利用される会社の業種や規模、目的によって、開発されるシステムは千差万別です。開発会社に見積もりを提示されても、ITの専門家のいない中小企業では、それが適正なものなのか判断するのは難しいでしょう。
特に、資金が潤沢ではない中小企業の場合、開発資金はできるだけ安く抑えなくてはなりません。
今回は、システム開発費用の相場と見積もりの内訳、その変動要因について解説します。開発費用を抑える方法についても紹介するので、貴社のシステム開発の参考にしてください。
システムの種類ごとの費用相場
一口にシステムといっても、その種類はさまざまです。ここでは、代表的な「Webシステム」、「業務システム」、「スマホアプリ」の3つのシステムについてそれぞれの概要と費用相場について解説します。
Webシステム開発
「Webシステム」とは、いわゆる「Webサービス」と同じ意味で、インターネット上で利用できるサービスを指しています。
ブラウザからアクセスすることで、誰にでも利用することが可能で、不特定多数のユーザーに利用してもらい、収益を確保することを目的に開発されます。代表的なサービスと費用相場は次のとおりです。
- マッチングサイト:100〜500万円
- 予約管理サイト:80〜500万円
- ECサイト:50〜400万円
- SNSサイト:100〜500万円
- 掲示板サイト:50〜300万円
このように、費用相場にはかなりの開きがあることがわかります。これは、たとえば「ECサイト」であれば、単なるカタログとしてのサイトなのか、カート機能・決済機能まで搭載するサイトなのかによって開発費用が変わるためです。
業務システム開発
「業務システム」とは、社内での効率的な業務の遂行のために開発されるシステムのことです。
昨今、受発注や在庫の管理、経理や請求書発行などのバックオフィス、グループウェアや社内SNSなどの情報共有などDXの推進によりあらゆる業務がIT化されています。代表的なシステムと費用相場は次のとおりです。
- 販売管理システム:850万円
- 顧客管理システム:1,000万円
- 生産管理システム:1,400万円
近年、数多のクラウド系サービスがリリースされており、それらを利用する企業も増えてきています。しかし、一般化されたサービスでは業務に対応できない場合もあるため、自社のビジネスモデルに合わせたシステムを一から構築する企業もあります。
スマホアプリ開発
「スマホアプリ」とは、「iOS」や「Android」などのOSで使用するスマートフォン向けのシステムのことです。
総務省の発行する「情報通信白書」の2020年版には、国内におけるスマートフォン普及率は約67%とあり、企業による「スマホアプリ」の開発も活発になっています。代表的なアプリと費用相場は次のとおりです。
- 電話・メッセージアプリ:100~500万円
- ショッピングカートアプリ:50~300万円
- ゲームアプリ:200~1,000万円
代表的なOSが2種類あるため、開発費が単純に2倍になってしまうことには注意が必要です。
また、OSのアップデートやデバイスの機種、通信環境などの要素により保守費用が嵩む傾向にあります。その分、「Webシステム」の方、がコストが低いかもしれませんが、ユーザーの利便性から「スマホアプリ」でないと使ってもらえないこともあるので、慎重に検討する必要があります。
システム開発の費用内訳
システム開発の見積もりには、普段あまり見慣れない作業工程が記載されています。作業内容を知ることで費用の妥当性を判断することができるようになります。
ここでは、システム開発の見積もりに掲載される代表的な項目について解説します。
要件定義
「要件定義」とは、開発するシステムにどのような機能を搭載するのか決定する工程にかかる費用です。システムの目的を決め、必要な機能・不必要な機能の洗い出しを行うキモとなる工程です。
この要件定義が不十分なまま開発したシステムでは、当初の目的を達成することはできないでしょう。基本的に開発会社のプロジェクトマネージャーが企業の担当者にヒアリングする形で行われます。
プロジェクトマネージャーとは、システム開発全体を指揮する役職で、PMとも呼ばれます。費用相場は概ね月額で60~100万円ほどで、機能に対する要望が多いほど費用も増えます。
運用設計
「運用設計」とは、開発したシステムを運用していくためのマニュアルの作成やインフラの設計工程にかかる費用です。システムに搭載する機能が増え、システムの規模も大きくなるほど、作成するマニュアルは煩雑になり、サーバーをはじめとするインフラ設備の購入費用も高くなります。
デザイン制作
「デザイン制作」とは、システムのデザインの工程にかかる費用です。機能には直接関係がないものの、ユーザーに長く使われ続けるシステムには、使いやすいユーザーインターフェースが必須であり、手が抜けない工程といえます。
費用相場は、搭載する機能の数に比例して増えていくほか、依頼側のこだわりによっても変わってくるでしょう。
スケジュール管理
「スケジュール管理」にも費用が発生します。
