【2023】新製品開発戦略のやり方は?流れと押さえておきたいポイント

新製品開発戦略

目まぐるしく変化するビジネスの現場において、企業を存続し発展させていくためには、絶えず取るべき経営戦略を考えていかなければなりません。マーケットと自社の活動をマッチさせ、売り上げや利益を確保していく必要がありますが、戦略をどのように策定すれば良いのかということを具体的にわかる方は少ないと思います。

そこで今回は、経営戦略の手法の一つである「新製品開発戦略」の概要と具体的な手法、成功のためのポイントについて解説していきます。この記事が貴社の経営戦略立案のご参考になれば幸いです。

新製品開発戦略とは?

経営戦略を策定しようというときに役立つのがフレームワークです。数多くあるフレームワークの中で経営戦略立案の定番は「アンゾフの成長マトリクス」で、「新製品開発戦略」は、その中に出てくる経営戦略の一つです。

アンゾフの成長マトリクス

「アンゾフの成長マトリクス」は、「製品」と「市場」の2軸から成長戦略を考えるフレームワークであり、縦軸に「既存製品」と「新規製品」、横軸に「既存市場」と「新規市場」をとった次のような2×2の行と列の表で表されます。

製品/市場既存市場新規市場
既存製品市場浸透戦略新市場開拓戦略
新規製品新製品開発戦略多角化戦略

新製品開発戦略は、すでに参入している市場に新しい製品を投入する経営戦略です。

たとえば、飲食店において新メニューの提供が新製品開発戦略になります。「アンゾフの成長マトリクス」における新製品開発戦略以外の戦略は次のとおりです。

  • 市場浸透戦略:既に参入している市場に既存製品を投入する経営戦略
  • 新市場開拓戦略:これまでと異なる市場に既存製品を投入する経営戦略
  • 多角化戦略:これまでと異なる市場に新しい製品を投入する経営戦略

一般的に新製品開発戦略は、自社にとってまったく未知の領域に参入する「多角化戦略」より難易度は低いとされていますが、「市場浸透戦略」や「新市場開拓戦略」より難しいと考えられています。

具体的な手法

新製品開発戦略の具体的な手法は次の2つが考えられます。

  • 既存製品に新しい機能やサービスを追加する
  • 色やサイズなどが異なる新しい製品を開発する

いずれにおいても、既存製品をブラッシュアップするか、商品開発を行うかの製品自体に何かしらの手を入れる取り組みになります。

向いているマーケット

新製品開発戦略は、マーケット自体が拡大している市場に向いた戦略であると考えられます。すでに形成された市場に対して新たな製品を投入し、消費者に訴求していくスタイルであるため、新製品が既存製品と明確に差別化されていることに加え、マーケット自体の勢いがあり、今後も拡大していく見込みがあるのかが重要です。

メリット

新製品開発戦略の主なメリットは次の2点です。

既存の技術やノウハウを活かすことができる

新製品開発戦略」では、既存の商品の色やデザイン、機能を変更した製品を販売するため、既に保有している技術力やノウハウを有効活用することができます。新しい技術やノウハウを身につける必要がないため、まったく新しいことに取り組む場合と比べて、失敗するリスクが小さく、仮に失敗したとしてもその損失を最小限に抑えることができます。

製品ライフサイクルの寿命を延長できる

一つの製品のライフサイクルを伸長し、長期的に収益を確保できることも「新製品開発戦略」のメリットです。根強いファンを抱える製品ブランドにおいて、既存製品のモデルチェンジやバージョンアップした場合、既存製品からの固定客を引き継ぐことが期待できるため、新製品の販売前にどの程度収益が見込めるのかを予測することも可能です。

デメリット

続いて、新製品開発戦略の主なデメリットは次の2点です。

製品開発には大きなコストを要する

既存製品のブラッシュアップや新製品を開発するためには、市場調査や企画を行い、研究開発やデザインを経て、テストマーケティングなど多大なコストを要します。また、製品化までには相当の時間もかかるため、費用面以外のコストも考慮しておく必要があります。

縮小傾向のあるマーケットには不向き

マーケットが縮小傾向にある場合、新製品を投入しても思ったように販売が伸びない可能性が高くなります。自社が活動している市場や業界をよく分析し、今後の展望を見越して戦略を選定しましょう。

