経営計画書は、融資の申込みなどで必要となって「仕方なく」作る企業も少なくないようです。
しかし、経営計画書は本来、融資申込みのためなどだけに作るものではありません。社長様が頭に汗をかいて作成した経営計画書は、自社を飛躍させることに役立つでしょう。
では、経営計画書を作成することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、経営計画書のテンプレートは、どのように入手すれば良いのでしょうか?
今回は、経営計画書のテンプレートの入手方法や作成のメリット、主な記載事項などについてくわしく解説します。
経営計画書とは
経営計画書とは、文字通り「経営」の「計画書」です。たとえば、会社の経営方針やビジョン、具体的な行動計画などを定めます。一般的には、1年以内など短期の計画や達成目標などではなく、中長期の未来設計を記載することが多いでしょう。
会社に経営計画書が必要である理由
たとえ融資の申込みや補助金の申請をしない場合であっても、会社を経営する以上は経営計画書の作成は必須です。ここでは、会社に事業計画書が必要である主な理由を4つ解説します。
- 会社のビジョンが明確となるから
- 会社の「現在地」が把握しやすくなるから
- 従業員とビジョンを共有しやすくなるから
- 対外的に会社の状態を示しやすくなるから
会社のビジョンが明確となるから
1つ目は、経営計画書を作成することで会社のビジョンや目指すべき方向性が明確となることです。
経営計画書がない場合、行き当たりばったりの経営となってしまいがちです。経営計画書がなくても、社長様の経営感覚が優れていれば、日々の経営はそれなりに上手くいくかもしれません。しかし、散歩のついでに富士山に登ることがないように、より高みを目指すのであれば、経営計画書は不可欠です。
会社のビジョンや方向性が明確となることで、大きな決断の必要が生じた際に経営判断を誤りにくくなります。また、ビジョンや目的から逆算をすることで、「今」何をすべきかも明確となるでしょう。
なお、中小企業の社長の中には、「将来のことなんてわからないから、計画書なんて作っても意味がない」という方もいます。しかし、「富士山に登る」という目的さえ明確になっていれば、たとえ何らかのトラブルで1つのルートが塞がれてしまっても、別のルートを探すことが可能です。
また、ヘリコプターを使うなど、新たな方法を思いつくかもしれません。このように、会社のビジョンや目的地が決まっていれば、たとえトラブルが生じても、別の到達方法を模索することによって変化への対応がしやすくなります。
会社の「現在地」が把握しやすくなるから
2つ目は、経営計画書を作成してビジョンや目標を明確とすることで、会社の「現在地」が把握しやすくなることです。
引き続き登山に例えると、登る山さえ決まっていないのであれば、順調に登れているのか、それとも今のままのペースでは目標とする期日までに到達が難しいのかなどを判断することはできません。それどころか、誤った山に登ってしまうおそれもあるでしょう。
一方で、登るべき山が明確となれば、ペースが順調であるのか、ルートから外れていないかなどの判断が可能となります。
経営計画書を作成して目標地点を定め、そこから逆算することで、今行うべきことや今到達しているべき場所が明確となります。これと比較することで現状が順調であるかどうかの判断が可能となり、改善策も講じやすくなります。
従業員とビジョンを共有しやすくなるから
3つ目は、従業員とビジョンや方向性を共有しやすくなることです。
たとえ社長の頭の中にビジョンがあったとしても、これを従業員に伝えきることは容易ではありません。言葉だけで伝えて従業員の理解を得ることは難しく、具体的な行動計画だけを見て「社長は言うことがコロコロ変わる」などと思われてしまう可能性もあります。
しかし、経営計画書を作成してこれを従業員と共有することで、会社の目指すべき方向性を従業員と共有しやすくなります。そのうえでビジョンと具体的な行動計画との関連性を示すことで今やるべきことについても賛同が得やすくなるほか、従業員側からアイディアが出てくる可能性も期待できるでしょう。
対外的に会社の状態を示しやすくなるから
4つ目は、金融機関など社外の関係者に、会社の状態を示しやすくなることです。
金融機関に融資を申し込む際には、原則として経営計画書の提示が求められます。そして、この経営計画書が融資申込みのためだけに突貫で作成したものであるのか、社長が作り込んで日ごろから経営に活かしているのかは、自ずと伝わるものです。
経営計画書を作成して日ごろから経営に活用することで、社長様が対外的に会社のビジョンや現状を伝えやすくなります。
経営計画書に決まった様式はある?
