小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象とした補助金であり、飲食店でも利用することが可能です。今回は、飲食店での小規模事業者持続化補助金の活用方法や事例をわかりやすく紹介します。補助金の概要や申請の流れ、採択事例などについてまとめてお伝えしますので、補助金申請時の参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金の概要
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取り組みに要する経費の一部を支援する制度です。商工会や商工会議所のサポートを受けながら経営計画書や補助事業計画書を作成し、審査を経て採択された後、補助を受けることができます
補助金額
補助金額は最大50万円もしくは100万円となっており、使用した経費の3分の2もしくは3分の4までの金額が補助の対象です。
対象となる経費
小規模事業者持続化補助金で使用できる経費は次の通りです。なお、すべて補助事業で使用することが前提となります。既存事業など、補助事業とは無関係なものに使用した経費は対象外となるため注意が必要です。
機械装置等費
補助事業を実施する上で必要な機械装置購入費用が該当します。ソフトウェアなど、物理的に実体がないものも対象となります。飲食店の場合は、冷蔵庫や炊飯器などの電化製品等が該当するでしょう。
商品開発や販路開拓のためであっても、パソコン等の汎用性が高く、補助事業以外にも使用ができる機械装置については補助の対象外となるため注意が必要です。
広告費
パンフレットやチラシ、広報用Webサイトなどの制作費が該当します。補助事業と関連性が高い広告であることが条件となります。既存事業のPR等は対象になりません。
展示会等出展費
補助事業における新商品を展示会に出店するための費用です。飲食店の場合、新商品の試食会等にかかる費用が対象になる可能性があります。
旅費
公共交通機関の移動費と宿泊費が対象です。食材等の情報収集のための旅費等が対象となります。
開発費
新商品試作用の包装や原材料費用などの経費です。新メニューの試作に使用した費用が対象となります。
資料購入費
補助事業のための情報を得る書物の購入費です。単価10万円未満、1種類につき1冊のみが対象となります。
雑役務費
補助事業を行うためのアルバイト等の給料や交通費です。あくまで補助事業のために臨時で雇った従業員への支払いのみが対象となります。補助事業以外の仕事を任せる場合や、継続的な雇用となる従業員は対象外となります。
借料
補助事業のための機器や設備のリース、レンタル料金です。機材のレンタル費が当てはまります。なお、店舗の家賃等は対象になりません。
専門家謝金
補助事業に関して指導や助言を依頼した専門家への謝礼です。謝礼の基準額については公募要領に記載があります。基準額を大幅に上回るような場合は、対象外となる可能性が高まるため、基準額を必ず確認しましょう。
専門家旅費
専門家が指導や助言を行う場合の旅費が対象となります。
設備処分費
生産性向上のための設備の買換え等の理由で、既存設備を廃棄処分するための費用です。また、リースやレンタル品の原状回復費用はこちらに該当します。
委託費
上記に該当せず、第三者に業務を委託する場合にかかる報酬です。飲食店の場合、業務委託契約でデリバリーを行う場合の手数料などが該当します。
外注費
上記に該当せず、事業遂行に必要な業務の一部を補助する項目です。店舗の改装工事などを行う費用が該当するため、飲食店でも幅広く利用できる経費です。
対象となる飲食店
小規模事業者持続化補助金は以下の条件を満たしていれば申請することが可能です。
- 小規模事業者であること
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されて いないこと
- 直近過去3年分の課税所得年平均額が15億円を超えていないこと
- 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
- 持続的な経営に向けた経営計画を策定していること。
- 本補助金の受付締切日の前10ヶ月以内に、補助事業を実施したものでないこと。
- 一般型と低感染リスク型ビジネス枠の両方を採択していないこと。
- 反社会的勢力に該当しないこと。
事業者が小規模事業者かどうかは、業種と常時使用する従業員数をもとにして考えられます。表にすると次のとおりです。
飲食店の場合、一部例外を除きサービス業に分類されます。つまり、常時雇用する従業員の数が5名以下の場合、小規模事業者持続化補助金の対象となります。
業種分類 | 従業員数 |
製造業 | 20名以下 |
商業・サービス業 | 5名以下 |
