販路拡大とは?
販路拡大とは、新たな顧客やチャネルに対してアプローチを行うことで、売り上げを拡大していくことを指します。それまでターゲティングしていなかった層や経路で新規顧客を開拓していくため、自社の製品・サービスの分析や新規顧客のセグメントの選定、新規顧客に適したチャネルの開拓という一連の行動を組み合わせる企業活動です。
販路拡大が必要である理由
事業が軌道に乗り、初めは売り上げも伸びていきますが、当初ターゲティングしていた顧客に対してアプローチし尽くしてしまうと、次第に業績は鈍化していきます。同じ顧客層に広告や営業をかけても以前のような効果は得られず、いずれは赤字事業となってしまいます。
そうならないためにも、自社の製品やサービスの新しい販路を常に模索し、事業を拡大していく必要があります。
販路拡大の効果
販路拡大の効果は、販路拡大の目的とも一致しますが、事業の成長と売り上げの拡大です。また、適切な販路に拡大していくことによって、既存の顧客より高単価での販売ができたり、流通経路の見直しなど無駄なコスト削減につながったりすることで、収益率の向上が見込めます。
加えて、新しいマーケットに参入することで、自社の製品やサービスをこれまでと異なった形で提供するなど新たな事業展開が開ける可能性もあります。
販路拡大のステップ
販路拡大は重要な取組みの一つですが、ただ闇雲に広告を打ったり、営業をかけたりすれば良いというわけではありません。しっかりとした調査・分析のもと、自社のマーケティング戦略に則って取り組む必要があります。
具体的には次のステップを踏んで実行されます。
自社の製品・サービスを分析する
「4P分析」の考え方を知っておくと効率的に進めることができます。
- 製品(Product
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- 販売促進(Promotion)
の4要素を分析し、マーケットでのポジションを把握するとともに、製品・サービスの価値の本質を見直す必要があります。
世界最大のコーヒーチェーンである「スターバックスコーヒー」では、提供する価値を「家と職場以外の落ち着けるサードプレイス」と設定し、ターゲットであるビジネスマン層やリッチ層に対して割高だけれど美味しいコーヒーを、ブランドイメージを損なわないよう大衆的なCM等の広告宣伝を行わず、都市部へ多店舗展開することで販路拡大に成功しました。
市場・顧客をリサーチする
現在の販売状況を調査し、どのような人がどのような販路で購入しているかを分析していきます。「まさかここに」というような人や場所の需要に気づくことができる可能性もあります。
富士フィルムが化粧品分野へ参入したように、他業界への販路拡大のためには、一見関連性がないと思われる分野においても積極的に市場調査に取り組む必要があります。
最適なリーチ手法を検討する
ターゲットに対して最も効果的な広告宣伝、販売ルートを選定します。あれもこれもと無計画に手を出していては、効率的でないばかりか、正確な効果測定もできなくなってしまうため、チャネルは厳選する必要があります。
実際に広告宣伝や販売活動を行っていく中で、想定どおりに販路拡大していくことが理想ですが、多くの場合は、なかなか結果が出ず、その度に自社の製品・サービスの分析に立ち返って考えてみる必要があります。何度も試行錯誤を行い、少しずつ正解に近づけていくことがマーケティングのおもしろいところでもあります。
販路拡大の主な方法
ここからは、販路拡大の具体的な手法について紹介していきます。昨今では、ITの発達や新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの取り組みも注目を浴びています。
電話営業
電話営業とは、所謂「テレアポ」です。昔から存在する営業の代表的手法でありながら、今でも多くの企業で取り入れられています。
最大のメリットは、短時間で多くの顧客に対してアプローチをかけられる点であり、コストもかなり安くなります。最近では、アウトソーシングやクラウドソーシングなどで代行するなど時代に合わせた変化も見られます。
飛び込み営業
飛び込み営業も、営業の基本といえる手法です。直接的に顧客と相対することになるため、安心感・信頼感を与えることが可能という点がメリットです。
一方で、相手から煙たがられたり、移動時間がかかるため、地理的にターゲットが密集したエリアでないと1日でアプローチをかけられる顧客数が限られてしまったりする点がデメリットです。
DM(ダイレクトメール)
DM(ダイレクトメール)は、はがきやメール、FAXなどさまざまな形で広い顧客層に使用することができます。
しかし、毎日多くの企業からDMが届くため、顧客がそもそも読んでくれない可能性があります。あえて手書きしたり、変わった封筒を使ったり、文面にアイキャッチを目立つように記載したりするなど、ターゲットの目を引くような工夫をする必要があります。
