小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取り組みに要する経費の一部を支援する制度です。商工会や商工会議所のサポートを受けながら経営計画書、補助事業計画書を作成し、審査を経て採択された後、補助を受けることができます。
補助金額は最大50万円か100万円となっており、使用した経費の3分の2もしくは3分の4までの金額が補助の対象です。
これまで、チラシの作成やウェブサイトの制作、商談会への参加、店舗改装などさまざまな取り組みが支援されてきました。多くの事業者が補助の対象となり、活用できる幅が広い制度です。
今回は、小規模事業者持続化補助金の流れについて解説するので、申請を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金の対象者
小規模事業者持続化補助金の対象者となるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。順番に説明していきますので、自身が当てはまるかどうかを確認してみましょう。
すでに創業していること
小規模事業者持続化補助金を申請する段階では、すでに創業している必要があります。「創業している」とは、以下のいずれかの場合を指します。
- 法人として会社を設立していること
- 個人事業主として税務署に開業届を出していること
今後創業する予定の段階では申請することができません。まずは、創業手続きを済ませてから、補助金の申請を行うという流れとなります。
小規模事業者であること
補助金名に記載がある通り、小規模事業者が本補助金を受けることができる事業者となります。ここでいう小規模事業者とは、小規模企業支援法に定められている内容をもとにしており、従業員数と業種が判断基準となっています。表にまとめると次のようになります。
業種分類 | 従業員数 |
製造業 | 20名以下 |
商業・サービス業 | 5名以下 |
サービス業のうち、宿泊業・娯楽業 | 20名以下 |
また、ここでいう従業員とは、勤務されている方のうち、会社役員や個人事業主以外の人を指します。短期のアルバイトやパートは人数に含まれませんが、勤務状況によっては含まれる場合がありますので、不安な場合はお近くの商工会や商工会議所に事前相談してみてください。
なお、創業まもない法人の場合、役員を除くと従業員が0名になるという場合があると思います。そのような従業員が0名の場合でも問題なく条件を満たします。
商工会または商工会議所の支援を受けること
申し込みをするにあたっては、最寄りの商工会か商工会議所の相談員から助言、支援を受ける必要があります。申請書の中には商工会議所の記入および押印が必要なものがあります。書類の作成までには1〜3日の時間がかかるため、申請期日までに余裕を持って相談に行きましょう。
これまで、商工会や商工会議所を訪問したことがない事業者も多いと思います。まずはお近くの商工会や商工会議所を調べて、連絡をしてみましょう。
小規模事業者持続化補助金の応募枠の種類
小規模事業者持続化補助金の応募枠には「一般枠」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2種類があります。応募資格等は変わりませんが、補助金額や補助率、スケジュール等が異なります。自社にはどちらが適しているかどうか、確認した上で応募しましょう。
種類 | 目的 | 補助金額 | 補助率 |
一般型 | 小規模事業者等が経営計画を策定して取り組む販路開拓等の支援 | 50万円 | 2/3 |
低感染リスク型ビジネス枠 | ポストコロナ社会に対応したビジネスモデルの転換のための取り組みや感染防止対策費の一部を支援 | 100万円 | 3/4 |
低感染リスク型ビジネス枠では、一般型と比較して補助金額が50万円分、補助率は3分の2から3分の4に上昇しています。
また、感染防止対策費とは、消毒やマスク、清掃、換気設備、飛沫防止対策など感染防止対策にかかる費用のことを指します。これらの費用は、日常的に経費として支出している事業者も多いと思います。これらの経費に対する補助金を希望する場合は、低感染リスク型ビジネス枠で申請しましょう。
小規模事業者持続化補助金申請の流れ
続いて小規模事業者持続化補助金の申請の流れについて、必要な書類、申請方法、スケジュールなどを紹介していきます。
申請に必要な書類
小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類は、法人、個人事業主のどちらで申請をするかにより、一部必要な書類が異なります。ここでは、
