個人事業主や零細事業者の販路開拓などを支援してくれるとして人気の小規模事業者持続化補助金。2022年度は内容が大幅に見直され、パワーアップして公募が始まっています。
新型コロナウイルス対策の低感染リスク型ビジネス枠がなくなり、代わって5つの特別枠が創設されました。補助金額も、従来の50万円(応募要件によっては100万円)から200万円に大幅アップされました。
今回は、小規模事業者持続化補助金「特別枠」について解説します。
小規模事業者持続化補助金の一般型とは
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が地域の商工会議所や商工会と一緒に経営計画を作成し、計画に沿って行う販路開拓や生産性改善の取り組みを補助してもらえる制度です。具体的な対象者や応募要件について解説していきましょう。
対象者
従業員数20名以下の小規模な事業者が対象で、個人事業主でも応募できます。
<小規模事業者の定義>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
なお、従業員数は常勤の社員を指すので、役員や勤務時間の短いパートやアルバイトの人数は含みません。
応募要件
- 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等の取り組みであること。または、販路開拓等の取り組みと併せて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること。
- 商工会または商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること。
補助金額
上記応募要件を満たす通常枠であれば、補助金上限額は50万円、補助率は2/3です。対象となる経費が75万円掛かったとしたら、そのうち2/3の50万円が補助金としてもらえるということです。
対象経費
補助金申請の対象となる経費は、次の11費目です。
- ①機械装置等費
- ②広報費
- ③ウェブサイト関連費※
- ④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
- ⑤旅費
- ⑥開発費
- ⑦資料購入費
- ⑧雑役務費
- ⑨借料
- ⑩設備処分費
- ⑪委託・外注費
※Webサイト関連費は申請補助金額の1/4が上限です。
人件費や商品仕入れなど通常経費は対象にならず、あくまで販路開拓または生産性向上の取り組みに必要な経費のみ対象となります。また、車両やPCやタブレット、プリンターなどの汎用的に使用できるものやトナーなどの消耗品は対象になりません。
小規模事業者持続化補助金「特別枠」の概要
では、小規模事業者持続化補助金の「特別枠」について詳しく解説していきましょう。
小規模事業者持続化補助金一般型には、通常枠の他に5つの特別枠があります。対象者や応募要件などは前述のとおりですが、特別枠には追加の応募要件がある他、補助金額が100万円~200万円にアップします。
また、特別枠は要件を満たさなければ、採択されても補助金が交付されないものも多いため注意が必要です。各特別枠の内容を紹介しましょう。
賃金引上げ枠
まずは、賃金引上げ枠です。2021年10月の最低賃金引き上げに対応したものです。
その名のとおり、賃上げを要件に補助金額を通常枠の50万円から200万円にアップしてくれます。
ただし、賃上げできなかった場合は、補助金が交付されないことに注意が必要です。
賃金引上げ枠の要件を確認しましょう。
応募要件
- 補助事業実施期間に事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より30円以上引き上げること。
- すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より30円以上に引き上げること。
※事業場内最低賃金とは、補助事業実施場所で働く従業員の中で最も安い時給です。
補助金額
補助金額の上限は200万円、補助率は2/3となります。なお、直近決算が赤字(課税所得がゼロ)の場合は、補助率が3/4に引き上げられます。
卒業枠
続いて卒業枠です。小規模事業者持続化補助金は、従業員20名以下(製造業等の場合)の小規模事業者しか申請できませんが、補助事業によって事業規模を拡大し、小規模事業者でなくなることを要件に、補助金額が200万円にアップします。
ただし、要件を満たせなければ補助金は交付されませんので、新規採用が確定的な場合を除いて、リスクが高いかもしれません。
応募要件
- 補助事業実施期間に雇用を増やし、前述の小規模事業者の定義となる従業員数を超えて下記の従業員規模に拡大すること。
<小規模事業者の従業員数>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 21人以上 |
卸売業・小売業・サービス業 | 6人以上 |
補助金額
補助金額の上限は200万円、補助率は2/3となります。
創業枠
創業枠は、「特定創業支援等事業」による支援を受けていることが要件です。従来、特定創業支援等事業を受けていたら補助金が100万円にアップする措置がありましたが、今回は創業枠として設定され、補助金額が200万円にアップしました。
応募要件
- 過去3年以内に「特定創業支援等事業」による支援を受けていること。
「特定創業支援等事業」とは認定市区町村または認定連携創業支援等事業者が実施した創業支援の事業です。具体的には、市区町村や商工会議所等が実施する創業セミナーの参加や商工会議所等の相談員と一緒に経営計画を作成したことなどが該当します。
過去にそのような経験があれば、該当するかどうか問い合わせてみましょう。
補助金額
補助金額の上限は200万円、補助率は2/3となります。
インボイス枠
インボイス枠は、2023年10月から始まるインボイス制度に対応するものです。インボイス制度の開始に伴い、これまで消費税免税であった事業者が、消費税課税事業者に変更するケースが多数発生すると考えられ、円滑な移行を支援するための措置といえるでしょう。
なお、実際にインボイス発行事業者(消費税課税事業者)にならなければ、補助金は交付されません。