展示会への出展
大きな会場で、企業を一堂に集めて開催される展示会に出展することも有効です。来場者は基本的に商談の意欲が高い方が多いため、契約につながる可能性は非常に高くなります。
知名度があり、規模が大きくなるほど出展費用が高額になりますが、業種を絞った展示会の場合、狙っているターゲットにリーチできる可能性が高く、費用対効果は高いといえます。開催期間を通して参加者が数万になる展示会も珍しくなく、仮に成約に至らなかったとしても、製品・サービスに対しての意見を聞けるなどのメリットもあります。
セミナーの開催
自社にある有用なノウハウを提供できるのであれば、製品やサービスの見込み客複数人を集客することができます。最近では、Zoomのようなテレビ会議アプリを利用した「ウェビナー」の開催が増えてきており、地理的な制約から参加が難しかった方も気軽に参加できるようになっています。アンケートなど、セミナー開催後のアフターフォローが重要になります。
既存顧客からの紹介
既存顧客からの紹介はかなり有効な手段で、「リファラルマーケティング」ともいわれます。
すでに当社の製品やサービスを利用してもらっている既存顧客からの紹介となれば、新規顧客からの信頼も得やすく、受注可能性はかなり高くなります。また、顧客が企業で同業者の場合、提案や購買後のアフターフォローなど既存顧客のノウハウをそのまま活かせる点もメリットです。
ECサイト
ECサイトとは、製品やサービスを売買できるインターネット上の店舗のことです。「ネットショップ」と呼ばれることもあり、オンラインでの販路拡大の最もポピュラーな手法の一つです。
大手企業が運営しているECモールの中の1店舗として出店するか、自社で独自にECサイトを構築するかに大別されます。いずれも認知度と手数料の面で一長一短ですが、いずれにしても実店舗を持つよりコストを低く抑えられることがメリットです。反面、無数の店舗の中から顧客に選ばれるような仕掛けが必要になります。
SNS発信
SNSは、特に若年層をターゲットとしている場合、押さえておきたい販路拡大の手法です。ECサイトや後述するブログやメルマガと組み合わせて、自社の製品やサービスの購入につなげることができます。
「Facebook」や「Twitter」などの他にも、「Instagram」や「YouTube」、「TikTok」のような動画配信のプラットフォームを活用する中小企業も増えてきています。ターゲットの属性に合わせて、利用する媒体を検討しましょう。
ブログ・メルマガ
ブログやメルマガで情報発信を行い、販路拡大していくという手法もあります。顧客にとって有益な情報を提供し、徐々にユーザーの興味を高めていくことで購買につなげていきます。
こうした宣伝主体を自社でコントロールできる媒体は「オウンドメディア」と総称されます。ブログ等は記事などのコンテンツ作成に時間を要しますが、質の高い情報を発信し続けることで、顧客と長期的な関係を築くことができます。
インターネット広告
インターネット広告は、インターネットのページ上に掲載される広告のことで、サイト内の「バナー広告」やGoogle検索画面の上部に表示される「リスティング広告」、「Facebook」や「Instagram」などのタイムライン上の「SNS広告」が代表的です。有料とはなりますが、広告の効果がすぐに見えるため、スピード感を持ってマーケティングのPDCAサイクルを回すことができます。
販路拡大のポイント
続いて、販路拡大に取り組むにあたってのポイントについて解説します。闇雲な販路拡大では、成果が伴わないばかりか、却って売り上げ・利益の低下やブランドイメージの毀損にもつながり、その他の事業にも影響を及ぼす可能性があります。
次の点に注意し、効果的な販路拡大を行っていきましょう。
ターゲットにより手法を使い分ける
ビジネスは、取引相手によって大きく「BtoC」と「BtoB」に分けられます。誰をターゲットにするかで、販路拡大に有効な手法は異なります。「BtoC」「BtoB」の定義は次のとおりです。
- BtoC:「Business to Costmer」の略で、企業と消費者間の取り引き
- BtoB:「Business to Business」の略で、企業間の取り引き
「BtoC」企業が自社製品やサービスの販路拡大したい場合は、ECサイトやブログなどのITツールを活用した手法が効果的です。スマートフォンが普及し、SNSはもはや老若男女が何かしらのアカウントを保有している状況のため、拡散を狙ったキャンペーンなどのプロモーションを打ち出している企業も多くあります。
一方、「BtoB」企業が自社製品やサービスの販路拡大したい場合の最も有効な手法は、既存顧客からの紹介になります。紹介された企業も、日頃付き合いのある企業からの紹介のため、信頼関係を構築するコストは少なく済みます。
また、同業者の集まる展示会も高い効果が期待されます。自社のターゲットとなる企業が集まり、製品・サービスについての意見も集められ、大変有意義です。このように自社の相手先となる顧客にとって有効な手法を選択する必要があります。
