ビジネスモデルの作り方のポイントは?ビジネスの要素と構築ステップ

ビジネスモデルの作り方

ビジネスモデルは、新規事業立ち上げを検討する段階から事業を進めていく中でも常に必要となる地図のような存在です。道に迷うときは、自分がどこにいて、どの道を行けば目的地に到達するのかを知るために必要なものが地図です。

ビジネスにおいて目的地は利益です。どうしたらどのくらい利益が出るのか、これを具体的な事業のアクションと数値に落とし込まれたものがビジネスモデルです。

今回は、ビジネスモデルの作り方の基本と、より良いビジネスモデルを作るためのポイントを解説します。

ビジネスモデルが重要な理由

ビジネスモデルが重要である理由は、良いビジネスモデルを実現させることができれば利益が得られるからです。つまり、良いビジネスモデルがあれば、その実現に集中することができます。

また、事業を一から開始する新規事業では、人の力や資金を集めようとする事業の初期段階では、基本的に何もありません。唯一あるのが、ビジネスアイデアがまとめられたビジネスモデルです。そのため、人や資金を集められるかはビジネスモデルにかかっているといえます。

良いビジネスモデルは儲かる

儲かるから事業をするというのは、利益を追求する営利法人では当然です。良いビジネスモデルとは、利益が継続的に得られる事業構造ともいえます。継続的に利益が出るためには、競合他社のビジネスモデルと明らかな差があり、かつその差は埋められないものでなければなりません。

すぐに真似できる=差がないビジネスモデルは、儲かることがわかるとビジネスモデルを真似る企業が現れて、競争に巻き込まれます。競争が発生して、かつ競合他社との差がなければ、価格競争が始まってしまいます。

価格競争は、利益を削って販売価格を下げる競争なので、自社も利益を下げて販売価格を下げざるを得なくなります。結果として、思っていた利益を上げることができなくなります。

このような価格競争に巻き込まれないためには、お客様に選んでもらえる差を生みつつ、自社の強みを最大限生かして真似されないビジネスモデルを作る必要があります。

新規事業はビジネスモデルありき

良いビジネスモデルは、どうやって利益を稼ぐのかが誰が見てもわかるようになっています。この点は、新規事業を始めようとする上で非常に重要です。なぜなら、新規事業を始める上で重要になるのは、人の助けだからです。

新規事業を始めようとすると、資金調達先や取引先、顧客のすべてが必要になります。しかし、新規事業を始めるときには、資金もなければ取引先もいないことが一般的でしょう。商品もない状態からスタートするため、顧客もいるはずがありません。

資金調達先や取引先を探すために必要なのがビジネスモデルです。銀行や資金提供者がビジネスモデルを見て継続的に儲かると思えば、資金が集まります。また、同じようにビジネスが続くと思えば取引先が見つかりますし、その取引条件を少しでも優位に進められます。

逆に、ビジネスモデルがないもしくは上手くなければ、資金を集めることができませんし、取引先を見つけることができません。

ここで重要になるポイントは、次の2点を踏まえて作成されていることです。

  • 誰が見てもビジネスモデルを理解できること
  • 検証ができるレベルの具体性を持っていること

誰が見てもわかるということは、この利益が出る要因が客観的データに基づいていることが必要です。利益が出る要因が主観的な考えいわゆる「社長の想い」だけに基づいていると、言っていることはわかっても、利益が出る理由がわからなくなります。

検証できるレベルの具体性があると、具体的な反証も出てきます。具体的でかつ正しい反証が出てくることは、新規事業立ち上げの上では非常に重要です。なぜなら、そこから事業計画やビジネスモデルを再構築できるからです。

ビジネスモデルの修正は、事業の成功につながると信じてブラッシュアップを続けます。

ビジネスモデルを作る要素

ビジネス=事業をシンプルにいうと、お客様に商品やサービスを使ってもらい、その対価を受け取ることです。選ばれる商品やサービス(以下、「商品など」といいます)を市場に投入できるか、商品などを売るためにかかるコスト(原価や販売管理費など)に対してどれだけ利益を確保できるかという重要な2点を明確にする必要があります。

上記ポイントを押さえる上で欠かせない要素として、マーケティングとファイナンスがあります。

マーケティング

マーケティングは、お客様に商品などを買ってもらう仕組みをいいます。商品を買ってもらうために重要となるのは、主に次の3つです。

  • お客様
  • 商品などの価値
  • アプローチ方法

お客様

お客様は誰なのかということを明確にします。年齢や性別、地域、趣味などによって、お客様になってくれると考えられる市場を絞って行きます。このお客様を明確にすることでお客様の集団=市場の大きさを把握することを「セグメンテーション」といいます。

