補助金を申請する際には、添付書類として事業計画書の提出を求められることが少なくありません。特に、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」など大型の補助金においては、事業計画書の提出は必須とされています。
では、補助金を申請する際に提出する事業計画書は、どのような点に注意して作成すれば良いのでしょうか?今回は、補助金の申請に必要な事業計画書を作成するポイントや残念な事業計画書の例などについて、補助金申請サポートに力を入れている中小企業診断士がくわしく解説します。
補助金とは
補助金とは、国や地方公共団体などから資金を受け取れる制度です。融資などとは異なり、原則として受け取った資金の返還は必要ありません。
補助金はその年度の政策に応じて設けられるものであり、存在する補助金制度は年度によって異なる可能性が高い他、公募要領なども随時改訂されています。そのため、自社が活用できそうな補助金を見つけたら、その制度が存在するうちに申請すると良いでしょう。
なお、補助金は公募要件を満たして申請をしたからといって、必ず受け取れるものではありません。多数の申請の中から採択がされて、はじめて受給資格を得ることが可能です。採択を勝ち取るためには、事業計画書をつくり込むことでしっかりとアピールする必要があるでしょう。
補助金の採択が遠のく残念な事業計画書の例
次のような事業計画書では、せっかく補助金の申請をしても採択が遠のいてしまいかねません。避けるべき事業計画書の例は、次のとおりです。
事業計画書を作成する際には、ここで挙げるようなものとなっていないかどうか、申請前によく確認しておきましょう。
- 専門用語が多用されている
- 審査項目が網羅されていない
- 主観的な記載である
- 全体の整合性が取れていない
専門用語が多用されている
自社の業務で日常的に触れている用語は、誰しもが知っているものだと感じてしまいがちです。しかし、その業界以外では馴染みのない用語や、業界外の人にとっては「聞いたことがある」という程度であり、しっかりとした定義までは知られていない用語は少なくありません。
補助金の審査員はその業界の専門家ではないため、事業計画書に専門用語が多用されていれば審査がしづらくなってしまいます。
また、たとえ業界では革新的ともいえる素晴らしい取り組みであったとしても、専門用語を多用していたり、業界内でのみ知られた常識をベースにしたりしていては、せっかくの優位性が伝わらない可能性もあるでしょう。
そのため、補助金の申請書類や事業計画書を作成する際には、専門用語を多用しないよう注意が必要です。
審査項目が網羅されていない
補助金には、それぞれ審査項目が設けられています。また、ものづくり補助金や事業再構築補助金など大型の補助金の多くでは、審査項目が補助金の公募要領に明記されています。
そのため、事業計画書を作成する際にはこの審査項目を踏まえ、これを網羅する形で作成するべきです。せっかく審査項目としてプラスになる要素があるにもかかわらず明記されていなければ、その点について審査のしようがなく、採択が遠のいてしまう可能性があるでしょう。
主観的な記載である
いくらバラ色の事業計画書であったとしても、単なる主観的な希望的観測では意味がありません。根拠のない適当な数字を並べただけの事業計画書では、採択が遠のいてしまいます。
事業計画書は、審査員が見た際に納得できるだけの根拠を具体的に提示したうえで作成しましょう。
全体の整合性が取れていない
事業計画書や補助金の申請書類全体の整合性が取れていなければ、採択が遠のいてしまうでしょう。必要書類を作成したら改めて書類全体を確認し、矛盾のないよう整合性を取ることが重要です。
補助金の事業計画書作成前に行うべきこと
補助金の事業計画書をいきなり作り始めてしまえば、全体の矛盾が生じたり主観的な記載に偏ったりしてしまいがちです。そのため、事業計画書をいきなり書き始めることはおすすめできません。
補助金申請に使用する事業計画書を作成する前に、次のことを行いましょう。なお、これらは補助金獲得のためのみに必要となるわけではなく、その後実際に事業を軌道に乗せるために必須となる事項です。
経営指針や事業目的の明確化
はじめに、企業としての経営指針や、今回補助対象としたい事業を行う目的を明確化します。これは、その事業計画書の根幹であり、建物でいえば基礎となる土台の部分です。
基礎が安定していなければ、その上にいくら堅牢な家を建てたところで、不安定となってしまうでしょう。そのため、まずは十分に時間をかけ、自社の目指すべき方向性や、その方向性達成のためになぜ今回補助対象とした事業が必要であるのか、しっかりと検討する必要があります。