最適な3つのチャネルを選択する
「チャネル」とは顧客に広告を届けたり、製品やサービスを提供したりする経路のことを指します。この「チャネル」には、次の3つの定義があります。これらを複合的に組み合わせることで、製品・サービスにとって最適な施策を検討する必要があります。
コミュニケーションチャネル
コミュニケーションチャネルは、製品やサービスを消費者に認知してもらい、魅力を感じてもらうことで「欲しい」という欲求を想起させるまでの経路のことを指します。
テレビCMやニュースなどのマスメディア、看板の設置などがこれにあたり、SNSやネット広告では狙ったターゲットに対して、ダイレクトに訴求することも可能です。
流通チャネル
流通チャネルは、製品やサービスを顧客まで届けるまでの経路を指します。具体的には、物流業者や卸業者、小売業者の選定などがこれにあたります。
販売チャネル
販売チャネルは、実際に製品やサービスを顧客に購入してもらうための経路を指します。昔からある販売店などの小売店やテレビショッピングのほか、ECサイトやポップアップストアなど企業が直接販売するスタイルも増えてきています。
定期的に効果測定を実施する
これまで解説してきたように、販路拡大にはさまざまな手法があり、顧客によってそれらを選定したり、組み合わせたりしながらマーケティング戦略を練っていきます。
しかし、最初から正解に行き着くことはなく、試行錯誤を続けなければなりません。その際に大切になることが、定期的な効果測定です。販路拡大戦略の立案のときから、取り組みの検証をどのようにしておくかも考えておき、PDCAサイクルを回していきます。
そして、企業としての全体最適を考えるということも必要になります。ある部門の最適化を図るあまり、全体として効率が悪くなってしまえば本末転倒です。そのためにも、部門間で情報が分断されてしまわないように、コミュニケーションを密に取り、連携を図っていく必要があります。
販路拡大に活用できる制度
最後に、企業の販路拡大に活用出来る公的な支援制度を紹介します。主に国が整備したものになりますが、各自治体でも独自の支援制度が募集されている場合があるので、ぜひ探してみてください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路拡大を目的とした取り組みに対して補助金が給付される制度です。パンフット・ポスターの製作費や看板の設置費、展示会への出展費用などが補助対象経費となり、ウェブサイトの作成費やインターネット広告なども対象とされています。
対象となる小規模事業者の定義は、従業員の数によって次のように規定されています。
- 宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業においては5名以下
- 製造業その他の業種で20名以下
なお、補助率と補助上限は、次のとおりです。
- 補助率:2/3
- 補助上限:50万円
申請に際して提出する事業計画書は、A4サイズで8枚以内となっています。国が募集する補助金の中でも比較的易しい制度で、補助金初心者の登竜門的な立ち位置です。小規模事業者であるならば、まずはこの小規模事業者持続化補助金の活用をおすすめします。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響が長期化している中、ポストコロナやウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために、事業の事業再構築を支援する補助金です。
「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することを目的としています。申請要件は次のとおりです。
- 売上が減っている
- 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編のいずれかに取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
業種を問わず、対象者は中小企業から中堅企業までと幅広く、補助上限金額も1社最大1億円と今最も注目度の高い補助金です。広告宣伝費は、新たに取組む事業において提供する製品やサービスに係るもので、パンフレットや動画作成、展示会への出展費用はもちろん、営業代行利用やマーケティングツール活用等に係る経費も対象になります。
まとめ
企業の販路拡大手法やその有効な取り組み方について解説しました。企業にとって販路拡大は、資金繰りなどと並んで大きな悩みの種ですが、想定どおりいったときの面白さや苦労して目標達成に至ったときの喜びは他には代え難いものがあります。
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