行し、その債務を保証する制度です。この制度を活用することで、外国関係法人等による海外での資金調達が円滑となります。
補償の限度額は1法人あたり4億5,000万円であり、対象となる資金の使途は設備資金と長期運転資金です。
クロスボーダーローン制度
クロスボーダーローン制度とは、国内親会社を経由せず、日本政策金融公庫が中小企業者の外国関係法人等に対して直接貸付けを行う制度です。
これにより、外国関係法人等の円滑な資金調達が実現できます。
対象となる国・地域はタイ、ベトナム、香港であり、融資限度額は14億4,000万円(うち運転資金9億6,000万円)です。ただし、親会社の連帯保証が必要です。
中小企業信用保険法の特例
中小企業信用保険法の特例とは、中小企業者が国内の金融機関から海外へ直接投資する事業に要する資金の融資を受けるにあたって、海外投資関係保証の限度額を引き上げる制度です。通常は1企業あたりの限度額が2億円であるところ、特例の適用を受けた場合には限度額が3億円となります。
特許料の減免措置の対象となる
5つ目は、特許庁の減免措置の対象となることです。
発明について特許を取得する場合、出願時に審査請求料や登録を受けた特許を維持するための特許料などの支払いが必要となります。経営革新計画の承認を受けた場合、この審査請求料や特許料の減免措置が受けられる可能性があります。
経営革新計画の承認申請の流れ
経営革新計画の承認申請は、どのように進めればよいのでしょうか?ここでは、一般的な流れについて解説します。
- 申請先の都道府県担当部局へ問い合わせる
- 申請書類を準備する
- 申請書類を提出する
- 承認を受ける
申請先の都道府県担当部局へ問い合わせる
経営革新計画の承認申請先は、各都道府県の商工担当部局です。全国一律、同じ窓口ではありません。
また、手続きの流れなども都道府県によって異なる場合があります。そのため、その都道府県における手続きの流れを確認しておきましょう。
申請書類を準備する
次に、申請書類を準備します。経営革新計画の承認申請に必要となる主な書類の例は、次のとおりです。なお、実際に申請する際は、申請前に都道府県の担当部局へご確認ください。
- 「経営革新計画に係る承認申請書」
- 直近2期分の確定申告書類一式(税務署の受付済)(写)
- 法人の全部事項証明書(登記簿謄本)
- 定款の写し
申請書類を提出する
申請書類の準備ができたら、申請先の都道府県の指示に従って申請書類を提出します。なお、電子で申請できる都道府県も増えつつあります。
承認を受ける
提出後は、都道府県による審査を経て経営革新計画が承認されます。なお、経営革新計画の承認を受けるには次の要件を満たす必要があり、これらを満たしていないと判断された場合には承認を受けることができません。
- 新事業活動に取り組む計画であること
- 経営の相当程度の向上を達成できる計画であること
経営革新計画の申請で申請代行を活用するメリット
経営革新計画の申請にあたって申請サポートを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、専門家にサポートを受ける主なメリットを3つ解説します。
- 計画のブラッシュアップが可能となる
- 経営革新計画のメリットを十分に享受しやすくなる
- 手間や時間を削減できる
計画のブラッシュアップが可能となる
経営革新計画の申請サポートを専門家に依頼した場合、通常は単に「申請手続きを代行する」だけではありません。自社だけでは詰め切れていない部分を練り込んだり、ブラッシュアップしたりする段階からサポートを受けられることが一般的です。
これにより、自社の経営革新計画がより強力かつ現実的なものとなり、今後の経営における心強い羅針盤となるでしょう。
経営革新計画のメリットを十分に享受しやすくなる
経営革新計画の承認を受けても、そのメリットを生かし切れていないケースは少なくありません。これは、享受できるメリットを十分に理解できてないことが理由であると考えられます。
専門家に申請サポートを依頼した場合には、経営革新計画の承認を受けるメリットについてもアドバイスを受けられる可能性が高く、メリットを最大限享受しやすくなります。
手間や時間を削減できる
経営革新計画の策定や承認申請を自社だけで行おうとすれば、多大な時間と手間を要します。専門家による申請サポートを活用することで、自社でかける手間を最小限に抑えやすくなるでしょう。
経営革新計画の申請代行を活用する際の注意点
経営革新計画の申請サポートを活用する際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、主な注意点を3つ解説します。
- 計画の発案から「丸投げ」できるわけではない
- サポート内容は専門家によってまちまちである
- 専門性やコンサルティング能力は資格だけでは判断できない
計画の発案から「丸投げ」できるわけではない
1つ目は、計画の発案段階から「丸投げ」できるわけではないことです。専門家は事業者様とともに経営革新計画のブラッシュアップや練り込みなどを行う一方で、計画をゼロから作ってくれるわけではありません。
経営革新計画を策定するのはあくまでも事業者様自身であり、専門家はこれをサポートするにとどまります。なぜなら、実際に事業を営むのは事業者様であり、専門家ではないためです。そのため、「優遇措置を受けたいから、適当に計画を作って承認を受けて」などの依頼はできません。
サポート内容は専門家によってまちまちである
2つ目は、サポート内容が専門家によってまちまちであることです。
たとえば、当社トライズコンサルティングでは計画のブラッシュアップ段階からサポートをする一方で、すでに事業者様にて仕上げた計画を書面に落とし込むサポートだけを行う専門家もいます。
「経営革新計画の申請サポート」といっても具体的なサポートの内容が異なる可能性があるため、依頼をする前に、その専門家から自社が期待する支援が受けられるかどうかよく確認しておくことをおすすめします。
専門性やコンサルティング能力は資格だけでは判断できない
3つ目は、専門性やコンサルティング能力は、保有資格だけでは判断できないことです。
経営革新計画申請サポートのもっとも重要なサポート内容は、経営計画を練り込むコンサルティングでしょう。しかし、コンサルティングは一つの決まった正解を導き出すようなものではありません。
そして、コンサルティング能力は、専門家の保有資格だけで簡単に測れるようなものでもありません。もちろん、保有資格は専門家を選ぶ際の一つの重要な基準となるものの、申請サポートの依頼先には、経営革新計画の申請サポートに力を入れている専門家を選ぶことをおすすめします。
経営革新計画の申請代行は誰に依頼すれば良い?