経営計画書に、決まった様式はあるのでしょうか?ここでは、順を追って解説します。
経営計画書に決まった様式はない
経営計画書には、決まった様式や記載項目があるわけではありません。本来は、各会社が必要であると考える事項を記載し、独自に作成すべきものです。
そのため、会社によって経営計画書の様式や記載内容が異なることは、珍しいことではありません。
提出先によっては様式が決まっていることがある
経営計画書は、金融機関への融資の申込みや補助金の申請などのために作成することも多いでしょう。その場合は、金融機関やその補助金制度独自の様式が設けられていることもあります。所定様式がある場合には、その様式に沿って経営計画書を作成しなければなりません。
経営計画書テンプレートの入手方法
先ほど解説したとおり、経営計画書には原則として決まった様式はありません。そのため、テンプレートなどにとらわれず、ある程度自由に作成すればよいものです。
とはいえ、参考とするものがなければ、何を記載すべきか迷ってしまうことでしょう。その際に参考となるのが、日本政策金融公庫のテンプレートです。テンプレートのタイトルは「事業計画書」ですが、経営計画書を作成する際の参考となります。
経営計画書の記載すべき主な項目
経営計画書には、どのような項目を記載すればよいのでしょうか?ここでは、主な記載項目を紹介します。
- 会社概要
- 経営理念
- 基本方針
- 行動指針
- 経営戦略
- 収支計画
- 行動計画
会社概要
経営計画書は、外部に提出する機会もあります。そのため、初めに会社の概要を記載することが一般的です。
会社の概要として記載するのは、次の事項などです。
- 商号
- 本店所在地
- 代表取締役名
- 設立年月日と主な沿革
- 事業内容
- 資本金額
- 作成日時点での従業員数
ここは、さほど難しく考えず事実を記載していけば良いでしょう。
経営理念
経営計画を練るうえで根幹となるのが、経営理念です。そのため、経営計画書には、経営理念の記載は不可欠でしょう。
経営理念とは、企業としての存在意義や価値観、社会に貢献する方法などです。経営理念に、正解・不正解はありません。
しかし、「年間売上〇億円」や「地域シェアNo.1」など、数値で単純にはかれるものは経営理念とは言い難いでしょう。そうではなく、目指すべき方向性ではあるものの、手には届かない北極星のようなものが経営理念です。
基本方針
基本方針とは、経営理念に向かって会社を経営していくうえでの、具体的な方向性です。経営理念を実現するために必要な目標を設定します。
行動指針
行動指針とは、経営理念の実現のために必要となる、企業や従業員としての行動の基本指針です。経営理念と矛盾した行動をしないために、行動指針を定めます。
経営戦略
経営戦略とは、競合他社を意識した具体的な「戦い方」を示す項目です。経営戦略を定めるには、自社の強みや弱みのほか、外部環境などを分析しなければなりません。
収支計画
経営には、お金がかかります。いくら崇高な理念を掲げていても、お金がなければ絵に描いた餅となるでしょう。
そこで、計画を実現するための収支計画を立て、経営計画に盛り込むことが必要です。収支計画が現実的であれば、計画全体が現実味を帯びます。
行動計画
行動計画とは、経営理念を実現するために、具体的にいつ何をすべきかを定める計画です。会社全体の行動計画のほか、部門ごとや個人ごとの計画を定めることもあります。
経営計画書を作成すべき主な場面
経営計画書は、どのような場面で作成するものなのでしょうか?会社が経営計画書を作成する主な場面を解説します。
- 金融機関に融資を申し込むとき
- 補助金の申請をするとき
- 自社を次のステップへと成長させたいとき
- 従業員とビジョンを共有したいとき
金融機関に融資を申し込むとき
1つ目は、金融機関に融資を申し込むときです。
融資の申込では、経営計画書の提示を求められることが一般的です。経営計画書を提示することでどのような目的で融資が必要であるかが明確となるほか、返済が十分に可能であることを数値で示すことが可能となります。
融資のために作成する経営計画書では記載すべき項目や様式が決まっていることもあるため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
補助金の申請をするとき
2つ目は、補助金の申請をするときです。