なお、経営指針は「どのような人に、どのような取り組みで貢献したいのか」を検討していくと、比較的定めやすくなるでしょう。
競合や市場の分析
事業計画書の策定には、競合企業や市場の分析が不可欠です。
たとえば、その場所に魚がいなければ、いくら最新の素晴らしい仕掛けを作ったところで魚を釣りあげることはできません。また、仮に魚がたくさんいたとしても、釣る人が多かったりましてや資金が豊富な釣り人が船を使って漁場全体に大きな網を仕掛けたりしている状況では、よほど趣向を凝らさなければ魚を釣り上げることはできないでしょう。
このように、その事業を行う市場や競合の状況を分析しなければ、どのような手法で事業を行うのかを定めることは困難です。そのため、新規事業を展開する場合には、戦略を検討するにあたって、市場や競合の状況を分析する必要があります。
これをしっかりと行うことで、より説得力のある事業計画書となるでしょう。
自社が置かれた状況の分析
競合や市場の分析と併せて、自社が置かれた状況の分析も行います。
引き続き釣りにたとえれば、仮に自社に釣り竿が1本しかなければ、多くの人が魚を取り合っている環境下で参入をしても勝ち目は少ないでしょう。この場合には、そもそもの漁場を変えることも検討すべきです。
一方、釣り人は多いものの多くの釣り人が1本の釣り竿のみで勝負をしているところ、自社が大きな網を使えるのであれば、勝ち目があるかもしれません。さらには、他者とは違う特殊なエサが製造できるのであれば、これを活用する方法もあります。
このように、市場や競合の状況と、自社の状況(強みや弱点など)をともに理解し掛け合わせることで、取るべき戦略が決まっていくでしょう。そのため、市場や競合の分析と併せて、自社の状況に関する分析も不可欠といえます。
戦略の練り込み
市場や競合、自社の分析ができたら、これらを踏まえて戦略の練り込みを行います。
戦略とは、「戦い方」のことです。たとえば、上の例でいえば「1日10匹の魚を釣る」ことは戦略ではなく「目的」です。一方、「大きな網を使う」や「他者が製造できない特殊なエサを使う」などが「戦略」です。
青写真ではあるかと思いますが、あらかじめ市場などに分析をしたうえで、あらためて戦略を練り込みましょう。仮に検討が甘いことに気がついたら、その部分を補強するよう検討を重ねることが重要です。
事業実施のスケジュール検討
戦略が検討できたら、事業実施の具体的なスケジュールを検討しましょう。特にしっかりと決めておくべき事項は、従業員の増員予定や、今後複数店舗を出店するのであればそれぞれの出店時期の目安などです。
資金繰りの検討
資金は、いわば企業にとっての血液です。仮に黒字であったとしても、資金の循環が止まれば企業は倒産してしまいます。そのため、新規事業を行うにあたって資金がショートしないかどうか、綿密に予測し確認しておきましょう。
採択に近づく補助金の事業計画書作成のポイント
補助金の採択を勝ち取るため、事業計画書はどのような点に注意すれば良いのでしょうか?採択に近づく事業計画書を作成するための主なポイントは、次のとおりです。
作成の前に公募要領をよく読み込む
補助金の申請書類や事業計画書を作成する前に、その補助金の公募要領を読み込みましょう。
公募要領には、その補助金で重視される審査項目や加点項目が明記されていることが少なくありません。公募要領の内容を踏まえて申請書類や事業計画書を作成することで、審査員が審査をしやすい書類となるでしょう。
公表されている過去の採択事例を参照する
大型の補助金を中心に、過去の採択事例が公表されています。事業計画書の作成にあたっては、過去の採択事例を参照すると良いでしょう。
公募要領と併せて過去の採択事例を確認し、どの点が評価されて採択されたのかなどの仮定を立てることで、より採択されやすい事業計画書を作成しやすくなります。
書き始める前に計画をよく練り込む
事業計画書をいきなり書き始めることはおすすめできません。あらかじめ必要な項目をよく検討したうえで、その内容を踏まえて記載を始めましょう。事業計画書の作成前に検討しておくべき事項は、先ほど解説したとおりです。
専門用語は最小限に抑える
補助金はさまざまな事業を営む事業者から応募されるものであり、補助金の審査員はすべての業界にくわしいわけではありません。そのため、専門用語は最小限に抑え、仮に専門用語を使う場合には丁寧な注釈を加えることをおすすめします。