経営革新計画の申請サポートは、誰に依頼すればよいのでしょうか?ここでは、依頼先の主な選択肢について解説します。
- 中小企業診断士
- 行政書士
- 税理士
- 金融機関
- 民間コンサルタント
中小企業診断士
1つ目は、中小企業診断士です。
中小企業診断士は、中小企業の経営診断や経営コンサルティングなどを専門とする国家資格です。中小企業の強みを最大限発揮する経営計画の策定などを得意としており、経営革新計画の申請サポートの依頼先としてもっとも適任といえるでしょう。
行政書士
2つ目は、行政書士です。
行政書士は、官公署に提出する書類の作成や権利義務関係の書類作成を専門とする国家資格です。要件を満たすことを書面の中で示す業務を得意としており、経営革新計画の申請サポートを行っている事務所も存在します。
ただし、行政書士業務は非常に広範にわたるため、事務所によって主力業務が大きく異なる傾向にあります。経営革新計画の申請サポートをまったく行っていない事務所も少なくありません。
税理士
3つ目は、税理士です。
税理士と顧問契約を締結している企業は多く、もっとも身近な専門家が税理士であるケースも少なくないでしょう。しかし、税理士は税務の専門家であり、必ずしも経営や事業計画の策定に強いとは限りません。
また、なかには経営革新計画の申請サポートを行う税理士も存在するものの、顧問先に限定されている場合がほとんどでしょう。
金融機関
4つ目は、金融機関です。
なかには、経営革新計画の策定支援に力を入れている金融機関も存在します。しかし、その場合であっても金融機関が直接経営革新計画の策定支援や申請サポートを行うのではなく、外部の専門家の紹介に留まることがほとんどです。
民間コンサルタント
5つ目は、民間コンサルタント(国家資格を有していないコンサルタント)です。
民間コンサルタントの中には非常に優秀な人も存在するため、信頼できるコンサルタントがいる場合には依頼することも一つの手でしょう。
その反面、民間コンサルタントはその能力や信頼性を裏付けるものがないことから、玉石混淆です。そのため、能力や信頼性を慎重に見極めたうえで依頼することをおすすめします。
経営革新計画の申請代行はトライズコンサルティングにお任せください
経営革新計画の申請サポートは、当社トライズコンサルティングにお任せください。最後に、トライズコンサルティングの主な特長を4つ紹介します。
- トップコンサルタントが直接サポートする
- 代表は認定支援機関に登録されている
- 補助金についてのサポートも可能である
- オンライン相談に対応している
トップコンサルタントが直接サポートする
コンサルティング会社に経営革新計画の策定や申請サポートを依頼した場合、トップコンサルタントは直接これに関与せず、コンサルティング会社のスタッフが担当することもあるようです。トライズコンサルティングでは、トップコンサルタントが直接サポートに携わるため、安心してお任せいただけます。
代表は認定支援機関に登録されている
トライズコンサルティングの代表である野竿は中小企業診断士であるほか、「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」としても登録されています。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。そのため、確かな知識と実績を活かしてサポートを行っております。
補助金についてのサポートも可能である
トライズコンサルティングでは、経営革新計画の申請サポートのほか、補助金の申請サポートにも力を入れています。
先ほど解説したとおり、経営革新計画の承認を受けた場合に有利となる(加点対象となる)補助金は少なくありません。経営革新計画承認の次のステップとして補助金申請をご希望の際も、トライズコンサルティングがお役に立てます。
オンライン相談に対応している
トライズコンサルティングではZoomなどのオンラインツールを活用し、オンライン相談に対応しております。そのため、全国どこからでもご相談・ご依頼いただけることに加え、忙しい事業者様が場所を移動することなく打ち合わせを進めることが可能です。
まとめ
経営革新計画申請の概要や承認を受けるメリットを紹介するとともに、専門家に申請サポートを依頼するメリットや注意点などをまとめて解説しました。
経営革新計画は、自社で策定した経営革新計画について都道府県などから承認を受ける制度です。経営革新計画の承認を受けることで、金利の優遇や補助金での加点など、さまざまなメリットを享受できます。より自社を飛躍させる経営革新計画を策定するため、専門家による申請サポートを活用するとよいでしょう。
当社トライズコンサルティングでは経営革新計画の策定支援や申請サポートを行っており、豊富な支援実績があります。経営革新計画の申請サポートを依頼できる専門家をお探しの際には、トライズコンサルティングまでお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。