サービス業のうち、宿泊業・娯楽業 | 20名以下 |
なお、公募要領によると、会社役員、個人事業主本人、同居の親族、休職中の社員などは「常時使用する従業員」に該当しないため、1名としてカウントする必要がありません。また、パートやアルバイトの従業員は基本的には常時雇用する従業員に該当しますが、雇用期間や所定労働時間が短い場合などは該当しなくなります。判断に迷った際には、最寄りの商工会や商工会議所に問い合わせてみてください。
小規模事業者持続化補助金の応募枠の種類
小規模事業者持続化補助金の応募枠には「一般枠」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2種類があります。応募資格等は変わりませんが、補助金額や補助率、スケジュール等が異なります。自社にはどちらが適しているかどうか、確認した上で応募するようにしてください。
種類 | 目的 | 補助金額 | 補助率 |
一般型 | 小規模事業者等が経営計画を策定して取り組む販路開拓等の支援 | 50万円 | 2/3 |
低感染リスク型ビジネス枠 | ポストコロナ社会に対応したビジネスモデルの転換のための取り組みや感染防止対策費の一部を支援 | 100万円 | 3/4 |
低感染リスク型ビジネス枠では、一般型と比較して補助金額が50万円分、補助率は3分の2から3分の4に上昇しています。
また、感染防止対策費とは、消毒やマスク、清掃、換気設備、飛沫防止対策など感染防止対策にかかる費用のことを指します。これらの費用は、日常的に経費として支出している事業者も多いと思います。これらの経費に対する補助金を希望する場合は、低感染リスク型ビジネス枠で申請しましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請の流れ
続いて小規模事業者持続化補助金の申請の流れについて解説します。必要な書類、申請方法、スケジュールなどについてまとめましたので、参考にしてみてください。
申請に必要な書類
一括りに「飲食店」といっても、その形態は法人や個人事業主などさまざまです。小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類は、法人、個人事業主のどちらで申請をするかにより、一部必要な書類が異なります。ここでは、
- 事業者の形態にかかわらず応募者全員に共通して必要になる書類
- 法人のみ必要になる書類
- 個人事業主のみ必要になる書類
に分けて解説します。ここでは、郵送申請をした場合の書類について解説しますが、電子申請の場合は一部書類の提出が不要になります。
応募者全員
応募者全員に必要となる提出書類は次のとおりです。
- ①小規模事業者持続化補助金に係る申請書(様式1ー1)
- ②経営計画書兼補助事業計画書①(様式2−1)
- ③補助事業計画書②(様式3ー1)
- ④事業支援計画書(様式4)
- ⑤補助金工夫申請書(様式5)
こちらの書類はすべて日本商工会議所のホームページ等にテンプレートが掲載されています。書類をダウンロードし、必要事項を記載し提出しましょう。
これらの申請書の中で、審査上最も重要かつ難易度が高いといわれている書類が、②の経営計画書兼補助事業計画書です。自店舗のことを知らない人が読んだとしても、状況が理解できるように記載する必要があります。そのため、自店舗の強みや弱み、メニューごとの売上や利益率、集客状況、競争相手となる周辺店舗の経営状況など、自店舗の状況を多角的な視点から深く分析する必要があります。
法人
続いて申請事業者が法人の場合のみ必要な書類について解説します。法人の場合に必要な書類は次の2点です。これらのテンプレート等は商工会のホームページにはないため、自身で作成することとなります。
- ①貸借対照表および損益計算書(直近1期分)
- ②株主名簿
法人によってはまだ決算を一度も迎えていなかったり、そもそも損益計算書を作成していなかったりする場合があります。その場合、損益計算書の提出は不要となりますが、別の書類が必要となります。決算期は迎えているものの損益計算書がない場合は、別途確定申告書の提出が必要となります。
なお、株主名簿に関しては、経営計画書兼補助事業計画書①(様式2ー2)にて、出資者の名称、出資比率を記載している場合、提出の必要はありません。
個人事業主
個人事業主の場合は、次の書類が必要となります。
- ①直近の確定申告書
なお、開業してから決算期を一度も迎えていない場合は、申請時の段階で開業していることがわかる開業届の提出が必要となります。
申請手続き
申請方法は「郵送申請」と「電子申請」の2通りがあります。どちらの申請方法を活用しても、採択率には違いはありません。自身が申請しやすいやり方で申請すれば大丈夫です。