インボイス枠
- 消費税免税事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録すること。
補助金額
補助金額の上限は100万円、補助率は2/3となります。
後継者支援枠
後継者支援枠は他の枠とは少し毛色が異なり、誰でも申請できるわけではありません。というより、中小企業庁が開催する「アトツギ甲子園」のファイナリストのための支援策なので、通常の事業者には関係のない応募枠となりますが、参考までに掲載します。
応募要件
- 「アトツギ甲子園」のファイナリストになっていること。
アトツギ甲子園とは、中小企業庁が開催するイベントで、アトツギ(後継者候補)が新規事業アイデアを競い合うものです。
補助金額
補助金額の上限は200万円、補助率は2/3となります。
小規模事業者持続化補助金「特別枠」の申請手続きの流れ
小規模事業者持続化補助金の申請手続きはどのようにするのでしょうか?続いては、特別枠の申請手続きについて紹介します。
GビズIDプライムアカウントの取得
まずは、電子申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」を取得しましょう。
申請は郵送でもできるので、必ずしも電子申請をする必要はありません。ただし、電子申請すると審査で加点されるなど有利になるため、電子申請をおすすめします。
GビズIDプライムアカウントの詳細はこちらを参照してください。
申請書類の作成
続いて、申請書類となる経営計画を作成します。経営計画はA4サイズで8ページほどの分量にまとめます。様式は小規模事業者持続化補助金のサイトからダウンロードできます。
事業支援計画書の交付
小規模事業者持続化補助金一般型は、商工会または商工会議所の支援を受けることが要件になっています。会員になっていなくても、お近くの商工会または商工会議所に申請書類を持参して相談すれば、支援を受けた証明になる事業支援計画書を交付してもらえます。
締切前になると混み合うこともあるので、早めに相談に行くことをおすすめします。
申請
郵送または電子申請で申請書類を送ります。
小規模事業者持続化補助金「特別枠」の審査および加点項目
小規模事業者持続化補助金は、採択審査があり申請すれば必ずもらえるものではありません。採択審査は審査項目に基づいた書類審査で行われます。
採択率は4割~6割と、ハードルは決して低くありません。書類審査を勝ち抜くには、経営計画で審査項目をしっかり網羅し、審査員を納得させることが必要です。
ここでは、審査や加点項目の概要を解説していきます。
審査項目
審査項目には、次の4つがあります。8ページの経営計画の中でしっかり説明していく必要があります。
自社の経営状況分析の妥当性
自社の強み、弱み、現在の課題をしっかり分析できているかが問われます。
強みは、何もすごいものでなくても構いません。売りにしているポイント、お客様の声なども盛り込み、具体的に記載するようにしましょう。また、商品写真なども掲載し、文章だけでなくビジュアルでわかりやすく伝える工夫も必要です。
経営方針・目標と今後のプランの適切性
自社の目指すべき姿と、補助金で実施する事業に整合性が取れていることが重要です。自社の強み、弱みをふまえて、補助金を使って課題解決するというストーリーを意識するようにしましょう。
補助経営計画の有効性
補助経営計画の有効性、すなわち実現性が問われます。どんなにすばらしい計画でも、絵に描いた餅であれば意味がありません。実施体制やこれまで培ったノウハウ、技術など問題なく事業を実現できるだけの裏付けをしっかり説明しましょう。
また、補助事業でどれだけお客様が増えるのか、売上が増えるのかも重要なポイントです。見込みで構わないので、具体的な数値を盛り込んで記載するようにしましょう。
積算の透明・適切性
費用見積もりが適正か、積算の透明・適切性も重要です。一式いくらといった記載ではなく、できるだけ具体的に明細を記載しましょう。
加点項目
小規模事業者持続化補助金の採択審査では、要件を満たすと審査が有利になる加点項目があります。加点項目はいくつかありますが、2022年度から新たに始まった加点項目を中心に紹介しましょう。
赤字賃上げ加点
前述の「賃金引上げ枠」限定の加点項目です。直近決算が赤字、すなわち課税所得がゼロの場合は加点が受けられ、採択されやすくなります。
とはいえ、賃金引き上げ枠は実際に賃上げできなければ、たとえ採択されても補助金が交付されません。賃上げの財源が確保できるのか、慎重に検討したうえで申請するようにしましょう。
パワーアップ型加点
通常枠含め、すべての応募枠で対象となる加点項目です。経営計画の内容が以下の類型に即していれば加点が受けられます。
- 地域資源型:地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画
- 地域コミュニティ型:地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取り組み等を行う計画
上記以外にも、電子申請をすれば加点を受けられるなど、加点措置があります。公募要領を確認して、受けられる加点措置は外さないようにしましょう。
小規模事業者持続化補助金「特別枠」のスケジュール
2022年4月現在、第8回の公募中で締切は2022年6月3日(金)です。それ以降も3回の公募が予定されており、2022年9月中旬、2022年12月上旬、2023年2月上旬に締切が設定されています。
まとめ
小規模事業者持続化補助金特別枠について紹介しました。補助金額が最高200万円になる一方で、要件を満たせなければ補助金が交付されないなど、特別枠には若干のリスクが伴います。
また、小規模事業者持続化補助金は採択審査があり、近年の採択率は4割~6割と、申請しても半数近くが不採択となるのが現実です。自社のみで申請するには少し不安がある――そう思われたら、経営計画作成に長けた専門家の力を借りるのも一つの手です。
当社トライズコンサルティングでは、補助金の申請支援を多数手がけています。小規模事業者の皆さまに寄り添い、一緒に経営計画を作っていくことで採択を目指します。ご相談は無料ですのでぜひお気軽にお問い合わせください。