たとえば、クレープの専門店と日本酒の専門店ではお客様となるお客様は異なります。クレープはお店を中心として地域が絞られますが、日本酒であればネット販売を活用することで日本や海外まで地域を広げることができるかもしれません。

商品などの価値

商品などの価値とは、お客様が商品などを選ぶ理由といえます。同じ小売業でも、スーパーとコンビニではお客様に提供している価値は異なります。

スーパーは多くの物をまとめて1ヶ所で買えるという価値を提供しています。一方で、コンビニは欲しい物だけを24時間素早く買える価値を提供しています。

この価値で重要なのは、既存の企業などが提供している価値との違いである「差別化」と、その価値がお客様に受け入れられる「ニーズ」があるかという点です。市場の中で、差別化された商品などを投入してお客様のニーズを掴めば、市場を独占することも可能です。

アプローチ方法

マーケティングでいうアプローチ方法で有名なのは、4Pや4Cがあります。4Pとは、

  • Product(商品・サービスなど)
  • Price(価格など)
  • Promotion(広告や販売方法)
  • Placement(流通方法)

のことをいいます。4Pは1960年代に提唱されて、現在まで利用されている考え方です。

一方で、1990年代により時代にマッチした考えとして提唱されたのが4Cです。4Cは、

  • Customer Value(顧客価値)
  • Cost(コスト)
  • Convenient(利便性)
  • Communivcation(顧客とのコミュニケーション)

の頭文字を取ったものです。

4Pと4Cともに、いかにターゲットとするお客様に商品などを届けるかを考えるフレームワークです。

ファイナンス

ビジネスで重要なものの一つがお金です。ビジネスモデルを作成する上でのファイナンスは、ビジネスを行う上での「資金調達」と「資金運用」を、根拠を持った数値で表現する必要があります。

資金調達

資金調達とは、いくらの資金がいつまでに必要となるのか、それをどのように誰から調達してくるのか、具体的な金額やスケジュールを作ります。

資金がショートすると、会社も事業も停止します。そのため、経営者の重要な仕事の一つがこの資金調達になります。

資金運用

資金運用とは、集めた資金をどう使っていくらの利益を出すのかというコストと収益を数字に落とし込みながら、資金の流れ=キャッシュフローを押さえておくことです。損益計算書で「売上」「原価」「販売費および一般管理費」のそれぞれ詳細な項目を作成し、粗利益や営業利益がどのくらい出るのかをシミュレーションしていきます。

資金調達も資金運用の面でも、1ヶ月の単位で作成したものを5箇年などの中期的な事業計画に落とし込んでいきます。

ビジネスモデルを作るステップ

ビジネスモデルでやるべきことがわかったら、次は作成していきます。ビジネスモデルを作成する上で、素早くかつポイントを外さないことが重要です。

ビジネスモデルは、実際に事業を行い、利益を上げるために作るものです。そのため、できるだけ早く事業を開始するためにも、重要なことの考慮不足にならないためにも手順が必要です。

自分の強み分析

ビジネスモデルを作る最初のステップは、自分もしくは自社の強みを考えます。ここでいう「強み」は、ただ強いだけではいけません。その強みがお客様のニーズを満たす必要があります。

自分の強みがお客様のニーズを満たすことができれば、競争優位が生まれます。競争優位とは、競合他社に打ち勝つための要素であり、他社が真似できない要素になります。つまり、自分の強みを最大限活かして強い競争優位性を築ければ、競争に勝てるだけでなく、競争に巻き込まれずに事業ができる可能性が高くなります。

逆に、自分ないしは自社に強みがないもしくは強みを活かせないビジネスモデルでは、自分がそのビジネスを行う意味がありません。仮に強みがない状態で事業がうまくいったとしても、真似されて競争に巻き込まれてしまいます。

業界分析

自分がどのようなビジネスをするのかを考える上では、業界を知る必要があります。業界とは、企業を産業などで分類したものです。

たとえば、金融業界や建設業界、IT業界などが産業で分類された業界です。この業界を分析するのは、業界全体としてどのくらいの利益率が見込まれるのか、顧客となり得るターゲットの現在の規模や今後どのように増減していくかの予想を行う上で業界分析は欠かせません。

また、業界分析をすることで既存のビジネスモデルを把握できます。業界をリードするような大手企業はどのようなビジネスモデルになっているか、また中小企業はどのような課題があるのかなどは、業界分析で把握できます。