補助金とは、要件を満たして申請することで、国などから返済不要な事業資金を受け取れる制度です。とはいえ、補助金は申請をしたからといって必ずしも受け取れるものではありません。補助金の受給権を得るためには、多数の応募の中から選ばれる(採択される)ことが必要です。
そして、多くの補助金で、添付書類の1つに事業計画書(経営計画書)が挙げられています。補助金は公金を使って経営を支援する制度であるため、支援対象として相応しいかどうか経営計画書をもとに判断しているのです。
ただし、補助金の申請で添付する事業計画書は、獲得した補助金を使って行う予定である業務を中心に記載すべきものです。そのため、原則として、申請する補助金制度ごとに所定の様式で作成しなければなりません。
自社を次のステップへと成長させたいとき
3つ目であり、コンサルタントとしておすすめなのが、自社を次のステップへと成長させたいときです。
会社の規模が小さく、昨日と同様の業務を行っているうちは、経営計画書などなくても会社は回るかもしれません。しかし、次のステップへ飛躍し、規模を拡大したり新たなチャレンジをしたりするためには、経営計画書が必要となります。
これまで経営計画書がなかった会社にとっては、はじめは作成を面倒に感じるかもしれません。しかし、頭に汗をかいて自社の未来と真剣に向き合い経営計画書を作成することで、自社の役割や方向性が明確となります。
会社の未来の方向性を定めることは、経営者としてもっとも重要な責務ともいえるでしょう。
従業員とビジョンを共有したいとき
4つ目は、従業員との間で会社のビジョンを共有したいときです。
従業員が少ないうちは社長が個々の従業員と会話をする機会も多く、ビジョンも伝えやすいでしょう。一方で、従業員が増えてくると、自ずと個々の従業員と向き合う時間が減ってきます。その結果、社長の想いと従業員の想いのズレが頻発し、もどかしく感じることも増えるかもしれません。
そこで一つの打開策となり得るのが、経営計画書です。経営計画書を作成してビジョンを示し、そこから逆算した目標や行動計画を伝えることで、従業員との間でビジョンが共有しやすくなります。
経営計画書の作成をコンサルタントに依頼するメリット
経営計画書は、コンサルタントのサポートを受けながら作成することをおすすめします。ここでは、経営計画書の作成にあたってコンサルタントのサポートを受ける主なメリットを4つ紹介します。
- 客観的に自社の状態を把握しやすくなる
- 経営コンサルティングを受けられる
- 適切な計画を設定しやすくなる
- 経営計画書の作成に真剣に向き合うことができる
なお、コンサルタントのサポートを受けて経営計画書を作成することと、コンサルタントに作成を「丸投げ」することとは、天と地ほどの差があります。ここで解説するのは「コンサルタントのサポートを受ける」このメリットであり、丸投げはおすすめしませんので、混同しないようご注意ください。
客観的に自社の状態を把握しやすくなる
経営計画書を作成する中では、自社の強みや弱みなどの分析が不可欠です。しかし、社内の人物だけで検討する場合、自社の弱みや強みを正しく認識することは容易ではありません。
コンサルタントは社外の人物であるとともに、経営に関する専門知識を有しています。そのような人物のサポートを受けて経営計画書を作成することで、客観的に自社の現状を把握しやすくなります。
また、SWOT分析(※)などのフレームワークを効果的に使うことで、より自社の分析がしやすくなるでしょう。
※外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つに分類することで自社の現状を把握するフレームワーク
経営コンサルティングを受けられる
コンサルタントに経営計画書の作成サポートを依頼した場合、経営者が検討した内容をそのまま様式に落とし込むわけではありません。コンサルタントに依頼することで、事業計画に関する経営コンサルティングを受けることが可能となります。
コンサルティングを受けて計画を練り込むことで、より自社を飛躍させる経営計画書が策定しやすくなるでしょう。
適切な計画を設定しやすくなる
経営理念から具体的な目標や行動計画まで、適切に落とし込みをすることは容易ではありません。自社だけで経営計画書を作成した場合には、経営理念と基本方針がズレていたり、行動計画があいまいであったりするケースが散見されます。
