【2023】新規事業を開発するには?知っておくべきポイント&相談すべき相手

新規事業開発

「このままではいずれ行き詰まる、新しいことに挑戦して現状を打破しないといけない。」

多くの経営者の方に共通する想いではないでしょうか?

とはいえ、新規事業は非常にリスクが高いものです。新規事業は10個やって1個当たれば良い方。アメリカのシリコンバレーでは、ベンチャー企業が無数に誕生しているけれど、1,000社のうち生き残って成長できるのは3社程度といわれています。

今回は、ハイリスクな新規事業の成功確率を、少しでも上げるためのエッセンスを紹介します。

新規事業を開発する際の方向性

まずは、新規事業を開発していく方向性で注意するポイントについて解説します。

自社の強みを活かせる分野にする

新規事業の方向性を考えるうえで、指針となるフレームワークにアンゾフの成長マトリクスがあります。次のように、横軸に製品・サービス、縦軸に市場を取り、それぞれ既存と新規に区分けしていきます。

アンゾフの成長マトリクス

①は既存製品を既存市場・顧客に投入することで、要するに既存事業です。

②では既存市場に新製品・サービスを投入します。たとえば、洗剤メーカーが柔軟剤の新製品を新たに投入するようなことが挙げられます。

③は既存製品を新市場に投入します。おむつメーカーが乳児向けから新たにシニア向け製品に参入するなどが挙げられます。

最後に、④がいわゆる多角化で、新しい市場に新しい商品・サービスを投入します。

問題となるのは④で、馴染みのない市場に新しい製品を投入しようとするため、当然リスクが高くなります。にもかかわらず、隣の芝生(市場)は青く見えるのか、多角化に挑戦しようとする企業は少なくありません。

もちろん、成功する企業はあります。たとえば、洗剤事業が中心であった花王は、市場も製品もまったく異なる化粧品分野で、ソフィーナという日本を代表するブランドを育て上げました。ただし、黒字化するまでに数十年かかっているそうです。

20年、30年くらいのスパンで腰を据えて資金を投入し続ける覚悟があるのならともかく、そうではないのなら④の多角化は避けた方が無難でしょう。

既存製品・既存市場は、自社の強みが活かせている分野です。もし検討している新規事業が多角化に該当しても、せめて市場だけはもう少し既存市場に近いものにしたり、②または③に近づけ、自社の強みができるだけ活かせる方向に導いたりする工夫が必要です。

ブルー・オーシャンを探す

新規事業で狙いたいのは「ブルー・オーシャン」です。

ブルー・オーシャン戦略とは、比較的競合が少ない分野に参入する経営戦略です。戦いがない(競合がいない)ため、無用な血を流さずに済み、青い海のままでいられます。

対する「レッド・オーシャン」は、競争が激しく血が流れ、赤い海となってしまうイメージから名づけられています。

新規事業で参入すれば、当然後発となります。すでに競争が激しい分野に後発企業が参入しても価格競争しかなく、果てしない消耗戦に巻き込まれてしまいます。それよりは、ブルー・オーシャンを探す方が賢明でしょう。

とはいえ、「これだけ成熟したマーケットの中で、競合の少ない分野なんて見つけられるのか?」そんな疑問をお持ちの方も多いことでしょう。ブルー・オーシャン戦略の重要な点は、まったく新しい未開拓市場を探すというよりは、競合と少し視点を変えて新しい市場を見出すことにあります。

ブルー・オーシャンの例として、10分散髪のQBハウスがよく取り上げられます。理髪店業界はすでに成熟、飽和しているといっても良いくらい競争の多い分野ですが、QBハウスは成長を続けています。

要因は、理髪店では当たり前のシャンプーや髭剃りサービスなどをやめたことです。シャンプーと髭剃りをやめたことで、水道設備もないような小さなスペースでも出店することができ、コストを大幅に安く抑えることができます。ドライヤーなどの設備も不要ですし、1,000円という低価格でありながら、利益率は通常の理髪店より高いといわれています。

「業界で当たり前であったことをあえてやめてみる」ように、競合と視点をずらすことで、既存市場の中にもブルー・オーシャンを創り出すことができるのです。

新規事業のアイデア創出におけるポイント

新規事業の方向性が決まったら、次はアイデア出しです。

アイデアを出すときのポイントは、いったん制約条件を考えないことです。実際に事業を始めるとなるとコストや規制などさまざまな問題がありますが、とりあえずそれはおいておき、できるだけ多くのアイデアを出すことに注力しましょう。

