2022年3月より、事業再構築補助金の第6回公募がスタートしました。新たな公募枠が設けられた他、ウクライナ情勢なども考慮して原油価格・物価高騰の影響を受けている事業者への加点措置が設けられました。
従来から事業再構築補助金は、公募の度に内容が大きく見直されてきましたが、第6回公募もこれまでと大きく違った様相です。今回は、事業再構築補助金について解説します。
2022年(令和4年)の事業再構築補助金の概要
まずは、2022年の事業再構築補助金の最新情報を紹介します。
主な要件
事業再構築補助金には「通常枠」の他、「最低賃金枠」「大規模賃金引上枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」という計5つの枠が設けられていました。このうち、「グローバルV字回復枠」と「緊急事態宣言特別枠」は第5回公募までで廃止され、第6回公募からは新たに「回復・再生応援枠」と「グリーン成長枠」が設けられました。
このうち、それぞれの枠の基本ともなる通常枠の要件は次の3点です。
売り上げが減っていること
売り上げの減少要件は、2022年度予算案から緩和されています。緩和後の要件は、次の1点です。
- 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること
従来は、これと併せて「2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比較して5%以上減少していること」も要件とされていましたが、これが撤廃されています。
また、グリーン成長枠ではこの要件を満たす必要がありません。
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組むこと
業績が落ち込んだ事業を単に再生するのみではなく、「新分野展開」「業態転換」「事業・業種転換」「事業再編」のいずれかに該当する思い切った事業再構築をする必要があります。
認定経営革新等支援機関とともに事業計画を策定すること
事業再構築補助金を申請するには、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と共に、事業計画を策定する必要があります。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。税理士や税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが担っていることが多いといえます。
ただし、補助金額が3,000万円を超える案件である場合には、銀行や信用金庫などの金融機関が参加して事業計画を策定しなければなりません。
付加価値額の増加
通常枠の場合に策定する事業計画は、補助事業終了後3年から5年の間に次のいずれかの達成を見込む内容で作成することが必要です。
- 付加価値額の年率平均3.0%以上増加
- 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加
なお、付加価値額とは、「営業利益」「人件費」「減価償却費」を合計したものをいいます。
補助金額
第6回公募以降、事業再構築補助金の補助金額は次のようになりました。新たな枠が設けられている他、従業員の人数によって補助金の上限額が変わります。特に、従業員20名以下の企業の場合上限額が2,000万円になり、第5回公募までの半分になります。申請の際には注意してください。
企業の種類 | 応募枠 | 従業員数 | 上限額 | 補助率 |
中小企業または中堅企業※ | 通常枠 | 20人以下 | 100万円~2,000万円 | 中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2) 中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3) |
21~50人 | 100万円~4,000万円 | |||
51人以上~100人 | 100万円~6,000万円 | |||
101人以上 | 100万円~8,000万円 | |||
回復・再生応援枠(新設)・最低賃金枠 | 5人以下 | 100万円~500万円 | ・中小企業者等:3/4 ・中堅企業等:2/3 | |
6~20人 | 100万円~1,000万円 | |||
21人以上 | 100万円~1,500万円 | |||
大規模賃金引上げ枠 | 101人以上 | 8,000万円超~1億円 | ・中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2) ・中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3) | |
中小企業 | グリーン成長枠(新設) | 100万円~1億円 | 1月2日 | |
中堅企業 | 100万円~1.5億円 | 1月3日 |
対象経費
事業再構築補助金の対象経費は、建物費や機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、海外旅費と非常に幅広くなっています。
ただし、2022年に公募予定の第6回以降は、建物費に一定の制限が付されることとなっていることには注意が必要です。こちらについては、後ほど解説します。
2022年度事業再構築補助金の変更点
2022年度の事業再構築補助金は、次の6点について見直しが実施されました。
売上高10%減少要件の緩和
事業再構築補助金を受けるための要件の一つに、売上高10%減少要件があります。この要件の確認方法として、従来は原則として次の2つをいずれも満たすこととされていました。
- 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または、2020年1~3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
- 2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比較して5%以上減少していること
第6回公募からは、このうち「2.」の要件が撤廃され、次の一つを満たすことでこの要件をクリアすることとされます。
- 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること
回復・再生応援枠の新設