- 事業者の形態にかかわらず応募者全員に共通して必要になる書類
- 法人のみ必要になる書類
- 個人事業主のみ必要になる書類
に分けて解説します。ここでは、郵送申請をした場合の書類について解説しますが、電子申請の場合は一部書類の提出が不要になります。
申請者によって必要な書類が変わるため、自身が申請するときに必要な書類については、事前によく確認しましょう。申請書の不備で審査が通過しないのは非常にもったいないです。しっかりと確認し、ミスのないようにしましょう。
応募者全員
応募者全員に必要となる提出書類は次のとおりです。こちらの書類はすべて日本商工会議所のホームページ等にテンプレートが掲載されています。書類をダウンロードし、必要事項を記載し提出しましょう。
- ①小規模事業者持続化補助金に係る申請書(様式1ー1)
- ②経営計画書兼補助事業計画書①(様式2−1)
- ③補助事業計画書②(様式3ー1)
- ④事業支援計画書(様式4)
- ⑤補助金工夫申請書(様式5)
これらの申請書の中で、審査上最も重要かつ難易度が高いといわれている書類が、②の経営計画書兼補助事業計画書です。自社の内部、自社を取り巻く環境、今後の課題や取り組み等を分析し、今後の打ち手について具体的に記載していく書類です。
なお、④の事業支援計画書は商工会議所が発行する書類です。発行までに1日から3日程度の時間がかかります。締め切りまでに余裕を持ってお近くの商工会か商工会議所に相談にいきましょう。
また、書類とは別に電子媒体の提出が必要となります。上記の5点の書類をCD-RやUSBメモリに保存し、申請書と同じ封筒に同梱し提出します。電子媒体の提出がない場合、どれほど申請書の完成度が高くとも、審査対象外となってしまうため注意が必要です。
法人
続いて申請事業者が法人の場合のみ必要な書類について解説します。法人の場合に必要な書類は次の2点となります。こちらは商工会のホームページ等にテンプレートはないため、自身で作成することとなります。
- ①貸借対照表および損益計算書(直近1期分)
- ②株主名簿
法人によってはまだ決算を一度も迎えていなかったり、そもそも損益計算書を作成していなかったりする場合があります。その場合、損益計算書の提出は不要となりますが、別の書類が必要となります。決算期は迎えているものの損益計算書がない場合は、別途確定申告書の提出が必要となります。
なお、株主名簿に関しては、経営計画書兼補助事業計画書①(様式2ー2)にて、出資者の名称、出資比率を記載している場合、提出の必要はありません。
個人事業主
個人事業主の場合は、次の書類が必要となります。
- ①直近の確定申告書
なお、開業してから決算期を一度も迎えていない場合は、申請時の段階で開業していることがわかる開業届の提出が必要となります。
申請手続き
申請方法は「郵送申請」と「電子申請」の2通りがあります。どちらの申請方法を活用しても、採択率には違いはありません。自身が申請しやすいやり方で申請すれば大丈夫です。
郵送申請の場合は、前述の必要書類を同一の封筒に入れ、日本商工会議所の小規模事業者持続化補助金事務局へ郵送するという流れです。
電子申請の場合は、経済産業省が運営する電子申請システムJグランツを使用して申請します。メール等で書類を添付すれば良いというわけではない点には注意してください。
低感染リスク型ビジネス枠で申請する場合は郵送申請に対応しておらず、電子申請をする必要があります。
なお、Jグランツを使用するにあたり、gBizIDを取得しておく必要があります。申請から取得まで最大1ヶ月ほど時間を要することがあるため、電子申請を希望する方は早めにgBizIDを取得しておきましょう。
スケジュール
続いてスケジュールについて解説していきます。
結論をお伝えすると、小規模事業者持続化補助金の申し込み自体はいつでも可能です。以前は募集が開始されてから申し込みをするという流れでしたが、2021年9月現在は変更されています。年に数回ある締切日のタイミングで、それまで申し込みのあった事業者の採択審査がまとめて行われるという流れです。
締切日については小規模事業者持続化補助金を取り扱っている、日本商工会議所または全国商工会連合会のホームページから確認することができます。
申請が完了した後、およそ2ヶ月間の審査期間を経て採択結果が公表されます。採択後の経費が補助金支給の対象経費となります。
2021年9月現在公表されている一般型と低感染リスク型ビジネス枠の締切日および、採択結果の公表日は次のようになっています。なお、第8回以降の締切日は示されていません。
一般型
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 | |