コンサルタントのサポートを受けて経営計画書を作成することで、経営理念から行動計画までに一貫性があり、かつ具体的に「今、何をすべきか」が明確な経営計画書が作成しやすくなります。
経営計画書の作成に真剣に向き合うことができる
自社だけで経営計画書を作成しようとしても、本業が忙しくなったり突発的な事情が生じたりした際にそちらを優先してしまい、その後もそのまま失念するなどして経営計画書が完成にまで至らないことは少なくないでしょう。
一方、コンサルタントのサポートを受けた場合にはコンサルタントへの報酬も発生するうえコンサルタントとアポをとって順次作成を進めていくことから、経営計画書の作成により真剣に向き合いやすくなります。
経営計画書の作成や自社の現状把握はトライズコンサルティングへご相談ください
経営計画書の作成や自社の現状把握をしたい際には、当社トライズコンサルティングまでご相談ください。最後に、トライズコンサルティングの概要と主な特長を解説します。
トライズコンサルティングとは
トライズコンサルティングとは、中小企業診断士である野竿が代表を務めるコンサルティング企業です。当社は中小企業の経営サポートに特に力を入れており、豊富な実績と経験をもとに、企業様の抱える問題や経営資源の不足などの問題を解決します。
また、「お客さまの目標実現のため、ワクワクするような成果を提供します」をコンセプトに、お客さまの求める成果に確実にコミットメントすることを目指しています。
経営計画書の作成や自社の現状を把握するための財務分析、お金の「見える化」支援などのサポートメニューがありますが、今自社が何をすべきかわからないことも多いでしょう。その際は、企業様の状況に合わせて最適なサポートプランをご提案いたします。
トライズコンサルティングの主な特長
トライズコンサルティングの主な特長を4つ紹介します。
- 代表の野竿は認定支援機関に登録されている
- コーチングの手法を取り入れた伴走型の支援を行っている
- 補助金や融資の申込みサポートも行っている
- オンライン相談に対応している
代表の野竿は認定支援機関に登録されている
トライズコンサルティングの代表である野竿は中小企業診断士であるほか、認定支援機関にも登録されています。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。そのため、確かな知識と経験に裏打ちされたコンサルティングを強みとしています。
コーチングの手法を取り入れた伴走型の支援を行っている
コンサルタントに対して、「上から目線で意見を押し付ける」とのイメージを持っている社長様も少なくないようです。しかし、当社は意見を押し付けるのではなく、コーチングの手法を取り入れて社長様の想いを引き出す形での支援を行っています。
「上」ではなく「横」で共に走る伴走型の支援が当社の最大の特長です。
補助金や融資の申込みサポートも行っている
トライズコンサルティングでは、補助金の申請サポートや融資の申込み手続きのサポートにも強みを持っています。そのため、経営計画の実行段階で資金調達が必要となった際も、ご相談いただくことが可能です。
オンライン相談に対応している
当社は、相談や打ち合わせにZoomなどのオンラインツールを活用しています。そのため、全国どこからでもご相談いただけるほか、出張中などであっても場所を問わずに打ち合わせを進めることが可能です。
まとめ
経営計画書への主な記載項目や、経営計画書テンプレートの入手方法などを解説しました。
経営計画書を融資の申込みや補助金の申請のために作るケースは少なくありません。しかし、経営計画書は本来外部に提出するためだけに作るのではなく、自社を飛躍させ、よりよい会社としていくために作成するものです。経営計画書を作成することで、自社の目指すべき方向性や今やるべきことが明確となります。
そのため、現時点で経営計画書がない場合は、金融機関などに提出する予定がなかったとしても、ぜひ一度作成してみることをおすすめします。経営計画書を作成する中で自社の姿を客観視しやすくなり、自社のビジョンや行動計画が明確となることでしょう。
先ほど解説したとおり、経営計画書には決まった様式はありません。しかし、様式がなければ、記載項目に迷ってしまうことでしょう。
そこで当社トライズコンサルティングでは、経営計画書のテンプレートを無料で配布しています。経営計画書の作成をご検討の事業者様は、経営計画書をダウンロードしてご利用ください。