時代が変われば、人々や企業のニーズも変わってきます。これまでうまく行っていた事業モデルが次第に回らなくなっていくということは、どんな事業でもあり得ます。
そういった変化に対応し、新規事業を立ち上げていかなければ生き残っていけないのがビジネスの世界です。時代の変化が早い現代では、より一層新規事業を生み出すことが求められているといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、新規事業の立ち上げは、おいそれとできる簡単なことではありません。その過程の中でも、特に新規事業の素となるアイデアを出すというところが、まず一番のハードルとなるところです。何かアイデアを出せと言われて、うんうんうなったものの何にも出てこないという経験は、どなたにもあるのではないでしょうか?
この記事では、新規事業のアイデアが思いつかないときに、どうやって発想すれば良いのか、発想法を交えながら紹介していきます。そろそろ次の事業のアイデアを何か考えたいと思いながらも、なかなか思い浮かばず悩んでいる方の参考になるかと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
新規事業が思いつかない理由とは?
まずは、なぜ新規事業のアイデアがなかなか思いつかないのか、その原因を探ってみましょう。原因がわかれば、対策を講じることでアイデアが浮かびやすくなるかもしれません。
これまでにない事業を考えようとするから
新規事業のアイデアというと、今まで誰もやったことがないような斬新なことでなければいけないと思っている方がいるかもしれません。
しかし、これまでになかった事業のアイデアというのは、とてつもなく高いハードルで、そう簡単に思いつくものでもありませんし、そもそも新規事業だから、誰も考えたことがないようなアイデアをもとに作らなければいけないというものでもありません。
仮にそんなアイデアが浮かんだとしても、これまでにない事業というのは、人々に認知されていないものですから、事業化するのが非常に難しいといえます。もう少しハードルを下げて、既存のアイデアをちょっと変えてみるだけで、新しい事業になる場合もあります。
まずは、今までにないアイデアということにとらわれず、さまざまな案を考えてみると良いでしょう。
業界の常識にとらわれているから
業界に長くいると、次第に「これはこういうもの」といった常識が染みついていきます。何かアイデアがあったとしても、業界の常識から考えて、それは無理だとすぐに結論付けてしまうことがあるのです。
たとえば、オーダースーツはお店に来てもらって採寸するというのが常識的な考えです。しかし、「来店してもらわなくてもネット通販でオーダースーツを注文してもらえないか、もしそれができればエリアに関係なく販売することができるし、値段も抑えることができる」と開発されたのがZOZOのネット通販のオーダースーツです。今まで無理だと思われていたことも、テクノロジーの発達によって、工夫をすればできるということもあるのです。
これまでの常識で考えて簡単にアイデアを否定するのではなく、まずはアイデアとして取り上げてみる姿勢が必要です。
反対意見が気になるから
アイデアを出し合う会議では、他のアイデアの粗探しやネガティブな意見を言うのは絶対にNGです。
特に上の立場の人は、自分の経験からそのアイデアの欠点にすぐに気が付くでしょう。しかし、アイデア出しのときに否定的な雰囲気を作ってしまうと、反対されたり否定されたりするのが嫌でアイデアは出てこなくなります。
新規のアイデアは、まずたくさん出して、そこから絞り込んでいくのが良い方法です。そのためにも、どんなアイデアも否定せず、気軽にどんどん出していくようにした方が良いでしょう。
立場の上の人はアイデアの欠点が気になるかもしれませんが、率先してアイデアを出す雰囲気を作っていくようにするべきです。
アイデアを出す習慣がないから
アイデアというのは、出せと言われてすぐに出るものではありません。日頃からアイデアを出す習慣がないと、ネタを考える思考回路ができていないのでいくら考えてもなかなか案が浮かびません。
通常の仕事をしているときも、こうすればもっと効率良くなるのではないか、ここを変えれば違ったものになるのではないかといろいろ考えてみましょう。そうしたことの積み重ねが、アイデアを生み出す習慣となっていくのです。