なお、縮小している市場環境下では、「新市場開拓戦略」や「多角化戦略」など既存市場とは異なる市場に参入する戦略が有効です。

新製品開発の基本的な流れ

ここからは新製品開発のフローをご紹介します。

マーケット分析

最初に必要となることは、マーケットや競合他社・自社の分析です。具体的には次の内容について調査を行います。

  • 消費者のニーズ
  • 市場規模・成長性
  • 競合他社のシェア・戦略・強みや弱み
  • 自社のシェア・戦略・強みや弱み

これらの分析は、以降の企画や商品開発フェーズにおける重要なファクターとなります。具体的には、次のような手法を用いて行われます。

  • オープンデータの活用:官公庁が公表している統計情報や業界の協会等の提供するデータ。
  • ユーザーアンケートの実施:郵送やオンライン上で直接、エンドユーザーに対して行うアンケート調査。
  • グループインタビューの実施:4〜6名ほどの参加者に対して行うインタビュー調査。
  • PEST分析:政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から分析を行う手法。
  • 3C分析:「市場・顧客(Customer)」、「競合(Conpetitor)」、「自社(Company)」の3つの点から分析を行う手法。
  • 5フォース分析:自社に影響を与える要因として「既存の競合の脅威」、「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」、「売り手の交渉力」、「買い手の交渉力」の5つから分析を行う手法。
  • SWOT分析:自社の内部環境を「強み(Strength)」・「弱み(Weakness)」、外部環境を「機会(Opportunitey)」・「脅威(Threat)」の4つ要因に分けて分析を行う手法。

ここで認識を誤ってしまうと、商品化された製品は市場にマッチしないか差別化されていないものになってしまいます。十分に時間を取って調査しましょう。

企画

次に新製品のアイデアを考えます。マーケット分析で得た市場の状況やユーザーニーズ、競合他社の動向、自社のリソースなどさまざまな方面から「事業のタネ」を創出します。

アイデアの発想には次のようなフレームワークが有効となります。

  • マンダラート:設定したテーマに関連するアイデアを周りに書き込んでいくことで発想を広げ、取り組むべきことを明確にするフレームワーク。最終的にはテーマに沿った8×8の64個の関連語句が記載された81マスが展開される。
  • SCAMPER法:「代用(Substitute)」「結合(Combine)」「応用(Adapt)」「修正(Modify)」「転用(Put to other uses)」「削減(Eliminate)」「逆転・再編成(Reverse・Rearrange)」の切り口をもとにアイデアを発想するフレームワーク。

こうして発想したアイデアから、製品化の可能性や売上予想等を算出し、実現可能性の高い事業を選定します。アイデアを選定したら、製品化までのスケジュールや製造・販売促進の方法、流通ルートのほか、全体に要する予算などを検討します。

商品開発

企画がまとまれば、設計開発等と連携し、製品の仕様を検討して試作品を製作します。デザイン部門や営業部門とも協力し必要な機能を持たせつつも、消費者に受ける見た目という点も意識しなければなりません。

また、開発段階から製品化の際の製造コストについても注意をしておく必要があります。内製化できても、外注に出した方が安い部品や工程を模索し、連携する企業の選定も行います。

テストマーケティング

試作品が完成すれば、テストマーケティングを行い、計画どおり売れる見込みがある製品であるかを確認します。テストマーケティングには具体的に以下のような手法があります。

  • ホームユーステスト:所謂、「モニター調査」でサンプルを家庭に配布し、製品の使い心地や感想などの評価を収集する手法。
  • テスト販売:特定エリアにおいて、全国展開する場合と同様の広告等のPRを行い、一定期間製品を販売する手法。世代別の人口分布など異常の出にくい中規模都市を選択する必要がある。
  • 展示会への出展:特定の業界や製品に特化した展示会に出展することで、業界に知見を持つ企業から製品改善の意見を聞いたり、見込み客を見つけたりすることができる。特に、BtoB向けの製品のマーケティングに有効。
  • クラウドファンディング:新製品を販売するプロジェクトのランディングページを作成し、新製品を欲しがる支援者に先行販売の形で資金を募る手法。

計画どおり売れなかった場合や仮に売れていたとしても、購入者が自社で想定していたターゲットと異なっていた場合などは他のアイデアに切り替えたり、方向性を再検討したりします。いずれにしても、競合他社に参入にチャンスを与えないよう、迅速に行う必要があります。

商品化

テストマーケティングが終了したら、いよいよ商品化の段階に移ります。製造ラインの確保や外注先との調整など製造部門以外にも、パッケージデザインや広告宣伝の準備、流通ルートの確保、店頭でのマーチャンダイジングなど想定したターゲットにリーチできるようにマーケティング戦略に沿った取り組みが必要です。

こうしたマーケティングの場で活用されるのが「4C分析」と「4P分析」です。両者は比較して説明されることの多いフレームワークです。

4C分析は、

  • Customer  Value:顧客価値
  • Cost:コスト
  • Convenience:顧客利便性
  • Communication:コミュニケーション

の4要素の頭文字をとって表され、「顧客側の目線」で事業を捉え戦略を練ります。具体的には次のような点を検討します。

  • 顧客価値(Customer  Value):顧客から見た便利さ・性能などの品質、デザイン・ブランドイメージ
  • コスト(Cost):顧客が商品やサービスに支払う費用
  • 顧客利便性(Convenience):商品・サービスの入手方法、店舗のアクセスしやすさ、ECサイトの分かりやすさ、決済方法
  • コミュニケーション(Communication):店舗やイベント、SNSなど顧客との良好な関係のための接点を持つ方法