システムはプロジェクトマネージャーやシステムエンジニアなど多くのスタッフが携わって開発していくため、スムーズに作業工程を行えるように調整し続けなければ、開発日数がいくらでも増えてしまいます。そうならないためにも開発期間に応じて相応の調整のための費用が必要になります。
システム開発
「システム開発」は、前工程までで設計されたシステムをプログラミング等の技術を用いて構築していく工程にかかる費用です。システム開発で最も費用のかかる工程であり、その費用は「人月単位」という単位で計算されることが一般的です。
「人月単位」とは、エンジニア1名が「システム開発」工程をすべて完了するのに必要とする月数を指します。たとえば、「2人月」の場合、1人のエンジニアだと2ヶ月、2人だと1ヶ月かかり、「システム開発」工程が完了するということです。
また、エンジニアの技術力で、関わる作業の幅が異なります。「要件定義」などシステム開発の重要部分も担当できる上級システムエンジニアの場合単価が高く、指示に従ってプログラミング作業を行う初級システムエンジニアだと低くなります。各エンジニアの費用相場は次のとおりです。
- 初級システムエンジニア:60~100万円
- 中級システムエンジニア:80~120万円
- 上級システムエンジニア:100~160万円
つまり、上級システムエンジニアが「3人月」の「システム開発」工程に携わった場合、300~480万円の費用が発生することになります。
導入サポート
「導入サポート」とは、開発したシステムをクライアントに納入する際に行う初期設定や操作マニュアルの作成工程にかかる費用です。
クライアントは開発されたシステムがどういったものかはわかるものの、それがどういった仕組みで動くのかについての知識は有していません。そのため、クライアントがユーザーとしてシステムを利用できるように、開発会社が導入のサポートをする必要があるのです。
テスト設計・実施
「テスト設計・実施」は、開発したシステムにバグやエラーがないかを確認するためのテストを設計し、それを実施する工程にかかる費用です。代表的なテストは次のとおりです。
- 単体テスト:システム全体から1つの機能だけを取り出して行うテスト
- 結合テスト:単体テストを終えた複数の機能を組み合わせて行うテスト
- リグレッションテスト:機能の追加や変更、プログラムの修正に伴う、システムへの影響を確認するテスト
開発したシステムにバグやエラーがあれば、クライアントは目的を達成できません。そのため、運用開始までに完全になくすことはできないとしても、可能な限り入念にテストを実施することで、システムの完成度を高めることができます。
設備導入
「設備導入」とは、クライアントの目的を達成するために必要な設備等を導入する工程にかかる費用です。たとえば、システム開発に必要なソフトウェアやサーバーサービスの購入費が該当します。
出張・会議
「出張・会議」は、開発会社がクライアントと打ち合わせや導入サポートなどをする場合の移動や宿泊にかかる費用です。遠方の開発会社に依頼した場合、複数人が数日間の宿泊を伴うスケジュールになる可能性もあり、高額になる可能性があります。
保守サービス
「保守サービス」とは、システム開発後のアフターメンテナンスの工程にかかる費用です。
いくらテストを重ねても、バグやエラーをゼロにすることはできません。それらを自社で解決することはできませんので、開発会社に修正を依頼する必要があります。
「保守サービス」の費用相場は年額で開発費用の10~20%が相場とされ、毎年かかる費用になります。
システム開発の費用相場の変動要因
前述したように、開発するシステムの種類によって費用相場は異なります。しかし、たとえ同じ種類のシステムだとしても、費用相場にかなりの差があります。
ここでは、こうした差が生じる要因について解説していきます。
システムを開発する方法
システムを一から開発する方法を「フルスクラッチ開発」と呼びます。自社の業務フローなどに100%マッチしたシステムを開発するには、この方法を採用する以外の方法はありません。当然、一からシステムを開発することになれば、費用相場は高額になります。
しかし、現代では、汎用的な機能を搭載したパッケージソフトが数多くリリースされています。それらを組み合わせたり、カスタマイズしたりすることで、要求したことに近づくことができる場合もあります。これを「パッケージ開発」といいます。
すでに開発されたシステムを流用するため、開発期間も短くなり、「フルスクラッチ開発」と比較して費用相場は大幅に低くなります。
システムに実装する機能の多寡
同じシステムだとしても、搭載されている機能の数で費用相場が異なります。当然のことながら、搭載する機能が多ければ多いほど工数は増えるため、開発期間は伸長し、費用相場は高額になります。そのため、前述した「要件定義」における実装する機能の取捨選択が重要になります。
開発するシステムの規模
社内で使用する程度のシステムの開発であれば、既存のサーバーでも問題ありませんが、数万のユーザーがアクセスするようなシステムを開発するのであれば、それに耐えられるだけのインフラ環境を用意する必要があります。
また、規模の大きいシステムの開発は、開発会社の携わるスタッフも多くなり、必要な工数も増えるため、費用相場は高額になります。
システム開発の費用を低く抑える方法