アイデアを出すというと、「自分にはセンスがないから」と諦めている人もいるかもしれません。もちろんセンスも必要ですが、トレーニングを続けていけば普通の人でもできることです。日頃からアイデアを出す習慣を身につけていくことから始めてみましょう。
新規事業が思いつかないときの発想法
まったくのゼロベースで新規事業を考えるのは、かなりハードルが高く、いくら頭をひねってもアイデアは出てこないでしょう。まずは、取っ掛かりとなるようなところから発想のヒントを探っていくというのが現実的なやり方です。
ここでは、そういった新規事業の発想法を紹介していきます。
既存事業の長所と短所を分析する
新規事業のアイデアを考えるのに、第一段階として既存事業の長所と短所を分析してみると良いでしょう。
自社でやってきた事業ですので、細かいところまでわかっているはずです。自社が持っている強みがどこにあるのか、それを活かす方法は他に何かないか、また弱みを克服すれば違った形でビジネスになるのではないかといったことが考えられるでしょう。
既存事業でやってきたことをベースにすれば、何もないところから考えるよりも考えやすいでしょう。また、実際に経験していることも多いので、そこからヒントを得ることもできます。まずはやりやすいところからスタートしてみてください。
ライバル企業の強みや弱みを考える
自社の既存事業の分析から考えるのと同時に、ライバル企業の強みや弱みを考えることでヒントが得られるかもしれません。
ライバル企業の持つ強みを分析し、それを自社に取り入れていくことで何か違ったビジネスができるのではないかと考えたり、他社の弱い部分を補うものを自社が持っていないか、それを事業化することはできないかなどと考えたりしてみてください。
企業の強みというのは、新規事業の大きなヒントになるものです。分析することで、アイデアを考えるきっかけになるはずです。
成功したビジネスモデルを他業種に広げる
これまでの自社の事業で成功したものがあれば、そのビジネスモデルを他業種で展開することができないかを考えてみてください。
たとえば、ネットでオーダースーツの注文ができるようになってうまく軌道に乗れば、「その仕組みを使って、特注のユニフォームを作るビジネスはどうだろうか、服以外のアイテムではどうだろうか」といったような発想をしていくことで、新しい事業のヒントを探していくことができるのではないでしょうか?
他の業界に目を向けることで、違ったものが見えてくるかもしれません。
新たな付加価値を見いだす
これまで価値がないと思われていたものが、別のところに持っていったら価値があると思われてビジネスになったということがあります。
たとえば、これまで廃棄するしかないと思っていたものが、別のところでは利用価値のある材料になったり、業者向けに販売していたものを一般個人向けに販売したら意外に多くのニーズがあったりということは、これまでにも多く事例を見つけることができます。
視界を自社の周りから少しずつ広げてみていくことで、違った価値を見出せないか可能性を考えてみてください。
他社の成功例を真似る
自社独自の新たな事業を創出したいといっていても、なかなかアイデアが出てこないものです。他社の成功事例を真似てみるのも一つの良い方法です。
その会社が成功した要因は何か、その事例から自社で取り入れられる部分はないかということを調べ出し、他社がやってうまくいったところに何か少し自社ならではのものを取り入れれば、それは立派な新規事業になります。
オリジナルにこだわるのも良いですが、他社の真似をするというのは、どこの業界でもやっていることです。大企業でも同業他社の成功事例を真似て新しい事業としてやっているのは珍しくありません。
真似したところに、自社のオリジナルの部分を乗せて作っていくと、上手くいく可能性がぐっと高まります。
新規事業が思いつかないときのフレームワーク
机に向かって新規事業のアイデアを、「ああでもない、こうでもない」と考えていても、なかなか良いアイデアは浮かばないものです。そんなときにフレームワークといわれる枠組みを使った発想の手法を活用することでヒントを得られることがあります。