そして、既存事業を理解して、その既存のビジネスモデルとお客様のニーズで合致しないズレを見つけられたら、業界分析は大きな成功といえます。

既存のビジネスモデルに強みをリンクさせる

自分の強みと業界分析によって既存会社のビジネスモデルを学んだら、自社の強みを発揮できるように既存のビジネスモデルを作り替えていきます。既存のビジネスモデルを活用すれば、より現実に即したビジネスモデルを構築できつつ時間も短縮できます。

さらに、自社の強みをそこに加えると、強みが与える事業への影響を明確に把握できます。

ビジネスモデル全体が新しい必要はありません。ただし、完全に既存のビジネスモデルを真似するだけでは、既にある競合他社との競争に勝てません。

競争において、先に事業展開しているアドバンテージは大きな差を生み出します。人間には、一度使い始めると切り替える明確な理由などがないと同じものを使い続けてしまう習慣があるからです。

スモールテストとブラッシュアップ

顧客ニーズに合致する自社の強みを既存のビジネスモデルに組み込めて、そこから差を生み出すことができるビジネスモデルを作成できたら、それを市場で試します。

実は、ここまでのプロセスはすべて机上の空論です。本当にお客様が受け入れてくれるのかは、やってみなければわかりません。そこで、ビジネスアイデアと現実が一致するかをテストします。

テストは失敗してもかまわないレベルの規模=つまりはスモールで実施します。しかし、スモールテストでもやろうとすることの要素はしっかり実現するレベルで実施します。近年、飲食店などでプレオープンなどをする店もありますが、それもスモールテストといえます。

スモールテストで想定していたお客様の購買や行動につながれば良いですが、つながらなかったとしても、課題が明確になります。その課題を解決すれば、より精度の高いビジネスモデルができます。

完成したビジネスモデルを作ることができれば最高ですが、完成していないビジネスモデルでも事業をしながら修正できる程度に完成していれば問題はありません。ビジネスモデルを作ることはそれほど簡単ではなく、完璧なものを目指すよりも強みや収益性が明確であるならば、事業をしながら現実に沿ってビジネスモデルに修正を加えていくことができます。

ビジネスモデルの成功例

最後に、優れたビジネスモデルを成功させた例を紹介します。自分が事業をやろうとする業種と異なった業種であっても、優れたビジネスモデルには事業を行う上でのヒントが多くあります。

プラットフォームビジネス

プラットフォームビジネスとは、Webサービス等を含んだお客様が集まる基盤(プラットフォーム)を提供するビジネスです。ユーザーと企業を多く集めることで、プラットフォームは競争優位を確保できるとされています。

プラットフォームビジネスの一例として、世界最大のネットショップを展開するAmazonのビジネスモデルを紹介します。

Amazonは「安さ」と「品ぞろえの多さ」と「早さ」をネットショップというプラットフォームで実現させています。Amazonでは、ネットショップだけではなくAmazonプライムなどの翌日配達を無償にするサービスや動画視聴サービスなど複数のサービスを展開しています。

これらはすべて、Amazonというプラットフォームの価値を高める戦略につながります。一方で、Amazonのサイトでは自社の商品以外に他の企業も商品を販売しています。

この他の企業が増えれば、Amazonで買える商品数が増えるため、お客様のニーズに合致する可能性が高くなります。つまり、ネットショップであるAmazonを利用するお客様が増えれば、そこで商品を販売する企業も増え、買える商品が増えるためお客様がまた増えていくというプラットフォームビジネスの好循環が生まれています。

既存ビジネスモデルのアップデート

新しいビジネスモデルを考えるのは難しいものです。しかし、既存のビジネスモデルをアップデートさせることで新しいチャンスを生み出すこともできます。

建設現場で使用する作業服や作業用品を店舗で販売するワークマンは、日本の建設作業服の断トツのトップシェア企業です。しかし、日本の少子高齢化の影響で建設現場の作業をする人が減少していき、このままでは成長の意地が危ぶまれる要因もありました。

そこでワークマンは『WORKMAN Plus』という、商品開発力と販売店舗を活かしてアウトドアやスポーツを楽しむ男性や女性などに商品展開をしていきました。これは、既存のビジネスモデルにある自社の強み=商品開発力や販売網を活用して、ターゲットとなるお客様を拡大というアップデートに成功した事例です。

まとめ

ビジネスモデルが重要な理由と作る上での要素や手順などについてまとめました。良い会社や事業を作る上で、良いビジネスモデルは欠かせません。

良いビジネスモデルを作り上げるためには、ビジネスモデルを作ってそれを事業立ち上げなどに活用した経験やノウハウがある専門家のサポートは非常に役に立ちます。中小企業の経営施策に強みを持つ当社トライズコンサルティングにご相談ください。

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