ここでは、そんなアイデア出しのヒントとなるコツを解説していきます。

市場を細かくセグメントに分ける

市場を細かくセグメントし、満たされないニーズを探していきます。たとえば、女性向けの商品はすでに開発していても、20代向けが中心であれば、30代向け、40代向けなど空白となるセグメントが見えてきます。

市場を細分化した後は、「ペルソナ」を設定します。ペルソナとは、架空のユーザー・人物モデルで、氏名、年齢、趣味、ライフスタイルなど人物像を詳細に設定します。具体的な人物像を設定することで、対象とするターゲットがどんなニーズを持っているか、満たされないニーズはどこなのか考えやすくなります。

成長市場をターゲットにする

新規事業で参入するのであれば、成長市場を狙いましょう。

ブランドも知名度も確立していない後発企業は、当然ながら不利な戦いを強いられます。ただし、成長市場であれば市場自体の規模が拡大していくので、後発企業でも十分に戦うことができます。

近年伸びている市場の例としては、シェアリングエコノミーやオンライン関連、サブスクリプションや脱炭素関連市場などがあります。事業モデルやサービスがまだ確立されていないため、新しいビジネスが次々と生まれています。

また、同時に新たな課題も出てくるので、そこに新規参入する余地があるといえるでしょう。成長市場で先行する他社のビジネスモデルなどを研究することで、自社でできる事業のアイデアが見えてくるかもしれません。

他の業界を参考にする

新規事業は、何も世の中で初めてのことをする必要はありません。自社の業界ではあまり実施されていなくても、他の業界では当たり前に実施されていることは多いものです。

たとえば、ネットでの予約システムがあります。ホテルなど旅行業界では、ネットでの予約は当たり前ですが、病院など医療関連で診察のネット予約はまだ大きくは普及していません。

このように、他の業界でやっていても自社業界では珍しいことを探してみると良いでしょう。他業界で普及していることであれば、仕組みや技術がすでに確立されているため、取り組みやすいこともメリットです。

社会課題に着目する

社会課題にも着目してみましょう。

元々、事業とは世の中の課題を解決するためにやるものです。現在、世の中にどのような課題があるのか?自社でできることはないのか?

ヒント探しには、近年増加しているクラウドファンディングのサイトをチェックしてみることをおすすめします。クラウドファンディングのサイトでは、多くの課題で(中には社会課題とは言い難いものも混じっていますが)資金が募られています。参考になるアイデアが見つかるかもしれません。

新規事業プラン作成のポイント

できるだけたくさんのアイデアが出せたら、その中からもっとも良いものを選び、事業プランに落とし込んでいきます。事業プランは次の4つの要件を満たすことが必要です。

  • 正当性
  • 実現性
  • 具体性
  • 採算性

正当性

正当性とは、その事業が自社にふさわしいかをきちんと証明できることです。すなわち、自社がその事業を実施する理由を十分に説明できるかです。

なぜその事業を自社で取り組む必要があるのか。その事業は自社の利益に貢献するのか。大企業であれば社内の稟議を通すためにも正当性の理論武装は欠かせませんが、中小企業等であれば正当性があいまいなまま、社長の思いつきで始めてしまう新規事業も少なくありません。

ただ、それでは成功確率は高くなりません。なぜ、自社で取り組むのか、どこに意義があるのかじっくり考え、説明できるようにしましょう。

実現性

実現性とは、その事業を実際に実現できるかということです。

市場はあるのか。リソース(人、資金、ノウハウ、技術、設備)はあるのか。リソースがない場合はどうやって獲得するのか。市場とリソース、どれか一つでも欠けていたら、事業の実現性は怪しくなります。

また、新規事業で特に他社がまだ手掛けていない場合は、規制の壁が立ちふさがっていることが少なくありません。他社が「まだやっていない」のではなく、「規制のためできない」といったことがよくあります。実現性をよく見極めてアイデアを選び、プランに落とし込むことが重要です。