また、たとえ業界内では革新的な事業であったとしても、審査員にはその素晴らしさが伝わらないかもしれません。そのため、業界内では周知の事項であったとしても、丁寧に前提を説明するとよいでしょう。
なお、これらの点をその業界内の人が確認することは容易ではありませんので、できれば業界外の人に一読してもらい、理解できない点について指摘を受けることをおすすめします。
全体の整合性を確認する
事業計画書や補助金の申請書類を作成したら、改めて全体を見直して整合性を確認しましょう。金額やスケジュールなどの矛盾はもちろん、経営理念と戦略が合っているかどうかなど、ストーリーとしての整合性も確認することをおすすめします。
誤字脱字に注意する
事業計画書や申請書類を作成したら、誤字脱字を入念にチェックしてください。意味が伝わる程度の多少の誤字脱字であれば、それだけで不採択になる可能性は低いでしょう。
しかし、あまりにも誤字が多かったり、重要な点に誤字があったりすれば、申請書類全体の信頼性を損ないかねず審査上マイナスとなる可能性があります。
補助金の事業計画書作成を専門家に依頼する主なメリット
補助金申請で提出する事業計画書の作成は、専門家に依頼することも可能です。事業計画書の作成を専門家に依頼する主なメリットとしては、次のものが挙げられます。
時間と手間が削減でき本業に専念できる
補助金の申請に耐えうる事業計画書を自社のみで作成するには、多大な手間と時間が必要となります。
事業計画書が必要な補助金を申請するということは、新規事業の立ち上げ期であることが多く、ただでさえ時間がないという場合も多いでしょう。専門家に事業計画書の作成を依頼することで、自社でかける手間や時間を大きく削減することが可能となります。
補助金採択の可能性を高められる
専門家に事業計画書の作成を依頼することで、補助金が採択される可能性を高めることが可能となります。
前提として、専門家が書類を作成したり代行申請をしたりしたからといって、加点ポイントとなるわけではありません。しかし、専門家は補助金の審査項目や加点ポイントを理解し、これを踏まえて事業計画書を作成します。また、専門家のアドバイスをもとに検討を重ねることで、事業計画をブラッシュアップすることが可能です。
そのため、専門家のサポートを受けることで、採択に近づきやすくなるといえるでしょう。
外部の視点からのアドバイスが受けられる
自社のみで事業計画書を作成すると、どうしても主観の要素が強くなりがちです。専門家に依頼して外部の視点を入れることで、これまで気づいていなかった自社の強みや、検討が甘かったポイントなどに気付きやすくなるでしょう。
また、無意識に使用していた専門用語や、業界内では常識であってもその他の人には知られていない事項などに気づきやすくなります。これにより、補助金審査員にとってわかりやすい事業計画書となるでしょう。
事業運営の羅針盤ともなる事業計画が作成できる
事業計画書は本来、補助金申請のためだけに使用するものではありません。頭に汗をかいてしっかりと練り込んだ事業計画書は、経営の羅針盤ともなる非常に心強いツールとなります。
専門家とともに事業計画書を作り込むことで、今後の経営において拠りどころとなる事業計画書を手に入れることが可能となるでしょう。
補助金の申請はトライズコンサルティングにお任せください!
当社「トライズコンサルティング」では、補助金の申請サポートに力を入れています。中でも、事業を成功に導くための事業計画書の作成を得意としており、これまでも多くの事業者様をサポートしてきました。
補助金の採択を勝ち取るためには、事業計画書の練り込みが最重要であるといっても過言ではありません。補助金申請で提出をする事業計画書の作成でお悩みの際には、ぜひトライズコンサルティングまでご相談ください。
まとめ
補助金の多くで、事業計画書の提出が求められています。事業計画書をしっかりと練り込むことで、補助金が採択される可能性を高めることができるでしょう。それに加えて、今後の事業成長へ向けた羅針盤とすることも可能となります。
しかし、事業計画書の練り込みや作成を自社のみで行うことは容易ではありません。自社のみで作成した場合にはどうしても客観視が難しくなるほか、検討の漏れている項目などに気が付きにくいためです。
そのため、補助金の申請において事業計画書を作成する際には、専門家のサポートを受けると良いでしょう。
トライズコンサルティングは中小企業診断士の野竿が経営しており、事業計画書の作成支援や補助金の申請代行に力を入れています。補助金の申請や事業計画書の作成でお困りの際には、ぜひ当社トライズコンサルティングまでお気軽にご相談ください。