良いシステムを開発しようとすれば、それなりに費用がかかってしまうものです。しかし、いくらでも費用をかけてしまうと、会社の資金繰りへの負担にもつながるでしょう。
ここでは、システム開発の費用を低く抑える方法について解説します。
実装する機能を必要最小限に設計する
「要件定義」の段階で、開発するシステムの目的を明確にしておくことが重要です。ここがあやふやだと必要のない機能まで搭載してしまい、結果として開発の費用は増大し、完成したシステムも使いづらいものになるでしょう。
そうならないためにも、システムを使用するユーザーをしっかりと分析し、本当に必要な機能は何であるのかを見定める必要があります。その際、反対に必要とする機能に不足がないようにしておくことも大切です。
リリース時の搭載が難しければ、機能を追加する拡張性は持たせつつ、段階的に機能を搭載していくことで費用を抑えることができます。
パッケージソフトやASPサービスを利用する
すでに開発されているパッケージソフトやASPサービスを利用することで、開発費用を大幅に削減することができます。
パッケージソフトの中にはカスタマイズできるものもあるので、自社の業務フローにある程度寄せることも可能です。しかし、自由度は一から開発したものには及びませんので、完全に要求を満たすものはないことを念頭に置いておきましょう。
フリーランスへの依頼を検討する
開発会社に属していないフリーランスにシステム開発を依頼するという手段もあります。
開発会社に依頼した場合、予算の都合上、新人のシステムエンジニアやプログラマーが担当になってしまう恐れがあります。一方、フリーランスの場合は間に会社が入っていないため、支払った費用はすべて個人の利益となります。そのため、より優秀なエンジニアに開発を依頼できるようになり、コストパフォーマンスが高くなります。
フリーランスの探し方ですが、「クラウドワークス」や「ランサーズ」、「ココナラ」などのマッチングサイトを活用し、募集をかけるという方法があります。応募してきた中で最も条件に近いエンジニアを選択し、開発を依頼すると良いでしょう。
自社での開発を試行する
最近では、ITスキルも社会人には必須のスキルといわれており、自社でシステムを開発するパターンも増えてきています。その際に役立つのが、ノーコード・ローコードの開発ツールです。
ノーコード・ローコードとは、プログラミングの専門知識がなくても、または少なくても、システムを開発できる手法のことです。代表的なものには「kintone」が挙げられます。
いずれも最低限のITスキルで利用することは可能で、料金も安価です。テンプレートが大体決まっており、プログラミングと比較して自由度が低く、限定的な機能しか持たせることができないというところが欠点です。
まずノーコード・ローコードの開発ツールを利用してみて、効果が見込めそうなら開発会社に依頼し、本格的にシステム開発を行ってみるという流れで進めれば無駄がなく、「要件定義」もスムーズでしょう。
国等の補助金を活用する
システム開発の費用を補助する制度の活用も検討できます。主に国や地方自治体が毎年募集しており、中小企業の発展のための取組みについて支援されます。
補助金を活用することで資金繰りはグッと楽になり、満足するシステムを開発することができるでしょう。システム開発に利用できる代表的な制度は次の3つです。
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進)
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
いずれも申請の要件がありますので、公開されている募集要領を読み、対象となるか確認してください。また、補助金を利用する際の注意点として、次の4つを押さえておかなくてはなりません。
- 事業計画の策定:補助金を使ってどのようなことに取組むのか、その効果を記載した計画書の作成
- 採否がある:事業計画の実現性や収益性を審査し、採否が決定
- 一部自己負担:補助率は費用全体の1/2~2/3で、それ以外は自己負担
- 原則、後払い:いったん費用の全額を支払った後の支給
「ものづくり補助金」を例にすると、事業計画はA4サイズの用紙で10枚程度のものを作成する必要があります。
また、採択率は年度によって異なりますが、おおむね30〜40%程度です。そのため、取り組みに要する費用が1,000万円の場合、補助率は1/2なので500万円が自己負担となります。
一度、1,000万円を開発会社に支払った後、開発したシステムの効果を整理して事務局に報告し、それが承認されれば晴れて補助金が入金されるといった流れです。
なお、自社で開発した際の人件費は補助金の対象とならないという点に注意ください。
まとめ
システム開発の費用相場と見積もりの内訳、変動要因などについて解説しました。
システム開発の工程は複雑で、費用の計算方法も独特です。こちらの記事でシステム開発についての理解を深めていただき、貴社にとってベストな方法を模索していただければ幸いです。
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