フレームワークにはいくつものやり方がありますが、ここでは新規事業のアイデアを得るのに適したフレームワークを紹介していきます。
SCAMPER(スキャンパー)法
SCAMPER法とは、見方の違う7つの方向から考えてみてヒントを得ようとする発想のフレームワークのことで、考案者の名前から「オズボーンのチェックリスト」とも呼ばれています。
具体的な7つの方向とは下のもので、それぞれの頭文字を取っています。
- Substitute:他に置き換えできないか
- Combline:組み合わせられないか
- Adapt:他に似たものはないか
- Modify:変更して使えないか
- Put to other uses:他の使い道がないか
- Eliminate:何か取り除けないか
- Reverse、Rearrange:逆にしたらどうか 順番を変えたらどうか
5W1H、6W3H
5W1H、6W3Hは、なんとなく頭にあるイメージをより明確にするためのフレームワークです。小学校でも習ったことのある5W1Hといわれる、
- What:何を
- Who:誰が
- When:いつ
- Where:どこで
- Why:なぜ
- How:どうやって
に落とし込んでいくことで、より実態のある形でアイデアを詰めていくことができます。そして、5W1Hで具体化したアイデアをさらに絞り込んではっきりとした形にするのが、6W3Hというフレームワークです。
5W1Hに加えて、
- Whom:誰に
- How many:どれだけ
- How much:いくらで
という項目についても考えていくことで、あいまいなイメージをさらに明確なものにしていくことができます。
マインドマップ
マインドマップは、発想のスタート地点となるキーワードを紙の真ん中に置き、そのキーワードから浮かんだことばを、枝を伸ばすように書き連ねていきます。アイデアをまとめたり整理したりする前に、どんどん連想を続けていき、そのつながりから新たな発想や、問題点が浮き上がってくるフレームワークです。
シンプルな手法でわかりやすいということで、経営者やビジネスマンに広く使われています。
形態分析法
形態分析法とは、テーマに対して、「変数」と「要素」を掛け合わせて発想するフレームワークです。
たとえば、「新規事業」というテーマを設定した場合、変数となるものとして「ターゲット」「価格」「機能」といった項目が挙げられます。そして、それぞれの変数に対して、要素を洗い出していきます。
ターゲットとしては、「若者」「主婦」「働く女性」「おじさん」「アクティブな高齢者」など挙げることができたとすると、「若者」に対しての「価格」と「機能」を考えて書き出していき、チャートに落とし込みます。
こうした掛け合わせをすることで、アイデアを出すきっかけをいくつも作っていくことができるという手法です。
KJ法
KJ法は、たくさん出てきたアイデアをとりまとめて分類するのに便利なフレームワークです。アイデア1つに対して1枚のカードを作り、つながりのあるものをまとめていきます。
そのまとまったカードに共通するものを抽出しまとめてチャートにしていくことで、理解しやすくなります。
新規事業が思いつかないときにやってみること
新規事業を考えてもなかなか思いつかないときには、今までと違ったことをしてみると新しいアイデアが思い浮かぶきっかけになることがあります。具体的な方法を紹介していきましょう。
解決するべき課題を探す
事業の基になるものは、不満や不便といった人々が感じている課題です。そういった課題を解決する商品やサービスを作り出せれば、新規事業として成功に近づきます。
しかしながら、課題を見つける作業は意外に難しいのが実際のところです。なぜなら、ほとんどの課題は、すでに他の企業やサービスによって解決されているからです。
そういった場合には、視点を変えてみると違った見方ができるときがあります。ビジネスマンの視点ではなく、高齢者になったつもりで考えてみる、主婦になったらどうか考えてみるということです。自分にとっては課題とはならなくても、違った視点から見ると大きな課題ということがあるかもしれません。
掛け合わせてみる
フレームワークには、さまざまな要素を掛け合わせて発想するというものがあります。そうしたフレームワークの枠から外れるような、意外なものを掛け合わせて考えてみるというのも新しいアイデアが思い浮かぶきっかけになるかもしれません。