第6回公募から、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象とした「回復・再生応援枠」が新設されました。これに伴い、従来の「緊急事態宣言特別枠」は廃止されました。
回復・再生応援枠
「回復・再生応援枠」は、最大1,500万円までの補助率を中小企業で4分の3に引き上げ、手厚く支援するものです。応募要件は、通常枠の要件に加えて、2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%以上減少していることです。
緊急事態宣言特別枠
「緊急事態宣言特別枠」は、採択率が50~60%で推移し、通常枠より10~15%程度採択率が高いことが特徴でした。「緊急事態宣言特別枠」の後継ともいえる「回復・再生応援枠」の採択率が緊急事態宣言特別枠の水準を保つのか、それとも下がってしまうのか気になるところです。
グリーン成長枠の新設
第6回公募から、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に「グリーン成長枠」が新設されました。これに伴い、従来の「卒業枠・グローバルV字回復枠」は廃止されることとなりました。
グリーン成長枠では、補助上限額を最大1.5億円まで引き上げられました。また、この枠では売上高10%減少要件が課されない点も大きな特徴です。さらに、過去に事業再構築補助金の交付を受けていても申請することができます。
一方で、下記の通り高いハードルの応募要件があります。
- ①付加価値額の年率平均5.0%以上増加:従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加
- ②グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みであって、その取組に関連する 2 年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと
グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは下記を指します。脱炭素に向けて研究開発をしっかり行い、かつ通常枠以上の成長が求められるので、事業再構築補助金最難関の応募枠ともいえるでしょう。
出典:2050年カーボンニュートラル に伴うグリーン成長戦略(経済産業省)
通常枠の補助上限額の見直し
第6回公募以降は、通常枠の補助上限額が変更されました。これは、限られた政策資源でより多くの事業者を支援することが理由です。
変更後の補助金額については上で解説していますので、そちらを参照してください。
コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の追加
原油や資材高騰に対応して、急遽「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」が追加されました。「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」(緊急対策枠)の創設も発表されましたが、第6回公募段階ではまだ同枠の公募はありません。
代わりに、原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響により、2022年1月以降のいずれかの月の売上高(または付加価値額)が、2019年~2021年同月と比較して10%(付加価値額の場合15%)以上減少している事業者を対象とする加点措置が設けられています。
その他運用改善等
その他運用改善等は、第5回公募もしくは第6回公募から主に次の点が変更されました。細かい事項ではありますが、申請金額に関わってくるため影響は大きいといえます。
- 「建物費」については、原則として改修の場合に限ることとし、新築の場合には一定の制限を設ける。
- 「研修費」については、補助対象経費総額の3分の1を上限とする。
- 補助事業実施期間内に工場の改修などを完了して貸工場から退去することを条件に、貸工場の賃借料についても補助対象経費として認める。ただし、一時移転に係る貸工場の賃借料などの費用は、補助対象経費総額の2分の1を上限とする。
- 1社あたり各申請類型の上限額を上限として最大20社までが連携して申請することを認めることとし、一体的な審査を行う。
特に、建物費についての変更は、建物を新築しようとしている事業者にとって非常に大きな影響を与えるものです。現状では、「新築の必要性に関する説明書」を提出し、必要性が認められなければ建物費の対象外となってしまいます。
どの程度「必要性」が認められるのか、第6回公募の審査結果を待たなければなんともいえません。該当の経費で事業再構築補助金を申請しようとしている場合には、本当に新築が必要なのか、既存の建物で代替できないかよく検討のうえ申請するようにしましょう。
事業再構築補助金の申請スケジュール
事業再構築補助金第6回公募は、2022年3月からスタートし、6月30日が締切りです。以降も2回程度の公募が予定されていますので、あらかじめ事業計画を練るなどの準備を整え、無理のないタイミングでの応募を検討すると良いでしょう。
まとめ
事業再構築補助金の予算規模は大きく、また1件あたりに交付される補助金額も他の補助金と比べて高額です。新型コロナ禍では大変な苦労をした事業者が少なくありませんが、コロナ禍で生まれた新たな生活様式は定着しつつあり、ニーズに合致したビジネスを展開するチャンスともいえます。
新事業を展開するにあたって事業再構築補助金を得ることができれば、ビジネスを一気に加速させられる可能性が高まるでしょう。
とはいえ、事業再構築補助金を自社のみで申請することは容易ではありません。申請書の作成自体に手間がかかるほか、せっかく良いビジネスアイディアがあったとしてもそれをうまく文書などで説明することができなければ、採択の可能性が下がってしまうためです。
事業再構築補助金の申請をご検討の際には、ぜひ当社トライズコンサルティングまでご相談ください。
当社は、クライアント様に寄り添いながら限りなく高品質な事業計画書の策定を支援します。たとえば、「ものづくり補助金」では2019・2020年度採択率97%という高い補助金採択率を誇り、採択後も補助金を受け取れるまでしっかりとサポートしております。
また、代表の野竿は認定経営革新等支援機関として事業再構築補助金の申請サポートを実施しています。ぜひ当社をご利用いただき、新たな事業へ向けた確実な一歩を踏み出してはいかがでしょうか?