書類送付締切日 | 2020年3月31日 | 2020年6月5日 | 2020年10月2日 | 2021年2月5日 | 2021年6月4日 | 2021年 10月1日 | 2022年 2月4日 |
採択結果公表日 | 2020年5月22日 | 2020年8月7日 | 2021年1月22日 | 2021年4月28日 | 2021年 8月31日 | 未定 | 未定 |
低感染リスク型ビジネス枠
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | |
書類送付締切日 | 2021年5月12日 | 2021年7月7日 | 2021年9月8日 | 2021年11月10日 | 2022年1月12日 | 2022年3月9日 |
採択結果公表日 | 2021年7月2日 | 2021年9月1日 | 未定 | 未定 | 未定 | 未定 |
小規模事業者持続化補助金の審査
続いて、小規模事業者持続化補助金の審査について解説していきます。審査は「基礎審査」と「加点審査」に分かれています。
基礎審査は、最低限満たしていなければならない要件の審査です。基準をクリアしていないと必ず不採択となります。
一方、加点審査は公募要領に記載されている加点項目を満たしているかどうかが判定基準となります。加点項目を満たしていれば審査は通過しやすくなりますが、満たしていないからといって直ちに不採択になるものではありません。
具体的な審査の項目を基礎審査、加点審査別にお伝えしていきましょう。審査基準の詳細については公表されていない部分も多いですが、過去の採択データをもとに考えると妥当性の高いものとなっています。
審査項目
まず、基礎審査の項目は次のとおりです。
- ①必要書類がすべて提出されていること
- ②対象者となる条件を満たしていること
- ③事業者が主体的に活動する内容であること
これらの内容が一つでも欠けていると、その時点で採択への道は閉ざされてしまいます。補助金を受けるにあたって基本的な事項が中心となっているため、相談員の方と二者確認をするなどし、抜け漏れのないように気をつけましょう。
加点項目
続いて、加点項目は次のとおりです。
- ①経営分析の妥当性
- ②事業計画の適切性
- ③補助事業計画の有効性
- ④財務状況の透明性
- ⑤コロナ禍の影響度合い
- ⑥従業員に対する賃上げ計画の有無
- ⑦後継者育成との関連性
- ⑧官公庁からの経営力向上計画認定の有無
事業者によっては、そもそも従業員がいないため賃上げをすることができない場合や、創業したばかりで後継者への引き継ぎは考えていない場合などがあるかと思います。その場合は、経営分析や事業計画の適切性、補助事業の内容など、すべての事業者に当てはまる加点項目を確実に取れるようにしましょう。
小規模事業者持続化補助金の採択率
続いて小規模事業者持続化補助金の採択率について解説していきます。小規模事業者持続化補助金の一般枠における採択率過去5回分を表にまとめると次のようになります。
一般枠
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | |
申請件数 | 8,044件 | 19,154件 | 13,642件 | 16,126件 | 12,738件 |
採択件数 | 7,308件 | 12,478件 | 7,040件 | 7,128件 | 6,869件 |
採択率 | 90.9% | 65.1% | 51.6% | 44.2% | 53.9% |
採択率は、回を重ねるごとに減少傾向にあることがわかります。つまり、申請すれば誰もが採択される補助金ではなくなってきているのです。
採択されるには、申請書類における経営分析や事業計画完成度の高さが要求されています。多くの申請書を審査する審査員の目に留まるように、具体的かつ読みやすい申請書を作成することを心がけましょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金の申請方法について詳しく解説しました。
小規模事業者持続化補助金は数ある補助金の中でも対象となる事業者が多いです。申請対象に当てはまる方は、上記の流れを参考にぜひ活用してみてください。
ただ、本業がある中で申請期間内にこの分量の書類を作成することは非常に手間がかかります。そのような際は、補助金の申請サポートを専門家に任せることも一つの手です。 当社トライズコンサルティングも、小規模事業者持続化補助金をはじめとした各種補助金の申請サポートを行っています。補助金の申請でお悩みの方や検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。