具体性

具体性とは、事業の内容とお金の流れをきちんと説明できることです。

市場はどれくらいの規模なのか。ビジネスモデルはどう設計するか。お金の流れはどうなっているのか。顧客ターゲットはどこに設定するか。

プラン作成に具体性は欠かせません。アイデアが良くても具体化できないものであれば、実現することは難しいです。

採算性

採算性とは、投資額より大きな効果・利益が得られることです。どんなに正当性があり実現性があったとしても、採算が取れなければ意味がありません。

費用と収益の関係はどうなっているか。安定的に収益を上げ続けることができるのか。しっかりと見極める必要があります。

とはいえ、新規事業ですぐに利益を出すことは難しいものです。どれくらいの期間で黒字化を目指すのか、あらかじめ収益計画を作成するようにしましょう。

新規事業プランの説明はビジネスモデルキャンバスを活用しよう

新規事業のプラン概要が固まったら、「ビジネスモデルキャンバス」で表すことをおすすめします。ビジネスモデルキャンバスでは、事業の成功要因となる要素を9つに分けて書き出します。

ビジネスモデルキャンバスの良いところは、1枚の紙で事業全体を俯瞰できる点です。以下要素を順にみていきましょう。

事業を成功させる9つの要因

ビジネスモデルキャンバスに記入すべき9つの要因は次のとおりです。

ビジネスモデルキャンバス

それぞれを端的にわかりやすく記入します。参考例として、アマゾンのビジネスモデルキャンバスを挙げます。

ビジネスモデルキャンバス_Amazon

記入するうちに、詳しく書ける項目と書けない項目が出てくるかもしれません。詳しく書けない項目は、まだ具体性に欠けるということなので、もう少し掘り下げて考える必要があります。

では、それぞれの項目についてみていきましょう。

①独自の価値提案

ビジネスモデルの中で核となるのは事業の価値そのもので、9つの要因では「①独自の価値提案」に該当します。新規事業で提供する価値は優位性や独自性があるのか、顧客に伝わるわかりやすいメッセージとなっているか検討しましょう。

②顧客セグメント、③顧客との関係性、④チャネル

続いて、事業の価値を誰にどのように伝えるかです。②顧客セグメント、③顧客との関係性、④チャネルは、顧客との接点を表します。

顧客セグメントは適切に設定されているか、事業をどのチャネルで提供し、顧客との関係性をどのように作っていくかを検討しましょう。

⑤主要活動、⑥リソース

事業の価値と顧客について記入できたら、事業の価値を実現する事業内容とそれを可能にするリソースを記載します。

⑤主要活動では、価値を生み出す活動を具体的に記入します。⑥リソースでは、価値を生み出すための自社の強み、リソース(ヒト、モノ、カネ)について記入します。

自社のどのようなリソースを活かすか、必要なリソースが自社に備わっているのか。さらに、⑦パートナーでは、自社のリソースが不足していれば、補ってくれるパートナーについても記入しましょう。

⑧コスト構造、⑨収益の流れ

最後に、収益性を図る⑧コスト構造と、⑨収益の流れについて検討しましょう。

⑧コスト構造では、かかる費用や投資費用などについて記入します。

⑨収益の流れでは、どのような売上があがるか記入します。コスト構造が収益の流れを上回らないように検討しましょう。

新規事業開発の相談はどこにすれば良い?

新規事業の開発には、ある程度のノウハウも必要です。アイデア出しミーティング一つとっても、経験豊富な専門家がファシリテーターとして加われば活性化するでしょう。

新規事業の相談は、商工会議所など公的機関や金融機関、中小企業診断士、コンサルタント会社などに依頼できます。新規事業を立ち上げたら、その後の販路開拓などやることは膨大にあります。自社だけでやろうとせず、信頼できる外部パートナーを見つけると良いでしょう。

まとめ

新規事業開発の方向性やアイデア創出、プラン作成のポイントについて解説しました。

特にビジネスモデルキャンバスは、1枚の紙でビジネスの価値を漏れなくわかりやすく伝えることができるため、おすすめのツールです。新規事業を考える際のフレームワークとしてぜひご活用ください。

当社トライズコンサルティングでは、新規事業開発支援をはじめとして経営に関するお悩みをお持ちの事業者の方を対象としたコンサルティングも実施しています。認定支援機関として多数の中小企業事業者の皆様の経営改善で得たノウハウを、貴社のビジネスにも活用していくことができます。 ご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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