ビジネスの中におもちゃや遊びの要素を掛け合わせるなど、常識的にはあまり関係ないようなことも掛け合わせてみると、意外なアイデアが出てくるケースもあります。
外部の力を借りる
いつものメンバーでアイデア出しをしていても、煮詰まってしまってなかなか新しいものが出てこないケースはよくあります。そういったときには、外部の力を借りてみるというのも一つの解決策です。
そのジャンルで多くの知見がある人であれば、成功事例や他社の動向などを知っているかもしれません。また、社外の人であれば、また違った見方をしているという可能性もあります。
そういった人と話をすることで、アイデアの基が見つかるかもしれません。いつもと違ったメンバーを入れて話し合いをしてみることも、良いきっかけになる可能性があります。
価値のないものに価値をつけてみる
自分たちにとって価値がないものでも、他に持っていくと意外に価値になることがあります。今まで捨てていたものが、値段がついて売り物になるということがあります。無料だとされていたサービスをブラシュアップすることで、新サービスとして売れるというケースもあります。
固定観念に縛られていると「こんなものが売れるはずがない」といった見方になってしまいがちです。「これも売れるのではないか」「商品になるのではないか」といった目で見ていくと、違った価値が見つけられるかもしれません。
成功する新規事業のアイデアとは
ここまで、新規事業のアイデアが浮かばないときの発想法について紹介してきました。最後に、どのようなアイデアが新規事業では成功につながるのかについて解説していきましょう。
新規性
新規事業では、今までにない製品や今までにないサービス、今までにない事業形態といったものに価値が高いと評価されます。ライバルがすでにやっている市場に後発で入っていっても、成果につながるまでには相当な労力や時間、お金がかかると見込まれます。
新規性のある事業であれば、市場に対するインパクトも大きく話題になりやすいため、展開しやすいというところがあります。ただし、まったく誰も見たこともないような商品を売るのは大変なので、成功しているものを少しアレンジしたり、少しだけずらしたりするようなやり方で新規性を出していくのも賢いやり方だといえます。
解決性
ビジネスとは、顧客の抱える問題をどれだけ解決することができるかによって、その価値が決まるといえます。どんなに新規性がある事業であっても、あまり多くの人の問題や課題の解決につながらないようなものでは顧客に見向きもされず、すぐに市場から消えていくことになるでしょう。
同じ悩みを抱えている人が多くおり、その悩みをどうしても解決したいと強く思うようであれば、その悩みを少しでも解決できる商品は十分成立することになります。
収益性
新規事業で新たに商品を開発してお客さんに喜ばれていたとしても、コストがかかりすぎて利益が取れなかったり、安定して生産することができなかったりすれば、事業としては成り立ちません。
継続的に運営していくためには、売り上げを上げて利益を出すことが重要です。たとえどんなに新規性や解決性が高かったとしても、ビジネスとしてやっていくことができないとすれば、新規事業としては失格です。新しいアイデアに目を向けるあまり収益性を後回しにすることがないように注意する必要があります。
まとめ
新規事業を立ち上げてビジネスとして成立するように稼働させることは非常に難しく、成功する確率も低いといわれています。それでも多くの会社では、現在の事業だけでは今後の成長が難しいと考えており、なんとか新規事業を立ち上げたいという思いがあります。
新規事業では、どういった事業をやるのかというアイデアが肝ですが、良いアイデアはそう簡単には出てきません。発想法を紹介してきましたが、それで画期的なアイデアが思い浮かぶかどうかは別問題です。
それでも、日頃から問題意識を持ち、そこに対する解決策を求めていく姿勢を持ち続けていれば、いつか思いがけずいいアイデアがひらめくかもしれません。簡単にあきらめずに、考え続けるということも大切なことなのです。
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