郵送申請の場合は、前述の必要書類を同一の封筒に入れ、日本商工会議所の小規模事業者持続化補助金事務局へ郵送するという流れです。
電子申請の場合は、経済産業省が運営する電子申請システムJグランツを使用して申請します。メール等で書類を添付すれば良いというわけではない点には注意してください。
低感染リスク型ビジネス枠で申請する場合は郵送申請に対応しておらず、電子申請をする必要があります。
なお、Jグランツを使用するにあたり、gBizIDを取得しておく必要があります。申請から取得まで最大1ヶ月ほど時間を要することがあるため、電子申請を希望する方は早めにgBizIDを取得しておきましょう。
スケジュール
続いて、スケジュールについて解説していきます。
小規模事業者持続化補助金の申し込み自体は、いつでも可能です。以前は募集が開始されてから申し込みをするという流れでしたが、2021年9月現在は変更されています。年に数回ある締切日のタイミングで、それまで申し込みのあった事業者の採択審査がまとめて行われるという流れです。
締切日については小規模事業者持続化補助金を取り扱っている、日本商工会議所または全国商工会連合会のホームページから確認することができます。
申請が完了した後、およそ2ヶ月間の審査期間を経て採択結果が公表されます。採択後の経費が補助金支給の対象経費となります。
2021年9月現在公表されている一般型と低感染リスク型ビジネス枠の締切日および、採択結果の公表日は次のようになっています。なお、第8回以降の締切日は示されていません。
一般型
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 | |
書類送付締切日 | 2020年3月31日 | 2020年6月5日 | 2020年10月2日 | 2021年2月5日 | 2021年6月4日 | 2021年 10月1日 | 2022年 2月4日 |
採択結果公表日 | 2020年5月22日 | 2020年8月7日 | 2021年1月22日 | 2021年4月28日 | 2021年 8月31日 | 未定 | 未定 |
低感染リスク型ビジネス枠
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | |
書類送付締切日 | 2021年5月12日 | 2021年7月7日 | 2021年9月8日 | 2021年11月10日 | 2022年1月12日 | 2022年3月9日 |
採択結果公表日 | 2021年7月2日 | 2021年9月1日 | 未定 | 未定 | 未定 | 未定 |
小規模事業者持続化補助金の申請手順について詳しく知りたい方は、こちらを参照してください。
小規模事業者持続化補助金の飲食店での事例
最後に、飲食店における小規模事業者持続化補助金の活用事例についてまとめていきます。申請書の記入例や採択事例についてまとめましたので、申請書作成の際の参考にしてみてください。
申請書記入例
小規模事業者持続化補助金のホームページには申請書の記入例が掲載されています。その中で飲食店における記入例として、以下の3つの事例が紹介されています。申請書の中でも記載する難易度が高い経営計画書兼補助事業計画書の記載例がまとめられていますので、馴染みのない方は是非参考にしてみてください。
採択事例
飲食店において小規模事業者持続化補助金が採択された事例としては、テイクアウトや宅配販売の導入により新規顧客の獲得を目指したものなどがあります。
その他にも、小規模事業者持続化補助金の採択者一覧ページにて、これまでの採択者一覧を確認できます。その中から2つ事例を紹介します。
事例1:洋食屋
店舗の中で売れ筋商品であったプリンの販路拡大を目指す取り組みを行いました。具体的には、自社Webサイト上でプリンの宅配販売を開始し、オンラインチャネルでの売上増加に繋げました。
事例2:焼肉屋
高級和牛を使用した弁当の開発により、新規顧客の増加につなげました。フードロスの削減効果もある取り組みとして評価を得ています。社会問題の解決に繋がる取り組みは採択されやすい傾向があります。
まとめ
飲食店における小規模事業者持続化補助金の活用方法について詳しく解説しました。過去に多くの飲食店で採択されたことのある補助金です。小規模事業者持続化補助金の対象に当てはまる場合は、申請を検討する価値が十分にあります。
ただ、忙しい飲食店の運営をしながら申請書の作成をするのは簡単ではありません。そのような際は、補助金の申請サポートを専門家に任せることも一つの手です。 当社トライズコンサルティングも、小規模事業者持続化補助金をはじめとした各種補助金の申請サポートを行っています。補助金の申請でお悩みの方や検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。