一方、4P分析は顧客視点の4C分析と異なり、

  • Product:製品
  • Price:価格
  • Place:流通
  • Prmotion:販売促進

の4要素の頭文字を取って表され、「企業側の目線」で事業を捉えます。

  • 製品(Product):自社商品・サービスの強みやコンセプト
  • 価格(Price):市場価格や競合他社との比較、利益の確保
  • 流通(Place):ターゲットに即した販売場所、コストを抑えた流通経路
  • 販売促進(Prmotion):使用する宣伝媒体、プロモーションイメージ

効果的なマーケティングを行うためには、いずれか片方だけ行うのではなく、2者間の整合性が取れているか慎重に確認しながら戦略を決定していくマーケティングミックスを策定することで、自社が取り組むべき具体的な行動が明確になります。

また、発売後のクレーム等に対応するためのフォロー体制も整えておきましょう。

フォロー

新製品を市場に投入した後は、実際に購入して使用したユーザーの声を集めて改善に活かします。店頭での意見やアンケート、SNSへの投稿など広く新製品に関する情報を収集します。

注意すべき点は、消費者は自身の真のニーズを言語化できることは極めて少ないということです。これを意識していないと、消費者の表面的な声に惑わされ、事業を誤った方向へ進めてしまう可能性があります。慎重な分析を行い、消費者の声の中にある真のニーズを理解することに努めましょう。

新製品開発を成功させるためのポイント

最後に、新製品開発戦略を成功に導くためのポイントを解説します。

消費者のニーズを理解する

市場の調査を徹底的に行い、消費者自身も把握できていない解決したい課題を明確にし、それを解決する機能を持った新製品を提供できれば事業は軌道に乗ります。

有名な「レビットのドリルの穴理論」では、ホームセンターにドリルを買いに来た消費者が本当に欲しいのは「ドリル」でなく、「穴」であるというものです。ともすれば、提供すべきはドリルではなく、すでに穴の空いている木材ということがわかります。

表面的なニーズだけでは見えてこない消費者の真のニーズを掴むためには、バイアス等の無い正しい分析資料と「もしかするとお客さんの求めているものは○○かもしれない」という仮説志向、それを検証する取り組みが重要です。

コアコンピタンスを活かす・強化する

新製品開発は、あくまで自社の強みであるコアコンピタンスを活かす方向で検討すべきです。なぜなら、前述したように、新たに強みを生み出す場合と比較して、スピード感を持って取り組むことができ、失敗した場合の被害も最小限で済むためです。

また、もう一つの理由として、競合他社が模倣することの難しい製品になり、結果として、事業の成功確率を高める要因になるからです。コアコンピタンスをこれまでの業界や用途だけでなく、他に転用できないかという視点も必要です。

既存・競合商品をブラッシュアップする

新製品開発といわれると、一から新たに考えなくてはならないと思われるかもしれません。しかし、既存商品や競合他社の商品をブラッシュアップすることで生み出すことも可能です。

既存製品等では解決できない消費者の抱えている課題を発見したり、機能を追加したりすることで、これまで取り逃がしていたターゲットを獲得できる余地は大いにあります。まったくの新製品よりも負担が少なく実現可能性も高いため、まずは自社の既存商品の見直しから始めてみましょう。

これまでにない商品を開発する

最も難易度の高い取り組みですが、既存市場にこれまでなかった価値観・ニーズを呼び起こすことができれば、高いシェアを獲得することができます。顕著な例としては、アップルの携帯電話市場参入が挙げられます。

すでに「iPod」で多くのユーザーを抱えている中、携帯電話と音楽プレーヤーの両方を持ち歩く不便さを解消し、アップルのコアコンピタンスである「デザイン力」「ユーザビィティ」を活かし、「iPhone」を開発、2008年には日本市場に参入しました。

その後もモデルチェンジを繰り返し、2022年2月時点において、日本国内のスマートフォン市場では約70%という圧倒的なシェアを占めています。

まとめ

「アンゾフの成長マトリクス」における「新製品開発戦略」について解説しました。特に、中小企業においては、既存事業の展望に不安はあるものの、知らない領域への事業展開もリスクを考えるとなかなか一歩が踏み出せないという経営者の方が多いと思われます。

しかし、「アンゾフの成長マトリクス」の4つの領域のような、「製品」か「市場」のいずれかに片足を残した「軸をずらす」事業展開なら取り組みやすいのではないでしょうか?

当社トライズコンサルティングでは、「新製品開発戦略」などの新たな事業展開に取り組む中小企業様へのコンサルティングを実施しております。認定支援機関として、マーケティングや試作品製作・設備投資の資金獲得のための補助金活用を支援しており、貴社のビジネスパートナーとしてお手伝いさせていただきます。 ご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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